今時「重砲装備の艦」?

 もうお分かりでしょうが多くの場合、中国の報道が「どこそこの外国メディアがこう言っている」、という体裁を取るのは説得力を増そうとするだけのいわばトリックで、実際の内容は中国自身の考えであり主張です。南海の紛争解決のためこんな新兵器が必要だという主張を紹介します。

http://mil.huanqiu.com/Observation/2012-07/2888719.html


韓国メディア:南海でもし戦闘が勃発したら 中国はさらに056艦の重砲バージョンを必要とする

要約:中国がもし大口径艦砲の重砲護衛艦を装備したら、疑いなく東南アジア諸国との海上対抗の中で明らかな優勢を占めることになる。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「韓国メディアは、中国は056型護衛艦の後継艦に類似の設計思想を採用し、『重砲護衛艦』を発展させることが完全にできる、としている。」)

【グローバルネット総合報道】韓国の軍事ウェブサイト「高麗海軍フォーラム」2012年7月5日に発表された文章は、中国があるいはロシアから引き継いでベネズエラのためにグレードアップする「狼」級護衛艦に対し分析を行っている。文章は、ベネズエラが装備する「狼」級護衛艦は1970年代中期にイタリアから購入した古い艦ではあるが、その「重砲護衛艦」の思想は現段階の中国にとってカギとなる重要な意義を備えている、と考える。中国はあるいはこの型の戦闘艦のグレードアップの機会を借りて関係技術を獲得し、本国の重砲護衛艦を研究開発し、南海における東南アジア諸国とのあり得る対戦の中でカギとなる重要な優勢を獲得できるかもしれない。またいかに理知的に艦砲とミサイルの南海作戦における作用の消長に対応するかが、中国の軍事工業が理知的に発展し得るか否かをはかる重要な基準となる(頑住吉注:これだけでは分かりにくいので補足します。ベネズエラは昔イタリアから護衛艦を購入しましたが旧式化したためグレードアップを計画しました。アメリカにやってもらおうとしたんですがアメリカが技術の漏洩を恐れて遅延し、ロシアを経て中国にお鉢が回ってきそうだ、ということです。で、当然グレードアップ作業後に艦はベネズエラに引き渡すことになりますが、作業過程で比較的小さな艦に比較的大きな砲を搭載する関連の技術を掌握し、国産で新型のそうした艦を建造し、南海に投入すれば有利になるぞ、ということです。)。

まず、中国はベネズエラの戦闘艦のグレードアップを本国の重砲護衛艦研究開発の助けとすることができる。

ロシアの世界武器貿易分析センターのウェブサイトは7月3日に、ベネズエラが中国と接触中で、中国にロシアが本国のために行う現役の6隻のイタリアから購入した「狼」級護衛艦のグレードアップを引き継ぐことを希望している、とリークした。この軍事的取引がひとたび達成されれば、中国が初めて南米の戦闘艦取引市場を切り開いたことを示すだけでなく、さらに重要なのは技術の上で中国が初めて全く新しい護衛艦発展の風格に触れることである。すなわち1970〜80年代にヨーロッパで流行した「重砲護衛艦」である。その代表作は名が知れ渡っているドイツ製の「メイカ」級護衛艦を除けば、同様に古典的なイタリアの「狼」級護衛艦である。これにかんがみれば、中国はベネズエラが装備する「狼」級護衛艦に対しグレードアップを行うことによって、あるいは極めて大きく本国の類似の戦闘艦研究開発の助けになるかもしれない。

周知のように、第二次大戦終結後、最も深刻に破壊に遭った地域の1つとして、ヨーロッパ各国は経済方面で遅く長い回復過程を経ただけでなく、海軍建設方面では主力戦闘艦艇の建造も中、小型駆逐、護衛艦に集中するしかなかった。だが、旧ソ連の強大な海軍から防御する必要から、ヨーロッパ各国は止むを得ず全体的性能のバランスを保証する前提の下に、できる限り火力を突出させた「重砲護衛艦」を研究開発した。「狼」級護衛艦はまさにこの環境下で誕生した。その最も代表性を備えるものは、3,000トンに足りない艦体への127mm「オットー」艦砲1門と8発の「オットー・マット」対艦ミサイルの装備である。この火力装備は、一貫して攻撃力を重視した中国、ロシアの護衛艦と比較しても相当に強大である。これにかんがみれば、中国は056型護衛艦の後継艦に類似の設計思想を採用し、「重砲護衛艦」を発展させることが完全にできる。またこの種の艦艇は南海問題の解決過程で、あるいは重要な役割を果たすかもしれない。

次に、重砲護衛艦は中国に現在存在する南海の衝突の形式の中で優勢を獲得させることができる。

056型護衛艦登場の最初からもう疑問を引き起こしたことがある。すなわちこの護衛艦は多くの先進技術を装備しているかもしれないが、搭載兵器から言えば東南アジア各国が装備する同じトン数の戦闘艦に比べて優位を占めておらず、これで後日の海上対抗の中で優勢を占められるのか否か? というのである。答えはイエスである。その原因は簡単で、東南アジア諸国には中国の持つような完備された作戦体系が欠乏しており、高技術戦闘艦もその他の技術の有効な保障を欠いた状況下ではあるべき機能を発揮することが難しく、特に遠距離探知計測と打撃能力に関してはそうだからだ。このため、予見可能な時期においては中国と東南アジア諸国の南海海域における海上対抗では、依然視覚でとらえられる距離内での近距離対抗に留まり、この種の環境では中国には「非主流」の駆逐艦の選択的発展が必須となり、「重砲護衛艦」はまさに中国を助け、現在存在する南海での衝突の中で優勢を獲得させるカギとなる重要装備となり得る。

ベトナムが購入、輸入したロシア製「チーター」級護衛艦を例にすると、この艦は現段階において射程が120kmを超える「天王星」亜音速対艦ミサイルを装備済みで、後日あるいは射程300kmを超える「宝石」超音速対艦ミサイルに換装されるかもしれない。だが注意に値するのはこの戦闘艦がミサイルに対し全過程の誘導を行う、またミサイルの射程内の目標に対し有効な探知計測を行う能力を備えていないことだ。このため、これらのミサイルが戦時において発揮する作用は敵に向け大体の方向にめくら撃ちし、限られた威嚇作用を果たすだけである公算が高い。ひとたび双方の戦闘艦が視覚でとらえられる距離に入れば、対艦ミサイルの射程、速度と威力の優勢が発揮されようがなく、この時伝統的な艦砲が最も有効な装備となる。だが世界の主流駆逐、護衛艦発展の趨勢の影響を受けて、東南アジア地域が装備する護衛艦はいずれも76mmの水上目標攻撃に供することのできる艦砲1門しか装備していない。この時中国がもし「狼」級のような127mm大口径艦砲を装備した「重砲護衛艦」を装備していたら、疑いなく東南アジア諸国とのあり得る海上対抗の中で明確な優勢を占めることになる。

第3に、南海での需要を基準として戦闘艦を発展させられるか否かは、中国軍事工業の極めて大きな試練となる。

完全な軍備自主研究開発、生産能力を持つ国家として、中国には疑いなく戦闘艦を含む主力軍備の発展方向を自ら計画する必要がある。南海は「重砲護衛艦」を必要とするが、それではこの型の戦闘艦は中国の後日における発展の重点となるか否か? 答えは一部ノーである。この問題に答える前に2つの重要原則を重ねて明らかにしておくことが必須である。すなわち、

(1) 「重砲護衛艦」は機能性に走りすぎ、しかも世界で主流の駆逐、護衛艦の趨勢に符合していない。

(2) 南海危機は大国のゲームの一部であり、絶対に冷戦のように長期的に緊張が持続するはずはない。

これにかんがみれば、「重砲護衛艦」は確実に発展の必要があるが、もしそれを054A型護衛艦のように重要な地位に置いて大規模建造を行えば、中国はあるいは短期的に東南アジア諸国を有効に牽制する海上の優れた武器を持つことにはなるかもしれないが、もし南海危機が、中国が国際的ゲームの中で勝利したため一瞬にして緩和したら、この機能性が強すぎる戦闘艦の実際の意義は暴落に直面し、さらには深刻な浪費をもたらす。この状況の出現を避けるため、中国軍事工業は「重砲護衛艦」をできる限りその他の戦闘艦の発展、生産に対する助けとさせる必要がある。

「重砲護衛艦」では2項目の技術的武器が支柱としての作用を果たす。すなわち大口径艦砲と小型化された対艦ミサイルである。前者の研究開発は中国に関して言えば比較的大きなチャレンジである。何故なら中国は高度自動化機能を持つ大口径艦砲を研究開発したことが全くなく、さらに小型艦艇にこの種の艦砲を装備したこともないからである。だが、ひとたび中国が127〜130mm艦砲の小型化と艦への装備を実現すれば、中国の大型駆逐、護衛艦にこの種の艦砲を装備する条件ができ、したがって現役の中国大型水上艦艇の補助装備が弱すぎる状況を極めて大きく補うことになる。一方小型化された対艦ミサイルの技術はさらに重要性が高い。周知のように現在世界で現役の大型水上艦艇はいずれも発射筒方式で対艦ミサイルの貯蔵と発射を行い、ロシアがインドのために建造した「ターワール」級と、インドが自ら生産した「シヴァリク」級護衛艦(頑住吉注:「中国を訪れたインドのステルス護衛艦:艦内には武器が多く狭隘で暗い」に登場した艦です)だけが垂直発射の対艦ミサイルを装備している。だがどんな方式だろうと、対艦ミサイルはいずれも先端的戦闘艦全体の作戦システム外に遊離する度合いが高い。この問題を解決する最良の手段は、対艦ミサイルを垂直発射システムの中に組み合わせることに他ならない。この目標を実現するために第一歩としてする必要があるのは対艦ミサイルの小型化である。また「重砲護衛艦」は艦体の空間が限られ、対艦ミサイルの小型化を行うことは必須である。このことから、「重砲護衛艦」は主力戦闘艦発展に対しやはりカギとなる重要な促進作用を果たすことができると分かる。だが、これら一切の前提は中国軍事工業全体の計画、理知、システム発展能力である。


 「南海危機は大国のゲームの一部」というのは、これは実際には領土問題ではなく、疑いなく中国の領土である場所を、世界征服を狙うアメリカによって操られた小国が侵略しようとしており、問題の本質はアメリカの野望との戦いだ、と思い込んでいるわけです。

 敵が目に見えない距離から正確にミサイルを命中させる能力を持たないから近距離戦になり、砲が重要になるってのはどうなんでしょう。普通の軍事常識から言えば、敵がそうならこちらは長距離対艦ミサイルを正確に命中させてアウトレンジできる、という考えになるはずだと思うんですが。まさか中国はあくまで平和を愛するので先制攻撃はせず、戦闘になるのは悪辣な侵略者が先に発砲した場合だけだ、と考えているからでしょうか。どうもその他の部分でも個人的好みとして巨砲を持つ艦があるといいなーという考えが先にあって、こんな役にもあんな役にも立つと、理由を後付しているような印象を受けるんですが。














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