82-2式ナイフ銃

 82-2式ナイフ銃に関し、もう少し詳細に説明されているページがあったのでその内容を紹介します。なお残念なことに本来は内部やメカが分かる画像が複数あったらしいのですが現在表示されません。

http://meshless.bokee.com/3027926.html


82‐2式5.6mmナイフ銃

我が国の公安刑事警察が20世紀の80年代に配備していた武器は主に54式(頑住吉注:トカレフのコピー)および64式(頑住吉注:PPKの亜流)という2種類の拳銃だった。しかし多くの状況下において、犯人を死に至らしめる必要はなく、かつ無関係の人間に傷を負わせてはならない場合、電気警棒では少し距離が遠くなるとすぐに届かなくなり、サイズが比較的大きいことも嫌われた。一般にコンバットナイフ(頑住吉注:原文は「格闘匕首」)を使ってもやはり明らかに威力不足で犯人を威嚇し屈服させることは困難だった。このため、関連部門は新型の警察用近距離武器の開発要求を提出した。華東工程学院(現在の南京理工大学)と972工場がまさにこのような状況下でナイフ銃の研究開発を開始したのである。当時の設計思想は次の数点に立脚していた。まず必須なのは非致命武器であること、ただし相手を鎮圧できる一定の威力は必要だった。対ハイジャック犯の機能も備え、このため銃弾の威力は飛行機の外皮を貫通しないものがよい。このため、設計の基点はやはり銃に置かれるが、威力が比較的小さい5.6mm運動短弾(頑住吉注:スポーツショート弾という意味でしょう。要するに.22ショートのことです)が使用弾薬に選択された。次に、軽便で、有効で、隠蔽性が高く、治安維持目的に合致するものである必要があった。このため銃の外形はナイフとして設計され、銃全体の撃発、発射機構はいずれもナイフのグリップの中に隠して収納され、意表を突いて勝ちを制する目的が実現できるようにした。ナイフ銃は折りたたみ式に設計され、軽便安全でもあり、携帯にも便利となった。威力と重量の総合的考慮から、装弾数は3発、有効射程は5〜10mに決定された。この他、設計中にも特殊部隊の必要の他に輸出可能性が考慮され、外観と人間工学の面にも大きな技量がつぎ込まれた。製品はできる限り小型、精巧で使用が快適なものとされた。研究開発人員の苦労と努力を経て、82−2式5.6mmナイフ銃はついに1984年に公安部の設計定型を通過し、間もなく大量生産能力が整えられた。

1.主要構造および機能

82−2式ナイフ銃はナイフ、ナイフ体、ハンマー支持架、バレル体、トリガー、セーフティおよびグリップからなっている。銃全体では全部で49点の部品がある。

ナイフには開いた状態、折りたたんだ状態の2つのポジションがあり、いずれもナイフのロックボタンで定位置に保持される。折りたたみ後、ナイフの先端はグリップに密着し、携行は安全である。

ナイフ体は銃全体のフレームであり、一般的なピストルのフレームに似ている。各種部品の収納、固定に用いられる。

ハンマー支持架は1本の矩形のミゾをもってナイフ体上にかぶせられており、ガイドに沿って前後にスライドできる。ハンマー支持架とその中に置かれたハンマーは協力してファイアリングピンを打撃する。

ファイアリングピン座はナイフ体上に固定され、中には3本のファイアリングピンがあってそれぞれバレル体の中の3本のバレルに正確に合わせられている。ハンマーの打撃を受けた時、いずれか1本のファイアリングピンがどの場合も急速に前進して弾薬のプライマーを撃発させることができる。

バレル体は3本のバレルが圧入されたバレルジャケットからなり、後端はファイアリングピン座と密着する。バレル内には6条のライフリングがあり、もって弾頭の飛行安定性を向上させる。

トリガーとプッシュバーは共にハンマー支持架を推し動かし、連続した撃発動作を実現する。

セーフティはナイフリング内に収納され、セーフティ状態の時はトリガーがロックされて、もって安全が確保される(頑住吉注:「ナイフリング」はたぶん刀のつばにあたる部分のことだと思われます)。

グリップは銃全体を保持する部分であり、プラスチックで作られ、各可動部品の収納、機構の正常動作の確保の役割を果たす。その前端にはナイフリングが固定され、後端は固定ピンとネジによってハンマースプリング底座と結合されている。

作動原理

ナイフ銃をグリップし、親指でロックボタンの頭部を押し下げるとナイフは自動的に開き、即時にナイフを使うことができる。銃として使用する際はトリガーを圧すると、それと連結されたプッシュバーが後方に向かってその端部の転輪でハンマー支持架をスライドさせ、ハンマースプリングを圧縮する。トリガーが一定ストロークに達した時、プッシュバーがその下部の斜面の作用で上に向かって起き上がり、ハンマー支持架を自動的にリリースする。ハンマー支持架はハンマースプリングの作用でファイアリングピンを前方に向かって打撃し、これによりバレル体の中の弾薬のプライマーが打撃され、撃発が起こる。指がトリガーを緩めると、トリガーはトリガースプリング(プッシュバー内に置かれている)の作用下で自動的に復帰する。2回目にトリガーを引いた時、ハンマー支持架が後方に向かってスライドする際、その中に置かれているハンマーがファイアリングピン座にあるツメによって60度回転させられ、元の衝突面が変更され、2回目の打撃時には2本目のファイアリングピンを打撃することになる。こうして毎回1本のファイアリングピンだけが打撃される。循環はこのように行われる。3発の弾を撃ち終わった後、親指でバレルのロックボタンを押し下げ、マズルを下に向けて少し振ればすぐにバレル体を取りだすことができる。新しいバレル体を装着する時は、バレル体をナイフリングと平斉にすべきである。そうすればバレルロックボタンが適切にバレル体をロックすることが保証され、射撃時にはじき出されることが避けられる(頑住吉注:「平斉」は辞書に載っていませんがたぶんツライチという意味、すなわちつばに当たる部品の前面とバレル体前面が一致する位置まできっちり押し込めという意味だと思います)。

使用が終わったら、親指を後ろに向けてセーフティを操作し、トリガーをロックさせる。ロックボタンの頭部を押し、左手でナイフを折って回し、ロックボタンの頭部を放せばナイフはグリップの左側にロックされ、携行状態となる。

分解結合

(1)グリップを持ち、ロックボタンの頭部を押し下げ、ナイフを開き、戦闘状態とする。

(2)親指でバレルロックボタンを押して解除し、ナイフの先を下に向け、銃を振ればバレル体は自然に滑り出る。

(3)左手で銃を握り、右手でドライバーを使い、逆時計方向にネジを回して抜き、尾柄を取り外す。

(4)左手でナイフリングを握り、右手でグリップを抜く。

以上の不完全分解は維持、メンテナンスに用いられる。

(5)ハンマースプリングを圧縮し、ハンマースプリング底座を取りだし、続いてハンマースプリングを取りだす。

逆時計方向にロックボタンの頭部をひねり、ナイフロックボタンを取り外す。そうすればナイフとナイフの自動オープン装置が取り外せる。

結合は反対の順序で行う。

構造の特徴

バレル体は3本のバレルが圧入された一体のバレルジャケットからなっており、銃の弾倉も兼ねている。その構造は単純化され、携行、使用が便利である。

柱形のハンマーの設計は独特で、3つの打撃平面は順次60度ずつ交代し、毎回1つの面だけが作用する。しかも連続してトリガーを引くことができ、もし不発が生じてもすぐ継続して次の弾薬を撃発できる。リボルバーに似た作用をするのである。

撃発エネルギーは毎回トリガーを引いてハンマースプリングを圧縮することで生み出されるので、暴発が起きる可能性はなく、使用上の安全が確保されている。試験は、この銃を1.2mの高さから自由落下させても暴発する可能性はなく、かつ何の問題なく使用できることを明らかにした。

全体構造は隙なくきちんとしており、密封性が良好で、使用は安全で信頼性が高い。研究開発中、高温(50度)、低温(マイナス40度)、水に浸す(清水中に30分入れる)試験を経たが、いずれも射撃は無故障で行われた。常温試験中、実際の射撃寿命がすでに指標要求を超え、1500発以上に達した。

82-2式ナイフ銃は上述のように多くの特徴を持ち、また国内最初のナイフ銃であるため、ひとたび世に出るやすぐさま多方面からの歓迎を受けた。このプロジェクトは光栄にも1984年の江蘇省科技進歩二等賞を獲得し、1987年のパリにおける第4回国際軍警察機械展覧会上で国際的好評を博し、この展覧会で最も歓迎された新製品の1つと誉められた。

ただしその他の新製品と同様に、この銃にもいくつかの欠点がある。主なものはバレルが短いため初速の変化が比較的大きく、加えてトリガーの力をかける方向があまり理想的とは言えず、トリガープルが重い、というもので、このため射撃精度にある程度影響する。それでもなおナイフ銃は豊かな創造性を持つ実用性の高い製品であることは否定されない。その設計思想と巧妙な構造に関する配慮も人を啓発するものである。主要諸元は以下の通りである。

口径 5.6mm

撃発方式 ハンマー式

初速 140m/s

射撃寿命600発

有効射程 5〜8m

故障率 0.3%

全長 265mm/150mm(折りたたみ時)

精度 R100・10cm

全銃重量 330g

威力 距離5mで8.5mm厚の松板を貫通。距離5mで綿入れの衣服の中の40mm厚の石鹸を貫通。1mm厚のアルミ板は貫通せず。

使用弾薬 5.6mm運動短弾

トリガープル 40〜50ニュートン


 できればGUN誌1990年5月号の床井氏のレポート記事を参照してください。しかし氏の記事でも分解はできていなかったので、このページの画像が見られないのはかえすがえすも残念です。

 今回の記述では「非致命武器」とされており、最後に示された初速、貫通性能とも驚くほど低い値になっていますが、かのロバート・ケネディは.22ショート弾を1発頭に受けただけで死んだそうですし、あたり所によっては致命傷を負うはずです。なおダガー状のナイフが非致命武器でないのは言うまでもないことですが、GUN誌の記事を見る限りではあまり鋭利な刃がついているように見えず、単なるナイフと誤認させるためのダミーのような印象すら受けます。それにしても日本では警官がナイフで犯人を刺すということは考えられず、もし警官が飛び出しナイフを抜いたら偽警官ではないか、頭がおかしいのではないか、と逆に警戒すると思われますが、中国では警官がこれを抜いた時、犯人は「なんだただのナイフか」と油断するんでしょうか。

 一部意味が不明確な部分もありますが、GUN誌の記事でも分からなかった部分がかなり明らかになったと思います。この銃の撃発メカは基本的に複数バレルを持つデリンジャーと似たものです。こうした銃はたいていファイアリングピンが1本ついた部品がポジションを変えて個々のチャンバーの弾薬を打ち分けますが、この銃の場合ファイアリングピンが3本あって、ハンマーを載せて前後動するハンマー支持架(ハンマーキャリアと呼んだ方が分かりやすいかもしれません)上のハンマーがポジションを変えて個々のファイアリングピンを打ち分けるわけです。トリガーを引くとプッシュバー(トリガーバー)が後退し、ハンマー支持架を後退させ、一定距離で自動的にリリースしてハンマー支持架が前進する、ハンマーが回転運動でなくストレートに前後動する点を除けばごく普通のダブルアクションメカです。プッシュバーの後端の、ハンマー支持架との接触部分には摩擦軽減のためローラーが設置されているようです。

 バレルは1つのブロックに穴を開けて作られているのかと思いましたが、パイプ状の3本のバレルがブロックに圧入されているようです。ライフリングがある点は床井氏も指摘されていますが、どうせ至近距離でしか命中は望めないのですからコストダウンのためスムーズボアでも大した違いはないのではないでしょうか。スムーズボアのピストルの販売を禁じている国が多いから輸出しにくい、という判断かも知れませんが、どの道こんな擬装銃が一般市販できる国は、少なくとも先進国にはほとんどないでしょうし、こんなのが販売できるような国にはスムーズボアのピストルを禁じる規則だってないんじゃないでしょうか。

 分解時に出てくる「尾柄」はグリップの尾部のことでしょう。グリップ本体とは別パーツになっていて、ネジとピンで固定され、これを外すとナイフとグリップも分離できるようになっているようです。この分解はメンテナンスのための通常分解に含まれ、ネジを抜かないとできないというのは不便ですが、頻繁に訓練のため射撃するような銃ではないので問題ない、ということでしょうか。なお開発時期には1500発を超えていたはずの耐久性が量産品では600発になってしまっている理由は不明ですが、用途からして600発でも充分でしょう。
















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