95-1式小銃その2 弾薬編

 銃本体編に続き、今回は弾薬編です。

http://www.fyjs.cn/bbs/htm_data/26/1111/637708.html


DBP10式5.8mm普通弾薬

研究開発の始動

DBP95式5.8mm普通弾薬とDVP88式5.8mm機関銃弾薬は我が軍が装備する95式小口径銃器ファミリーの主要な弾薬種類である。このうちDBP95式5.8mm普通弾薬は95式5.8mm分隊用銃器ファミリーに使用され、近距離内の個人用防御ある生体戦力の殺傷に用いられる。DVP88式5.8mm機関銃弾薬は88式汎用機関銃および88式スナイパーライフルに使用され、800〜1000m以内の敵生体戦力あるいは重要目標の殺傷に用いられる。この2種の弾薬の作戦機能は異なるが、外形は基本的に同じで、外観から区別することは難しい。部隊使用後、混用される状況が起きやすく、保管、訓練、作戦供給にいずれも多くの不便がもたらされるとの反響があった。95式銃器ファミリーに改良設計が行われるのと同時に、上述の2種の弾薬を「2つを合わせ1つに」の設計思想も提出された。

2004年6月、95式銃器ファミリーシステム改良型作業会議が北京で召集開会され、5.8mm新型弾薬、すなわちDBP10式5.8mm普通弾薬タイプの研究開発作業が正式に始動した。

方案の形成

DBP10式5.8mm普通弾薬方案の形成は、95式5.8mm普通弾薬と88式5.8mm機関銃弾薬の設計を基礎に展開されたものであり、その研究開発は方案設計、最初のサンプルの研究開発、正式サンプルの鑑定、設計定型の4段階を経過した。全体的設計思想は「内部弾道学的には普通弾薬に似て、外部弾道学的には機関銃弾薬に似る」というもので、すなわち内部弾道学的パラメータの調整により、95式および95-1式5.8mm分隊用銃器ファミリー、88式汎用機関銃、88式スナイパーライフルという長さが異なり、ライフリングピッチも異なるバレルでの内部弾道学的性能に関する要求および作戦使用に関する要求を満足させるというものである。

DBP10式5.8mm普通弾薬は弾頭、薬莢、プライマー、発射薬という4つの部分からなる。薬莢には塗装仕上げのスチール薬莢と銅で被覆されたスチール薬莢という2つの類型があり、前者にはボクサー式無錆蝕撃発薬プライマーが使われ、伝火孔は1つだけである。後者にはベルダン式無錆蝕撃発薬プライマーが使われ、2つの伝火孔があって伝火孔の間には火台(頑住吉注:金床、アンビル)が設けられている。2種類の薬莢を持つ弾薬の技術的性能は完全に同じである。

設計中、外部弾道学的パラメータの合理的選択および弾丸の形状の最適化(例えば空気動力学原理に基づき弾頭頭部の曲線を特殊な形状すなわちスプライン曲線に設計することにより、5.8mm口径弾のメリットを充分発揮させることができた。

スチールコアの直径を減少する、鉛ジャケットの厚さを増加するなどの技術的措置により、DBP10式5.8mm弾薬の弾頭の飛行安定性が向上し、異なる長さのバレル(長さはそれぞれ334mm、463mm、520mm、557mm、620mm)(頑住吉注:短小銃、小銃、機関銃、スナイパーライフル)、異なるライフリングピッチ(ピッチはそれぞれ178mm、210mm、240mm)(頑住吉注:旧機関銃弾薬用、新弾薬用、旧普通弾用)のバレル内での弾丸の飛行安定性および命中精度に関する要求が満足され、1つの弾薬を多くの銃に支給するという使用要求が首尾よく実現された(頑住吉注:「バレル内での飛行」という表現は違和感ありますが、こういう表現をするようです)。

H90弾頭ジャケットの採用により、DBP10式5.8mm普通弾薬の弾頭がボア内で運動する際のバレルに対する摩損が有効に減少し、バレルの総合寿命が15%以上向上した。

研究開発に成功したDBP10式5.8mm普通弾薬をショートアサルトライフルに使用すると、300m以内の個人防御ある敵生体目標が殺傷できる。自動小銃に使用すると400m以内の個人防御ある生体目標が殺傷できる。分隊用機関銃に使用すると、600m以内の個人防御ある生体目標が有効に殺傷でき、火力点や軽型火器が制圧できる。88式汎用機関銃に使用すれば、1000m以内の暴露した敵歩兵が殺傷でき、敵火力点が制圧できる。88式スナイパーライフルに使用すれば、800m以内の単一の重要目標が正確に殺傷できる。

研究開発過程:打ち勝ちがたい重要課題への取り組み

DBP10式5.8mm弾薬研究開発過程で、研究開発人員は1つまた1つと技術的難題に直面し、分析探索を経て逐一これを解決克服し、最終的に多種類の武器に使用した場合の性能を満足させた。

遠距離弾道性能の問題

初期の外部弾道試験中、800mにおける弾道の一致性が戦術技術指標要求を満足させることが難しく、また1000mにおける貫通威力の余裕量が不足する問題が生じた。

原因分析:初期の弾頭の先端部にはダブル孤形(R100/R40)の設計が採用され(頑住吉注:直径100mmの円弧の曲線で構成される部分と、直径40mmの円弧の曲線で構成される部分がある弾丸形状ということでしょう)、弾頭の孤形部が比較的「太」り、弾形係数は約0.98で、飛行過程で受ける空気抵抗が比較的大きく、到達点での運動エネルギーが低くなり、距離1000mでの運動エネルギーは200ジュールしかないという結果がもたらされた。外部弾道試験の結果は、距離1000mでの貫通威力の余裕量が小さく、800mでの弾道の一致性も要求を満足させることが難しいことをはっきり示した。

技術的措置
:この問題に焦点を合わせ、弾頭の形状に対し新たな設計が行われた。空気動力学の原理に基づき、弾頭先端部の曲線を特殊な形状に設計したのである。この方案の弾頭の孤形部は比較的鋭く長く、弾形係数は約0.95で、元々の方案と比較して3%減少し、空気抵抗が有効に減少でき、到達点における運動エネルギーが向上した。

実施効果:上述の措置の採用を通じて、この方案の弾頭は先端部の長さ、尾部テーパーの長さ、弾頭重量、初速等のパラメータが元々の方案と同じままという条件下で、距離1000mでの到達点における運動エネルギーが元々の方案に比べ20ジュール前後向上し、1000mにおける貫通効果が保証され、800mにおける弾道一致性が改善された。

銃/弾薬システムのマッチング問題

正式サンプル鑑定試験過程で、銃/弾薬システムがマッチしないことが分かった。マッチしないということの具体的表れは、95式5.8mm銃器ファミリーを使って射撃した時、射撃密集度の合格率が低く、また分隊用機関銃のバレルの寿命が12000発しかなく、15000発という指標要求に達しなかった。

原因分析:上述の技術問題に対し深入りした分析が行われ、かつ多方面の詳細な討論や試験を経て、弾丸のバレル内での飛行安定性不足が射撃密集度が劣る主要な原因であり、また弾丸のバレルに対する摩損が深刻なことがバレルの寿命を縮めている、と認識された。

技術的措置:討論、研究を経て提出された解決方案は次のようなものだった。弾丸自身の飛行安定性を高めることで95式5.8mm分隊用銃器ファミリーの使用要求を満足させ、95-1式5.8mm分隊用銃器ファミリーに対してはライフリングの新たな設計によってDBP10式5.8mm普通弾薬に適応させる。

このため、DBP10式5.8mm普通弾薬は改良設計時に以下の技術的措置が実施された。

スチールコアの直径を4.1mmから3.8mmに減少し、もって鉛ジャケットの厚さを増やし、弾頭の長さを短縮し、弾頭の重心位置を適当に調整し、重心と抵抗を受ける中心との距離を縮める。したがって弾頭の回転運動の慣性質量比が減少し、もって飛行安定性を向上させる。弾頭のジャケットはF11覆銅鋼(銅で被覆されたスチール)からH90に改め、バレルに対する摩損を減少し、もってバレルの使用寿命を延長する。弾頭の工程性を改善し、弾頭各部品の組み立ての密着性を保証し、さらに一歩安定させ、弾丸の射撃密集度を高める。

実施効果:改良方案実施後、DBP10式5.8mm普通弾薬に対する銃/弾薬マッチング試験が行われた。試験結果は次のことを示した。95式および95-1式5.8mm分隊用銃器ファミリーでの射撃密集度はいずれも指標要求に到達する。分隊用機関銃のバレル寿命は20000発に到達し得る。

熱したバレルの散布が大きい問題

弾頭のジャケットをF11覆銅鋼からH90銅(頑住吉注:色から見ても、また検索しても真鍮で間違いないはずです)に改めた後、平均着弾点の一致性試験を行っている過程で、熱したバレルから発射した時、着弾点の散布が大きく、平均着弾点の一致性が劣るという射撃欠陥が出現した。

原因分析:分析を経て、銅ジャケット弾頭の熱したバレルからの散布が大きいことがもたらされる主要な原因は、弾頭ジャケットとバレルのライフリングの寸法がマッチしていないことが引き起こしているのだと認識された。バレルが熱せられた状態では、バレルと弾頭に同時に変形が発生し、銃/弾頭の本来のマッチング寸法の関係性が影響を受けて改変が発生し、バレルの弾頭に対する誘導回転の横方向の圧力が小さくなることがもたらされ、弾頭の回転運動に対する束縛が小さくなり、弾頭のボア内およびマズルを出る際の回転速度が低下し、したがってマズルを出る時の章動が大きくなる(自転する物体の自転角速度が充分大きくない時、その対称軸がある平面内で揺れ動く可能性がある。この動きがすなわち章動である)(頑住吉注:いわゆるみそすり運動のことでしょう)。この他、覆銅鋼ジャケット弾頭に比べ、銅ジャケット弾頭は熱を受けた後の硬度の低下幅がより大きく、バレルが熱せられた状態での射撃において散布が大きくなる射撃欠陥がより発生しやすい。

技術的措置:バレルのライフリングの数を4条から6条に増やし、バレルの弾頭に対する回転運動時の誘導回転の横方向の力を分散した。バレルのライフリングの山部の直径を5.8〜5.84から5.82〜5.86mmに調整し、谷部の直径を6.01〜6.07から5.89〜6.02mmに調整し、弾頭がボア内で運動する時にはまり込む量を減少させた(頑住吉注:ライフリングを浅くしたということですね)。この他、95-1式5.8mm短自動小銃と自動小銃のライフリングピッチを240mmから210mmに調整し、分隊用機関銃と一致させ、弾頭のボア内での回転速度を高めた。

実施効果:上述の措置の採用により、DBP10式5.8mm普通弾薬は小銃、短小銃、分隊用機関銃に規定された冷たい状態、熱せられた状態のバレルに対する距離100mでの平均着弾点偏差に関する指標要求を満足させることができ、かつ熱せられた状態のバレルによる散布にもはっきりした改善が見られた。

貴重な飛躍と新基軸

DBP10式5.8mm普通弾薬は辛い探求を経てついに成功を勝ち取った。その飛躍と新基軸のハイライトは以下のいくつかの方面に表れている。

「1種類の弾薬を9種類の銃に」の共用化設計を実現した。

弾薬の系列化、共用化設計、「一弾多銃」はずっと弾薬設計者が達成に向け努力してきた目標である。DBP10式5.8mm普通弾薬の研究開発成功は、DBP95式5.8mm普通弾薬とDVP88式5.8mm機関銃弾薬の「2つを1つに」を現実のものとした。この弾薬は、95-1式5.8mm分隊用銃器ファミリー(全部で3種の銃)、95式5.8mm分隊用銃器ファミリー(全部で3種の銃)、88式5.8mm汎用機関銃、88式スナイパーライフル、03式5.8mm自動小銃に共用でき、武器弾薬の生産管理、生産ラインの簡略化、平時における貯蔵、訓練、戦時における後方勤務、供給、使用のためにいずれも極めて大きな利便性をもたらした。世界の同類小口径武器弾薬のシステム化と比べて、DBP10式5.8mm普通弾薬の全体的技術性能はトップクラスにある。

銅ジャケット弾頭に対する認識を高めた

DBP10式5.8mm普通弾薬の弾頭設計方案形成以前において、国内の小口径弾薬の弾頭ジャケットには全てF11覆銅鋼が材料として採用されていた。分隊用機関銃の15000発というバレル寿命の要求を満足させるため、DBP10式5.8mm普通弾薬の弾頭ジャケットは慣習を改め、大胆にH90銅材料を採用した。このためにもたらされたバレルが熱せられた状態での射撃密集度が明らかに低下するという射撃欠陥は、試験の繰り返しを経てバレルが熱せられた状態での散布の大小は連続射撃によるバレル温度上昇と関係がある他に、バレルのライフリングの山部、谷部の直径、ライフリングの条数、弾頭の断面積とライフリング部の断面積の比などの要素とも関係があることが分かった。この認識は我が国小火器の伝統的設計方法と理念を突破し、今後の我が国の小火器弾薬の研究のために貴重な理論的根拠を提供した。

弾頭に初めてスプライン曲線の先端部を採用した

これまでの弾頭外形の通常の設計は多くが単孤形あるいはダブル孤形だったが、DBP10式5.8mm普通弾薬の弾頭には初めてスプライン曲線の先端部が採用された。すなわち空気動力学の原理に基づき算出された不連続、多数の点をつなげて孤とし、弾頭孤形部の外形とするのである。試験を経て、DBP10式弾薬のスプライン曲線弾頭の弾形係数は、元々のDVP88式5.8mm機関銃弾(弾頭はR100/R40のダブル孤外形)と比べ3%減少し、比較的大幅に弾頭の到達点における運動エネルギーを向上させた。したがって到達点における貫通威力と弾道の一致性が確保された。

小口径共用弾薬の研究開発は国内外において初めての試みに属する。DBP10式5.8mm普通弾薬の研究開発成功は、我が国が小火器弾薬の設計においてかちえた重大な飛躍、新基軸を象徴している。この弾薬は戦術機能上、マズルインパルス、到達点における貫通威力、射撃密集度、作用の信頼性といったこれらの間での矛盾を比較的良好に解決した。技術上は、内外弾道の間、弾薬と武器の間、構造と材料選択の間の関係を比較的良好に処理し、戦術と技術の統一をはっきり示し、小口径武器弾薬の特徴を充分に体現させ得た。

 

DBP10式5.8mm普通弾薬の性能緒元
口径 5.8mm
弾薬全長 57〜58mm
弾薬全体重量 12.9±0.6g
普通弾道銃を使っての射撃密集度 300mにおける半数必中半径6.6cm以下
600mにおける半数必中半径14cm以下
機関銃弾道銃を使っての射撃密集度 300mにおける半数必中半径6.9cm以下
600mにおける半数必中半径23cm以下
初速 915±10m/s
チャンバー圧力 255〜289.3MPa

 今回の内容は「中国の新小銃弾薬 DBP10」で紹介した内容と大筋かぶっていますが、バレルが熱した場合の命中精度に対する影響がスチールジャケットと真鍮ジャケットで異なるというのは興味深いです。2つの弾薬を共用化した意義は大きいでしょうが、結果的にできた弾薬は5.56mmx45や5.45mmx39よりやや強力な普通の小口径ライフル弾薬であり、西側から見て特別に優れているところ、新機軸と呼べるところはなさそうです。














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