中国警察用リボルバーに対する要求項目と開発経緯

 中国警察用リボルバーに対してどういう要求が出されたのか、それをクリアするのにどういった障害があったのか、どういう方法でそれを克服したのか、結果的にどういう銃が完成したのか、今回はそういった内容のページの内容を紹介します。技術的に枯れつくしたと思われているリボルバーですが、それなりの苦労があったようです。

http://www.hudong.com/wiki/9mm%E8%AD%A6%E7%94%A8%E8%BD%AC%E8%BD%AE%E6%89%8B%E6%9E%AA%E7%B3%BB%E7%BB%9F


9mm警察用リボルバー系統

9mm警察用リボルバー系統は、9mm警察用リボルバー、9mm警察用リボルバー用弾薬(以下普通弾と略す)、9mm警察用リボルバーゴム弾薬(以下ゴム弾と略す)、9mm警察用リボルバー用発射薬およびその他付属品(ホルスター、ランヤードループ、スピードローダー、維持修理用工具、レーザーサイト等を含む)からなる。

9mm警察用リボルバー系統 系統の形成およびエネルギー上の特徴

9mm警察用リボルバーは公安警察の法律執行のための常備武器であり、主に自衛に用い、また犯罪容疑者の制圧の実施あるいは暴力をふるう暴徒を有効に殺傷するのに使用する。ただし確定された目標の殺傷時、その他の罪のない人々を傷つけてはならない。9mm警察用リボルバーの目的は、単一の生体目標に対処する、あるいは非合法に集まって騒動を起こす者たちを追い散らす作用をすることにあり、もって社会の治安を保つ。

上に述べたのは9mm警察用リボルバーの主要な戦術的使用任務であり、この武器系統の研究開発はまさにこの任務の実現を目標としていたのだ。

公安警察の常用的作戦使用距離は50mである(頑住吉注:アメリカでは警察官がハンドガンを使用するのは数m以内がほとんどとされていますが‥‥)。このためこの武器系統には、50m以内での有効な制圧および殺傷という戦術的任務の完成が要求された。制圧と殺傷という2つの大きな任務の完成は、目標の体内で作用する終点効能によって実現される。このため、本系統ではまず打撃エネルギー上の特徴が確定した。

銃弾の殺傷という任務は距離50mにおける単一の生体目標を有効に殺傷し、ただし過剰なエネルギーによってその他の目標を誤って傷つけてはならない。この種の要求は研究開発過程において、25mm厚の松板1枚を撃ち抜き、ただし2枚目の松板(これも25mm厚)を貫通してはならない、という指標となった(頑住吉注:これはまた低い貫通力ですね)。

非致命弾薬の任務は有効に傷を与え、50m以内の犯罪容疑者を制圧することであり、ただし5m以内の生体目標を殺傷してはならない。この種の要求は研究開発過程において、距離5mで25mm厚の松板を貫通してはならず、ただし距離50mでクラフト厚紙を必ず貫通しなければならない、という指標となった。

大規模な論証および研究開発試験は明らかにした。殺傷銃弾は以下の指標を実現する必要がある。すなわち、その銃口エネルギーは(銃口から5mの場所で測定)100〜120ジュールの間に収めるのが適当である。非致命弾は以下の指標を実現する必要がある。すなわち、その銃口エネルギーは(銃口から5mの場所で測定)12〜16ジュールの間に収めるのが適当である(頑住吉注:ちなみに私の持っている鉛弾が撃てるハンドクロスボウ「スティンガーマグナム」は8.5ジュールでした。)。

2種の銃弾の打撃エネルギーの数値には10倍前後の差がある。この目標を達成するためには弾丸を2種類にしなければならない。すなわち普通弾とゴム弾である。ゴム弾に関して、大量装備後の生産性を考慮すれば、構造の簡単なワンピースのゴム弾頭を採用する必要がある。

論証を経て次のことが明らかになった。警察用拳銃は2種の性能差が非常に大きい弾薬の発射に配慮する必要があり、自動式ではなくリボルバーを採用しなければならない!

武器系統の各部の主要な長さが確定

この武器系統はエネルギー量の低い銃弾を発射する。その他の同類武器を参照し、同時に武器の機動性能を高めることを考慮し、初めに拳銃の全長は190mmを越えてはならず、銃身長は80mmを越えてはならないと確定した。論証時銃全体の外形の合理的マッチングという角度から、シリンダーの長さは35mmが適当と確定した。リボルバーの発射メカニズムから、2種の弾薬の全長は30mmを越えてはならず、かつ薬莢の長さは同一(公差含む)とすることが確定した(頑住吉注:普通は必要とされる性能から弾薬の寸法が決まって、それによってシリンダーの長さが決まると思うんですが)。

武器系統の初速および弾頭の初速、弾頭質量に関する指標が確定

前述の2種の弾薬の打撃エネルギー量(すなわち銃口部における運動エネルギー値)を根拠に、多くの方案の論証と試作試験を経て、またバレル内圧力値および弾頭構造設計の可能性を考慮して、系統の初速、弾頭の初速および弾頭質量に関する指標が表1のように最終的に確定した。

表1 武器系統の初速、弾頭質量に関する指標

武器の種類 初速(m/s) 弾頭質量(g) 銃口エネルギー(J)
系統 銃弾 系統 銃弾
9mm警察用リボルバー 普通弾 210 220 4.6 101.3 111.8
ゴム弾 100 105 2.9 14.5 16
比較のための弾薬 92式9mm拳銃弾 360 8 (頑住吉注:字がかぶっていて読み取れませんが約518)

(頑住吉注:後で分かりますが、「系統」の値とは実際にこの銃で撃った場合の数値、「銃弾」とはテスト用バレルを使った場合の数値です)

武器系統および弾丸の散布精度に関する指標が確定

この警察用リボルバー系統は、弾頭の質量が小さく、弾頭の速度も低い製品に属する。この種の性能的パラメータは命中精度を上げることとの矛盾を生じる。これはこの系統における突出した技術的難題となった。警察用という目的から出発して、この武器系統は散布精度が軍用拳銃製品より優れていることが要求される。この要求は合理的であり、また必要でもある。そこで当然この要求は論証と研究開発における1つの目標となった。研究開発スタッフが、銃弾系統のマッチングから弾頭構造の数値的設計等の方面に至る多方面の技術的重要j問題に取り組み、散布精度の向上という問題を解決する技術的措置を探し出し、何度にもわたる試験中に、この武器系統の散布精度は一貫して現在装備されている軍用拳銃を上回り、目標は実現された。この技術的難題を、この系統の性能と技術のハイライトに転換した、確定した散布精度上の性能指標は表2の通りである。

表2 数種の弾薬の命中精度比較(単位cm)

武器種類 命中精度(射撃距離25m)
R50値 R100値
系統値 銃弾値 系統値 銃弾値
9mm警察用リボルバー 普通弾 ≦5.0 ≦2.0 ≦12.5 ≦5.0
ゴム弾 ≦12.5 ≦5.0 データなし
比較する武器 92式9mm拳銃弾 ≦6.0 ≦2.5 ≦15.0 ≦5.5
51式7.62mm拳銃ゴム弾 ≦15 いずれもデータなし

原注:銃弾の散布精度値は弾道試験用バレルを台座上に固定して射撃した場合の数値であり、系統の散布精度値は射手が無依託のシングルアクションで射撃した値である。51式7.62mm拳銃用ゴム弾の精度値(≦15cm)は、射手が依託状態で79式7.62mmサブマシンガンを使用し、10mの距離で射撃した値である。(頑住吉注:そこまで条件が違ったら比較の対象にならん気もしますが、まあそれでもリボルバーの方がいい数値になっているので優秀なことは分かります。「R50値」、「R100値」の意味に関してはこちらを参照してください)

その他の重要な性能上の指標が確定

上述の指標の他に、拳銃全体の重量、武器系統の射撃信頼性(故障率のこと)、および使用寿命も明確にする必要があった。

武器の重量を軽減することは、携行を有利にし、作戦使用を便利にするもので、武器、特に個人用武器を設計する上での一般的要求であって、当然リボルバーも例外ではない。論証時、使用強度を保持し、部品の強度上の信頼性を保つという前提の上で拳銃全体の重量軽減に全力が尽くされた。論証時には軍用拳銃、特に国外の同類リボルバーの指標が参照され、拳銃の全重量は0.7kgを越えないものと確定した。

9mm警察用リボルバー系統の故障対策

装備される武器の故障率への対策は非常に重要な指標であり、小火器の主要な目標は信頼性をもって使用できることである。特に拳銃は近距離作戦武器に属し、往々にして双方が非常に近距離で対峙しているため、ひとたび武器に故障が起これば戦機を喪失するだけでなく、命を失うかもしれないわけで、論証中信頼性は1つの重要な指標となった。

この武器は自動拳銃ではないので、弾薬の火薬のエネルギーを開鎖、給弾、排莢、閉鎖等の作動の完成に利用する必要はなく、理論から見れば信頼性上自動拳銃に勝るものになる可能性がある。

すでに装備されている軍用拳銃の故障率を参照し、またこれらの考慮および現実の装備状況に基づいて、論証中この武器系統の故障率は0.1%以下と決められた。

武器の使用寿命は主にバレル内のボアの変化によって決まる。全使用期間内で発射される弾丸の初速や散布精度を確保し、同時に銃全体の部品が全使用期間内で強度を保つことが要求され、強度が足り、完全な作動が確保されれば、信頼性があるといえる。

目下国内で装備されている軍用拳銃の使用寿命は一般に3000発と定められている。論証初期、この武器系統の寿命としては当初6000発と定められた。その後、その他の性能指標が提供する余裕のある環境の完成を考慮し、同時にその先進性を失わないということで、最終的に使用寿命の指標は3000発と定められた(頑住吉注:寿命上の要求が緩められた理由がいまいち不明確ですが、本来ならば低威力、低圧のこの銃の寿命は軍用拳銃より長くていいはずでしょう)。

その他の、銃身長、装薬の構造、初速、弾頭質量、装薬量といった指標が確定した後、バレル内圧力は110MPa以上と確定した。使用要求に基づき、有効射程は50mと確定した。

表3 国内の数種の拳銃の故障率比較 (頑住吉注:原ページの表には9mmリボルバーが加えられておらず、またパーセンテージで表示されていてピンと来ないなどの理由で表記を一部改変してあります)

武器の種類 92式拳銃 59式拳銃(マカロフコピー) 64式拳銃(PPK亜流) 77式拳銃(7.62mmワンハンド) 54式拳銃(トカレフコピー) 9mm警察用リボルバー(計画値)
故障率 1000発中2回以下 1000発中3回以下 1000発中3回以下 1000発中3回以下 1000発中3回以下 1000発中1回以下

9mm警察用リボルバーのキーポイントとなる技術

この武器系統の論証と研究開発において、非常に多くの技術的難点に遭遇した。解決の主要なキーポイントとなった技術は以下の数点である。

バレルのライフリングピッチを確定すること。9mm警察用リボルバーは2種類の弾薬の発射に配慮しなければならず、この2種類の弾薬の性能、構造、材質の差異は非常に大きい。1本のバレルで2種類の弾薬を信頼性をもって射撃することを確実に満足させることが要求された。すなわち両弾頭の外部弾道学的飛行を必ず安定させ、しかも理想的散布精度を実現することである。

両種の弾頭の重心位置、回転の最大慣性質量、赤道転動慣性質量、およびその他のパラメーターは全て異なっており、多方案の論証や双方の散布精度に関する試験を経て、最終的にバレルのライフリングピッチは229mmで一回転と確定した。このピッチは2種類の弾頭の安定性を同時に満足させることができた。

表4 異なるライフリングピッチでの散布値 (頑住吉注:距離も、普通弾、ゴム弾のどちらの結果なのかも書かれていません)

ライフリングピッチ 203mm 229mm 254mm
散布精度(cm) R50 1.42 1.27 1.67
R100 3.06 2.77 4.13

系統散布精度に関する技術的キーポイント

系統散布精度(頑住吉注:テストバレルによるのではなく実際にこの銃から発射した場合の精度)に関する指標は系統の技術工作上の難点だった。課題はバレルのライフリングと2種類の弾頭の径の寸法のマッチングにあった。シリンダーのチャンバーのスムーズボア部の寸法を確定し、拳銃の部品の加工精度を高め、ライフリングピッチを最適化するなどの方面で研究開発上の多くの重要問題に取り組み、最終的に比較的満足のいく結果を手にした。

バレルのライフリングと2種類の弾頭の径の寸法のマッチングに関しては、普通弾の径、ゴム弾の径、バレルのライフリングの谷部の径、山部の径の名義上の寸法、寸法の上限、下限に関し、異なる数値を取り上げて対比試験を進めた。最終的に最良のマッチングが選択された。ゴム弾が低温条件下で射撃した場合、最終的に横転弾となる現象が防止され、両弾丸の飛行の安定が確保され、比較的良い射撃精度を有するようになった。

リボルバーという構造であれば、シリンダー内のチャンバーには一段のスムーズボア部分が必須である。これは弾頭がライフリング部にはまり込む前の滑行段階である。このスムーズボア部の直径と弾頭直径のマッチングが極めて重要であることが実践から知られている。弾頭が薬莢を出てからライフリング部に入るまでの当初の乱れた動きを減少し得る処理ができれば、射弾の散布精度が向上するのである。当初、この課題に取り組んだグループはこのスムーズボアの寸法と弾頭のマッチングを滑動配合で処理し、散布精度を高めるのは難しかった。多くの方案を模索した後、最終的に2つの直径(すなわちスムーズボアの直径と弾頭の直径)を移行配合処理に改め、散布精度は明らかに向上した(頑住吉注:ストレートだったスムーズボアを先細りのテーパー付きにしたというようなことでしょうか)

シリンダー内のチャンバーと、フレームに固定されたバレルとは分離している。チャンバーとバレルのボアとの同心度を保持することは、リボルバー一般においては特に重要なことである。このため設計、研究開発中、できる限り加工精度が高められた。例えばバレル内ライフリング谷部の直径の公差は、普通の製品が0.05mmのところ0.03mmまで高められた。特にシリンダーが射撃位置に正しく位置することに関係する部品(フレーム、シリンダー、シリンダー支架等を含む 頑住吉注:最後のはたぶんクレーン、ヨークなどと呼ばれる部品でしょう)の形状、位置上の公差は非常に厳格に管理された。射弾の高い散布精度を確保するためである。

2種類の弾頭がいずれも安定して飛行するという条件下で、さらに3種のライフリングピッチで散布精度性能上の最適化がすすめられ、最も良いピッチは229mmとなった。

その他の構造上の寸法の確定に関しては、シリンダー前端面とバレル後端面の間の間隙は0.05〜0.15mmの間にコントロールされ、一方では噴火(噴煙)を減少し、他の一方では射撃精度の向上に有利とした。

多方面における技術的重要問題への取り組みを経て、この武器系統の散布精度は現在装備されている自動拳銃系統より優れたものになった。

9mm警察用リボルバー系統 発射薬に関する技術的重要問題とそれへの取り組み

9mm警察用リボルバーの発射する銃弾に要求される初速は低く、エネルギーは小さい(いずれも軍用拳銃と比較して)。当然のこととして弾薬の持つ装薬量が少なく、装填密度が低く、チャンバー内圧力が低いという特徴を持つべきである。だがこれらの特徴は、火薬の完全燃焼にとって極めて不利である。特に低温の射撃条件下では、射撃の信頼性に問題が生じる、内外弾道にばらつきが出る、射撃精度が下降するなどの弊害が次々に生じる可能性がある。

このため、課題に取り組んだグループは、アジドニトラミン発射薬を用いることを選択した。この発射薬は燃焼速度が比較的速く、低温での燃焼性が良く、圧力が燃焼に与える影響が小さく、この武器系統に非常に適した発射薬である。

この武器系統の特徴に照らして、課題に取り組んだグループは火薬粒の寸法、形状に改善を加え、安定し、信頼性が高く、燃焼が一定であるという要求を達成した。同時に火薬粒の表面にグラファイト成分を増やし、グラファイトの量にも最適化を加えた。このため火薬粒が弾薬内に充填された際に固まりにくくし、しかも顕著な煙(燃えカス)を発するようなことにもならなくした。このため全系統の性能も向上した。


 原ページの最初の画像は研究開発過程における一方案となっています。フレーム上部のブリッジ部がピカティニーレール状になっています。量産型ではなくなっているので不必要と判断されたんでしょう。まあこの銃にダットサイトやピストルスコープを装着して使用するという場面はあまり考えられません。

 2番目の画像は量産型と思われます。シルバーのモデルは生産されているのかどうか触れられておらず、不明です。

 表を飛ばして3番目の画像はメンテナンス用キットです。

 全体に、非常に詳しく「どうしてこうなったか」を説明しているんですが、ロシアがおそらくゴム弾の有効性を高めるために大口径を選択したのに対し、何故この銃の口径が9mmになったのかに関する説明が全くないのは少々不満です。









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