2.11.5 ダブルアクションシステム

 ダブルアクションピストルの射撃準備性、安全性に関する長所は、さまざまな良い解決策が開発されるという結果を導いた。たいていの構造は、初弾の発射のためトリガーへの圧力によってコック、レットオフされ得る外装ハンマーを持つ。その後はハンマーが他のセルフローディングピストル同様後退した閉鎖機構によってコックされ、その後トリガーへの軽い圧力によって改めて発射できる。だが一方ダブルアクション射撃の際はトリガー抵抗が決定的により大きくなり、またトリガーストロークがずっと長くなる。ハンマースプリングを圧縮しなければならないからである。一部の銃ではハンマーは発射後、コックされた位置に保持されない。つまり射手は全ての射撃で射撃技術的に非常に不都合な、長くそして重いダブルアクションストロークを引くことを強いられる。集中的なトレーニングによって人はダブルアクションオンリー銃を使った正確な射撃を習得することも可能だが、その結果はノーマルな銃を使ってより少ない労力で達成され得る水準には決して到達しない。

2.11.5.1 ハンマーに関節結合された「連れて行くバー」を持つダブルアクション銃

 図2.11.16では「リトル トム」ピストル(チェコ人Alois Tomischkaによる設計)のダブルアクションメカニズムの本質が表現されている。ハンマー(2)およびトリガー(3)はフレーム(1)内に回転可能に収納されている。ハンマーには「連れて行くバー」(ハンマーバー)(4)が1本の回転軸によって関節結合されている。「連れて行くバー」は3つの相前後して位置するレストを備えている。後ろのレストはコックレストである。コックレストは後部でフレームに固定されたレスト(5)をつかむ。レットオフ時ハンマーバーはトリガーにスプリングのテンションをかけて関節結合されているレバー(6)(中央レストの下部を押す)によってレスト(5)から解除される。この結果ハンマーは解放される(a)。デコックされた状態ではトリガー上部のカムがハンマーバーの前の(ダブルアクション)レストをつかんでいる。トリガーを後方に引くとハンマーはいっぱいに起こされる。これはダブルアクションレストがレスト(5)とハンマーバーの傾斜した互いに滑る面によってトリガーカムからかみ合いを外されるまでである。これによりハンマーはハンマーバーごと解放される(b)。ディスコネクターの機能も持つレバー(6)を除き、このシステムは1834年にパテント取得されたイーサン アレンによるダブルアクションシステムと一致する。この構造の欠点は長いハンマーバーにある。これはフレームの削り加工部内で誘導され、ハンマー同様ハンマースプリングによって加速される必要がある。長い誘導部の汚れ、あるいは大きすぎる粘性を持つ潤滑剤によってこのバーの抵抗が大きく上昇し、この結果ハンマーの打撃エネルギーが弱まる可能性がある。

 


 この本は1980年代に書かれたものであり、当時アンティーク等ではなく普通に流通していたダブルアクションオンリーのオートピストルはH&KのVP70くらいだったんではないでしょうか。ダブルアクションオンリーが見直されるのはずっと後のことで、この筆者もかなり否定的です。

 初のDA/SAピストルとされる「リトル トム」に関しては「知識の断片2」内「Faustfeuerwaffen」の「ダブルアクションセルフローディングピストルの発達」ですでに取り上げ、図も紹介したので今回は小さくしておきます。文中では説明がありませんが図から分かるようにハンマーバーには板バネで下降するようにテンションがかけられています。またオリジナルの図で番号が欠けていたもんで私も入れ忘れちゃいましたが、黄色い部品が6のレバーです。まずDAですが、bの状態からトリガーを引くと、トリガー上部のフック状部分がハンマーバー前下部のフック状部分をひっかけて前進させ、ハンマーが起きていきます。一定以上引くとハンマーバー下部の傾斜がレスト(5)の傾斜に乗り上げることによってハンマーバー前部が上昇し、トリガーとハンマーのかみ合いが外れてレットオフします。SAではハンマーをコックするとハンマーバーが前進し、aのようにハンマーバー下部の段差が5のレスト上端にひっかかることによってハンマーがコック状態で停止します。なお、以前も書きましたが、このとき通常のDAシステムのようにトリガーを後退させる仕組みはこの図からは読み取れません。「Waffen Revue」にこの銃に関する詳細な記事があるので、いずれこれを読んでこの疑問を解明したいと思います。aの状態からトリガーを引くと、6のレバーがハンマーレバー前下部を押し上げることによってハンマーレバーが5のレストから外れ、レットオフします。なお、ディスコネクトの仕組みは6がその機能を担うという以外の説明がありません。ただ、6のレバーにはスプリングのテンションがかけられ、やや時計方向に回転可能となっているところから、いったん後退したハンマーバーが再び前進してきた際に6のレバーを前に押し倒すことによってハンマーコックが可能となり、トリガーを緩めるとパチンとaの状態に戻る、と見ていいでしょう。

 このシステムの欠点としてハンマーレバーの抵抗上昇による不発の可能性が指摘されていますが、他にもフレーム側面広範囲に削り加工を行うのは面倒で時間やコストがかかる、ハンマーに付属したハンマーレバーが一緒に動くためロックタイムが長くなりやすいといった問題点も考えられます。ガバメントをDA化したシーキャンプやセマーリン手動連発ピストルなどはフレーム側面に設けた削り加工部内でDAのためのバーが動くやや似た形式ですが、ハンマーに長いバーを連動させるシステムを真似した一定以上有名なピストルは存在しないと思います。






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