RS全目的弾

「Visier」2004年10月号に、興味深い新製品の弾丸に関する速報が掲載されていました。


Kieferle,Gottmadingen(頑住吉注:前の単語はメーカーの名前、後の単語は所在地です):新しい万能弾
「ロング、ショートアーム用完全鉛フリー」

 これはHegau所在の会社の、スタンダードに.22〜.500口径までの全ての口径で供給可能な「RS全目的弾」を描写したものである。Kieferleはある新しい、ハンティング、スポーツ目的に考えられパテントを取得した、多種多様な性質を持つ弾丸を発表した。最も重要なポイント。「RS全目的弾」は完全に鉛なしで間に合わせている。そのさらなる性質。プレス向け情報によれば、この弾丸は2チャンバー弾(ダブルコア弾、CDP)のようにセミジャケット弾としてふるまうが、必要な致死的ショック効果を伝達するため破片も放出する。魅力のポイント。「この弾丸は命中点の位置を変えずにフルメタルジャケット弾に変更することもできる。これは使用者が弾丸のホローポイントに丸い頭を持つST37(頑住吉注:鉄の材質を示すと思われます)製金属ピンを差し込むことによって達成される。これにより変形が防がれる。すでにロードされた弾薬でも事後にピンを差し込むことができる」(頑住吉注:この場合のロードは弾薬を銃に装填することではなく弾丸を薬莢にセットすることを指すようです。ただまあリボルバーならシリンダーに装填した後ピンを差し込むことも可能でしょう)。
 その上この新しい弾丸にはさらなる長所があるという。シャープなエッジが真ん丸な射入口を引き起こす体毛の切断をもたらし、このことは真ん丸な射入口を作ること、ターゲットにワッドカッター弾のようなスタイルの弾痕を作ることに役立つという。メーカーによれば、部分破片弾として使用が意図される時(頑住吉注:ピンを差し込んでいない時)、新しい弾丸はホローポイントを備えた前部が砕けた後、なお少なくとも85%の残り重量を保持する。そして壊れた角度とシャープなエッジのおかげでこの弾丸はほとんど常に射出口を形成するという。メーカーはハンティングにおけるその効果をこのように描写する。「獣の肉の破壊は最小であるが、ショック効果は非常に高い。特別にハードな獲物に該当するアフリカの獣でさえたいてい音とともに死ぬ。」 2つの異なる角度を持つ先端形状は非常に好都合な外部(頑住吉注:銃身を出てからターゲット突入までの飛行中)弾道学的特性を引き起こすよう意図されている。任意の数の「負担軽減くびれ」(誘導リング)が高い弾速を作り出し、そしてバレルをいたわる。Kieferleによればこのため「RS全目的弾」は古いライフルにも適する。Kieferleは命中精度に関してこのように述べる。「.460ウェザビーマグナムによるグルーピングは100mで19mmという結果になった!(弾丸直径は11.6mm) 博士H.Kalchreuter教授は8x68Sを使い、100mから5発でグルーピング10mmという射撃を行った!(頑住吉注:原文では「グルーピング」にあたる語に括弧がついています。これはドイツ語では直訳すれば「散布円」というような言葉であり、「これはもはや散布とはいえない」といったニュアンスですがこういうのは翻訳不能ですね)」 その上この弾丸はリロードの際、弾丸底部の「挿入直径」のおかげで特別な「セット母型」なしで薬莢内に正確にポジショニングされうる(頑住吉注:私はリロードに関する知識が乏しいのでよく分からないんですが、たぶん弾丸が尾部のすぼまった形でなく後端まで太い形なので薬莢に押し込んだとき曲がったりしないということではないかと思います)。


 添えられている写真を以前見たことがあると思い、探したら2004年8月号の「スイス銃器マガジン」ページ内「マーケットインフォメーション」コーナーにも速報が掲載されていました。かなり重複部分が多いですがこちらの内容も示します。


RS全目的弾
 将来ハンティング、スポーツ弾薬は鉛フリー弾丸つきになる。例えばフィンランドでは来年鉛を含むライフル弾が禁止される。
 Kieferle社は新しい、多様なパテントを得た弾丸を発表した。この弾丸は「2チャンバー弾」のようにセミジャケット弾としてふるまうが、必要な致死的ショック効果のための破片も放出する。
 同時にこの弾丸は命中点の位置を変えずにフルメタルジャケット弾に変えることができる。これは使用者が弾丸のホローポイントに丸い頭を持つST37製金属ピンを押し込むことによって達成される。これにより変形が防がれる。すでにロードされた弾丸でも事後にピンを差し込むことができる。
 この弾丸はシャープなエッジを持ち、これが体毛カットおよび出血をもたらす。まん丸な射入口は再び閉じない。使用者はターゲットにワッドカッター弾を使った際のようなまん丸な穴を手に入れる。2つの異なる角度を持つ先端形状は非常に好都合な外部弾道学的性質を持つ。
 多数の任意の「負担軽減くびれ」によって弾丸は例えばイギリス製のダブルライフルのような古いライフルにも使用できる。「負担軽減くびれ」(誘導リング)は弾丸のバレル通過の際、押しのけられたマテリアルをフリー位置に流し込むことができる役割を果す。これによりバレルはより小さい負荷を受ける。
 使用者は最初の「負担軽減くびれ」をクリンプミゾとして使う。というのはライフリングの山部の内径が最初の「負担軽減くびれ」の前の「Absatz」で始まるからである(頑住吉注:「Absatz」には「ヒール」、「踊り場」などの意味がありますが意味不明です)。この弾丸は砲弾のようにその全長にわたってではなく、これら誘導リングのみで誘導される。これによりバレル内に決定的に小さな摩擦抵抗が生じる。その結果使用者はかなり低いガス圧で高い速度を得る。つまり、RS弾は通常の弾丸より等しい装薬で決定的にバレルおよび閉鎖機構にやさしい。
 この弾丸は.22から.500までの全てのポピュラーな口径で入手可能である。特別口径は200発の購入から可能である。このためには正確なライフリングの山部、谷部の申告が必要である。
 全目的弾という名称は、ハンティングおよびマッチガン、およびショートおよびロングアームに等しく良好に適するということを意味する。このことは獣やターゲットを使った多くのテストシリーズで証明済みである。獣の肉の破壊は最小限であるが、ショック効果は非常に高い。特別にハードな獲物に該当するアフリカの獣でさえたいてい音とともに死ぬ。


メーカーの公式サイトはここです。

http://www.kieferle.com/

「Katalog」→「RS」と進むとこの弾丸の紹介ページが表示され、画像や断面図も見られます。

 この弾丸は以前紹介した狩猟用特殊弾「インパラ」に良く似ています。材質は書いていませんが色からしておそらく「インパラ」同様真鍮に近い合金でしょう。ただし「インパラ」は3%のみ鉛を含んでいましたが、このRSは完全鉛フリーということです。この理由は環境対策上鉛を含むハンティング弾に対する風当たりが強くなっているという事情があるようです。芯まで硬い材質のため何本かの「誘導リング」のみバレル内に接する点も「インパラ」に似ていますが、接する長さはこのRSの方がずっと短いようです。このためバレルとの摩擦抵抗が小さく、鉛を含まないため軽量であることとも合わせて高速になり、しかもバレル内の圧力が上がり過ぎないということです。
 「インパラ」は全く変形しないという特殊な弾丸でしたが、このRSは基本的にはホローポイント弾です。ちなみに「2チャンバー弾」というのは、「DWJによるホローポイント弾テスト その1」の項目で登場したウィンチェスターPartition Goldのような弾丸です。弾丸のコアが前後2つに分かれて隔壁があり、前のコアは柔らかく、後のコアは固くなっていて、命中すると前部は大きく変形するものの後部はそのまま貫通し、大きなエネルギー伝達と「深部効果」を両立させるというものです。RSの場合コアというのはないわけですが、ホローポイントのある前部が命中によって砕けて飛び散ることによって大きなエネルギーを伝達し、鋭利な断面を持つ残りの大部分は深く貫通する、この性質が「2チャンバー弾」にやや似ているということです。そして説明が前後しますがこの弾丸は材質が硬く、ホローポイントの周囲が鋭いエッジになっているので獲物の体毛をすっぱり切断し、これが体毛がクッションになることによるパワーロスを防ぎます。そして皮にポンチで打ち抜いたような丸い穴を開け、この穴は通過後にも閉じないので出血が多くなるわけです。しかもホローポイントにピンを差し込んで発射するとフルメタルジャケットのような、というか弾丸が芯まで硬くピンは鉄製ですから通常のフルメタルジャケットより大きな貫通力を発揮するはずです。この場合の性質は「インパラ」に非常に近いと思われます。弾丸が軽量のためリコイルが小さい、命中精度が高いなどの性質も「インパラ」同様です。
 ホローポイントに異物が入ってフルメタルジャケットのように貫通してしまう問題はこれまで何度か触れましたが、これを逆手に取ったアイデアは全く思いつきませんでした。私だけでなくひょっとしたらここを読んでいる皆さんにもこうしたアイデアを思いついてパテントを取り、大儲けするチャンスがあったかもしれないわけですよ。これからは緊張感を持って読みましょうね(笑)。










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