ロシアの戦略ミサイル列車が復活

 技術的には確かに原潜からの発射に比べればずっと簡単そうに思えますが。

http://war.163.com/16/0623/08/BQ7VCLPR00014OMD.html


ロシア、死のミサイル列車の生産を回復へ 威力は原潜と比較できる (頑住吉注:まあこの場合問題になるのは威力よりも生存確率でしょうけど。)

「ロシア報」の情報によれば、ロシア戦略ロケット部隊司令のセルゲイ カラカイェフは先日、ロシアは「Barguzin」軍用鉄道ミサイルシステムの生産を回復することになる、と言明した。グレードアップ後のロシア新型鉄道ミサイルシステムは6発のRS-26「境界」ミサイルを搭載し、ロシア国内の非常に長い鉄道網の上で機動発射でき、2020年に戦闘当番を開始する計画である。

最近、アメリカは一段と力を入れてヨーロッパにミサイル防衛システムを配備している。これに対し、ロシア大統領プーチンは明確に次のように表明している。「ロシアはいかなるミサイル防衛システムも突破できる攻撃性武器を開発する。」 アメリカのヨーロッパにおけるミサイル防衛システム配備に対する直接の回答として、ロシアは「Barguzin」軍用鉄道ミサイルシステムを再建する。これは陸上基地機動核打撃の実力を向上させ、ロシアの戦略威嚇力量を維持する重要な手段である。

「死の列車」が戦争の前線に向かう

鉄道は誕生の日からもう遠距離の兵力、装備の輸送などの国防領域で重要な作用を発揮した。1937年には早くも、ドイツはもうV-2ミサイルを鉄道列車発射に用いる技術方案を提出した。1960年代初め、アメリカは世界初の鉄道ミサイルシステムを建造した。だがミサイル列車は相対的に製造コストが高く、またアメリカの鉄道網が相対的に簡単だったため、鉄道ミサイルシステムは最終的に大きく発展する空間を失った。

1985年、アメリカは一度MXミサイルをミサイル列車システムに改装することを計画したが、この時米軍の潜水艦発射の迅速な発展が、再度この計画を暗礁に乗り上げさせた。歴史上真にこの「終わりの日の殺人者」を戦争準備の第一線に押し出したのはソ連の軍用鉄道ミサイルシステムである。

20年あまりの研究開発を経て、1982年にソ連は成功裏に初の鉄道ミサイルシステムの発射試験を行った。1987年、ミサイル列車システムは正式に部隊装備された。2005年にミサイル列車が完全に解体される前、ロシア戦略ロケット部隊は全部で4個師団を有し12組の鉄道ミサイルシステムを装備していた。ロシアの軍用鉄道ミサイルシステムは牽引する先頭車両、指揮通信システム、発射システムなどを包括し、それぞれの車両は3発のSS-24「メス」大陸間弾道ミサイルを装備した。このミサイルの最大射程は1万kmで、10発の分離弾頭が搭載でき、その非常に大きな威力ゆえに、このミサイルを装備する列車は「死の列車」とも呼ばれた。

1990年代初め、ソ連とイギリスが一連の協定を締結したため、ミサイル列車は防衛区域内に駐在するよう制限され離れてはならないことになった。ソ連解体後、ロシアの軍事費は一度やりくりが苦しくなった。この機会を利用し、アメリカは機に乗じこの「目の上のたんこぶ」を除去した。アメリカの圧力の下、ロシアは「戦略兵器をさらに一歩削減する条約」に署名し、2003年からはもはや多弾頭大陸間弾道ミサイルを生産および配備せず、かつて一時は輝かしかった鉄道ミサイルシステムも最終的に解体される運命から逃れ難かった。

興味深いのは、世界トップの軍事強国であるアメリカはそれにもかかわらず鉄道ミサイルシステムを真に放棄したことが全くないことである。2013年、アメリカ空軍はかつて「軌道ミサイル」概念を提出し、これは無人操縦の地下鉄列車を利用してミサイルを搭載運搬し、膨大な地下鉄トンネルネットワーク内を頻繁に往来させるというもので、「死の列車」がもう1度戦争の表舞台へと向かうことを事前に示しているようだった。

鉄道機動、再度戦略威嚇の重任を担う

近年来、ロシアと西側世界の関係が持続的に緊張するのにつれ、戦略威嚇力量である「核の棍棒」がロシアによって改めて見せつけられた。戦略核ミサイルは異なる発射プラットフォームから発射が行えるが、このうち専用の列車の上に装備し、鉄道に沿って機動させて発射するのが鉄道ミサイルシステムである。

ロシア軍の現有の陸上基地戦略ミサイルは主にサイロ式発射と道路機動の2種の類型である。鉄道発射システムには研究開発、維持保護、更新の費用が高いなどの問題が存在し、戦時には鉄道、橋梁、トンネルは敵サイドの破壊の重点であり、ミサイル列車の機動範囲は制限を受けるが、それは機動速度が速い、隠蔽性が強いなどの優勢を持ち、依然ロシアが再度「Barguzin」鉄道ミサイルシステムを研究開発し、かつロシアがアメリカの核ミサイル力量とバランスを取るまた1つの重要な天秤の分銅とすることを吸引した。

鉄道ミサイルシステムはかつて一度ソ連がアメリカの核の脅威を打破し、敵を破り防御を突破する大国の利剣となった。2012年末から、ロシアはもうすでに大規模な鉄道機動ミサイルシステムの研究開発を再始動させた。ロシアのニューバージョンの軍用鉄道はRS-26「境界」多弾頭ミサイルを採用し、以前の鉄道ミサイルシステムに比べ重量がより軽く、もはや3台の機関車で牽引を行う必要はなく、その機動の敏捷性や偵察に対抗する能力はいずれも比較的大きな向上を得、打撃範囲がより広い。

鉄道ミサイルシステムの機動速度は時速100〜200kmに達し得、1回の機動で2,000km移動でき、敏捷な機動性能を持つ。同時に、鉄道輸送プラットフォームの平穏性は良く、必要とされる編成人員が比較的少なく、発射陣地の装備時間が比較的短く、ミサイルの生存確率を大幅に高めることができる。その他の発射プラットフォームに比べ、ミサイル列車は全天候当番が実現でき、4〜6発の弾道ミサイルの発射システムを搭載し、その攻撃の実力は1隻の潜水艦との比較に堪え、過小評価を許さない。

大国復興の「切り札」となる

現在、ロシアはすでに充分に軍用鉄道ミサイルシステムの製造技術を掌握済みで、鉄道機動の大陸間弾道ミサイル発射が実現できる。「Barguzin」鉄道ミサイルシステムは鉄道網があまねく分布するロシア国内の任意の位置で発射し、かつ巧妙に対ミサイル衛星の監視を避けることができる。

ロシアの全国の鉄道総全長は12万kmを超えて世界第3位に位置する(頑住吉注:ちなみに1位はアメリカ、2位は最近ロシアを抜いた中国ということのようです)。非常に長い鉄道ラインは陸上基地弾道ミサイルのために広大な発射空間を提供しており、同時に全発射システムの隠蔽、対偵察にもより有利である。アメリカは研究を経て、反応速度が速く、機動性能が良い単一グループのミサイル列車を破壊したければ、少なくとも150発の弾道ミサイルを使用する必要があり、かつ成功率は比較的低いことに気付いた。ミサイル列車に対し追跡監視を実施したければ、さらに数百の偵察衛星の仔細な振るい分けを必要とする。

「Barguzin」鉄道ミサイルシステムは現有の貨物運搬列車の寸法を採用し、超大型の荷台を建造する必要はなく、敵の偵察や監視を有効に排除できる。また、新型ミサイル列車はもはや専門の発射準備および高圧接触網からの離脱などの操作を必要とせず、発射過程がより素早い。ロシア軍は全部で5個「Barguzin」戦略ミサイル連隊の建設を計画し、それぞれのミサイル連隊には6発のミサイルが配属される。2018年までにロシアは「Barguzin」鉄道機動ミサイルシステムの研究開発作業を完成させ、ニューバージョンのミサイル列車システムは少なくとも2040年まで就役することになると見られる。

ひとたびロシアのニューバージョン「Barguzin」ミサイル列車が現役に投入されれば、TNT換算3,600万トンの移動可能で全天候の核兵器発射システムを掌握することになり、ロシアの大国復興の「切り札」となる。

閲読の延伸

袋叩きの下での戦略的選択


5月12日、アメリカがヨーロッパに配備する初の「イージス」ミサイル防衛基地がルーマニアで使用に投入され、すぐ続いてポーランド北部のルイスカワードに位置するミサイル防衛基地に着工された。現在アメリカが配備するミサイル防衛システムは、迎撃ミサイルが発射できるだけでなく、さらに直接ロシア方向に対し遠距離巡航ミサイルが発射でき、ロシアの戦略核力量の抑止ポテンシャルを有効に削減し、ロシアの国家の安全に対し非常に大きな脅威を構成している。

冷戦終結以来、NATOは持続して東方に拡張し、アメリカは持続してロシアの戦略空間を圧縮している。アメリカの気迫に満ちて人に迫る戦略的態勢に対し、ロシアはミサイル列車の生産と戦備当番を回復する決定をしたが、これは止むを得ずなした戦略的選択である。

米ロ双方の戦略性進攻武器の削減に関する関連の条約は、決して両国間の相互信頼を増進していない。アメリカはまさに各種の手段を通じて先手必勝の実力向上、ロシアの戦略核威嚇能力や核反撃能力の削減を図っている。2020年までに、ヨーロッパのミサイル防衛システムは改良型「スタンダード」-3対ミサイル迎撃弾を配備し、ロシアの戦略ミサイル迎撃の実力を持つことができる。このため、ロシア国内は普遍的に、ミサイル列車の再建はヨーロッパのミサイル防衛システムに対抗する有効な手段と考えられている。

鉄道機動ミサイル発射を完全掌握する国であるロシアがミサイル列車の研究開発を再始動させることは、その陸上基地システムのアメリカ戦略ミサイルに対する技術的優勢を回復させ、アメリカに対し照準を合わせた性質の威嚇を形成することになる。現在ロシアの陸上基地、海上基地弾道ミサイルの数の補充は不足し、核武器庫の老化問題は深刻である。鉄道ミサイル発射システムの回復により、より大きな範囲内で核力量の機動発射を実現することは、ロシアの戦略核威嚇の実力を向上させる重要な方式である。

アメリカ国務省の公式なデータに照らせば、今年4月1日までに、ロシアが装備する戦略ミサイルの数は521発で、「戦略進攻性武器削減条約」の中に規定される、700発のすでに配備されたミサイルおよび100発の予備ミサイルという上限を決して超えていない。この条約は甚だしきに至ってはロシア軍が新型鉄道機動大陸間弾道ミサイルシステムを開発することを明確に制限していない。このため、ロシアの軍用鉄道ミサイルシステムには依然比較的大きな発展の余地がある。

(作者の機関:国防大学国際問題研究センター)


 例えば北朝鮮のような比較的小さな国なら鉄道を使って戦略ミサイルが移動しても捕捉可能かもしれませんが、ロシアのような大きな国では当然ずっと困難になり、中国でも同じことが言えるでしょう。冷戦が終結して世界規模の核戦争が起きる可能性は非常に低くなりましたが、ここに来て再び高まる気配が見られ嫌な感じです。

















戻るボタン