ドイツ軍が採用したバレット:G82

 「Visier」2004年12月号に、ドイツ軍が将来計画「未来の歩兵」プログラムとともに導入したバレットに関する記事が掲載されていました。


Ein langes Ende(頑住吉注:「ein」は英語の「a」、「langes」は「long」、「Ende」は「end」です。全く簡単なはずなんですが、この場合内容と照らして何が言いたいのかさっぱり分かりません)

G82はドイツ連邦国防軍の歩兵用銃器の間隙を埋めるだけではなく、軍における変革のシンボルである。

「それでリコイルはどうなの?」 これは素人がドイツ連邦国防軍の新しいG82に反応しての、最も多い質問である。ちょうど華奢な5.56mm口径弾薬とG36に甘やかされた若い新兵が「大射程ライフル」を撃つために恐る恐る近づいた時にこんな質問が出る。特に巨大なマズルブレーキからの後方へのガス圧はギャラリーに強い印象を与える。だが初めて撃った人はむしろ驚く。そのリコイルは12ゲージショットガンでスラッグ弾を撃った場合とほぼ同じである。小口径ライフル射撃のようではないが、同時に例えば第一次大戦当時のモーゼル対戦車ライフルほど肩にきつくはない。全く不快というわけではないが、クサビ型のマズルブレーキによって後方に導かれたガス圧が射手の位置や周囲に顕著であるため慣れが必須である。砂や塵が舞い上がり、草の茎や葉、あるいは芝があたり一面で吹き飛ばされる。このためG82(国際的にはバレットM82としてより良く知られている)はある種の方法で撃つ側、撃たれる側以外の人にも畏敬の念を抱かせる。この銃はマシンガン用弾薬.50ブローニングを撃ち、しかもセミオートでである。この銃はマガジン内に10発の弾薬を持ち、熟練した射手なら2秒以内に4発を1000m先のターゲットに命中させることも不可能ではない。

 そのような速射は軽戦闘車両をストップし、防空ミサイル陣地のレーダー設備を高価なスクラップの山にすっかり変え、ヘリコプターを破壊し、室内戦闘で鋼鉄のドアをぶち破ることもできる。.50口径スナイパーライフルがアングロアメリカにおいて一般的な用語法として「アンチマテリアルライフル」に分類されているのは故なきことではない。.50口径弾薬の、指ほどの長さの、約50gの弾丸は、特に重い器具からの発射にふさわしい。1人のみで携帯、操作できる銃器システムの領域内において、バレットは極端に長射程で精度が高い。だが同様に、コストパフォーマンスが高く(頑住吉注:例えば誘導兵器に比べれば比較にならないほど安価ということです)、モダンな歩兵の外科的に特殊化された使用可能な戦術的手段であり(頑住吉注:この場合の「外科的」の意味は不明です)、そうしたものは求められていた。ドイツ連邦国防軍はこの夏この銃を制式採用したが、NATO同盟軍と比べて時間的に、そして実戦投入経験で大きく遅れをとることになった。イギリスおよびアメリカは、バレットM82A1をすでに1991年の最初の湾岸戦争に投入していた。いくつかの特殊部隊はこのセミオート銃をすでに1980年代半ばからテストしていた。この銃はいろいろな紛争シチュエーション内で、スナイパーライフルとして全ての予測を越えて真価を示してきた。そして2003年のイラク戦争では、アメリカ部隊によって「都市戦闘において最もマルチに使用可能な装備」として称賛された。

 しかしドイツ連邦国防軍はG82をスナイパーライフルそのものとして採用したのではない。一方バレットは目下イラクおよびアフガニスタンにおいて、アメリカ海兵隊、陸軍、あるいはイギリス海兵隊のスナイパーチームによって使用されている。ドイツでは「未来の歩兵」コンセプトに基づく、各歩兵分隊内武装のオプショナルな構成要素である「大射程ライフル」と意図されている。投入シチュエーション次第で、指揮官はこの銃を、例えば対戦車兵器、対トーチカ兵器の代わりに使用することができる。その背後には現在の、あるいは予期される未来の紛争シナリオ内における、歩兵の役割に関する原理的に新しい理解がある。

新時代の予兆
 というのは、こうした銃が今こうした方法でドイツ軍にも登場した理由は、ドイツ再統一以後の歩兵組織に、戦術的思想におけるほとんど革命的変革が起こったことと関係しているだけでなく、部隊に政治的要求がなされたからでもある。何十年もの間、スナイパーとスナイパーライフルはドイツ連邦国防軍において、むしろ逆境にあった。冷戦がヒートアップした時代、歩兵の主要な注目点はワルシャワパクトドクトリンに基いてエルベ川を越え、「フルダ-ギャップ」を通ってなだれ込んでくる敵戦車の大群からの防衛に置かれていた。しかし1989年11月の事件(頑住吉注:ベルリンの壁崩壊)は全てに終止符を打った。そのとき新しいドイツ連邦共和国は東西紛争の接点である代わりに、UNおよびEUにおける国家共同体の完全な価値を持つ(頑住吉注:旧敵国としての制限がない、ということでしょう)成員としてより大きな責任と義務をも引き受けた。このことは、ドイツ連邦国防軍部隊がただちにバルカン、「アフリカの角」、アフガニスタンにおける仲裁および平和確立ミッションに組み込まれたことに現れている。しかし、その時点まで武装面でも組織面でも、ドイツ連邦国防軍は特に国の防衛のために訓練された兵役義務者の軍隊というにふさわしい存在だった。このため1990年代半ば、特に陸軍において徹底的な変革が行われた。そこでNATO同盟の枠組み内における国家防衛から、インターナショナルに投入可能な危機対応戦力への劇的な転換がもたらされた。大いなる高揚をもって促進された「未来の歩兵」プログラムもまたこのことを象徴的に表している。だからG82もまた1つの、そして小さくないこのプロセスの構成要素なのである。

間隙を埋める
 こうした陸軍の近代化は、すでに何年も前に始まっていた。7.62mmx51仕様のG3に代わるNATO口径5.56mmx45仕様G36の最も長く時期を逸した採用によってである(頑住吉注:当たり前かもしれませんがドイツ人にも「あまりに遅かった」という自覚はあるんですね)。現在「未来の歩兵」コンセプトの枠組みの中で部隊に起きている広範囲にわたる変革には、分隊および小隊の最重要マシンガンとしてのMG3の退却も含まれる。H&Kの5.56mmx45仕様MG4がその位置に進出し、しかも1分隊につき2倍でである。より重い7.62mm口径のMG3は完全に陸軍の武装から消えたわけではないが、第一には車載および地上銃架からの支援用銃器に削減された。しかしこれにより500m以遠の強大なターゲットに対する射撃のための効果的手段が欠けることになった(頑住吉注:一般的な認識とは異り、7.62mmx51と5.56mmx45の間に遠距離における命中性能には大差はありませんが、軽い5.56mm弾は空気抵抗で減速するのが早いため、特に車両などに対する射撃効力が不足するということです)。というのは、5.56mm口径の4gの弾丸の運動エネルギーに望まれるものは、第一に軽量なMG4からのフルオートによる散布を増大させることだからである。ドイツ連邦国防軍よりずっと早く5.56mm口径のアサルトライフルおよび軽機関銃への転換を行った他の軍隊は、すでに何十年も前からこうした欠損が分かっていた(頑住吉注:「欠損」、「不足」、「赤字額」などを意味するこの単語は「Manko」です。これもそうですがドイツ語は基本的にほぼローマ字通り発音します。←だからどうした)。彼らは7.62mm口径の機関銃を使い続けることか、あるいは車載、地上銃架に乗せた支援火器としての.50ブローニング重機関銃のカムバックによって間に合わせた。使用シナリオが前線を持ち、そして従来型の軍隊によって行われるコンベンショナルな戦争の枠内である限り、そのような高い破壊ポテンシャルを持つマシンガンの使用も反論されなかった。2001年春と2003年5月における両イラク戦争だけは、むしろこのルールの例外を形成したが、過去20年における西側軍隊が関わった他の全ての紛争は、火力による力押しを許さなかった。すなわち、レバノン(1983〜84)、ソマリア、バルカン、アフガニスタン、進駐後のイラクにおける多国家による平和のための軍事投入において、兵士たちは常にゲリラ方式で作戦行動する不規則的な敵に直面した。敵はその地方の住民をカモフラージュ、あるいは盾として使い、一方軍はその安全と平和を作るという使命に基づき、兵器による暴力の使用において狭い限界を設定した。例を挙げる。コソボ、あるいはカブールで、ストリートの検問所において、突破した、または逃走する車両へのMG3からの長時間のフルオート射撃、あるいはパンツァーファウスト射撃は、車両をストップする全くもって効果的な手段であるかもしれない。しかしいわゆるコラテラルダメージ(頑住吉注:同じサイドの人間を傷つけること)、特に無関係の人を危険にさらすことは政治的に受け入れられないのである。

 バレットからの狙いを定めたエンジンへの単発射撃は、これと全く異る、そしてはるかに適切な介入行為のクオリティを提供する。

対戦車ライフルの復帰
 すでに第二次大戦中、大口径対戦車ライフルは絶え間なくより厚くなる戦車の装甲により、不合理を論証されていた。全ての陸軍は終戦頃にはロケット推進の成型炸薬弾に切り替えた(頑住吉注:「全ての」ということはないでしょう。主要参戦国でも日本はとうとう実戦配備できませんでしたし、ソ連もこの頃こうした国産兵器を持っていたという話を聞きません)。同時に、常に高速化し、そしてより高い高度から攻撃するようになった戦闘爆撃機は、.50BMGの対空火器弾薬としての重要性を減らした。アメリカにおける一握りの熱狂者だけが1960年代以後においてもまだ、イギリスのBoysやドイツのパンツァービュクゼ39のような退役させられた対戦車ライフルと長距離弾薬としての12.7mmx99の可能性に興味を示した。少数の革新的なライフルメーカーはこうしたものを使い、アメリカ南西部の広大な土地でこうした命中精度の高いシングルショット銃のスポーツライクな分野におけるテストを行おうとした。

 1970年代になって初めて、ハイジャックおよび人質事件の波がこの重量弾薬のための戦術的使用領域を再びもたらした。.50口径弾薬は旅客機の厚いコックピット窓やその他の遮蔽物のような障害物をも貫通することができた。

 特殊部隊は徐々に、たいていは単発銃として作られたロングレンジライフルに興味を持ち始めた。これはテネシー州Murfreesboro出身の警察官Ronnie Barrettにとってチャンスだった。彼は大口径支持者の群に属し、カスタムメイドの.50口径ライフルとハンドロード弾薬の実験を行っていた。だが、日々使用するそのリコイルは依然として不利なものだった。42〜52gの間の弾丸重量、そして900m/s近くにまでなる初速では、自重がたいてい20〜25ポンド(頑住吉注:約9〜11kg)という重いライフルにおいてさえ、射手の肩にかかるリコイルが和らげられない可能性があった。オプティカルサイトも荒っぽい発射エネルギーを受けて、長い間には非常に悪いことになった。マウントやレティクルは絶えず緩んだ。

 バレットは自分の家のガレージで.50ライフルをいじくりまわし、この問題に別の側面から立ち向かった。彼は2つのチャンバーを備え、弾丸の後から出てくるガス圧を斜め後方に導き、これによりある種のジェット効果でリコイルを邪魔するマズルブレーキをもってこの問題を解決した。バレットは一方では発射エネルギーの一部を、彼のセミオート「ライトフィフティ」デザインのセルフローディングメカニズム内で、リコイルショックを段階的なロック解除プロセス内に分配することによって緩和した。すなわち、リコイルはバレルを約2インチもしくは5cm後方に動かす。これによって初めてロッキングラグが回転運動によってチャンバーのリセスからロック解除される。ついでボルトは単独で後退する。バレルの後座は2本の長いコイルスプリングと1個の化学合成素材製バッファーエレメントによってバックアップされる。厚いバットプレートが射手に対するさらなるリコイル緩和を達成する。

 1982年、バレットのデザインは大量生産可能なほどに熟成されたので、彼はこのとき初めて「M82」と命名した。1年後、彼は小さな仕事場を持って独立し、最初の銃をマーケットに提供し始めた。しかしバレットはまだ商売の経験が乏しすぎた(頑住吉注:日本語で言うところの「武士の商法」って奴ですね)。彼は銃を3700ドルで提供したが、それにもかかわらずその労働およびマテリアルコストはむしろ6500ドルに達した。会社はすぐに破綻し、彼は自分の会社をパテント権利ごと売却することを考えた。マクダネルダグラスおよびFNがしばらくの間興味を示したが、結局バレットはそれでもまだ彼に融資してくれる1件のローカルバンクと、コスト計算にいくらか心得のあるパートナーを見出した。

 さらに助けとなったのは最初の大規模注文だった。すなわち、1988年、スウェーデン陸軍がこのセミオート銃を100挺注文したのである。スカンジナビア人たちはM82をスナイパーライフルというよりもむしろ安全な距離から不発弾、地雷、爆発物を爆破するための器具と見ていた。このアイデアは他の陸軍部隊でも流行し、そしてアメリカ空軍でさえ1980年代のうちにすでに最初のバレットライトフィフティを採用した。これはこの銃を使って危機投入時にフィールドの飛行場や滑走路から爆発物や発掘された弾薬を取り除く目的だった。イスラエル、イギリスや他の国々は1980年代終わり頃に注文を行うことでこれに続いた。このためロニー バレットの商売はこのときすでに非常に好調だった。そしてイラクがクウェートに進駐した湾岸危機のときはこれがエスカレートし、需要は飛躍的に伸びた。それでも(頑住吉注:軍用としてのセミオートバージョンが絶好調でそれだけに専念してもよさそうなのに)バレットはセミオートバージョンとならんでさらにM99のようなより軽量なボルトアクション銃を民間マーケット用単発銃として、そして5連発のブルパップタイプのM95をも製造した。この銃も米軍に使用された。大規模テストの後、アメリカ陸軍は2003年にすでにより精度の高い(頑住吉注:ボルトアクションの)M95の導入を決めた。だがバレットは海兵隊からはストックにモノポッドを持つ海兵隊型のM82A3を「M107」として受注した。現在3000挺以上の銃が購入される予定で、この結果アメリカ部隊にはM24SWSと同数のM107が存在することになる。

 ドイツ連邦国防軍との取り引きのため、バレットはH&Kとビジネス上のパートナーシップを結び、ドイツにおいてはH&Kがこのアメリカ製品を販売し、責任を負っている。ドイツ連邦国防軍はまだG82導入の初期段階である。目下オプティカルサイトを使用してのさらなる実戦経験を勝ち取っているところだ。すなわち、G22(頑住吉注:こんなのです http://www.deutschesheer.de/redaktionen/heer/internet/Contentbase2.nsf/CurrentBaseLink/N258CGEY741ALANDE ドイツ軍制式の、イギリスのアキュラシー インターナショナル製、.300ウィンマグ仕様のスナイパーライフルです。ちょっと意外な気もしますがこれもバレットも外国製品で、ドイツ製スナイパーライフルは現在水準が低いということでしょうか)用のZaiss/Hensoldt製3〜12x56スコープとならんで、新しい6〜24x72スコープおよびAEG Heilbronn製AIM HuntlRのような「温像ターゲット器具」がテストされている。

 一方、KSKのような特殊部隊は.50口径のアキュラシーインターナショナル製品を「G24」として導入し、(頑住吉注: http://www.ketmer.com/ai/defense/aw50/index.htm こんなのらしいです)適した特殊教育を実施している。近い将来G82射手のためのトレーニングの判断基準も定義される。というのは、適した練習を持ってしてのみG82の潜在能力をフルに使えるからである。弾薬次第で1.5〜2MOAという精度からして、バレットはG22のような高精度スナイパーライフルではないが、1000mから50〜75cmというグルーピングは常に可能である。それだけでなく、ドイツ連邦国防軍へのG82の登場は、シューティングスポーツ分野にも刺激を与え、.50BMGライフルを使っての射撃を特殊な地位から引き出すことになる。そしてこれを行うのは予備役兵に限らない。

そしてさらに25mmと.50BMG両用銃へ(囲み記事)
 もしM82という彼の成功作を放置していたら、Ronnie Barrettは今のような落ち着きのない発明者ではなかっただろう。だが当然彼はさらに、ブルパップデザインの.50BMG仕様M95およびM99シリーズのような、他のロングレンジライフルを設計した。前者は手動連発銃であり、後者は単発銃である。同時にこの会社は.338ラプアマグナム仕様のセミオートスナイパーライフルや、新しい6.8mmx43仕様のAR-15上部構造も発表している( http://www.barrettrifles.com/ 頑住吉注:「.338ラプアマグナム仕様のセミオートスナイパーライフル」はどういうわけか公式サイトには見当たりません)。

 しかし2002年の終わり以来、バレットは明確にある新しい弾薬に取り組んでいる。これは彼のM82およびXM107セミオートライフルを全く新しい領域に押し上げるものである。それはすなわち25mmx59Bである。この弾薬には実は小型グレネードも使用でき、その弾道学的データと飛行経路は2000mまで12.7mmx99と本質的でない差しかない。だが、ミニチュア化された信管と最新の炸薬のおかげで、あらゆる.50BMGおよび20mm弾より劇的に大きな「花火」をターゲット内で引き起こす(頑住吉注:弾丸の体積、重量は口径の3乗に比例しますから、仮にそのまま拡大しただけでも25mmグレネードは20mmグレネードの2倍近い体積、重量になりますが、爆発威力とは無関係な信管を小型化して炸薬のスペースを大きくし、従来より高性能の炸薬を使うことでさらに高威力にしているということのようです)。この「Payload」と呼ばれる弾薬は、そうこうするうちに凍結状態にされたOICWおよび付随プロジェクトであるグレネードマシンガンOCSWのための研究プログラムから生じたものである。バレットはすでに早くから、ロシア製30mmAGS17グレネード器具「Plamya」(頑住吉注:こんなのです http://www.bharat-rakshak.com/LAND-FORCES/Army/AGS-17.html )を見ることによってM82を短いグレネード弾薬用に転換するという着想を抱いていた。そしてOICWグレネード弾薬が20mmから25mmにスケールアップされたとき、アメリカの特殊部隊(頑住吉注:複数形)はバレットに、それを使って兵士が車両、航空機、重器具を破壊できるスコープつきライフルが開発できないかという提案をした。というのは、.50BMGの場合と違って25mmグレネードには装甲貫徹用ミニ成型炸薬弾も搭載できるのである(頑住吉注:カンプピストル、シュツルムピストルの9割くらいの口径ですから不思議ではありません。ただし当然主力戦闘戦車を破壊するほどの威力は期待できないはずです)。バレットは445mmバレル、ダブルにされたリコイルスプリング、そして新しい形状のマズルブレーキを持つM82用の新しい上部構造を設計した。これにより目下すでに.50口径のM82またはM107を保有している全ての軍は、問題なく25mm弾薬仕様に装備変換できる。「Payroad Rifle」は現在すでにアメリカで部隊テスト中である。「古きが故に尊ぶべき」ブローニングM2およびMk19グレネードカノンと近い将来交換される2タイプの新しいマシンガンと全く同様にである。

 ゼネラル ダイナミクス社の子会社で、ノースカロライナ州CharlotteにあるGDATPは、XM307グレネードマシンガン(25mmx59仕様)およびXM312マシンガン(.50BMG仕様)をすでに大量生産に適するほど熟成させている。両者の作動原理は同じであり、三脚込みでわずか19kgと軽量な銃であり、230〜250発/分の発射速度を持ち(頑住吉注:毎秒約4発というのは撃ちやすいセミオート銃なら思い切りラピッドファイアすれば充分可能な程度で、フルオートとしてはあまりにも遅すぎる気がしますが)、いつでも他の口径仕様に変換できる。BMGやMk19のように、これらの新しい銃器世代はコンテナからベルトリンクにつながれた弾薬を「もりもり食べ」、地上銃架からも車載銃架からも射撃できる。

 これらXM307、XM312を含む全システムは2003年に承認された125,000,000ドルプロジェクトの一部であり、ニュージャージー州のPicatinny-ArsenalおよびXM-8ライフル同様「Soldier Weapons Project Manager」によって管理されている。その目標は2005年以後新しい銃器プログラムの最初の生産シリーズを戦闘部隊の手にもたらすことである。現在全力で25mmx59B弾頭の実戦経験を積んでいるところだ。というのは、XM307は未来派のOICWライフルと似て「スマート」(頑住吉注:この場合は「賢い」)弾薬の使用が予定されているからである。これは射撃時にインプットされたデータに基いて、敵陣地の上空の正確な距離で爆発するというものである。あるいは装甲板、ドア、窓ガラスのような障害物を貫通後に初めてターゲットオブジェクトの内部空間で爆発させることもできる。これに対しスコープつきのバレットPayroadライフルでは単純な炸裂弾、成型炸薬弾、フルメタルジャケット弾のみが使用される。

バレットM82A1/M107のデータ
口径:12.7mmx99(.50BMG)
全長:145cm
銃身長:737mm
ライフリング:38cm(15インチ)で1回転
(頑住吉注:ライフリングのピッチは通常半回転で表示するそうですが、ここでは1回転と明記されています)
重量:12.9kg(エンプティ、スコープなし状態のM82)、M107は11.9kg
分解時の全長:965mm
マガジンキャパシティ:10発


 ネット上で簡単に情報が検索できる現在と異なり、昔は情報が少なかったですから、多くの日本のガンマニアがバレットという銃を知ったのは1987年の映画「ロボコップ」によってではないかと思います。この映画でバレットは「コブラ アサルトキャノン」という物凄い威力を持つ未来兵器として登場しました。あれは一体何だ、どうもバレットとか言う新型の.50口径ライフルらしいぞ、ということになったわけです。そのときは例えば変なメーカーが(←お前が言うな)オートマチックリボルバーの新作を作ったのと同じようなゲテモノ、つまり「いまさら対戦車ライフルもどきかよ」という印象を持ち、こんなにメジャーな存在になるとは予想もしませんでした。
 実際にこのライフルが誕生したのはそれより5年ほど前ですが、理解されるまでには時間がかかり、1度挫折も経験していたわけです。「最初の大規模注文」は1988年のことですから、「ロボコップ」より後であり、たぶん映画関係者も「スクリーン映えしそうな面白いゲテモノがあるな」くらいの気持ちで使ったのではないでしょうか。この銃がどうも実戦で使用されており、しかも有効らしい、という話を聞きだしたのは1990年の「ネイビーシールズ」に登場した頃だったように記憶しています。

 この銃の利点は、
@旅客機のコックピットガラスなど遮蔽物を貫通できる。
A主力ライフル、マシンガンが小口径化して遮蔽物の貫通力だけでなく遠距離射撃能力が低下した問題をカバーできる。
Bロケット兵器と違って連発がきき、また命中精度、射程距離の面ではるかに優れている。
Cミサイルよりはるかに安価である。
Dゲリラ戦を行う敵を的確に攻撃することができ、現場の民間人などに無用の被害を出す可能性が比較的低い。
といった点です。そしてさらに、これなど昔なら情報が入ってくるまでにもっと時間がかかったんでしょうが、簡単に25mm弾仕様に変換できるという利点が新たに加わったわけです。

http://www.barrettrifles.com/military/xm109.htm

 こんなのです。外観的には単なるバレットのショートバレルバージョンのように見えますが、はるかに大威力の榴弾が使用できるわけです。私にははるかに巨大な弾丸をフラットな弾道で知られる.50BMGと2000mまでほぼ同じ弾道となるように発射して射手がリコイルに耐えられるというのがどうも納得いかないのですが、事実可能だということです。これを使えば歩兵の攻撃力は飛躍的に向上することになると思われ、まさにロボコップに登場した未来兵器「アサルトキャノン」の現実化という感じがします。バレットをトイガンとして製品化しているメーカーがありますけど、なにしろ大きいというのはそれだけで商品としてかなりの制約になるものですし、全長がずっと短く、比較的簡単に作れ、圧倒的破壊力というロマンがあるこの銃はバリエーション製品としておいしい狙い目かも知れません。

 ちなみにM2やMk19グレネードマシンガンと交換される予定だというXM307、XM312はこんなのです。

http://www.gdatp.com/products/lethality/xm312/xm312.htm
http://www.gdatp.com/products/lethality/xm307/xm307.htm
http://www.globalsecurity.org/military/systems/ground/m307.htm

2005年2月4日追加
 ここを読んでいる方から教えていただきました。まずタイトルの「Ein langes Ende」ですが、ドイツ語の「Ende」には「距離」の意味もあり、「長距離射程」という意味になるそうです。
 「外科的」は英語で言う「サージカルストライク」、すなわち「腕のいい外科医が患部のみを摘出するように民衆に被害を与えず脅威だけを狙撃する様」の意味のようです。お恥ずかしいですが私はこの英語を知りませんでした。ちなみにカタカナで検索したらずばりこういう名前のゲームがあるらしくそれ関連の情報(ほとんどそれだけですけど)にヒットしたのでご存知の方は多いかもしれません。







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