R93Duo「Hamed」ボルトアクションダブルライフル

 「Visier」2005年2月号に、異様な形をした新ライフルの紹介記事が掲載されていました。この銃は水平2連ダブルライフルをボルトアクション化したようなきわめて特殊な銃で、その誕生の経緯もかなりユニークであることが分かりました。


Abu Isnyからの新製品

今BlaserはR93をベースにしたある手動連発ダブルライフルを売り出した。しかもこのアイデアは他ならぬアブダビ首長国連邦のSheikh Hamed Bin Zayed Al Nahyan殿下由来である。

004年のアブダビにおける国際的な狩猟および乗馬をテーマにした展示会で、この銃は初めて評判を巻き起こした。それがアブダビの君主の息子であり財務大臣であるSheikh Hamed Bin Zayed Al Nahyan殿下が手にしたR93Duoである。Nicola Banbini(頑住吉注:ベレッタPX4ストームの独占初レポートもこの人でした。名前からするとイタリア人っぽいですね)はこの新しい手動連発ダブルライフルをVisierのために初めてのジャーナリストとして独占的にテストすることに成功した。この銃はAllgauer(頑住吉注:「a」はウムラウト。ドイツ南部の地方、アルゴイ)所在のメーカーBlaser(Isny)が2005年から特別パンフレットの中で紹介するものである。

ファイアパワーと速射性
 この非凡なプロジェクトのためのアイデアは、1998年にスペインにおいてMonteria(狩り立て猟)をしている間に首長が得た。彼はこのときインスピレーションがわき、狩仲間の観察を始めた。何人かは素早い2発目の射撃のためダブルライフルを使っており、他は他でより大きなマガジンキャパシティを持つ手動連発銃を選んでいた(頑住吉注:「手動連発銃」は英語のリピーターにあたる単語ですが、このレポートの中ではボルトアクションを指すようなので以後そう訳します)。彼の考察を要約すれば簡単である。すなわち、彼は両者をできるかぎり軽い銃の中にコンビネーションすることを望んだのである。

 首長はこのアイデアを2001年ドバイにおける展示会の間にBlaserにぶつけた。そしてそこで素早く意気投合した。というのは、それでなくても彼の殿下が出発点の役割を果すことになるノーマルなボルトアクションR93をすでにキャビネットに100挺以上(!)所有していたからである(頑住吉注:あっちの王族の贅沢はスケールが違いますね。メーカーとしても高級ライフルを100挺以上も買ってくれる大金持ちが思いつきで「こんなもん作って」と頼んできたんで二つ返事で引き受けたということでしょう)。3年以上続いた開発期間のための資金も当然砂漠の国アブダビからやってきた。

ダブルにし、太っちょにする
 このR93Duo「Hamed」の技術はノーマルなR93を基本にしており、単にちょうど全てをダブル仕様にしたものである。ボルト、ボルトキャリア、ボルトヘッド、Spannschieber、エキストラクター、エジェクター、そして当然バレルも2本である(頑住吉注:「Spannschieber」は直訳すれば「コッキングレバー」で、ここではボルトハンドルのことかと思われるんですが、この銃のボルトハンドルは1本です)。バレル束は全てのスタンダードなR93のように交換できる。これは同じ弾薬仕様グループの中でのことだが、マグナムクラスへ、あるいはスタンダード弾薬仕様に戻すこともできる(使用者がボルトヘッドとマガジンをともに交換した場合は)。

 ダブルのトリガーはダブルライフルの場合のように、1000gのトリガープルで作動する。前のトリガーは右のバレル、後のトリガーは左のバレルのものである。「festverlotete」(頑住吉注:「o」はウムラウト。辞書には「ハンダ付け」と出ていますがたぶん溶接のことだと思います)されたバレル束は選択により望みの弾薬に適応し、両バレルで決定的な獲物の撃ち倒しが約束される。レッドの発光フロントサイトを持つ金属製オープンサイトはダブルのボルトとスコープマウントベースの構造に依存して、ダブルライフルの普通よりいくらか高い。特製のマウントは姉妹会社であるモーゼルのダブルスクエアマウントを手本にしている。これはM03ボルトアクションライフルでマーケットに登場したものである(頑住吉注: http://home.snafu.de/l.moeller/Mauser-03.htm )。

 重量削減のためバレル下側がマズル直後からランヤード金具までオープンの形状にされている(頑住吉注:左右2連のバレルをつなぐブリッジ状部分の下が肉抜きされているということらしいです)。これにより設計者は重量を4.5kg以下に押し下げている。これにより「Duo」はR93より800〜1000g重くなっている。8発のキャパシティを見れば、おそらく現在口径.375H&Hマグナム、このクラスの重量でこれ以上のファイアパワーを提供する銃はない。典型的なスタンダード弾薬仕様とならんで、追加料金を払えば特別希望も満たされる。

強いファイアパワー
 この銃のマガジンの手本となったのはMannlicher−Schonauer(頑住吉注:「o」はウムラウト)のドラムマガジンであり、これは当時銃器製造における画期的事件だった。R93DuoのマガジンはCNC技術によってフルに削りだされたErgal−Block(アルミ合金)からなっている。

 両側から3発が、マガジンフォーロワとしての2つの回転プレートにあやつられて供給される。いつでも上の弾薬の上に弾薬を補充することができる。マガジン全体は下から2つのスプリングエレメントによってボルト側に押されている。機関部の右にある押しボタンが、マガジンブロック全体を取り除けるようにボルトを後方に引き抜くことを可能にする。これにより6発の弾薬を持つマガジンが再装填できる。その上、2発をチャンバーに入れることができる。だが、閉鎖の際ボルトヘッドが両方の一番上の弾薬を乗り越えて滑り、つかまないように気をつけなくてはならない(頑住吉注:これだけでは分からないと思うので補足します。若い方の中にはあの歴史的名銃を知らない人も増えていると思いますが、この銃のマガジンはSS9000のいわゆるロータリーマガジンにちょっと似ています。違うのは、SS9000のそれはカートリッジがC字を描いて多数給弾されますが、この銃の場合は( )みたいな形で左右対称に片方3発、計6発のみ給弾されることです。で、射撃途中でボルトを引いて止め、撃った分の弾薬を補充してフルにすることもできるし、さらにチャンバーに2発入れてマガジン一番上の2発の弾薬をやや下に押しながらボルトを閉鎖すれば3+1が2つで計8発装填できるというわけです。ボタンを押すとボルトが後方に抜け、こうするとマガジン全体を取り出してより簡単に弾薬が装填でき、ここには書いてありませんが当然あらかじめフル装填した換えマガジンと交換することもできるはずです)。

人間工学とデザイン 
 持った感じからするとこのライフルはダブルライフルのようだ。重心は後方にある。我々のテスト銃は2.5〜10倍のZeiss Diavariを持っていた。これは本来このライフルタイプのためにはオーバーなオプティカルサイトである。目からの距離が大きく、倍率が小さい組み合わせのスコープがR93Duoには最も向いている。危険な獣を狩る心得のある多くの大型獣ハンターは、各射撃後にライフルを肩から離し、頭を高く上げて監視する。そして見晴らしのためにぴったりした衣服を身につけている。というのは、数秒以内に状況が変化するからである。豹を補足し、あるいは次の藪に逃げ込もうとする野牛に対応して弾丸を撃ち込まねばならない。

 当然「Duo」は手の中で重い。しかしその代わり射撃姿勢の中で安定もする。ボルトアクションに関してはノーマルなR93とほとんど変わらない。幅の大きい機関部がボルトハンドルをさらに約2cm右へ追いやっていること以外は。

発射は自由
 一日中R93Duo「Hamed」をIsnyにおいて、絶え間なく変わる状況下で、適したハンティングライフルになりうるか否かをテストした。.308ウィンチェスター仕様のテスト銃はノーマルなシューティングコースと同様に、新しいBlaserのSchiesskino(頑住吉注:直訳すれば「射撃映画館」です。遠方のスクリーンに獲物が動く映画が映写され、それを撃つシューティングレンジのことらしいです。 http://www.schiess-kino.de/ )でもテストした。100mからのベンチレスト射撃姿勢、スタンディングフリーハンド、オープンサイト使用のテストをそれぞれ行った。同じ手順は当然半分の距離、そしてSchiesskinoで繰り返された。

 全てのグルーピングはバレル束の温度に関係なく6〜10cmに集まった。ベンチレスト射撃姿勢から休みなく射撃した100mにおける8発のグルーピングはギリギリ10cmになった。これは2発のみしか撃てず、考え得る限りの全てのハンティングシチュエーション向けに一応充分な多くのダブルライフル(頑住吉注:水平2連)または上下2連ライフルの射撃成績より良い。フリーハンドで速射した場合、あるいはスコープなしの場合ですらグルーピングは最大で14cmにしか広がらなかった。これにより依然としてたいていのヨーロッパおよびアフリカの獣種類に致死的な命中弾を与えられる。

 実に印象的だったのは速射性だった。8発が10秒以内に紙製ノロシカターゲットに着弾した。そして熟練したR93Duo所持者ならこの時間を簡単に短縮できるだろう。ボルトは当然いくらか動きが重い。ボルトアクション時に2つの発火機構を同時にコックしなくてはならないからだ。しかし使用者は2、3回Schiesskinoを通過し、あるいは走るイノシシを撃てば短時間で新しい感覚の要領が分かる。

成功の可能性
 R93Duo「Hamed」は軽い重量とファイアパワーを両立させている。そしてこれは9.3mmx62や.375H&Hマグナムのようなより強い弾薬の場合ですらそうである。例えば濃いブッシュの中で危険な獣を探索するような、まさに素早く第3、4発目を撃つというシチュエーションで、この銃は切り札の役を演じる。

 例を挙げる。去年130kgのヘラジカを狩った際、ボルトアクションライフルを使って3発の肩甲骨付近への良好な命中弾で倒したが、一時視界から見失った。3+1発の装弾数はたった3秒でなくなり、ほとんどいらいらした。そしてヘラジカは全く危険な獣ではない。ライオンの探索に置き換えると、1人のハンターはすぐ困惑に陥り、突然のダブルライフルの、そしてボルトアクションライフルの場合でさえ弾切れに立ちすくむことになる。.375H&Hマグナムクラスにおいて5発以上装填できるライフルはほとんどない。新しいR93Duoはその8発によって安心できる代替案を提供する。

 しかし従来の生産はすでに完全にアブダビの首長とその友人および知人向けに提供された。だがひょっとするとマーケットは、メーカーが期待したとき、よりよい反応をするかもしれない。というのは、多くの問い合わせは常に製造や価格に有利な影響を与えてきたからである。目下ベーシック型で価格は約16,700ユーロであり(頑住吉注:一流の9mmオートが20挺以上買えます)、つまり例えばドイツ製サイドロックダブルライフルのレベルである。R93Duo「Hamed」は3つまでの交換バレル束(スタンダードとしての.308ウィンチェスター、遠距離用の.300ウィンチェスターマグナム、大型獣用.375H&Hマグナム)とともに提供される。だが使用者が国内の狩猟および外国のサファリに必要な全てが事後に手に入る。

モデル:Blaser R93 Duo「Hamed」
価格:約16,700ユーロから
口径:.243、.308、.30-06、.300WinMag、.375H&HMag。(他は注文で)
装弾数:6+2発
全長:1030mm
銃身長:575mm
重量:4400g(エンプティ)
型:機関部はアルミ製。ダブルの放射状フランジ閉鎖。手動コッキングシステム。ダブルトリガー(双方約1000g)。溶接されたバレル束。バレルおよび使用弾薬変更オプション。ランヤードリング。吟味された木質のウォールナットストック。特殊マウント。


 この銃の情報はネット上ではこれしか見つかりませんでした。

http://www.guntex.dk/index.php?id=6&produktet=0101109&aktivkat=0

 豪華なエングレーブ、金メッキのトリガー、そして豹の頭をかたどったボルトハンドル、いかにも王侯の道楽のための銃という感じです。価格は2005年2月24日のレートで230万円以上と非常に高価ですが、決して大金持ちでしか買えないというほどではないですね。誕生の経緯は王族の思いつきを金にまかせて現実化したといった感じですが、実用面でも速射と作動確実性が両立し、しかも我慢できる程度の重量に抑えられており、なかなか面白いハンティングライフルになり得るんではないでしょうか。軽い理由のひとつは機関部(レシーバー)がアルミ製だからということですが、.375H&Hマグナムをアルミ製の銃で撃って耐久性は大丈夫なのかという疑問は残ります。まさかアブダビの王族や友人たちはこの高価な銃を半使い捨てにするんでしょうか。
 ちなみに私は.22LRの水平2連オートピストルというのを考えたことがあります。左右別々に10発くらいづつ給弾され、2発同時発射10ショット可能というものです。まあ需要はないでしょうが、こうなるとBlaserに水平2連オートマチックハンティングライフルも作って欲しいものです。

















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