BlaserR93バーミント

 「Visier」2005年4月号に、以前水平二連ボルトアクションライフルというゲテモノでも登場したBlaserというメーカーの新製品、R93バーミントに関する記事が掲載されていました。あの珍銃は基本的にはノーマルなR93を横に並べたような銃で、システム的には共通点が多いようです。


こじつけの(頑住吉注:「weit hergeholt」。新製品の紹介だというのに凄いタイトルです。)

アメリカとスカンジナビアのハンターからインスピレーションを受けて、BlaserはJagdmatchおよびLRS2に続き、IWAのタイミングに合わせて新しいR93バーミントを紹介した。

ューモデルバリエーションに通じるアイデアは、しばしば使用者からのフィードバックから生まれる。今回、(頑住吉注:新製品開発に通じる)刺激は特にアメリカから来た。これ(頑住吉注:ドイツのライフルメーカーであるBlaserに特に大きな刺激を与えたのがドイツのハンターではなくアメリカのハンターだったこと)は不思議なことではない。というのは、装備に関する高い要求を伴うバーミントハンティング(地リスやプレーリードッグといった有害生物との戦い)は我々の伝統ではなく、一方アメリカではそれはある種の国民スポーツであり、多数の弾薬、オプティカルサイト、銃器メーカーの生計の道だからである。しかし明らかに既存のBlaser R93モデルはこれに充分適応できない。(LRS2と同じ)太いフルーテッドマッチバレルとSafanフォアストックを持つJagdmatchは非常に(頑住吉注:バーミントハンティングの?)スタンダードに似ているが、ロングレンジスポーターであるLRS2は余りにも好戦的な印象を与える。

春に登場する完全新製品
 当然バーミントのベースとなったのは「放射状バンド閉鎖」と「手動コッキング」(頑住吉注:前者はボルトを閉鎖すると円筒状のボルト周囲から放射状にロッキングラグが突き出す閉鎖システム、後者は以前出てきたときは意味不明でしたが、今回ボルトを閉鎖、装填した状態でデコックして安全に持ち運び、発射前にワンタッチでコッキングできるシステムと分かりました)を持つR93のストレートプルシステムである。使用弾薬の多様性はバーミントクラスの典型的な弾薬を含む。すなわち、.222に始まり.223および.22-250レミントンを経て.308や.300ウィンマグのような.30系に至るまでである。外的には目立つ革新が行われている。LRS2のプラスチックストックには上下左右に調節できるチークピースが装備されているが、P93バーミントにもいろいろなポジションにおけるパーフェクトな射撃姿勢のため調節可能なチークピースを持つウォールナットストックが使われている。幅広い、ほとんど四角いフォアストックは良好なレスト可能性を提供するだけでなく、埋め込まれたレールが全てのポピュラーなバイポッドタイプのマウントを可能にする。フルーテッドマッチバレルは(スタンダード弾薬は627mm、.300ウィンマグは650mm)古い顔なじみで、これもLRS2由来である。いろいろなライフリングピッチが選べる。すなわち例えば.223系バレルならば9、11、14インチのピッチがある。このバレルはフルートを掘ることによって広げられたバレル表面積のおかげで急速に熱を逃がす。しかし使用弾薬にもよるが多かれ少なかれ急速にかげろうをも引き起こす。

成功の決め手?
 アメリカのハンターの具体的要求は、約1600gのトリガープルを持つ新しいレストトリガーシステムの開発を導いた。これは「膝関節トリガー」とレストトリガーの長所を1つにまとめたものであり、すでにパテントが申請されている。このトリガーは究極的にドライなトリガーキャラクターを示し、これにより精度の良い命中を成し遂げるための決定的貢献が意図されている。しかしドイツ語圏ではたいてい軽いトリガープルが愛好され、このためBlaserはこのニューシステムを650gバリエーションでも製造している。全てのP93は量産品で、追加料金なしにこの新しいレストトリガーつきにすることができる。

 テスト銃(.223系バレルの供給ははまだのため残念ながら.308仕様である)には、Blaserのサドルマウント(頑住吉注: http://www.blaser.de/english/produkte/accessories/sattelmontage.htm )によってドットレティクルを持つSwarovski PV-S 6〜24倍50P(頑住吉注: http://www.swarovskioptik.at/english/produkt/index.asp?cat=Products&type=Rifle%20Scopes&model=15 )が乗せられた。射撃の際、驚きはなかった。すなわち、このバーミンターはやはり与えられた5種類の弾薬全てにおいて、24倍の倍率のおかげで20mm以下のグルーピングをマークしたが、これは以前のテストで慣れた通りだったからである(LRSの前身であるタクティカルが97年7月号、R93マッチが95年1月号)。この際レミントンの弾薬が11mmでベストの結果になり、PMCの12mm、S&Bおよびラプアの15mmがこれに続いた。射撃においては早く発生するかげろう問題がひたすら神経に障り、5発のグルーピングを取るごとに冷却のための休止を強いられた。多数の射撃をする人は、「Flimmerbandes」(頑住吉注:無理に訳せば「ゆらゆらバンド」で、軍用スナイパーなどに時々見られるバレルの上にかざすベルト状アクセサリーのことです。 http://www.baender.at/gewehr.htm こんなのですね。私はこの辺全然無知で、これって戦車砲のサーマルジャケットのようにバレルの上だけが日光に照らされて熱せられると膨張率の違いでバレルに狂いが生じるためかと思っていましたが、サイトラインに立ち昇るかげろうをよけるためのものらしいです。まあ日よけの意味もあるのかもしれませんけど)のマウントが避けられない。バレルには対応するネジ穴が設けられている。

完全に輸出用
 新しいR93バーミントはJagdmatchの2413ユーロおよびLRS2の2669ユーロという両モデルの価格を超えているが、命中精度に関しては超えていない。それでもこのプレシジョンライフルは2925ユーロのコストがかかる(マグナムはプラス199ユーロ)。メーカーはこのモデルによってUSマーケットおよび心の開かれた(頑住吉注:この場合どういう意味なのか不明です)スカンジナビア人の需要に応えた。どっちみち伝統にこだわるドイツのハンターがこれに乗り気になるかどうかは疑問である。ともかく購入者は新しいトリガーシステムと新しい形のウォールナットストックのために、技術的に匹敵するJagdmatchよりたっぷり512ユーロ多い金額を覚悟することになる。その上我々のハンティング種類では、見張り台からの射撃においてバイポッドも調節可能なチークピースもわずかしか役割を演じない(ここにはバーミントはいない。山では少しでも軽い銃がいいし、ライフルのレスト用としてはリュックサックで足りる)。それでなくともトリガープル500〜600gのスタンダードなBlaserファイントリガーは多数のR93熱狂者が信奉しているのである。

モデル:Blaser R93バーミント
価格:2925ユーロ(マグナムは199ユーロ割増)
使用弾薬:.308ウィン(.222、.223、.22-250レミントン、.243ウィン、6.5mmx55、.300ウィンマグもあり)
装弾数:3+1発(ミニ弾薬仕様は4+1発)
全長:1070mm(マグナムは1093mm)
バレル:627mm。ライフリング4条。ピッチ11インチ。マグナムは650mm。
空虚重量:3550g(マウントおよびスコープ込み4400g)
ストック:ウォールナット材。幅が広げられたレスト面、組み込みの金属レールを持つフォアストック。上下左右に調節できるチークピース。
装備:放射状ベルト閉鎖機構と手動コッキングシステムを持つストレートプルライフル。黒染めされたアルミ製レシーバー。ヘビーフルーテッドマッチバレル(マズル部直径22mm)。着脱可能なスリング金具。ゴム製バットプレート。Swarovski PV-S 6〜24倍50Pを装備したBlaserサドルマウント。左利き用バージョンも入手可能。


Blaser R93バーミントの射撃成績

弾薬 100mグルーピング(mm)
Lapua 167grs Silver Jacket Scenor HP-BT 15
IMI 168grs Match 16
PMC 168ges HP-BT 12
Remington 168ges HP-BT 11
Sellier&Bellot 168grs HP-BT 15

注:HP−BTはホローポイントボートテイル。距離100m。ベンチレストを使用し、ストック後部を支持。5発のグルーピング。計測は射入口の中心から中心。


 この記事はすでにお伝えした.223ボルトアクションライフル比較レポートの直後にあり、.223仕様がまだ入手できなかったのが「残念」と言っているのは、間に合えばまとめて比較記事にできたのに、という意味も含めてのことでしょう。

今回のテーマであるR93バーミントとはこういう銃です。

http://www.blaser.de/deutsch/presse/presse_varmint.html

一方比較されているJagdmatchはこういう銃です。

http://www.blaser.de/english/produkte/r93/jagdmatch.htm

同じくLRS2はこういう銃です。

http://www.blaser.de/english/produkte/r93/lrs2.htm

 この記事の大筋というか、銃自体の説明に関する部分は大体理解できていると思うんですが、記事全体のニュアンスがどうもよく分かりません。

 まず最初の黄色で表示した部分を見てください。ここは、従来のシリーズではアメリカで盛んなバーミントハンティングに余り向かないから今回の新製品バーミントが生まれたということで、何故従来品ではダメなのか説明しているわけです。で、LRS2があまりに「好戦的」(「恐ろしげな」)印象を与えるからバーミントハンティング向きではないというのは公式の画像を見ればまあ分かりますが、Jagdmatchでは何故ダメなのか全く読み取れません

 次にこれも黄色で表示した最初の中見出しを見てください。英語に訳せば「オールニュー」という言葉が使われていますが、その段落で語られているのはメカも原則として同じ、調節式チークピースもプラと木製の違いはあってもLRS2ですでに使われている、バレルも同じもの、という内容に過ぎません。新しいといえばレストしやすいように下が幅広になったフォアストックとバイポッド用レールくらいです。

 タイトルとも合わせ、一種の皮肉、つまりアメリカでバーミントライフルが大人気だからということでこんなものを作ってみたらしいが、これが従来品よりバーミントハンティングに適したライフルだというのはこじつけじゃないの? というような意味を含めて意図的におかしな書き方をしているのではという気もするんですがよく分かりません。

 「成功の決め手?」と疑問符がついている新しいトリガーは、たぶん訴訟問題のせいであまりトリガープルを軽くできないアメリカ用に、安全性と命中精度をなるべく高いレベルで両立させようとしたアイデアであり、現状のドイツではあまり必要ないということのようです(ちなみに「レストトリガー」、「膝関節トリガー」は無理に直訳しましたが、どういうものかよく分かりません)。またドイツではアメリカのようなスタイルのバーミントハンティングは行われず(害獣駆除自体がないということはないはずですが)、ドイツ流のハンティング用ならJagdmatchで充分であり、何も重くて高い、それでいて命中精度が優れているわけではないこの銃を買う必要はない、というのが「Visier」の意見です。「完全に輸出用」というのは国内の人は買わなくていいよ、ということに他なりません。

 何と申しますか、国内の、それもついこのあいだ新製品を世界初独占レポートさせてくれたメーカーの新製品にここまで正直に書けるというのはちょっとうらやましい気がします。私が雑誌にいた頃は思ったことを正直に書けないことも多かったですから。力関係、つまりこれくらいやっても大丈夫というくらい「Visier」の力が強いのか、ドイツのメーカーはこのくらい書かれても一般に文句を言わないものなのかというあたりはよく分かりません。

 ちなみにこの銃はGUN誌2005年6月号P63でも床井雅美氏のIWAレポートの中で紹介されています。




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