各国の新世代戦闘機開発の現状を分析

 ステルス戦闘機の意義、何故アジア太平洋地域に集中するのかといった問題に関する分析です。

http://military.china.com/news/568/20120717/17320480.html


専門家:アジア太平洋の各国が相争って第4世代機を研究開発、不安定要素が増加

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「資料画像:ロシアのT-50ステルス戦闘機」)

ステルス戦闘機は現在の軍事科学技術領域の最高峰として、その出現時からすぐ世界各主要国の広範な関心と絶大な支持を引き起こした。現在世界、特にアジア太平洋地域の各国にはすでにステルス戦闘機研究開発、購入のブームが起きている。ステルス戦闘機は世界の新たな軍事変革に随伴し、集中爆発的態勢が出現していると言える。それでは、各国が積極的にステルス戦闘機を研究開発する動因は何だろうか? この種の爆発的態勢の背後には一体どういった戦略的考慮が隠されているのだろうか? 科技日報特約の特別寄稿をお読みいただきたい。‥‥「小」飛行機と「大」戦略について。

最近、韓国のウェブサイト上に、ある新型の韓国自主研究開発による第5世代ステルス戦闘機の設計方案が公開された。これはすでに韓国が世に問う3つ目の第5世代戦闘機の設計方案である。これより前、中国は去年1月に自主研究開発による第4世代ステルス戦闘機殲-20を公開した。ロシアもT-50ステルス戦闘機の持続的試験飛行を開始した。日本は正式にステルス戦闘機を開発する前に、試験機「心神」を研究開発しているところであり、2014年に初の試験飛行を行う。この他、韓国はインドネシアと、性能がKF-16よりやや優れた韓国型戦闘機(KFX)を共同開発中で、ステルス機能も具備している。

各国が相争ってステルス戦闘機を開発、装備する、その目的と動因は研究に価する。同時にその背後から屈折して見えてくる、国際関係の中至る所にあるゲームと戦略的考慮も深入りして解読するに価する。

ステルス戦闘機にはどんなものがあるか

ステルス戦闘機は、異なる国の区分基準の違いにより、第4世代機とも第5世代機とも称される。ステルス戦闘機は主に「4S」基準を具備している。すなわち高いステルス能力、超音速巡航能力、超視距離攻撃能力、超機動能力である。現在世界各国が就役あるいは研究開発中のステルス戦闘機の主要なものとしては、アメリカのF-22「ラプター」、F-35「ライトニング」、ロシアのT-50、中国の殲-20、日本の「心神」、インドのFGFA、韓国のKF-Xがある。

F-22戦闘機は現在唯一の部隊装備されたステルス戦闘機の機種である。この戦闘機は大型制空ステルス戦闘機で、作戦性能はずば抜けている。この機と組み合わされるのは、「世界戦闘機」の呼称を持つF-35戦闘機である。この戦闘機はアメリカが8カ国と連合して共同研究開発しており、多くの先進的航空宇宙新技術が応用され、維持メンテナンス性、スマート化の程度が高い。一方T-50は伝統的航空強国ロシアが最近試験飛行したステルス戦闘機で、この戦闘機も大型制空戦闘機である。この戦闘機は現在のロシア最高のステルス戦闘機の水準を代表しており、離陸に必要な距離が短いというメリットを持つ。インドのFGFAはロシアとの合作で、T-50を基礎に研究開発が行われたステルス戦闘機である。日本の「心神」戦闘機は今技術検証段階にあり、しかもこの戦闘機は「F3」能力を提出している。すなわち「いちはやく発見」、「いちはやく攻撃」、「いちはやく破壊」である。韓国もインドネシアとステルス戦闘機共同研究開発の覚え書きに署名し、KF-X戦闘機の研究開発作業はすでに開始されている。

何故ステルス戦闘機の研究開発が必要なのか

アメリカ、新たな挑戦に対応し、空中の絶対優勢を強固なものにする(頑住吉注:「何故〜必要なのか」が国別に列挙されていきます)。アメリカは現在世界で唯一すでに就役したステルス戦闘機を持つ国家である。しかもステルス戦闘機装備の動機と願望が最も強烈である。現在空軍の武器装備の中の秘蔵っ子であるステルス戦闘機を持つ者として、アメリカ空軍は自分の責務を進んで果たし、得るべきものは必ず得る決意を持った王者の風格を見せている。同時に、軍種間の競争が相当激烈なアメリカ軍内部では、すでに新しい空戦理念と新戦闘機の方案が提出されており、これもアメリカ空軍が自分の優勢な地位を維持し、守り、より多くのパーセンテージの国防予算を勝ち取るために必要な手段なのである。指摘に値するのは、新戦闘機の研究開発がアメリカ政府と密接な関係を持ち、政界での影響力が極めて大きい軍需企業グループの強力な後押しをも受けていることである。

ロシア、落伍に甘んじない。航空工業は厚積薄発である(頑住吉注:簡単なことをなすにも多くの下積みが必要、というような意味らしいです)。ロシアは伝統的な航空大国であり、世界航空史で常に非常に重要な地位を占めている(頑住吉注:ちなみにソ連時代には世界で初めて動力飛行を行ったのはロシアの蒸気機関飛行機だとされていたそうです)。さらにミグ-29とスホーイ-27に代表される多くの機種の戦闘機は世界航空史の古典的伝説を作ってきた。ステルス戦闘機に関わる高性能フェイズドアレイレーダー、ベクトル推力技術、ステルス構造設計と塗料に関しては、ロシアはいずれにも非常に豊かな技術上の蓄えを持つ。しかも一部はすでに現役戦闘機で応用と検証が行われている。T-50の試験飛行はロシア人にとって理の当然、朝飯前とさえ言える事なのである。同時に、ロシアは国土面積が広大で、空中の安全はこの2大陸に横にまたがる国にとって特別に重要である。国家主権の防衛を成功させたければ、ロシアにとって現在の戦闘機発展の潮流に符合したステルス戦闘機は、明らかに特別重要かつ必要なのである。

中国、自身の安全と利益の発展を維持し、守り、世界平和と発展を促進する。改革解放が不断に深まるにつれ、中国の国家の安全と経済的利益を維持し、守る任務はどんどん重大になり、難易度も徐々に高まっている。軍事費が非常に限られている状況下で、中国はこれまで戦略的意義を持つ武器装備を追い求め、選択することに長け、これは原子爆弾でも原子力潜水艦でもそうだった。長年の航空工業と戦闘機製造実践の中で累積された技術と経験により、中国はひとまずステルス戦闘機研究開発の実力を具備した。しかし、中国はステルス戦闘機研究開発問題で非常に控えめで抑制的である。このことは中国が研究開発するステルス戦闘機にはただ1つの動因しかないことをも充分に説明している。すなわち限られた種類と数の殺しの武器によって国家の安全と利益の発展を維持し、守り、世界の平和と発展を促進することである。

インド、日本、韓国、寂しい状況に甘んじず、奮起してまっすぐに追う。この3カ国はアジア、また世界にさえ一定の影響力を持つ国として、ステルス戦闘機に対する興味も非常に濃厚である。インドはローカルパワーであり、強烈な民族の自尊心とずっとあまり静かではない南アジア亜大陸の安全情勢は、いずれもインドを国家の実力を表現し得る先進武器装備に対し異常に敏感にさせている。日本は装備発展上制約を受けているが、自身の豊かな工業製造能力、アメリカとの同盟関係に頼り、強烈な軍事大国へと向かうことへの渇望、比較的緊張した隣国関係はいずれも日本をステルス戦闘機研究開発に対する態度を固めさせ、収拾のつかない勢いである。韓国は伝統的意味での軍事大国ではないが、朝鮮半島の緊張した情勢、強烈な民族意識はいずれも韓国を同盟国駐留軍の保護で満足しなくさせている。ステルス戦闘機の研究開発上、韓国の態度は「条件が満たされていればGO、条件が満たされていなくてもGO」であると言える(頑住吉注:本来、「条件が満たされていればGO、条件が満たされていなければ条件を作り出してやはりGO」というような言い回しが多く使われるようで、条件が満たされていなくてもそのまま突っ走ってしまう無謀さを暗に批判しているようです)。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは、「資料画像:日本の心神戦闘機」)

戦略ゲームの新たな道具

世界の軍事航空史に画期的意義を持つステルス戦闘機は、戦争の様式に巨大な衝撃をもたらすだけでなく、同時に世界、特にアジア太平洋地域の国際関係と地縁戦略情勢にも巨大な影響をもたらす。ステルス戦闘機はすでに武器装備のレベルを超え、その背後には各国間のゲームと戦略上の考慮が含まれているのである。

アメリカは現在世界唯一の超大国として、その主要な戦略目標は自身の覇権的地位を維持し、守ることである。このことはアメリカの研究開発する武器装備が必然的にこの戦略上の位置付けに符合するという結果をももたらす。同時に、アメリカは現在唯一2種のステルス戦闘機の研究開発と生産を行っていることを公然と認める国でもある(頑住吉注:中国も殲-20と「ちまき機」を生産、研究開発していますが後者は一部情報が漏れてしまっているだけでまだ公表はされていません)。この2機種のステルス戦闘機の背後の戦略的考慮は区切りがはっきりし、中身が豊富と言うべきである。F-22とF-35のハイ・ローミックスは互いに補い、共同でアメリカの未来の空軍の主要な支柱を形成する。

世界最大の武器輸出国として、アメリカは他国へのF-22戦闘機輸出を禁止している。何故ならF-22戦闘機は現在のアメリカの多くの先端技術を集めたものであり、作戦性能はずば抜け、アメリカの覇権的地位を強固なものにすることに対し非常に重要な作用があるからである。この時、F-35戦闘機の意義が非常に意味深長であるのが際立つ。この戦闘機はアメリカの「仲人」であり、同盟国と協力して研究開発されている。このことはアメリカのこの戦闘機開発に関する研究開発コストとリスクを低下させることができるだけでなく、同時にこの種の協力しての研究開発方式は非常に強烈な商業的意味を持っている。しかしF-35の性能はF-22とでは相当程度の隔たりがある。このことは逆にアメリカのステルス戦闘機に関する優勢を継続して強固なものにもする。しかも同盟国をステルス戦闘機の技術研究開発と維持メンテナンス上、長期にわたりアメリカに頼らせる。同時にこれは同盟国の空中戦力を有効に制限し、さらに一歩マッチさせ、同盟関係を強固にし、世界の覇権を維持する目的を達成するものでもある。アメリカは2種の「小小」なステルス戦闘機を使って、安全と経済という2つの方面で「大大」の効果、利益を収める、と言うことができる。

現在、ステルス戦闘機を研究開発する国はほとんど全部アジア太平洋の国々に集中している。この種の集中現象は偶然の一致ではない。まずアジア太平洋地域は全地球の政治地図の中で重要な地位を備えている。この地域には国連安保理の3つの常任理事国、BRICs4カ国(頑住吉注:ブラジル、ロシア、インド、チャイナの頭文字を合わせたもので経済発展が著しい4か国とされます)の中の3カ国が集中している。しかもこの地域には朝鮮半島など国際的にホットな問題が少なくない。同時にこの地域には世界の3大経済体(頑住吉注:GDPトップ3のアメリカ、中国、日本)と新興国が集中し、市場は巨大で、経済的な前途は良好と思われる。政治と経済のホットさの上昇は、必然的に軍事レベルに波及する。ステルス戦闘機はすでにアジア太平洋地域の各主要国が行うゲームの新たな道具になっているのである。

ロシアに関して言えば、プーチンが3期目を始動させ、新たな政府は極東開発を重視し、重点をアジア太平洋に戻しているところである。しかしこの地域には情勢が緊張した朝鮮半島がある。しかもロシアには日本との間に南千島群島をめぐる争いがある。これと同時にアメリカのアジア太平洋地域においてロシアに向け放たれる戦略的圧力も非常に巨大である。このためステルス戦闘機の研究開発はロシアがアジア太平洋地域において軍事的優勢と戦略空間を維持し、守る重要な措置の1つなのである。これと同時にロシアの挙動はアジア太平洋地域の安定に有利でもあり、一定程度この地域における覇権的ふるまいの発生可能性を下げ、この地域の戦略的バランスを維持し、守っている。アメリカに関して言えば、ステルス戦闘機はアメリカのアジア太平洋地域における地位を強固にするだけでなく、同時にアメリカとこの地域の同盟国の関係を強化し、また1つこの地域の情勢に介入する新たな道具を加えた。

アジア太平洋地域には伝統的なローカルパワーが存在するだけでなく、同時に急速に勃興するローカルパワーであるインドおよび経済的実力を強める日本と韓国が存在する(頑住吉注:日本の経済的実力は落ちてるでしょう)。新興国はいずれもアジア太平洋地域においてどんどん重要な影響力を発揮し、本国の国家利益を切り開き、アジア太平洋地域というこの世界の「新たな中心」で発言権を追求することを渇望している。科学技術の転入、流出の垣根が徐々に低くなるにつれ、ステルス戦闘機は新興国が伝統的大国のゲームの舞台に上がる通行証となり、本国の新世紀における生存、発展、進歩の新たな希望となっている。アジア太平洋地域の新興国がステルス戦闘機の研究開発に夢中になることは、必然的に本来すでに複雑なアジア太平洋の情勢を先の見通せないものに変え、人の心を湧き立たせる。

アメリカが最も早く第4世代機を研究開発したことは連鎖反応を引き起こし、客観的に見てアジア太平洋地域にステルス戦闘機が集中する現象を引き起こしたと言える。このことは一定程度アジア太平洋地域全体のゲームを刺激し、この地域の不安定要素を増加させた。


 中国の殲-20が無理をしない無難なものになっているのは分をわきまえて成功可能性の高いものにしようとしているからで、それが中国には自衛と世界平和の目的しかないことの証明だというのは無茶苦茶な主張ですが、アメリカのやり方に対する分析は、「まあそういう一面もあるだろうな」と思わせる内容でした。ロシアの存在がこの地域における覇権主義発生を抑制しているというのは賛同はできないにしても、中国からはそう見えているんだ、という意味で興味深かったです。








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