問題の多いF-22に対する擁護論

 いろいろ問題が起きて飛行停止にもなっているF-22に対して中国では「先進技術を盛り込み過ぎ」、「我が国はこれを教訓に慎重に」といった意見が多いんですが、これは比較的珍しい擁護論です。

http://military.china.com/news2/02/11078239/20120907/17417936_3.html


F-22は客観的に見るべき 新型機の問題を誇大宣伝すべきではない

アメリカのF-22は世界初の、しかも現在まで唯一の現役に投入された第5世代戦闘機でもあり、現在の世界現役戦闘機の最高技術水準を代表している。しかし冷戦終結以来、アメリカ国内各界のF-22に関する論争は全く止んだことがなく、この機の計画生産数も再三にわたって減らされている。近年F-22が就役中に暴露した一連の問題は、さらにこの機を不断に国内の多方面からの攻撃に遭わせ、アメリカ国防省は2009年4月に187機調達後にこの機を生産停止すると決定した。F-22に近年問題が同時発生している原因を全面的に分析し、この中から得られる経験と教訓を総括し参考にすることは、他国の航空兵器研究開発に対しても同様に重要な意義がある。

F-22が最近暴露した主要な問題を振り返る

F-22は2005年12月に正式に就役して以来、各種の問題が次々と起き、この機を長期にわたり外界の関心の焦点にし、最近ではメディアのF-22に関するマイナスの報道はさらに続々と起きて絶えることがない。まとめると、現在F-22に存在する問題は主に以下の3つの方面に集中している。

1.調達および使用のコストが非常に高く、維持メンテナンス、保障が困難

F-22は性能がずば抜けているが、価格も人を驚かせるほどで、2010年初めになるとその出荷単価はすでに1.46億アメリカドルに達していた。研究開発費を包括した単機のコストは4.12億アメリカドルにも達し、史上最も高価な戦闘機となっている。アメリカ空軍のF-22発注数は激減し、またアメリカ議会はこの機の輸出を禁止しているので、販売数拡大によってコストを分散させることもできない。これはこの機の単価が終始高いまま下がらない結果をもたらしている。

設計によれば、先進的理念を採用したF-22は以前の機に比べより良好な維持メンテナンス、保障性を持っているはずだった。しかし実際の状況はこれと大きく食い違っている。F-22就役以来、その維持メンテナンス、保障方面の問題はずっとアメリカ空軍を困らせている。これには主に次のものが含まれている。キャノピーの老化速度が予想より早い。機体の防水構造に問題が存在し、一部の部品と機体の外皮に錆による腐蝕が生じる。航空電子システムの維持メンテナンスが煩瑣、複雑で、機載コンピュータシステムのプログラムコードのテストが困難である。複雑な気候に対する適応性が劣り、一部の重要な部品がかつて湿気の影響を受け、対応するサブシステムが正常に作動できない結果をもたらした。機体の電波吸収塗装層が雨水によって侵食され、あるいは摩損によって脱落しやすく、250飛行時間ごとに即新たに吹きつけ塗装を必要とする。同時にこの塗装層はさらに生産ラインの工員、空や地上勤務の人員が有毒の化学物質を吸引する結果をもたらす可能性がある。

こうした問題ゆえに、F-22の維持メンテナンス、保障の難易度と費用はいずれも予想よりはるかに高いという結果がもたらされている。「ワシントンポスト」はかつて2009年7月に、F-22が1飛行時間ごとに必要とする地上での維持メンテナンス、保障時間は30時間を超え、毎飛行時間のコストは4万ドルを超えている、と明らかにした。

(頑住吉注:これより2ページ目)

2.システムが複雑で、信頼性が必ずしも満足できるものではない

F-22のシステムの組成と関連は非常に複雑で、就役の過程で不断に事前に予想しなかった問題や故障が起き、実際の使用中の機全体の信頼性と任務執行率が下がり、予想よりはるかに低くなるという結果をもたらした。アメリカメディアはかつて、2008年10月から2009年5月までの期間、アメリカ軍に配備されるF-22の中で国土防空任務を引き受けられるものは55%しか占めなかったと明らかにした。

アメリカ空軍の統計によれば、F-22は就役以来すでに7回の一級事故を発生させており、これは現役軍用機の中で飛行事故率最高の機種である。制式就役直前の2004年12月に早くも1機のF-22に速度センサーへの電力供給中断による墜落損壊がもたらされた。就役後のF-22にも2009年3月と2010年11月に相次いで2回墜落損壊が起き、2名の飛行員の死亡がもたらされた。この他F-22は就役期間にさらに、キャノピーの作動装置の故障が発生して飛行員がコックピット内に数時間閉じ込められる結果がもたらされる、前部降着装置が理由なく引き込まれて機首が滑走路に落ちる結果がもたらされる、日本に向け飛行する途中日付変更線を越える時にナビゲーションコンピュータが機能しなくなり引き返しを迫られるなどの一連の事故が続々と出現、発生した。さらに深刻なのは、機載酸素供給システムに問題が発生したためアメリカ空軍が止むを得ず2011年5月からと10月から、相次いで2回F-22を飛行停止にしたことだ(このうち5月からの飛行停止期間は4カ月を超えた)。その原因は今に至るもまだ調査により明らかにされておらず、このため一部の飛行員はこの機の操縦を拒絶さえしている。

3.機能が単一で協同作戦能力が劣る

自身の設計思想に制限され、最初の技術的状態下のF-22の作戦機能は相当に単一で、主に制空作戦が強調され、一方多用途性能、特に対地攻撃能力は非常に限られている。F-22は2発の450kgのGBU-32「JDAM」制御誘導爆弾を搭載できるが、その機載レーダーは合成開口レーダーの作動模式を備えていないため、高解像度の成像能力が欠乏し、このため独立して地上目標を識別して打撃を実施することはできず、しかも固定目標しか打撃できず、移動目標に対処することはできない。

それだけではなく、自身のステルス能力を確保するため、現在F-22に装備される総合飛行データチェーン(IFDL)は同型機およびRQ-4戦場機載通信節点無人機(頑住吉注:グローバルホーク)としか双方向のデータ通信ができず、その他の軍用機と同様の情報交換を行うことはできない。このためF-22はアメリカ軍のその他の現役軍用機と情報の共有、協同作戦を実現することが難しく、このことはこの機が装備する先進センサー、具備する強大な情報獲得能力の優勢を大きく割り引かせることにもなる。

まさにこうした原因により、F-22は就役以来、一部の日常パトロール、スクランブル任務の他には、最近アメリカ軍が参与したいかなる局地戦争でも登場しておらず、アメリカの現役軍用機中唯一実戦を経ていない機種となっている。

F-22に問題が頻発する原因を分析

近年におけるアメリカ軍の新型装備研究開発プロジェクトの中には、「時間遅延、意義低下、価格高騰」などの問題ゆえにプロジェクトの調整がもたらされ、甚だしきに至っては中止されたものも決して少なくない。しかしF-22のように、生産に入り就役した後に依然問題が頻発し、長期にわたり論争が絶えない(その電波吸収塗装層は一度法律的告発に直面した)ものは比較的珍しい。このような状況をもたらした原因は多方面にわたるが、そのうち主要なものは以下の数点である。

1.第5世代機の技術的進歩の度合いは大きく、コストの上昇、就役初期の信頼性低下をもたらしている

第5世代機の中の代表的機種として、F-22はステルス性、超音速巡航、超機動、高度な総合的航空電子システムなど多項目の革命的性能特性を持ち、その総合性能には第4世代機と比べ大きな飛躍がある。その飛躍はその前の各世代のジェット戦闘機の間の隔たりより遠く大きいだけでなく、F-22がこのような性能的飛躍を実現したことは、ステルス外形、電波吸収/透過材料、アクティブフェイズドアレイレーダー、高推力比ベクトルエンジンなど先進技術の広汎な採用という基礎の上に建立されたものである。このためその研究開発が以前に比べずっと複雑(例えば超大規模ソフトウェア開発)になり、コスト、費用が以前の各世代の戦闘機をはるかに超え、同時に就役初期の信頼性問題の発生も避けられないという結果をもたらしたのである。

何故なら、システム工程という角度から見て、成熟し信頼性の高い技術であっても、それを大量に1つのプラットフォーム上に集成すれば、やはり免れ難く問題が発生する。一方第5世代機は多くの全く新しい先進技術(すでに事前論証を行ってはいるが)を1つに集成するのであって、信頼性問題は疑いなくより深刻さを加えることになる。もし同じ設備が第4世代機上では問題に気付かれなかったとしても、それは直ちに第5世代機上で故障が起きないことを保証できるわけではないのである。

(頑住吉注:これより3ページ目)

2.F-22はまだ就役初期の事故多発期にある。

軍用機はその他の技術装備同様、その全寿命周期内では異なる段階の故障率が「バスタブ曲線」状態を呈する。就役初期の故障率は高く、使用過程につれて信頼性は徐々に高まり、機は長時間の技術的安定状態入り、そして就役末期にその故障率は再び上がることになるのである。

F-22に関して言えば、この機は就役から満6年になったばかりで、今は依然「バスタブ曲線」の前端の事故多発期にある。いくつかのあらかじめ潜伏していた問題、ないし設計上のいくつかの瑕疵がまさに徐々に顕在化しているところで、現在の信頼性が良くないのも理解できる。最近起きたF-22の機載酸素供給システムの問題を例に取ると、アメリカ空軍の提供するデータによれば、全てのF-22機群の2011年9月から2012年2月までの間に出動した総回数は8,700回を超え、このうち9回のみ飛行員に酸素供給不足類似の症状が起き、これは総回数の0.1%を占める。このような低い故障率は試験飛行段階では発見されることが難しく、就役後大量使用を経てやっと暴露され得るのである。

3.F-22の独特の設計思想は作戦使用と後続の改良に制限をもたらす

F-22の研究開発は濃厚な冷戦という背景を帯びており、直接の仮想敵はソ連のミグ-29、スホーイ-27などの高性能戦闘機だった。このためF-22は制空作戦能力の向上を主要な設計目標とし、当初のF-15の「1ポンドの重量も対地攻撃には用いない」という設計思想を相当程度参照し、多用途、特に対地、対艦攻撃能力方面の考慮は多くない。同時に自身が暴露する可能性をできる限り減少するため、F-22は戦時において独立行動し普通の航空機とは編隊を組まないことが強調される。このため普通の航空機との協同作戦は考慮されない。

これだけではなく、F-22の今後の多用途性能開拓展開ポテンシャルも相当に限られている。例えばこの機に内蔵される弾薬コンパートメントは当初には空対空ミサイル搭載のために設計されたもので、容積が比較的小さく、比較的大きな数量あるいは体積の対地攻撃弾薬は搭載できない。もし外部吊り下げ方式を採用すればしたでステルス性能に深刻に影響することになる。このためF-22には、F-15のように最終的に強大な対地攻撃能力を持つF-15Eダブル重要任務戦闘機に発展したようなことは難しい。F-22を基礎に改良されたFB-22「区域爆撃機」方案は当初設計の制限を受けたため、その性能指標が要求に達することが難しく、費用は非常に大きく増加し、最終的に放棄された。

4.時代環境の変化がF-22プロジェクトへの経費投入に影響を与えた

冷戦の時期、軍備競争の中で優勢を勝ち取るため、アメリカ軍の戦闘機といった種類の重要装備プロジェクトへの投資は全力を出し切るものだったと言うべきである。だが冷戦後の国際政治、軍事情勢の変化につれ、加えて近年における国内の弱った経済環境があり、現在アメリカ軍の装備に対しては経済的受け入れ可能が日増しに重視され、もはや以前のようなほとんど無制限に財力を投入するようなことはなく、F-22の生産と後続の改良もこのため影響を受けている。

冷戦後F-22の調達数は何度かの調整を経て、当初の750機から現在の187機まで減少している。装備数が限られているため、アメリカ軍は現役のF-22を使用して頻繁に訓練や演習に参加させるしかなく(さらに多数の演習の中で往々にして核心的役割を担う)、このため使用の強度が高くなる。この機の就役寿命が繰り上げて消耗され尽くす以外に、さらに機体の疲労、部品の摩損が起きやすく、潜在的な事故のリスクが増加する。アメリカ軍はすでにF-22の就役寿命を本来定められていた8,000飛行時間から10,000〜12,000飛行時間まで延長することの実行可能性について考慮し始めている。

この他、国防予算削減のため、F-22のグレードアップ経費(原計画では70億アメリカドル)も半減されるという結果がもたらされ、アメリカ軍が想定したF-22の戦闘力の全面的向上、維持メンテナンス性、信頼性改善の技術方案は実施が難しくなり、現在選択的にF-22に対し部分的な重要な技術グレードアップが行えるだけで、その進度も遅れている。

(頑住吉注:これより4ページ目)

他国に対する啓示と提案

F-22は世界の第5世代機の先駆として、その動向はずっと各国の軍や工業界の高度の関心を引き付けている。F-22研究開発と就役の過程に存在した問題を回顧し、その主要な原因と関連する影響を分析すると、その中からいくつかの有益な啓示が得られる。

1.F-22に存在する問題に対し客観的に認識し正しく向き合うべきである

アメリカのF-22研究開発と就役の歴史を回顧すると、第5世代機の技術的飛躍は大きく、先進技術が密集した先端装備であり、研究開発中に出現した曲折から就役初期に問題が絶えなかったことまでが、避けがたかったことが見て取れる。何故なら新製品の開発自体が、1つの不断に出現する問題と問題解決の過程に他ならないのであって、毎回の問題の出現と解決はいずれも製品の性能向上と技術の成熟に向かって歩み出す重要な一歩であり、最終的に全体的技術レベルの質的飛躍をもたらすことになるのである。

他方においては、F-22に出現する問題に対し過度に誇張したり誇大宣伝するのはよろしくない。現在世界は情報伝播が高度に発達した時代にあり、F-22は外界が長期にわたり関心を注ぐ焦点なので、この機に関係する各種の情報は容易に、大量に探し集められ伝播する。現在アメリカ国内メディア、議会、政府説明責任局、競合メーカーなどがそれぞれ異なる目的から、いずれもF-22の現状に密接な関心を持ち、たびたびそのネガティブな状況を明らかにし、攻撃し、これがF-22が外界に与えるイメージを悪くしている。しかし実際の状況は完全にその通りでは決してないのである。例えば「増量3.1」グレードアップ完成後のF-22の対地攻撃能力はすでに初期型に比べ相当向上している。F-22の、再三人から非難される価格問題にしても、もし現在の第4世代機最新型の、ややもすれば数千万、億ドル単位にも上る単価と比べれば、余りにも常軌を逸しているとも評価できない。

他国に対してということで言えば、未来の先進装備研究開発の中で出現するかもしれない困難に対して同様に客観的態度を保持すべきであり、最近におけるF-22の波風の影響を受けるのはよろしくない。

2.武器装備の信頼性、維持メンテナンス性と保障性は性能指標と同等に重視するべき

第5世代機のような先進的航空装備に関して言えば、それが次世代に飛躍する高性能、多くの先進的、甚だしきに至っては全く新しい技術を具備していることを確保することは必要不可欠である。だがいかに避けようともここからもたらされる維持メンテナンス、保障性の問題は非常に重視するに値する。

客観的に言って、第5世代機研究開発および就役中に出現するかもしれない問題に対し、アメリカ軍および工業界に予見と考慮がなかったわけではない。F-22は方案段階において早くも保障性を高度に重視し、しかもこれをステルス性、超音速巡航、超機動性能など戦術性能と同等に重要な地位に置いた。セルフ保障特性設計、相互式部品供給、総合維持メンテナンス情報システムなどの手段の採用により、理論上はそれまでの戦闘機と比べさらに良好な維持メンテナンス、保障性を備えた。だがこうではあっても、F-22の就役後には依然多くの予測できなかった問題が起きているのである。

F-22の経験、教訓にかんがみれば、他国は軍用機研究開発過程で、飛行機の高性能、高い指標を一方的に追及して維持メンテナンス、保障を軽視する傾向を特に注意して避けるべきである。そして維持メンテナンス、保障性、性能指標、コスト費用、プロジェクトの進度などを統一的に考慮して計画配案し、維持メンテナンス、保障と戦術技術性能を同時に論証し、同時に設計し、同時に検証すべきである。だがアメリカのF-22のあらかじめの探索があるので、他国が同類装備を研究開発する時には後発の優勢があり、方向性をもってカギとなる重要技術への取り組みを強化することができ、したがって回り道は少なくて済む。

3.軍用機開発は近い将来と遠い将来の必要性を合わせ配慮し、これを合理的に位置付けるべきである

F-22の発展過程は冷戦と冷戦後、機械化戦争と情報化戦争の時代にまたがっており、このためその性能上の要求と機能の位置付けに偏差が出現した。今日の視点をもって見れば、この機は同時に2つの極端に向かっているようである。すなわち一方においてF-22はステルス性、超音速巡航、超機動性能など第5世代機のあらゆる性能特性を同時に具備することが要求され、もって性能指標上相手を全面的に圧倒することが期された。これは技術的難易度、コスト費用、潜在的リスクを増大させた。だが他方面においては、F-22は作戦機能上単一過ぎでもあり、制空作戦を偏重し、多用途性能を軽視し、この機が冷戦後の時代に力をふるう場所を探すことを難しくさせた。これは今後の各国の軍用機発展にとって、疑いなく踏むべきでない轍である。

我々は、情報化条件下での多軍種連合作戦の必要から、加えて今後単機の製造、使用コストがどんどん高くなることから、多用途と汎用化は未来の軍用機発展の必然的ルートであるということを見るべきである。だが各国の技術、経済的実力と作戦上の必要性は異なることを考慮し、同時に新しい航空機の性能指標と採用する高度の新技術に対し総合的な比較判断と合理的な取捨選択を行い、完全無欠を求めてかえって失敗するようなことを避ける必要がある。


 すごく説得力のある文章だと、少なくともこの方面の知識が乏しい私には感じられます。しかし深読みしすぎかもしれませんが、殲-20に重大な問題が生じ開発が停滞しても、それは止むを得ないことなんだと言い訳する布石みたいな印象も受けてしまいます。













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