C78左側面

C78ブレイクオープン

C78ハンマーコック

 画期的なボルトアクションライフルを開発してプロシア陸軍に採用されたパウル・モーゼルがハンドガンでも軍制式化を狙って初めて開発した連発ピストルがC78だ。コルトSAAの5年後、1878年の銃とは思えないほどクラシカルな印象を受ける。最大の特徴は非常にユニークなシリンダーの回転方式だ。ほとんどのリボルバーはシリンダー後部の中心近くに細かいラチェットがあり、ハンマーまたはトリガーと連動するシリンダーハンドがこれを押し上げることによってシリンダーが回転する。これに対しC78はシリンダー外周にジグザグの溝が彫ってあり、ここにフレーム上部から突き出た突起がはまっている。突起はハンマーに連動していて、コックすると前進、ダウンすると後退する。これによりシリンダーはハンマーコック時に斜めの溝に沿って回転し、ダウン時はストレートの溝により回転しない。溝の内部は階段状になっていて、逆転はしないようになっている。こうした方式は1856年にコルトがパテント申請しており、史上初めてのアイデアではないが、製品化されて世に出たものは一部のオートマチックリボルバーを除き他にほとんど例がない。
 メインスプリングがフレーム内で水平に位置する、基本的な分解が工具なしにできる、グリップ内に何のメカも入っていないなど、後のモーゼルミリタリーとの共通点がみられるのも興味深い。モーゼルミリタリーの魅力にもなっている「ブルームハンドル」といわれる独特のグリップデザインは実用的には理解に苦しむが、フリントロック時代をひきついだようなC78のデザインが変化したものと考えれば理解しやすい。
 非常にユニークでそれなりの長所もあったC78だったが、プロシア陸軍は「ライヒスリボルバー」と通称される当時使用していた単純なリボルバーと比較してC78の独特のメカや複雑さに懸念を持ち、制式採用を断念した。一般市販も行われたが、ここでもあまり大きな成功は収められなかった。欧米ではこの銃を「ジグザグリボルバー」と通称している。


実銃データ

○全長:284mm ○全高:158mm ○全幅:46mm ○銃身長:143mm ○口径:10.6mm ○重量:1.2kg ○装弾数:6発 ○作動方式:シングルアクションオンリー ブレイクオープン ○ライフリング:4条右回り


 資料には主にドイツの軍事情報誌「WAFFEN REVUE」(36号)を使用した。キットは発射機能のないモデルガン形式。エジェクターを省略し、工具なしの分解ができない点を除けば実銃とほとんど同じ操作ができる。複雑そうに思われるかもしれないが、このシリンダーの回転方式は精度、剛性の低いプラキャスト製ガレージキットには有利だ。シリンダーストップとシリンダーハンドを1つの突起で兼ねているため、精密さや強度が要求されるパーツの点数が少なくなり、また両者の同調の問題もない。細かいラチェットを毎回リセットされる動きで寸分たがわず押し上げるより、はまった溝の中を一方通行で進んでいくだけの方がはるかに許容範囲が広いのだ。また、必要な力も中心近くで回すより外周で回したほうが少なくてすむのは小学理科レベルの常識だ。この方式が一般化しなかったのが不思議に思えるほどだ。

当時の価格:キット9,000円 完成品:16,000円


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