セトメ モデルL

 「Visier」2005年3月号に、G3に関する特集記事が掲載されていました。辞書を引きながらざっと読んだんですが、まず執筆者の文章が私にはどうも読みにくく、さらにドイツの兵役義務などについて知識がないと理解できない部分が多く、しかも私の知りたいことに関してあまり触れられていませんでした。私が最も知りたかったのは、ローラーロッキングシステムの長所はどういう点にあり、そして何故それが最近になって放棄されねばならなかったのか、具体的にどういう問題点があったのか、などです。もちろんこれらは他の資料でいろいろ語られているわけですが、現在当のドイツ人はこのシステムをどう評価しているのか、つまりあの時点ではこういう理由であれが最善の選択だったと思っているのか、それとも初めからガスオペレーションにしておけばよかったのではといささかでも考えているのかについても知りたかったわけです。ところが実際の記事内容はG3の歴史に関してもあまり詳しくなく、G3に具体的にどういう問題点があったのかなどについても記述がなく、歴史的総括もされていませんでした。ちなみに最も詳しく触れられているのは現在ドイツで人気があるというロングブルバレルを備えたスポーツ型に関してでした。というわけで、残念ですけど苦労に見合わないので全部を訳すのは止めました。
 G3の原型となったセトメはドイツ・スペイン合作、というか敗戦後の事情でドイツ人がスペインで作ったものですが、その後スペインではローラーロッキングシステムを使ったセトメ モデルLを独自に開発し、自国軍に装備しました。これは.223口径で、いわばH&KのHK33あたりに相当するものです。特集では別扱いでこの銃について触れられていましたが、これはあまり知られていない内容だと思われるのでまずこれをお読み下さい。


最後の試み

 SETMEは後にG3として大人気を博するアサルトライフルによって大当たりを出した後、80年代に小口径NATO弾薬5.56mmx45仕様のモデルLを送り出した。…だが残念ながら遅すぎた。

果としてドイツ連邦国防軍へのCETMEライフル(別名G3)採用をもたらしたドイツ-スペイン共同事業は、スペインには期待した果実をもたらさなかった。H&Kが10年そこそこで軽火器製造分野で最もモダンな、そして最も利益を上げる企業のひとつに成長した一方で、CETMEは忘れ去られた。すでに1960/61年、このドイツのライフルの公式な取引名称から「CETME」という短い語句は消えた。80カ国以上に採用されたG3はスペインにも起源を持っていたという事実は、今日最もわずかな人にしか、そしてスペイン内部でさえほとんど全く知られないままである。

なりふりかまわぬ生き残りのため
 新しいアサルトライフルの開発は、スペイン軍の要求ではなく、自身のイニシアチブ、そして生き残りに向けた意志に基いていた。アメリカは1960年代初め、それでなくても小口径NATO弾薬5.56mmx45に向け進路を定めていた。1966年から研究が始まり、アサルトライフルモデルA、B、そしてCから出発した最初の小口径.223系バリエーションが続いて生まれた。

 だが、継続発展と機能テストは1980年までも長引いた。すでに4年前にCモデルの製造は中止されていたにもかかわらずである。1980/81年の公式な部隊テストによる肯定的な評価の後、スペイン陸軍は新アサルトライフルLおよびLCの採用を決めた。その直後の1984年、サンタバーバラ所在の国営工場「Empresa Nacional」(EN)において量産が最終的にスタートした。

選ばれた構造 
 当然車輪を新発明することはできない。だからモデルLの構造にはもちろん他のライバル製品の基本原理も導入された。例えばHK G41、FN FNC、M16のそれである。例として高いストックポジション(M16のような)は射撃時の安定性を高めることを意図していた。スタンダードバージョンであるL(全長925mm、銃身長400mm)とならんで、同時にLCが登場した。これはコンパクトバージョンのことであり、320mmのバレルと伸縮可能なメタルショルダーストックを持っていた。Vの文字が加えられたモデル名称(頑住吉注:セトメ モデルLV)はスコープをマウントできる可能性を示していた。ロングバレルつきのモデルLだけではあるが、ライフルグレネードの発射またはバヨネットの装着が可能になっていた。

 両タイプともピストルグリップ、ストック、ハンドガードは過熱および酸に耐性のある特殊なプラスチック製である。ハンドガードの形状とマガジン収納部の長さは、その銃の製造シリーズが何であるかを示す。すなわち、初期のモデルは長い、四角型のハンドガードつきだったが、この形状はより小さく丸いフォアグリップのために放棄された。同様に初期バリエーションはまだ(頑住吉注:上下に)短いマガジン収納部を持っていた(頑住吉注:当然ながらマガジン収納部は上下に長い方がマガジンのがたつきが抑えられ、外力にも強くなります。これが延長されたということは短い初期モデルで問題があったということでしょう。前をひっかけてから後ろを回すように入れる「回転式」はともかく、「ストレート挿入式」の中ではここがライバル製品群に比べてかなり短く、初期のモデルLくらいしかないように見える89式は大丈夫なんでしょうかね)。
 
良好に装備された
 クロームメッキされていないバレルには、初め初期のM16のようなスリットつきフラッシュハイダーがあった。後にはG3でも知られるような「閉じた形」が選択された(頑住吉注:こう書くよりM16同様チューリップ型からバードケイジ型に変わったと書いた方が分かりやすいと思うんですが)。弾薬供給には棒状およびカーブした容量10、20、30発のマガジンが使われた。M16およびFN FNCのマガジンさえ使用できた。その際アメリカ製ライフルはしばしば装填障害を起こした(頑住吉注:いまいち説明不足ですが、モデルLにM16、FNCのマガジンを使用しても問題なかったが、M16にFNC、モデルLのマガジンを使うと装弾不良が頻発したということではないかと思います)

 ピストルグリップ上方の右手の親指で操作するセレクターはセミオート、フルオート、3発バーストを備えていた。両モデルのサイト設備は、並外れて大きい印象を与える。この原因は高い位置に置かれたストックに原因がある。その代わり距離調節サイトは両側のガイドの間で外部からの突きおよび落下から非常によく守られている。後にはサイトがピカティニーレールに設置されている型もあった。この場合操作者は必要な場合オプティカルサイトを取り付けることができた。

 モデルLをHK33と比較すると、いくつかの差が示される。例えばより大きなトリガーガード、ピストルグリップ、ハンドガードである。それだけでなく、Lライフルは200および400m用の2枚のリアサイトブレードを持つフリップアップリアサイトを備えていた(頑住吉注:HK33はG3やMP5でおなじみのドラム型です。ちなみに写真やキャプションによれば初期はモデルLもドラム型でした。経験上実戦では2段階選択で充分ということになったんでしょう。)。

迫るアウト
 古いCモデルとならんでなお今日でさえ多くのLシリーズのアサルトライフルがスペイン陸軍において現役、あるいは予備兵器としてある。そしてまだ長い年月留まることもまた確実である。だが1996年、CETME構造に非常ベルが鳴らされた。いくつかのスペイン軍特殊部隊に最初のM16が出現したときにである。

 同年陸軍の公式な公募が行われた。これにはカナダのDiemaco C7(頑住吉注:M16のライセンス生産品)、ベルギーのFN FNC、イスラエルのガリル、スイスのSG550、オーストリアのAUG、そしてドイツのG36が参加した(頑住吉注:C7をM16系、ガリルをAK系の代表と見なせばまさにアサルトライフル頂上決戦、夢の対決ですね)。しかしCETMEはすでにここには見られず、参加には程遠い位置にいた。1999年、最終的にサイが投げられ、G36がスペイン軍の新しいライフルに指名された。その後Lライフルとともにスペイン銃器インダストリーの一部(頑住吉注:CETME)もまた没落した

運命の皮肉
 数十年前、まだドイツの銃器インダストリーはスペインにあり、CETMEライフルの手ほどきをしていた。彼らは特にH&Kの彗星のような急発展に向けたまさに屋台骨の建設を行った。まさに伝説的Cモデル(頑住吉注:≒G3)のH&Kブランドをつけた後継機種(頑住吉注:G36)と後の(頑住吉注:CETMEライフルである)Lモデルが対峙し、これをもってスペインの銃器産業の一部の終わりの鐘が鳴らされたことは、数多くの「狼狽した人々」(頑住吉注:CETME没落で職を失うなど不利益を受けた人々のことだと思います)をますます悲劇的に見せる。


 セトメライフルシリーズに関してはこのページに比較写真がありました。

http://www.securityarms.com/20010315/galleryfiles/2200/2225.htm

 上からスコープが装着できるLV、ショートバージョンのLC、新型のL、旧型のLと並んでいます。旧型のマガジン挿入部が上下に短く、フォアグリップのデザインも違うことが分かります。下の方にはG3の原型になったAなどもあります。

 ドイツ人はどうでもその話題には触れたくないのか、この記事でも何故ローラーロッキングが放棄されたのかについては書かれていません。別に何か重大な欠点があったのなら触れられているでしょうし、後継トライアルに参加した機種が全てガスオペである(H&Kのローラーロッキング式.223ライフルも、ローラーロッキングではないものの同じディレードブローバックのFA-MASも参加していないわけで)のを見ればモデルLの更新が求められた最大の理由はローラーロッキングだと推測されるんですがね。

 ちなみに最後の記述は、貧乏暮らしから成功して金持ちになった人がいい暮らしをしながら、貧乏時代の隣人がチャンスを生かせず貧乏暮らしを続けているのを見ながら「運命って皮肉だねえ」とつぶやきながら微笑んでいる図、という感じで個人的にはちょっと嫌な感じです。

 さて、続いてG3特集の中でこれだけは興味深いと思われた囲み記事の内容を紹介します。


 リコイルローダーとしてのG3は145グレイン(9.4g)弾を初速約780〜800m/sで発射する。つまり作動にとって決定的に重要な運動量(gによる弾丸重量 x m/sによる弾丸速度)は約7500gxm/sになる。経験上G3(テストはHK41で)は700m/sでもなお信頼性をもって作動する。この弾丸は依然約6600gxm/sの運動量を生み出す。G3のバレルは問題なく110から190グレインまでの弾丸を安定させる。必要な最小限度の初速を算出するためには、運動量/弾丸重量を計算することになる。つまり8gの場合825m/s、9.7gの場合680m/s、11gの場合600m/s、11.7gの場合566m/s、12.3gの場合536m/sである。
 
 チャンバー内の「軽減ミゾ」(頑住吉注:薬莢がチャンバー内に強く張り付いた圧力の高い段階でボルトが後退を始めることによる薬莢切れ事故を防ぐフルートのことです)とショートバレルによるガス損失は、G3の子孫から発射された場合の初速を、600mmバレルを持つボルトアクションライフルの場合より約60m/s低いものにする。使用者はミリタリー弾薬の運動量に留めるべきである。なぜならばもしそうでないとボルトが高すぎる速度により後部にぶつかって破損するからである。これは銃を損傷し、射撃時に不快な衝撃を生む。つまり、168〜190グレイン弾を持つフルロードのマッチ弾薬は、そのファーストクラスの精度にもかかわらず正しい選択ではない。できるだけミリタリー弾薬と同じものを使うのがよい。ミリタリー弾薬は9.4グレイン弾を43〜46グレインの発射薬(発射薬の種類次第で変わる)で800m/sに加速する。軽度の命中精度損失を伴い、N110(頑住吉注:発射薬の種類だと思いますがこの辺詳しくないんでよく分かりません)を使って弱装弾薬を作ることもできる。銃はこれを使ってオールシーズンのシューティングレンジ状況下で確実に作動する(頑住吉注:泥や砂まみれになる実戦の状況下では保証の限りでない、というニュアンスでしょうか)。

 ロードの実際。普通に使われている全ての.308リロード器具は適する。G3から排出された薬莢の膨らみはわずかのみであり、薬莢中央の損傷も重要ではない。先端の開口部をいたわるためには薬莢をできるだけソフトに受け止めるべきである(頑住吉注:空薬莢がコンクリートの壁にぶつかったりすると先端部がゆがんでリロードのとき困るということでしょう)。弾丸の件。フルメタルジャケットあるいはフルメタルホローポイントを使うべきで、ラウンドコップはわずかしか適さない。火薬とプライマーの件。.308用は全て役立つ。弾薬全長の件。弾丸タイプ次第で67〜70.5mm。

 HK41の射撃成績。良いミリタリー弾薬10発のグルーピングは約60mmで、適したマッチ弾薬なら約40mm。この銃は適した弾薬を使うと、好きなだけ射撃し、極端にバレルが加熱してもグルーピング90mmを維持する。HK41はファーストクラスの命中精度を持つほとんど全ての弾薬を消化するので、リローダーはほとんど報われない。

 私見。G3クローンとM14/ガーランドの子孫とどちらがよいか? 先端的命中精度状態ではこれらの銃は全て同価値である。しかし、M14/ガーランドの場合これはやっとのことで引き出さねばならない。G3は即座にやりこなす。


 運動する物体の重量と速度の積である運動量に関しては弾丸の効力に関する項目で何度か触れました。ボルト(スライド)の後退力は弾丸のエネルギーではなく運動量によって決まるわけです。同じエネルギーならば運動量は弾丸が重い方が大きくなります。だからドイツで高速軽量(運動量が小さい)の「アクション4」など新型警察用弾薬が採用されたことで、P2000やP99はスライド重量を減らして対処する必要があったわけです。
 今回はG3を例にしていますが、ある重量と速度の弾丸で充分な信頼性をもって作動することが実証されている場合、重量の違う弾丸を使うのにはどれだけの速度が必要かが計算で導き出せるというわけです。もちろんこれは反動利用の場合であり、ガスオペでは事情が異なるんでしょうが。
 G3はバレルにガスを導く穴を開ける必要がなく、またバレルをフローティングにしやすいので命中精度上有利です。量産品でも高い命中精度が期待できますが、高度なチューニングを施したM14やガーランドでも可能な範囲を超えることはないということのようです。バレルをフローティングにしやすいという理由の他、G3の場合重量のあるガスピストンが長距離動いたりボルトキャリアを激しく突いたりといった動揺の要因が少ないことも有利な事情と思われ、これはM16と似ています。バレルに穴がないことはM16より有利でさえあるはずです。さて、それでは何故G3、あるいはHK33の命中精度はM16系に及ばないんでしょうか。全体的なデザインの違いや、ボルトの動き始めが微妙に早いことなどが考えられると思いますが私にはよく分かりません。















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