CHAMPマシンピストル

 今回は予定を変更して、ドイツのフォーラムの、「Identifikation」(これなーんだ?)スレッドで紹介された、私が全く知らなかった銃に関する情報をお伝えします。

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R.H.GillumによるChampマシンピストル

長年にわたっていろいろなアメリカ軍用銃器メーカーの援助をしてきた経験が、銃器設計者であり発明家のRichard H. Gillumによるこの新しい小型マシンピストルの開発に際して助けとなった。この銃は現在この分野に存在する従来品のすべてと異なっている。

「Champ」は普通のミリタリーピストルのサイズにおいて、フリーハンドで射撃をこなせる初のマシンピストルである。その重要な新しい点、それはすなわちリコイルショック制御に関するGillumの原理である。この銃は遅延されたリコイルローダーであり、通常のマシンピストルが垂直に保持されるのと違い、水平に保持される。すなわち、両グリップ(そこから突き出たマガジンの付属するピストルグリップと、追加的ハンドグリップ)はバレルの右と左のサイドに位置する。サイトはスライドの上面ではなく、その右側面に設けられている。薬莢は下に投げ出される。だが一番の注目点は、左に位置するハンドグリップである。銃のリコイルショックにより、水平に位置するこの銃は左へと移動する傾向を持つが、これがこのハンドグリップにより制御されるのである。

Gillumのマシンピストルは非常に堂々とした外観でもないし、追加的なサイドのハンドグリップによりかなりかさばりもする。だがこのアイデアによってマシンピストルは、少なくとも短いバーストの際、極度に安定してターゲットに向け保持できるものとなっている(ちなみにGillumはこのサイドのグリップという原理を他の銃にも試験的に使ってみている。リボルバーなどのアーミーピストルも、ノーマルな形のものより決定的に正確な保持で射撃された)。

Champマシンピストルは目下2挺のプロトタイプが存在している。1挺は口径9mmパラベラム弾薬仕様、そしてもう1挺は9mmクルツ弾薬仕様である。このマシンピストルはたった20点の部品からなり、ガスで遅延されたリコイルローダーシステムに基づいている。リコイルスプリングはバレルに巻かれ、延長されたスライドには空洞があり、この中に火薬ガスが圧入されてスライドの運動にブレーキがかけられる。これによりリコイルショックも緩和される。だが発射速度は9mmパラ型で毎分1500発、9mmクルツバージョンで毎分1000発となっている。ファイアパワーを高めるため、Gillumは現在使用している20発マガジンの代わりに、いろいろな長さのマガジンを使うことを考えている。

Champマシンピストルは実に独特なセーフティを装備している。トリガーガード内に、スプリングでテンションをかけられて設置されたスイング可能なプレートがある。これはトリガーガードをふさぐようになっており、またトリガーを放した際は自動的にスイングして中に入り、銃はセーフティ状態となる。だがマニュアルで操作することもできる。

私はChampマシンピストルを試験的に射撃してみる機会を得た。Gillumがこの銃の命中精度を実演してくれていたにもかかわらず、私は正確性についてやや懐疑的だった。だが私はサイドのハンドグリップの長所を自身で確信することができた。フルオートによる20発全てが、距離25mのマンターゲットの胸の高さに密に集まって着弾していた。これは他の小型マシンピストルでは成功しないだろう。

私は2挺のマシンピストルの試作品を使って500発を撃った。9mmクルツ仕様の銃は全く同様に射撃が快適だったが、そう、これはむしろ予想通りのことだ。延長されたFNハイパワー用マガジンによって2回の装填障害が起きたが、これがテスト射撃を通じての唯一の問題だった。

Champマシンピストルはサイドのハンドグリップのために非常に正確に射撃ができる。だが同時にこのハンドグリップは、この銃をコンシールドキャリーすることを困難にしている。そしてコンシールドキャリーこそこのサイズのマシンピストルの目的なのであるが。だが私は確信する。Gillumがさらにある解決策を見出すことを(適合するホルスターはすでに存在している)。

高い発射速度も一定の問題点であるが、短いバースト射撃によって埋め合わせできる。Champマシンピストルは厳しい砂、塵、水に対する耐性テストを受け、その中でこの銃は非常に汚れに強いことが示された。アメリカ陸軍や警察特殊部隊はすでにこのChamp小型マシンピストルに興味を示している。

Champマシンピストル

メーカー:Ordnance Research & Development Corp. (頑住吉注:オハイオ州以下の住所は省略します)

設計者:Richard H. Gillum

システム:ガスで遅延されたリコイルローダー。オープンボルトファイア。フルオートのみ。

口径:9mmパラ、および9mmクルツ

銃身長:115mm(9mmパラ)、96mm(9mmクルツ)

サイト:交換可能なフロントサイト、サイドに調節可能なリアサイト

発射速度:1500発/分(9mmパラ)、1000発/分(9mmクルツ)

マガジンキャパシティ:15または30発

全長:200mm(9mmパラ)、175mm(9mmクルツ)

重量:約1000g(9mmパラ)、約900g(9mmクルツ)

キャプション

1 9mmパラベラム仕様のChampマシンピストル。射撃の際マガジンの入ったピストルグリップは右に位置する。左手は銃のサイドグリップを保持する。注目に値するのは、通常と異なる位置にあるサイトと、トリガーガード内の独特なセーフティである。

2 Champマシンピストルのテスト射撃

3 分解されたChampマシンピストル

4 新しいChampマシンピストルの保持の詳細


 この人の文が読みやすいこともあるんでしょうが、久しぶりにもかかわらずやはりまだ中国語よりドイツ語の方が訳すのに楽です。

 非常に興味深い銃です。システム的にはH&K P7ピストルに近いガスロック式ですが、具体的にどこがピストン、シリンダーの役割を果たしているのかははっきりしません。9mmパラより運動量の大きい.40S&W仕様のP7が、スライド上部の肉厚を無理に増やして奇妙なスタイルになったことでも分かるように、このガスロックというのはあくまでブローバックに補助的にブレーキをかけるものであって、スライドは基本的に重い方が有利です。この銃のスライドはいくらなんでも軽すぎのように見えますが、問題なかったんでしょうか。本文中に「これによりリコイルショックも緩和される」とありますが、これはストレートブローバックより緩和されるということであって、ガスロック式のP7やステアーGBは、アメリカのM9トライアル時に、ショートリコイルの銃よりリコイルショックがきついと評価されています。一般にこの傾向はスライドが軽いほど顕著になると考えられます。

 さて、この銃の最大の特徴である補助グリップは、実はこの銃の機構とは何の関係もありませんでした。普通のハンドガン、マシンピストルの上部マウントベースに補助グリップを取り付け、横向きに撃つことは簡単に可能です。こういうアイデアが一般化していないということは、メリットよりデメリットの方が大きいということなんでしょう。しかし通常の、グリップの前方に取りつけられたバーチカルフォアグリップを握って跳ねあがろうとするマズルを下に引っ張って抑えるよりも、「上」から抑えつけた方がやりやすいというのは納得できそうな気がします。

 セーフティに関する説明はちょっと簡単すぎますが、単にかまぼこの断面のような形のプレートでトリガーを引くのを邪魔するだけだとしたら、あまりにも不安なセーフティです。また文中では全く触れられていませんが、グリップ後下部のマガジンキャッチと思われる部品はあまりにも不細工で邪魔そうです。

何の雑誌に掲載された記事かは書いてありません(形式からして「DWJ」?)が、1984年11月号とされています。全く知られていない以上量産はされていないはずです。「Champ Gillum」で検索してもこの銃の情報には行き当たりませんでした。











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