CHAMPマシンピストルのパテント

 以前サイト「特殊小火器研究所」を運営し、GUN誌のガンスミス企画にも非常に高度な作品を出品されていた秋さんが、CHAMPマシンピストルのパテントを発見し、送ってくださいました。

 この銃はディレードブローバックであり、前回の説明ではH&K P7やステアーGBのようなガスロックに読めましたが、やや違っていました。P7はバレル下に独立したピストン、シリンダーを持ち、GBはバレルがピストン、スライドがシリンダーを兼ねています。下の図4および5を見てください。この銃のシステムはどちらかといえばGBに近いですが、ピストン、シリンダーを持ちません。バレルにかぶせられた円筒形のスリーブの前内部に段々の削り加工部があり、弾丸がマズルを出た後に噴出したガスが削り加工部の前面に吹きつけられることによってスリーブと一体になったスライドの後退が妨害されるわけです。P7やGBがピストン、シリンダーを持つ通常のガスオペレーションに対応するなら、このシステムはM16のようなガス直接利用に対応する、といった感じでしょうか。しばらく前GUN誌に、チャンバーの前に穴を開けてスライドに直接ガスを吹き付けることによって後退を遅らせるピストルが載ってましたが(ごめんなさい、買ってないもんで機種名わかりません)あれに近いとも言えるでしょう。ガスが密閉されないわけですから後退を遅らせる力はピストン、シリンダーを持つシステムに及ばないと思われ、削り加工は面倒でコスト的にも特に安く済むとは思えません。ちなみにこのパテントの日付は1986年4月1日となっており、P7は1979年、GBは1981年に生産が開始されています。

 図1と図5を見てください。私は前回の記事にセーフティの説明がなかったため、プレートでトリガーガード内に指が入らないようにするだけではないかと疑いましたが、プレートの上部がシアの下降をブロックするシステムが存在しました。プレートはセーフティ解除を忘れないための警告の意味でしょうか。

 マガジンは実際に作られた試作品ではハイパワー用マガジンが流用されていましたが、パテント図面ではイングラムのような垂直のマガジンになっています。またマガジンキャッチは板バネが露出してマガジンにあてがわれることでテンションが生じる形になっています。マガジンを抜くとマガジンキャッチはぶらぶらになってしまうようです。試作品の写真にはこの板バネは見えず、さすがに改良されたようです。パーツ点数からいっても加工の容易さからいっても特にメリットがあるとは思えない変なシステムです。

 バレルスリーブとスライドは、バレルスリーブを回転することによって図1の145内に121がはまって結合され、フロントサイトを兼ねた124のプランジャーで回転が止められます。プランジャーを後退させながらバレルスリーブを回すと簡単に分解できるわけです。簡単はいいんですが、図で見る限りパーツを紛失する危険は大きいような気がします。また9mmパラベラムという強力なピストル弾薬を使用し、スライド重量は軽く、ディレードのシステムは弱いわけですからリコイルスプリングはかなり強いと思われ、組み立てに苦労しそうな感じです。

 前回の説明通りオープンボルトファイアで、129のファイアリングピンは固定されています。

 137はエキストラクターで、138のスプリングでテンションがかけられています。132のエジェクターはプランジャー式で133によってテンションがかけられています。

 116はリアサイトで、ネジになっているので上下というのか左右というのか調節できますが、クリックがないので振動で勝手に動いてしまうかもしれません。

 全体のパーツ点数の少なさは特筆に値します。図1で数えても20点は越えていますが、

http://www.scribd.com/doc/3710638/Ingram-Mac10-Operation-and-Maintenance-Manual

 単純なマシンピストルとして真っ先に頭に浮かぶイングラムM11でもその倍はありますから。ただし全体にこなれていないデザインであり、使いにくそうな印象はぬぐえません。









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