67式サイレンサーピストル

 「Visier」2004年1月号の「スイス銃器マガジン」ページに掲載されていた、中国製の67式サイレンサーピストルに関する記事内容を紹介します。


中国製サイレンサーピストル

モデル1967

この中国製M67は映画用小道具ではなく真のエージェント兵器である。その組み込み型サイレンサーおよびセルフローディング機能を必要な場合スイッチオフする可能性は、この銃の最も重要な特徴である。弾薬としては、西側においては銃それ自体と同様にわずかしか知られていない7.65mmx17弾薬が使われる。

メリカがトンキン湾において挑発された突発事故によってベトナム戦争に巻き込まれた後、敵サイドにはソ連および中国の、苦境に追い込まれたベトナム人の兄弟国への非常に強力な軍事協力が行われた。その際、北側は全くモダンな兵器を手にし、これは強大国間において本気でなく行われた代理戦争で非常にしばしばあったような二線級のものでは決してなかった。結局のところベトナムは地理学的に、北京やモスクワ内に無関心を引き起こすためには、共産パワーブロックにあまりに近いところに位置していたのである。

 ベトナム戦争はアメリカ軍にとって1つのハードな試練となった。第二次大戦とは全く異なり、アメリカ陸軍は実際上、敵に「Gesetz des Handelns」(頑住吉注:「取り引きの法則」? 軍事用語らしいんですが辞書には出ておらず意味不明です)を押し付ける時間を手に入れなかった。このジャングル戦争はこの地でその最悪な側面を表わした。アメリカ空軍は絨毯爆撃および国際法上疑義のある化学兵器(落葉薬Agent Orange)の助けを得て敵を排除することを試みた。だがベトコンたちはこの攻撃の間は広範囲の、良好に偽装された地下トンネル内に隠れ、攻撃直後には再び新しく隊列を組んだ。同時に、南の都市では無慈悲なパルチザン戦争が開始された。アメリカ兵たちはほとんど自分たちのキャンプ内だけで安全に行動することができたが、そこでさえ協力者に偽装して潜入したベトコンが1度またはそれ以上の攻撃に成功した。誘われて入った現地の人のレストランにおける食事でさえ危険だった。GIたちの1人が好意的でないコックに、料理が出される前に素早くわずかな小さな竹の破片を米の上に振りまかれたときにはである。その結果は苦痛な、長期間にわたる胃炎および腸炎であり、それは一週間の軍病院内での滞在で締めくくられた。だが、問題があったのは前線だけではなく、諜報機関レベルでもアメリカ人にはアジア的感覚を処理する能力がなかった。アメリカの諜報機関であるCIAおよびNSAには実際上敵の暗号システム内に正確に侵入するための時間がなかった。実際に無線通信を長い時間の後に解読できたときにも、その情報はたいてい出来事の経過によって無価値になっていた。同時に、このジャングル戦争は再三にわたってアメリカ兵たちを拘束し始めた。ベトコンは、逆鉤を挿し込んだ落とし穴を伴う中世的な人罠からなる奇妙な複合物、毒を塗った竹の矢、偽装された時限爆弾、高度にモダンなパルチザン兵器で戦ったのである。最後に挙げたものには、ここで紹介する中国製サイレンサーピストルも含まれた。この中国製ピストルの高度な発達水準は驚きであった。アメリカ人もサイレンサー銃は持っていたが、これらは技術的に第二次大戦以来もはや変わってきてはいなかった。アメリカサイドでは9mmルガー弾薬仕様のウェルロッドピストルおよび.22LR弾薬仕様のサイレンサーつきハイスタンダードピストル モデルHDが使用された。ウェルロッドの場合はボルトアクションピストルであり、これは本来は第二次大戦でイギリスによって暗殺用に開発されたものである。このピストルは各射撃後に手で往復運動をせねばならず、そしてハイスタンダードピストルは小口径弾薬を発射するのみだった。両ピストルは火力戦闘用としては実際上使用できなかった。

 中国製ピストルM67およびその前任モデルM64はセルフローディングピストルであり、強化された7.65mm弾薬をセミオートで射撃した。

技術
 中国の設計者は彼らのサイレンサーピストルを、全ての部分において新造はせず、東ブロックおよび西側のいろいろなすでにある銃からのプルーフされた構造を引き継いだ。サイレンサーは第二次大戦中のイギリス製品の方式で作られ、有名なウェルロッドピストルに似ている。しかしこれはその手本よりも明らかに進歩的である。

 このサイレンサーは多段式である。バレルにはフリーボア直後に一貫した、十字上に位置した穴が備えられている(頑住吉注:チャンバーから出た直後のバレル部分に4つ、



こういう位置関係で穴があるということのようです。これは断面図です。「一貫した」=「durchgehend」というのは上下左右に貫通していること、「十字上に位置した」というのはこのように直角に交差した穴を指すんだろうと思います)。火薬ガスは金網のメッシュを巻いたもので満たされたチャンバー(頑住吉注:薬室ではなく蓄気室といったものです)内に押し込まれる。このチャンバーはダブルのジェットプレートによってサイレンサー中部と分断されている。バレル自体はサイレンサーパイプのほぼ中央までしか達していない。マズルは同様にパイプ状に巻かれた金網メッシュで取り巻かれている。金網メッシュを巻いたものは分解の際にほどけることがないように、縦のスリットが入ったパイプで保持されている(頑住吉注:これでは意味が分かりませんでしたが、後で紹介するGUN誌の写真によれば断面がC字型の薄いプレス鉄板です)。サイレンサーケースの前1/3には2つの、穴の開いた「浅い鉢」内に押し込まれた、打ち抜かれた貫通ルートを持つ厚いゴム円盤がある。サイレンサーの先端部には、大きな、空洞に旋盤加工された閉鎖ネジがある。これの中央には穴があり、穴は弾丸直径よりいくらか大きい

 射撃の際、フリーボア直後ですでに発射ガスの一部がサイレンサー内チャンバーの最後部内に流入する。弾丸が(頑住吉注:サイレンサー内中ほどにある)バレルのマズルを去るとき、残っている火薬ガスの最大部分は、そこにあるメッシュを巻いたもの内に押し込まれる。弾丸を追うガスは一部その直後にある3つのチャンバー内で渦を巻かされる。その際ゴム円盤にも騒音を緩和する効果が与えられている。両方の金網メッシュを巻いたものはそれぞれダブルの任務を持っている。1つはそこにある火薬ガスに渦を巻かせること。一部は熱伝導が良好な真鍮製メッシュによって熱を取り去り、そしてこれにより出ていく火薬ガスのボリュームを大きく減らすことである。全部合わせて、ガスボリュームの減少、渦巻き、そして期間を延長することによって長引いたマズルからのガス噴出は、このサイレンサーを非常に効果的にしている。弾丸は銃を去った後275m/sの速度を持ち、これは明らかに音速以下の領域内である。これにより「弾丸音」も発生しない。

 ピストルの作動騒音のかなりの部分は、ピストルのスライドのものである。このことはこの銃の設計者に、セミオートマチック機能をスイッチオフできる形にさせた。これは間違いなく全く簡単なことではなかった。ともかくこの銃には全く簡単ではないいくつかの構造部品が加わっている。この銃のボルトヘッドはいくぶん、ハンガリーのフロンマーストップピストル、あるいはマンリッヒャーシステムM95を思い出させる。この回転可能なボルトヘッドは2つの突起を持っている。この突起はその最も前の位置において、対応するフレームの切り欠き内でロックされる。この銃は基本原理上いわゆるリコイルローダーである。これは発射後スライドがその慣性によって、射手の手によってブレーキをかけられた銃自体よりもさらに後方へ走るということを意味する。その際、ボルトヘッドはカーブ上を回転し、フレームの閉鎖ノッチから出る。このボルトヘッドの回転はスライド内の「横かんぬき」によって妨げることができる。「横かんぬき」が左に押されているとき、ボルトヘッドはブロックされ、銃は単発銃として機能する。ピストルはいまや各射撃後に手で往復運動しなくてはならない。「横かんぬき」はスライド内のフライス加工内に位置しているので、意図せず動かされる可能性はない(頑住吉注:写真で見れば分かるように、周囲が削られてスライドロックが突出しないよう配慮されていることを指しています)。このピストルの発火機構はモダンな、ダブルの作用をする(頑住吉注:DA/SAのことでしょう)ハンマー式発火機構である。これは構造上明らかにマカロフの発火機構からは逸脱しており、むしろドイツ製のワルサーピストルとの類似性を持つ。マガジンキャッチはグリップ底部、マガジン後方にあり、メインスプリングのテンション下にある。このピストルのセーフティは左のグリップパネルの切り欠き部にある。セーフティレバーが上に回されているときは銃は安全状態であり、下だと発射準備状態である。セーフティは銃を握る手の親指で操作されるが、これは右利き射手にのみあてはまる。グリップパネル自体は黒く着色された木製であり、手で切られたチェッカリングがある。M67ピストルのサイトは固定式である。マガジンは幅の広い、縦の視認窓を持ち、これによりロード状態をチェックできる。マガジン底板の前端にはねじ回しの刃があり、おそらくピストルの分解に役立てるよう意図されている。マガジン内には8発の特殊弾薬のためのスペースがある。ノーマルな7.65mmブローニング弾薬は突き出たセミリムによって軽い力ではロードもできないし、つかえてなかなか動かない。

 この銃の加工グレードは軍用銃としては充分なものである。内部部品はいくつかの場所で特別良好にバリが取られておらず、これは分解を快適でなくしている。使用者が簡単にシャープなエッジで傷つく可能性があるからである。手元にある銃は全ての金属部品が黒色に漬けブルーイングされている。グリップパネルは明るい、粗く木目模様をつけられた木で作られており、この後黒色のラッカーが薄く塗られている。

コツを要する分解
 分解は、フィールドにおけるクリーニングのために必要な限りでは優れているに違いないし、難点はない。マガジンを取り除き、通常のチャンバー内の安全点検の後、分解に取りかかることができる。まず初めにハンマーをコックする。これによりスライドのフライス削り加工内にあるネジの頭が邪魔なく見えるようになる。このネジの頭はファイアリングピンの頭の上に位置している。適するねじ回しまたはマガジン底板にあるねじ回しの刃を使って、頭を押し込み、リコイルスプリングによって自分から押し出されるまで右に回す。外からは見えないが、(頑住吉注:頭がマイナスドライバーで回す形なのでネジであるかのように思われる、この)スプリングガイドにはネジはなく、その前端にフラットな太くなった部分を持つ。これによって対応するチャンバー上方のフレームのフライス削り加工内にホールドされる。こうしてひとりでに結合が解けることが妨げられるよう意図されている。だが、まだスライドを後方に抜くことはできない。次のステップとしてねじ回しをフレーム右後方側面、ハンマーの下にあるネジ頭のスリットにあてがい、右に1/4回転する。するとスライドはフレーム後方に抜ける。この際ねじ回しは前述の位置に保持し続けておく。というのは、この外からはネジのように見えるものは実際には、ねじりスプリング圧の下にあるかんぬきであり、使用者がねじ回しのグリップを放すとすぐその出発位置に飛び戻るからである。いまや回転するボルトヘッドは簡単にスライドから前方に引き抜ける。グリップパネルをネジを外して取り除くと、フィールドにおけるクリーニングのため、全ての発火機構部品にアクセスできる。組み立ては通常のように逆の順序で行われる。いまや全てのコツを知っているのであるから、もはや克服しがたいハードルはないはずである。

弾丸における特別の道
 この中国製サイレンサーピストルは特殊弾薬を発射し、これは有名な7.65mmブローニング弾薬から来たという出自を否定することはできない。しかしこの両弾薬は交換不可能である。ブローニング薬莢がいわゆるセミリムドである一方、中国バージョンは真のリムレス薬莢を持つ。その上この弾薬はより強いロードがなされ、これにより約20%増しの成績を示す。オリジナルのブローニング弾薬はM67のマガジンにも適さないし、単独でロードもできない。ボルトフェイスの包底面フライス削り加工の直径が小さすぎるからである。これによりファイアリングピンはプライマーに到達できない。(頑住吉注:要するに



こういうことです)

 オリジナルの中国製弾薬はほとんど調達不能である。ちなみにこの弾薬は中国内では7.62x17と呼ばれている。セミリムがないことを除き、プルーフされたブローニング弾薬と非常に似ているにもかかわらずである。だから西側では7.65mmx17という名称も定着している。このピストルを好んで試験的に使ってみたいという人は、「ノーマルな」7.65mmブローニング弾薬のリムを旋盤で削ることもできる(頑住吉注:だ、大丈夫ですか、そんなことして)。彼は、この弾薬が可能な限り高い成績を持つということだけは配慮しなくてはならない(頑住吉注:いまいち何が言いたいのか分かりませんが、たぶん庭とか地下室とか設備の整っていないところで試射したら危険だぞという程度の意味でしょう)。これは本来「狩におけるとどめの1発」用に開発されたものである。作動および消音は、我々のテストにおいては良好だった。約50発の射撃で、より弱い成績にもかかわらず故障は生じなかった(頑住吉注:「より弱い成績」というのは、実際に20%ばかり弱装の.32ACPのリムを削ったものを使ったということでしょう。50発撃って問題なかったのなら大丈夫なんですかね)。約10発の射撃後サイレンサーケースはかなり熱くなり、このことは火薬ガスの望ましいエネルギー伝達、およびそのことによるサイレンサーのノーマルな機能があると見なされる。

 サイレンサーのマズルにある両ゴム円盤はときおり交換しなくてはならない。実に早く使いつぶされ、その後は発射騒音が強まるからである。その上、サイレンサーはひどく汚れ、金網メッシュを巻いたものはときどきベンジンで洗い落とさなくてはならない。消音のクオリティはサイレンサーの清浄さにも依存しているからである。サイレンサーエレメントの分解はマズルキャップをねじって外すことによって行われる。その後(頑住吉注:銃をマズルを下にして立て)銃のマズルを軽く、柔らかい木のプレートに叩きつける。これにより個々の部品がその慣性によって落下する。しかし、我々のテスト銃の場合、これでは後部のサイレンサー部品が抜けなかった。これらは良かれ悪しかれ組み込まれた状態でクリーニングせねばならなかった。これはうまく行うことができた。組み込みに関しては、ゴム円盤の付属した薄板製「浅い鉢」を傾けないよう注意しなくてはならない。さもないと再び叩いて出すことが困難になる(頑住吉注:このサイレンサーは先端のキャップがねじ込みで外れるようになっているだけでなく、トリガーガードを下げると元からも回して抜くことができるんですが、この筆者はそれに気付かなかったようです)。

まとめ
 中国製サイレンサーピストルM67は、興味深い戦後初期の設計である。これはいろいろなアジアの戦場でプルーフされてきた。980gという重量により、この銃は匹敵する弾薬仕様のノーマルなポケットピストルよりいくらか重い。しかしミリタリーピストルの重量クラスには完全に収まっている。消音機能、特にセルフローディング機能のスイッチを切った際のそれは素晴らしい。ノーマルな交通騒音がある際には、この銃からの1発はほとんど注目を集めない。このテスト銃は我々の自由な使用のため、Transarms社によって用意されたものである。この銃は非常に遅い時期の製造品であり、年号2000年の刻印がある。M67とならんで、さらに前任モデルのM64(この銃は卵形のサイレンサー横断面で判別できる)、そしてこのクラスに属するサイレンサーサブマシンガンM64が存在する。

テクニカルデータ
モデル:M67
銃器タイプ:スイッチを切ることができるセルフローディング機能、および組み込みの多段式サイレンサーを持つピストル。
口径:7.65mmx17
銃身長:95mm
マガジンキャパシティ:8発
全長:222mm
重量:980g
素材:スチール(黒色の漬けブルーイング)
グリップパネル:木製(黒色のラッカー塗装)


 この銃の情報はネット上にもある程度あります。

http://world.guns.ru/handguns/hg151-e.htm

http://www.smallarmsreview.com/pdf/Chinese67.PDF

http://www.securityarms.com/20010315/galleryfiles/2000/2026.htm

 最後のページにある画像は前任モデルの64式です。

 この銃に関してはGUN誌2003年2月号に床井雅美氏によるレポートが掲載されているのでお持ちの方はぜひ見てください。全体的には床井氏の記事の方がずっと詳しくて内容豊富なんですが、「スイス銃器マガジン」のレポートにしかない内容も多く、こちらも興味深かったです。
 
 冷戦時代の消音ピストルといえば、私がモデルアップした旧ソ連製のPSSも含まれます。興味を引かれるのは圧倒的にPSSの方ですが、ずっと古い設計であるにもかかわらず、たぶん実用性では67式の方が上だろうと思います。67式はベトナム戦争当時から威力を示し、これも意外ですが少なくとも2000年までそのままの形で生産が続けられている、隠れたヒット作と言えるでしょう。

 使用弾薬が何故.32ACPとそっくりなのに実は共通性のない弾薬になっているのかという問題は、床井氏も疑問とされ、中国が戦場となった場合敵国が鹵獲した弾薬を使用できないようにしたのではないか旨の推測を示されていますが、「スイス銃器マガジン」はこの点に詳しく触れていません。私は、あるいは鹵獲された銃を敵が使用しにくくするためもあるのかなという気もします。専用の薬莢を作るには大変な設備が必要になりますし、.32ACPのリムを削るなどということは少なくとも戦場では難しいでしょう。また、西側に潜入するエージェントが持つ少数の銃は、包底面がやや大きく加工され(これはごく簡単なはずです)、.32ACPが使用できるようになっていた可能性もあるのではと考えますが、まあ全て想像に過ぎませんね。あるいは案外単純に、.32ACPを元に試作してみたが、中国軍が使う上では西側との互換性など実際上どうでもよく、オートマチックの銃に使用するにはリムレスの方が都合が良かったというだけかも知れません。

 よく分からないのは、この銃のサイレンサーはチャンバー直後にすでに穴が開けられ、初速を落として音速を越えないよう配慮されているにもかかわらず、弾薬が.32ACPより20パーセント強装であることです。不可解に思えますが、床井氏によればこの弾薬は専用ではなく、将校用中型ピストルでも使用できる汎用中口径ピストル弾薬だそうで、そういった使用の際威力が少しでも大きくなるよう配慮されているんでしょう。

 




戻るボタン