コルトオートマチック M1903 ポケットハンマー
ドイツの銃器雑誌によるこの銃に関するレポート記事があったので内容を紹介します。
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Colt Automatic Mod.1903 Pocket Hammer
コルト社が今世紀初め(頑住吉注:かなり古い記事のようです)、初のアメリカの銃器メーカーとしてセルフローディングピストルの量産を開始した時、同社は彼らのピストルモデル1900のために、1897年に発効したJ.M.ブローニングとC.J.Ehbetによるパテントを使用した。ここで記述するピストル、「Colt
Automatic Mod.1903 Pocket Hammer」は、1902年に改良された初のコルトピストルの、よりコンパクトなポケットバージョンだった。
コルト社は彼らのピストル生産において初めから、割のいい陸軍による発注を得ようと努めた(頑住吉注:ご存じのようにサミュエルが会社を立ち上げて最初にリボルバーの生産を開始した時もそうでした)。というわけで彼らによる初の量産されたピストルモデル1900(ロックされたリコイルローダーであり6インチバレル、7発を収容するマガジン付きで.38口径)は、200挺が陸軍に、そして50挺が海軍に部隊テストのため供給された。それらの銃は軍人たちによって、2年前に迎えられたプロトタイプよりも著しく良い判定をされたし、また最終的には成功したモデルである.45ACP仕様の1911がアメリカ軍に採用されるという効果をもたらした(頑住吉注:このあたりについてはここを参照してください)。だがそれまでにはまだいくらかの時間が過ぎ、そしてこのピストルにはいくらかの構造上の変更が生じることとなる。
モデル1900は約3,500挺が生産されたが、それに続きいくつかの重要な改良が加えられた「モデル1902スポーティング」が登場した。これは短縮されたファイアリングピン(頑住吉注:1900は落とした時に暴発する傾向があり、1902で初めて慣性打撃式になったわけです)、丸みをおびたハンマープロフィール、変更されたサイト、変更されたスライド上の滑り止めミゾを持っていた。モデル1900の遅い時期の製品は、すでにリアサイトブロックによるハンマーセーフティは放棄されていた。このスポーティングモデルは7,500挺生産された。
原形となったモデル「コルト1902スポーティング」
「モデル1902スポーティング」からは「モデル1902ミリタリー」が派生した。これはより長い角ばったグリップを持ち、マガジンは8発を収容し、フレームにはスライドストップがあり、ランヤードリングを持っていた。このミリタリーモデルは1929年まで生産され、約18,000挺という生産数を達成した。
コンパクト型
手元にある「モデル1903ポケットハンマー」は、「モデル1902スポーティング」のコンパクトバージョンであり、スタンダード型とは1と1/2インチ短縮された4と1/2インチ(114mm)バレルと、これに関連して変更された寸法のみが異なる。このモデルは生産が終了した1929年までに約26,000挺が生産された。
「モデル1903ポケットハンマー」は.38Auto(.38
Super Autoではない!)仕様であり、その原型同様ハンマーノーズのない外装ハンマーを持つ、ロックされたシングルアクションピストルであり、そのファイアリングピンは独立した部品としてブリーチブロックの中に入れられている。唯一のセーフティはハンマーにあるセーフティレストである。グリップ後部に内蔵された板バネがハンマースプリングの役割を果たし、閉鎖スプリングはバレルの下にある。このスプリングは前部がマウントくさび(頑住吉注:英語ではスライドロックと呼ばれるようです)に、そして後部はフレームの中部にある穴ぐりの中に挿入されている。
マズルはスライドから5mm突き出している。バレルはバレル上にある3本のロッキングラグによって、スライド内部の対応するフライス削り部内にロックされ、また他方では前方からマズル下方に取り付けられたLasche(頑住吉注:英語のテイクダウンプランジャーのことらしいです)で支えられる。かんぬきの前部はフレームにある切り欠きの後部に押し当てられている。ディスコネクターはスプリングのテンションがかけられたピンの形態でハンマー前方のフレーム上部に位置している。銃が閉鎖されている時は、ディスコネクターはブリーチブロックの切り欠き内にかみ合っている。このポジションの時だけトリガーとハンマーの結合が行われる。発射後、スライドが後退した時はブリーチブロックの下面がディスコネクターを押し下げ、ハンマーとトリガーの結合は断たれる(頑住吉注:ディくコネクターの形態、機能は後のガバメントとほとんど同じです)。
固定サイト
スライドは後部に比較的シャープな滑り止めミゾを持つ。幅1.1mmの半円形フロントサイトはスライド内にはめ込まれ、下部はリベット止めされている。幅1.5mmの半円形の切り欠きを持つリアサイトは、叩くことによって左右にずらすことができる。
「モデル1903ポケットハンマー」を分解するには、マズル下にある圧部品(頑住吉注:これもテイクダウンプランジャーのことです)を内部に押し込み、これにより横くさび(頑住吉注:黄色で示しているのは全て同じスライドロックのことです。こんな短い文の中で同じ部品をいろいろの名前で呼ぶのは止めてほしいですな)のロック解除を行わなければならない。これによりこの部品は左に取りだすことができる。その後スライドをいっぱいに引き戻し、そして後方に引き抜く。
この.38Auto仕様のコルトモデル1903「ポケットハンマー」は、今日非常にレアな銃であり、そしてこのため主にコレクター向けの銃に属するが、マズルエネルギー334〜471ジュールにより、そのディフェンス価値は過小評価できない。この銃のグリッピングは、特に小さい手を持つ人々向けには傑出している。サイトは当時の観念に合致していくらかきゃしゃすぎる。レミントン弾薬を使っての我々のテストでは10mの距離で10発のパターンが平均直径46mmという結果を達成した。
良好な成績と制御可能なリコイルショック
ちなみにこの銃は我々の全ての.38Autoテスト弾薬(比較的強装な、むしろ.38Super
Auto弾薬に近い成績を示すウィンチェスターシルバーチップ弾薬も含め)を使って問題なく作動した。リコイルショックの値は3.8〜5.4ジュールと、問題なく克服できる。だが、「モデル1903ポケットハンマー」のディフェンス銃としてのルーティーンな使用は、特にそのシングルアクション原理と、今日ギリギリの安全性によりすでに時代錯誤と言える。ただし応急的な使用のためには、そのパワフルな弾薬にかんがみ、良好に使える。
初期コルトピストルのいらいらするナンバーリング
初期のコルトピストルモデル群のシリアルナンバーの打ち方は実に複雑で、いらいらする事柄である。我々はこれに関し専門書、例えばR.L.Wilson著、「Colt:An
American Legend」を参考のために挙げる。
Colt Automatic Mod.1903 Pocket Hammer
銃器タイプ:シングルアクションセルフローディングピストル、ロックされた閉鎖機構を持つリコイルローダー
メーカー:Colt's PT. F.A. MFG CO.
口径:.38 Auto
銃身長:114mm
ライフリング:6条左回り
マガジンキャパシティ:7発
サイト:固定
セーフティ:ハンマーのセーフティレスト
全長:197mm
全高:126mm
全幅:31.5mm
重量(未装填):0.885g
素材:スチール、ブルーイング
グリップパネル:チェッカリング付きハードラバー(黒色)
コルト1903ポケットハンマーに使用した際の.38
Auto弾薬のデータ
弾薬 | 弾丸重量(グレイン/g) | 弾丸タイプ | 初速(m/s) | 初活力(ジュール) | ED(J/平方mm) | リコイルショック(ジュール) |
ウィンチェスターシルパーチップ | 125/8.1 | HP | 341.5 | 472 | 7.3 | 5.4 |
レミントン | 130/8.4 | MC | 281.3 | 334 | 5.1 | 3.8 |
ウィンチェスター | 130/8.4 | MC | 289.3 | 352 | 5.4 | 4.2 |
(頑住吉注:「MC」はメタルケース、つまりフルメタルジャケットのことのようです。「ED」は見慣れない概念ですが、1平方ミリあたりのエネルギーという意味らしく、例えば9mmパラと.45ACPが同じエネルギーを持つなら前者の方が大きな値になるわけでしょう)
モデル1902ミリタリーの生産が終了した1929年と言えばワルサ―PP登場の年であり、軍用の決定版と言えるM1911が登場しているのにもかかわらずこんなに遅くまで生産が続いたというのは意外です。一方今回の主役M1903に関しては9mmパラクラスの強力な弾薬を使用する比較的コンパクトなオートという同クラスの製品があまりなさそうなんで意外性は低いです。あまり有名な機種ではないですが、26,000挺という生産数は軍用にならなかった初期コルトオートとしてはかなり多い部類に属します。
分解された写真を見て、リコイルスプリングの端が切断されたままになっているのにもちょっと意外な印象を受けました。