2.11.4 コック部品、コックレバー、ハンマー構造

 オリンピックのラピッドファイア射撃においては他のスポーツ競技に例がないほど小さなトリガー抵抗(約0.5〜1.5ニュートン)が射撃結果に好影響を及ぼす。第二次大戦後の時代に小さなトリガー抵抗を持つトリガーシステムが設計されたが、これは同時にダブル発射に対する大きな安全を提供するものだった。このシステムにおいてはハンマーとコックパーツの間にコックレバーが挿入され、これはコック部品によってレスト部において受け入れねばならない力を低下させるものだった。

2.11.4.1 後方に位置するコックレバーを持つシステム

 図2.11.14は後方に位置するコックレバー(2)の場合のシステムの原理を示している。a)ではハンマーがコックされ、bではハンマーはちょうど今解放されたところである。ハンマー(1)は軸によって回転可能にフレーム(4)に収納されている。ハンマースプリングの作用方向は矢印HSによって表現されており、コックレバースプリングのそれはLSで、コック部品スプリングのそれはSSで表現されている。コックレバー(2)の上のレストはハンマーの斜めのレストと広い面積で接し、確実なかみ合いを行っている。レストとハンマーの回転ポイントを結んだ線に対するハンマーのレストの傾斜は大きいので、結果として生じる力(コックレバーに作用する)はコックレバースプリングLSの力より大きい。これにより銃がコックされている際コックレバーに時計方向の回転モーメントが作用する。コック部品(3)はレストを使ってコックレバーの下のアームを保持し、ハンマーがコックされている際のコックレバーの回転を阻んでいる。コックレバーにおけるてこの比率はコック部品のレストに作用する力を減らすので、摩擦は非常に小さいものである。つまりコックレバーの作動のため、そしてそれによるハンマーのレットオフのためには小さなトリガー抵抗dで足りる。bで表現されているようにコックレバーはコック部品の時計方向の回転によって解放されるので、コックレバーは結果的にハンマースプリングによって生じた回転モーメントによって同様に右に回転させられ、そしてこのようにハンマーは解放される。





図2.11.14 後方に位置するコックレバーとコック部品を持つハンマーシステム a)はコックされた状態、b)はハンマーが解放された直後

 ワルサーによるオリンピア ラピッドファイアピストルおよびスポーツピストル群ではこのシステムが使われている。コック部品における小さな(そしてそれにより比較的変化がわずかな)摩擦により、この銃は非常に小さいコンスタントなトリガー抵抗を示す。

2.11.4.2 前に位置するコックレバーを持つシステム

 商業的なものさしにおいて生産された、コックレバーシステムを持つ最初のオリンピックのラピッドファイアピストルは、私の知るところではブタペストのLampagyarによって登場した(1957年)。この銃ではコックレバーは図2.11.15で表現されているようにハンマーの前に位置している。部品名称は図2.11.10で使われているものに対応する。コックレバーとコック部品のの回転方向は上述のものと反対である。



図2.11.15 前に位置するコックレバーとコック部品を持つハンマーシステム

 我々は今日、コック部品、コックレバーシステムを、すでに言及したもの以外ではロシア製ピストルJsch HR 30(.22lfB)およびJsch HR 31(.22クルツ)、Buhag Ziegenhahn Modell WおよびZiegenhainラピッドファイアピストル群に見いだす。


 私ならばこう説明します。「ハンマーを保持するコック部品(シア)2にはそれ自身のみでハンマーを保持する能力はなく、ハンマーは常にコック部品を押しのけて倒れようとしている。このコック部品をつっかえ棒の役目をするレバー3で支えている。このようにデザインすればトリガーに要求される力はつっかえ棒を外すだけなので、単独でハンマーをコック位置に保つ能力のあるシアをトリガーの力で動かしてレットオフする通常のシステムよりトリガープルを軽く、またコンスタントにすることができる。」

 しかしこの筆者はお読みの通り3をコック部品(シア)とし、これとハンマーの間にレバーが介在していると説明しています。どうしてこうなるのかはよく分かりません。

 通常のトリガーシステムにおいてシアのリターンスプリングを軽くしたりシアとハンマーの間の摩擦抵抗を少なくして軽くレットオフするように調整すると、バースト化するおそれが出てきます。今回説明されたシステムならばトリガーが軽くできる上にバースト化も起こりにくいとされています。もちろんこれは競技銃だからこそ意味のあるシステムであって、実用銃に使ったら無意味に複雑化する上にトリガーにちょっと触っただけで暴発する危険なものになってしまうはずです。







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