2.8 ロックされた閉鎖機構

 遅延された閉鎖機構と違い、ロックされた閉鎖機構は機械的結合によって発射時、直接、あるいは間接的にバレルと結合されている。大多数の構造の場合、前の位置にあるときバレルと閉鎖機構がロックされる。つまり銃は発射準備状態にある。だがペダーセン閉鎖機構の場合、銃は閉鎖機構がリコイルショックによって短距離後退運動をしたときになって初めてロックされる。

 バレルと閉鎖機構の固定したロックは、より強力な装薬の使用を可能にする。バレル壁、閉鎖機構、閉鎖機構周辺の部品、ロック機構が需要に一致する寸法であればいいだけである。例えば9mmパラベラムのような強力な弾薬用のミリタリーピストルは実際上全てロックされた閉鎖機構を持って作られている。

 ロックされた閉鎖機構および短距離後退するバレルを持つ銃のリコイルショックは、重量閉鎖機構あるいは長距離後退するバレルを持つ銃の場合よりも感じられる程度に小さい。この理由は、この場合リコイルショックが2つの段階でグリップフレームに伝達されることにある。つまりバレルの衝突の際と閉鎖機構の衝突の際にである。

2.8.1 ペダーセン閉鎖機構

 John.D. Pedersenによって発明された閉鎖機構は、レミントン製セルフローディングピストル、モデル51に使われた。この銃は7.65mmブローニングおよび9mmクルツ弾薬仕様で供給され、1918年から1934年まで作られた。図2.8-1はこの閉鎖機構の原理を示している。バレル(1)はフレーム(2)に固定されている。閉鎖機構ヘッド(VK)(3)はスライドに可動式に内蔵されている。a)は発射準備状態の閉鎖機構を示している。弾薬が点火されると、VKはリコイル圧力を矢印で示した位置においてスライドに伝達し、閉鎖機構全体は重量閉鎖機構を持つ銃の場合のように後方に動く。フレームの斜面(bにおける矢印)で引き止められるまでである。このときVKはロックされる。スライドは単独でさらに走る。結局スライドはロック解除運動のための道を開き(cにおける矢印)、スライド全体は後退を終える。
 ストッパー位置に到達後、この運動は逆戻りする。すなわち、閉鎖機構は再び閉鎖スプリングによって出発位置に走る。







図2.8-1 ペダーセン(レミントン)閉鎖機構。a)閉鎖され、ロックされていない状態。b)ロックされた状態。c)ロック解除された状態。


 これはまた面白い作動方式です。スライドとボルトはストレートブローバックのように一体で短距離後退し、そこでボルトのみフレームの段差で引き止められて一時停止します。スライドには後退の圧力は直接かかっていませんが、慣性でさらに後退します。一定以上後退するとボルトがお尻を持ち上げることを許されるという形でロック解除され、さらに後退するというわけです。発射直後に短距離とはいえボルトが即後退を始めるわけですから、あまり強力な弾薬を使うと薬莢切れを起こす可能性があり、事実この銃に使われた弾薬はストレートブローバックでも充分発射できるものに過ぎません。では何故わざわざこんな複雑な作動方式にしたのかといえば、おそらくスライドの後退力を弱めることで軽量なスライド、弱いリコイルスプリングが使えるからでしょう。これは携帯性、操作性の向上につながります。また、全米ライフル協会刊「FIREARMS ASSEMBLY」ピストルおよびリボルバー編にはこの銃の射撃はストレートブローバックデザインより快適であったとあります。この本の著者の理屈にしたがえば、リコイルショックが弱まる理由はボルトがフレームに衝突する際に後退の運動量の一部がフレームに伝達され、ボルトの運動量の残りおよびスライドの運動量と時間差で手に伝わるからだ、ということになるんでしょう。ベネリのシステムがディレードブローバックに分類され、これがフルロックに分類されているのは何故なのか不思議な印象も持ちますが、このシステムの場合確かにボルトは一時完全に固定されて動けなくなるわけですからまあ納得できなくもありません。

 この銃に関してはこんなページもありました。

http://en.wikipedia.org/wiki/Remington_51

http://www.shootingtips.com/NewFiles/article/Remington%20M51/Remington%20M51.html

 ちょっと気になったのは、「ショートリコイルのリコイルショックはロングリコイルのそれより小さく感じられる」旨の記述です。この著者の理屈ではロングリコイルはバレルと閉鎖機構が一体で後退し、その運動量が一気に射手の手に伝達されるからということになりそうですが、一般にロングリコイルはリコイルショックを軽減する効果が大きいとされることが多いように思えます。後にロングリコイルの説明も出てきますが、この点には言及があるでしょうか。




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