ラインメタルM1907ドライゼ

 「Waffen Revue」34号に、非常にユニークなスタイルを持つ初期のオートピストルであるラインメタルM1907ドライゼに関する記事が掲載されていました。


ドライゼピストル

モデル1907 口径7.65mmブローニング

 ドライゼピストルという名称が、このセルフローディングピストルをすでに1867年に80歳で死んでいるプロシアの点火針小銃の開発者ニコラウス フォン ドライゼ、またはその子孫の1人による設計の可能性があるとの仮定をそそのかすようなことがあってはならない。正式な名称「ドライゼピストル」により、枢密顧問官(頑住吉注:ドイツ皇帝の諮問機関メンバー、つまりブレーンの1人)Heinrich Erhardt指揮下のコンツェルンに買収された「ドライゼの銃器および弾薬工場」社のかつてのオーナーを事後に称えることが意図されたのである。

 このピストルはErfurtのLouis Schmeisserによって開発された。製造は「ライン金属製品および機械工場Sommerda部」(頑住吉注:「o」はウムラウト)で行われた。1907年から1915年頃まで(未確認情報によれば1918年まで)、約250,000挺が生産されたとされている。この銃は決して制式銃ではなかったが、第一次大戦中多くのドイツ人将校によってサイドアームとして携行され、また未確認情報によれば海軍において一部公用銃として支給されたという。その上この銃は警察ピストルとして(特にザクセン王国地方警察で)使用された。

会社の歴史に関して

 デュッセルドルフにおいて枢密顧問官を勤めていたHeinrich Erhardtは次の工場を包括するコンツェルンの役員だった。

1.デュッセルドルフ部(デュッセルドルフ・Dorendorf所在の工場)、デュッセルドルフ近郊のRath部(第1および第2工場)、Sommerda部(チューリンゲン、Provinz Sachsen)およびこれに属する射撃場(面積およそ1x10km)を持つライン金属製品および機械工場

2.デュッセルドルフ・Reisholzのプレスおよびローラー工場株式会社

3.Eisenach自動車工場

4.Zella St. Blasii(チューリンゲン)およびデュッセルドルフ所在のHeinrich Erhardt特殊工作機械工場

 これら工場の供給品目は主に火砲、砲架、軍用車両、砲弾、信管、それに属する弾薬を含むライフル、そしてこうした対象物の製造のための機械から構成されていた。手で持って撃つ銃の製造拠点はSommerdaにあった。

 さらにこのライン金属製品および機械工場は、「ヴェストファーレン・アンハルト爆薬株式会社ベルリン部」と契約に基づいた相互納入関係で結ばれていた。この企業はヴィッテンベルグ近郊のレインスドルフ、アンハルトのCoswig、ヴェストファーレンのHalternおよびSinsen、そしてスイスのUrdorfで5つの工場を操業していた。その生産内容は産業目的(鉱業および道路工事)の爆薬、火砲や全ての種類の手で持って撃つ銃用の無煙火薬、グレネード充填火薬、炸裂体の形状をした、またバラの形状のピクリン酸などだった。

 ドライゼピストルとの関係では、主にSommerda部が興味深いので、これに関してのみいくらか詳しくレポートしたい。

 Erhardtのコンツェルンのこの部は、ニコラウス フォン ドライゼのライフル工場、後のフランツ フォン ドライゼの機械および鋳鉄工場から生まれた。そして買収された際に「フォン ドライゼの弾薬および銃器工場株式会社」の名を得、1901年に「ライン金属製品および機械工場」と改称された。

 「点火針ドライゼ」の子孫であり、フランツ フォン ドライゼの息子であるニコラウス フォン ドライゼ少尉(頑住吉注:ややこしいですが偉大な爺さんドライゼと同じ名前だったようです)のドライゼ工場は1889年にこのコンツェルンに買収された。同家の爵位はかなり高く、これはニコラウス フォン ドライゼがプロシア国王より一体弾薬用後装ライフル開発の功績によって与えられたものだった。

 Sommerda工場は世紀の変わり目頃もしくは後には6つの主要工場からなっていた。

1.着発信管、遅延信管、弾薬筒、電気的信管などの生産のための真鍮およびアルミニウム鋳造設備を持つ信管工場

2.ライフル、火砲用照準器、銃剣、全ての種類のフライス加工部品のための工場。ここでは軍用および狩猟用ライフルとならんでドライゼピストルも製造していた。この工場のみ一団の経験豊富な銃器工とならんで何百もの労働者が働いていた。

3.「Erhardt」パテントに基づく散弾銃および猟銃のバレルおよびハンドガンのバレル製造のための特殊ライフルバレル工場。これは冷硬化バレルのことだったようで、社の年代記の中では、前例のないバレル素材の堅固さと粘り強さの改良を伴う製造過程の完全な革命とされている。

4.当時ポピュラーだった全ての弾薬および弾丸種類の金属弾薬製造のための弾薬工場。

5.信管、プライマー、弾薬筒、弾薬製造用旋盤、ボール盤、特殊機械製造のための機械工場および鋳鉄施設。

6.国によるバレルのテストおよび認可、銃器製造認可および弾薬の成績測定のための手で持って撃つ銃の弾道学的研究および試射施設。

 一般的な言葉使いでは、会社の名前として今日まだポピュラーな略称「ラインメタル」が採用された。この名は1913年以後生産されたピストルにも刻印された。時の流れの中でますます成長していったこのコンツェルンには、1935年には「A.ボルジヒ有限会社ベルリン」も「ラインメタル・ボルジヒ株式会社」として編入された。

構造の説明

 ドライゼピストルはジョン モーゼス ブローニングの基本原理にならった、スプリング・重量閉鎖機構を持つロック機構のないリコイルローダーである。

 

 グリップフレームおよび閉鎖機構は非常に丈夫に作られ、スライド誘導のためにピストルの全長が最適に利用されている。

 前方にのみ分解できる閉鎖機構ブロックの造形により、例えば過度に強い装薬の使用による極度の負荷がかかった際も閉鎖機構が後方に飛び出すことは全く不可能である。これは他の多くの構造(例えばフロンマーストップ)の場合少なくとも理論的には有り得るはずであり、この銃でそれが起きるためにはすでに銃全体が爆発していなければならない(頑住吉注:何故ことさらにフロンマーストップのようなマイナーな銃を例に挙げるのかとやや疑問に思いますが、この銃は比較的閉鎖機構の後方への飛び出しが起きやすい銃だったからのようです)。

 このピストルのケース(フレーム)はグリップフレームとしての下半分と閉鎖機構ケースとしての上半分からなり、後者の内部にバレルとブロック状閉鎖機構が収納されている。両半分はトリガーガード前方でヒンジネジを使って結合されており、後部では横位置のピンによってロックされている。このピンは後方に露出した突起部を持ち、この突起部はケース上部分のロック解除のため指でここをサイド方向にスライドすることができる。この設備の助けにより、銃の手入れとクリーニングを容易にすることが意図されている。しかしこれによって閉鎖機構ケースをブレイクオープンすることはできるが、さらなる閉鎖機構の分解なしではバレルは後方からクリーニングできない。例えばPieperピストル、それを元に開発されたステアー モデル1909(および1934)(頑住吉注: http://randyrick.us/AustrianFirearms/pm1909.htm )、Francaiseポリスマン(頑住吉注: http://www.gunsworld.com/french/fran_us.html )などの場合のように、単にバレルをブレイクオープンし、チャンバーが他の操作なしで完全にオープンする傾斜バレルピストルの場合とは違うのである。

 閉鎖機構とケース上部分の間の本来の結合は、バレルにかぶせられ、同時に閉鎖スプリングの前の受けとしても役立つパイプによって行われる。このパイプの上部にはT字型の突起部があり、スライドの適合するノッチ内でグリップされる。

 バレルはバヨネット式に結合され、遊びなしにエジェクターと共に固定されている。

 エキストラクターとエジェクターは中央部に向かい合って位置し、薬莢は右向き、ほぼ水平に投げ出される。

 バレルに巻かれている閉鎖スプリングは並外れて強く、これに合った急なスプリングキャラクターを持つ。このことがこのピストルのコックをかなり難しくしている(スプリングキャラクターはキロポンドまたはニュートンで表されるスプリング力の増大/mmスプリング道程と理解される)。完全に閉鎖機構がオープンされた際の閉鎖スプリングの最終的な力は約13キロポンド=130ニュートンである。スライド前1/3に加工された滑り止めミゾはノコ刃状形状にもかかわらずわずかにしかコックを容易にしない。わずかにしか外部輪郭から突き出ていないからである。

 遅い時期の銃、少なくとも製造ナンバー235000以上では、この滑り止めミゾが斜めになった。ピストル装填時の困難は、ある人がこのピストルを力強くズボンの脚部に沿って強く下に押すことによってコックするという結果を導いたとされるし、あるコレクターもこれを報告している。しかしこのやり方は革製のズボンか非常に丈夫な衣服の場合にのみ勧められる。と言うのはかぎ裂きの危険が非常に大きいからである!

 1908年の刊行物によれば、ドライゼピストルの滑り止めミゾは当初閉鎖機構と閉鎖機構ケースの間の滑り面を越えて下方に延長されていたに違いないとされている。しかしこの仮定の証明は現在までなされていない。

 このピストルはハンマーレスのストライカー発火機構を持つ。この機構はファイアリングピンに挿入されたシグナルピンを伴い、これが銃がコックされている際後方に4mm突き出てピストルの発射準備状態を示すようになっている。しかしこの銃が装填もされているか否かは簡単には分からない。だからこのシグナルピンはファイアリングピンの一部としてスプリングのための充分なスペースを得るため挿入されているだけである。これは製造の際ある種の困難をもたらしたはずである。この細いシグナルピンは直径1.6mmであり、不必要に大きく後方に突き出し、ピストルを固い地面に落とした際、状況によっては折れたり曲がる可能性がある。曲がった場合はさらに厄介なことになる可能性がある。その後はファイアリングピンが動かなくなり、もはや前方に駆動されなくなり、これは銃が役に立たないことを意味する。つまりスプリングはダイレクトにファイアリングピンを押すのではなく、ファイアリングピンにあてがわれているシグナルピンのヘッドを押す。この点はドライゼピストルの決定的でないとは言えない欠点である。



11=閉鎖機構ヘッド 12=ファイアリングピン 13=ファイアリングピンスプリング 14=シグナルピン 20=トリガーバー 21=シア 22=シアスプリング (頑住吉注:パイプ状のファイアリングピン内に後ろからシグナルピンが突き出し、それをガイドにしてファイアリングピンスプリングがかぶさるわけです。トリガーバーはバネ鋼で作られているようで、それ自体を下に押す板バネと一体になっています)

 トリガー設備は左面、ネジ止めされたケースカバーの下にある。銃をコックした際、ファイアリングピンはシアに捕えられ、保持される。トリガーを引くことによってトリガーバーが後方に動き、ファイアリングピンが解放されるまでシアを下に押す。ダブル発射、あるいは万一にもファイアリングピンがコックされることなく閉鎖機構が閉鎖することを防ぐため、フラットな三日月型のディスコネクターレバーが組み込まれている。閉鎖機構が完全に前進していない際、これがスライドによっていくらか下に押され、トリガーバーを少し持ち上げる。この結果シアとのかみ合いは断ち切られ、トリガーを放した後になって初めて再びかみ合うことができる。



30=ディスコネクター (頑住吉注:三日月型のディスコネクターの後部がスライドに押し下げられるとシーソー運動によって上昇した前部がトリガーバーを押し上げてシアとの関係が断たれるという珍しいデザインです)

 セーフティをかけ、コックされておらず、装填されていないピストルはスライドを完全に引くことができない。シア(後退したファイアリングピンによっていくらか下に回転させられなければならない)がセーフティ軸に当たるからである。すなわち、セーフティをかけた銃は装填することもコックすることもできない。これに対し装填され、セーフティをかけた銃では、閉鎖機構をアンロードのため完全に引くことができる。もちろん装填した(バレル内に弾薬がある)銃をデコックすることもできない。この銃はトリガーによってのみデコックできる。

 コックされたピストルでは、シアにロックされたファイアリングピンがブレイクオープン用ラッチの作動を妨げる。このラッチは上向きに突き出たアームによってシアを通過することができない。さもないと装填した銃を折り曲げた際、発射が起きることが避けられない。ファイアリングピンが下部分に収納されているシアから引き離されるからである。他方において、トリガーを引いている際にはブレイクオープン用ラッチは操作できない。しかしこのことは実際上無意味である。

 包底面として筒型の閉鎖機構ヘッドが閉鎖機構に差し込まれ、同時にファイアリングピンの前のストッパーとしても役立つ。ファイアリングピンは簡単に交換できる。

 サイトは固定で調節はできない。フロントサイトは両サイドのスライドのレール間に同じ高さで位置している。この両レールはこのピストルの前部を非常に角張ったものにしている。

 チェッカリングとからみあったRMF(頑住吉注:ラインメタルファブリックの略)のイニシャルを持つハードラバー製グリップパネルはそれぞれ短いネジでグリップフレームにネジ止めされている。

 マガジンは単純なフォーロワを持つ通常の薄板製で、たいていFNピストル モデル1900と交換可能である。

 マガジンキャッチの露出した下端は比較的短く、マガジン除去のためには前方に押す必要がある。これによりマガジンは同じ手の親指と人差し指の間に簡単に取り出せる。マガジンキャッチがいくらかよりつかみやすかったならば、この配置は後方に押す必要があるマガジンキャッチの場合よりも快適のはずである。

 固定されたランヤードリングはケースカバーにリベット留めされている。1906年1月4日のドイツ帝国パテントナンバー185411のパテント図面は、閉鎖機構と共に上向きに折り曲げ可能なバレルの基本原理に関するものであり、ここに描かれている銃はたぶんプロトタイプとして当初考えられた、そしてひょっとすると単品が作られたかもしれないものであって量産品とは異なっている。一方1908年2月21日の帝国パテントナンバー209632用の図はすでにドライゼピストルとの大きな類似性(特に外形とトリガー設備の描写)を示していた。ただし閉鎖機構がツーピースになっており、これはドライゼピストル モデル1907への使用は見られない。

 

(頑住吉注:左がドイツ帝国パテント185411、右が209632です。降るほうのパテントの銃はベルグマン・ベヤードに似ています)

刻印

 このピストルの刻印は閉鎖機構ケース左面のドライゼという名前とReinische Metallwaaren-&Maschinenfabrik Abt. SOMMERDA(頑住吉注:「o」はウムラウト。ライン金属製品および機械工場Sommerda部)というメーカーの表示からなっている。これは遅い時期の型では「RHEINMETALL ABT. SOMMERDA」(頑住吉注:「ラインメタルSommerda部」)に変えられている。

 試射刻印(王冠を伴うN)はケース下部分左面トリガー前方、その上方の閉鎖機構ケース上、閉鎖機構上に刻印されている(図22)。

 フルの生産ナンバーは閉鎖機構上面、閉鎖機構ケース内部閉鎖機構ヘッド前、グリップフレームのマガジン挿入口前にある。さらに末尾4数字が閉鎖機構ヘッド後面にある。

 このピストルの表面はマット仕上げされ、ブルーイングされている。しかしポリッシュされた型も供給されたとされる。今回異なる銃の間に差異が確認されたものの、加工グレードは非常に良い。これはその銃が戦前の製造分か戦中の製品か次第である。

分解

 このピストルを分解するためにはまずマガジンを取り出す(単に安全上の理由)。その後ファイアリングピンがデコックされた状態でブレイクオープン用ラッチを右に押し動かし、閉鎖機構ケースをブレイクオープンする。

 取り扱い説明書によれば次にマガジン底板の助けを借りてマズル部にあるスプリングパイプを後方に押し、そして同時にスプリングパイプのT字状突起がフリーになるまで閉鎖機構の上部分前部を少し持ち上げる。しかしこれはマガジン底板がスプリングパイプから簡単に滑って逸れる可能性があり、すでに閉鎖機構が持ち上げられていた場合スプリングケースが大きな力でピストル外に投射され、目に飛び込む可能性があるため非常に危険である! このため取り扱い説明書では分解時ピストルの上にかがみこまないことも勧めている。



(頑住吉注:この銃のボルトは前上部に延長されていて、その部分はバレルに通されたパイプ状部品の上に伸びたT字型の突起とかみ合って誘導されるわけです。パイプを後退させるとかみ合いが解除されますが、そうするとパイプ状部品は前方に勢いよく飛び出そうとするわけですね)

 フレームの切り欠きは単に分解のために設けられている。マガジンの一部は底部に1本のミゾがあり、これは滑ることを防ぐ意図である。



(頑住吉注:これが切り欠きで、マガジン底板の先端を使ってパイプ状部品を後退させることができるようになっています)

 最も確実なのはスプリングパイプを適合する外径約14mm、肉厚約1.5mmのパイプ(バレルにかぶせ、危険なく扱える)を使って後方に押すことである。当時希望により追加料金を払えば、やすりのそれに似たグリップが付属したそのようなパイプがピストルと共に供給された。遅い時期の製造分ではバレルジャケット下の切り欠きはなくなり、このためその後使用者は危険度の低い分解パイプの使用を強制された。

 閉鎖機構を前方に押し動かすと、閉鎖機構は下端が沈下する。まさにこれがブレイクオープンメカニズムの本来の理由である。



 これでピストルをクリーニングし、オイルを塗ることができる。さらなる分解は比較的簡単で、危険はない。

最初に閉鎖機構

 エキストラクターは閉鎖機構のノッチ内に1本の短いピンによってセットされているだけであり、差し込まれた閉鎖機構ヘッドを保持する。エキストラクターは補助手段なしで取り外せる。その後閉鎖機構ヘッドを90度ひねり、前方に取り出す。その後シグナルピンおよびスプリングの付属したファイアリングピンも同様に閉鎖機構部品から前方に取り出せる。

 ヒンジネジを抜くことでフレーム上下部品は分離できる。

 閉鎖機構ケース左サイドのエジェクターのネジを抜いて、まず前端を押し込むと、バレルを取り出すこともできる。ただしこれは非常に困難で、そのままにした方がよい。

 セーフティは垂直に下に回し、そのスプリングを上から細い物体でいくらか前方に押すと、左に引き抜ける。

 次にグリップパネル、そして2本のネジで固定されている左面のフレームカバーをそのネジを抜くことによって取り外す。その後スプリングの付属したブレイクオープン用ラッチ、トリガーバー、ディスコネクターレバーが簡単に取り外せる(これらの部品が自然に落下しなかった場合は)。

 シアの分解の際は、垂直の穴ぐり内にある押しバネが飛び去らないよう注意する。セーフティスプリングはフレームの削り加工内に入れてあるだけである。

 トリガーはそのリベット留めされた軸からスプリングごと簡単に引き抜ける。一方マガジンキャッチの軸はその頭部を左方向に抜くことができる。

 トリガーとマガジンキャッチのスプリングは取り違えてはいけない。それらはほとんど同じ大きさだが、トリガースプリングの方がずっと強い。

 これでドライゼピストルはその構成要素に分解されたはずである。



(頑住吉注:部品展開図です。フレームが左右合わせ構造になっているオートは非常に珍しいと思われます)

 逆順での組み立ての際、シアの組み込み時に押しバネを傾けずに充分深く下まで押し込むことに注意する。

 フレームカバー組み込みの際、ディスコネクターまたはトリガーバーがそのスプリング脚上に挟みこまれることが起こり得る。このためカバーを押し込んだ際すでに手でそれらの可動性をチェックする。

 フレームカバーおよびグリップパネル用ネジは外観上取り違えそうなほど似ている。しかしフレームカバー用はわずかに長く、間違えるとマガジンが挿入できないか、あるいはマガジンが入っている際は突き出たネジの先で固定されてしまう。

 セーフティ組み込みの際はスプリングがセーフティ軸のに位置するようにしなければならない。

 当然だが閉鎖機構組み込みの際は再び、飛び出した閉鎖機構スプリングパイプによって怪我をしたり窓ガラスを粉砕しないよう必要な注意をして行う。

ドライゼピストルの主要データ

口径 7.65mmブローニング
銃身長 91mm
ライフリングの数
ライフリングの方向
全長 160mm
全高 109.5mm
全幅 29mm
マガジン容量 7発
閉鎖機構 ロックなし
サイト 固定
空マガジン込み重量 680g
8発の弾薬込み重量 740g
初速 290m/s
マズルエネルギー 20.6mkg
10mでの貫通成績 25mmの間隔をあけた25mm厚のモミ材4〜5枚

 この銃は「ラインメタル」、「ドライゼ」という2つのブランド名を掲げて登場しました。日本では無名ながら生産数約25万挺というんですから堂々の成功作と評価できるでしょう。M1900の約72万挺と比べても意外なほど差がないことが分かりますし、軍制式になっていないにもかかわらず十四年式拳銃の約28万挺に近い数字です。。ちなみに現代日本の90式戦車の主砲のメーカーとしても知られるラインメタルの名は軍事マニアなら知らない人はいないほど有名であり、響き自体カッコよく、いかにも高性能の兵器を作っていそうなブランドイメージですが、元々の意味は「ライン河畔のメタル製品工場」という素朴なものだったんですね。

 「Faustfeuerwaffen」の著者はこの銃とFNのM1900との外観上の類似性を指摘しています。メカニズムも分解方法も大きく異なりますが、確かに大雑把なシルエットは似ていますし、マガジンが共用できたこと、コッキングインジケータの存在、セーフティの位置やデザインなどを見れば確かにM1900を意識したものであると思われます。両者の基本的データを比較してみると、

ブローニングM1900 ドライゼM1907
銃身長 103mm 91mm
全長 164mm 160mm
全高 117mm 109.5mm
重量(アンロード) 626g 680g
マガジン装弾数 7発 7発

 となり、大筋近いながらドライゼはややサイズが小さいのに少し重いことが分かります。外観を比較した場合どう見てもブローニングの方がスマートで、前部が角張って太いドライゼはやや携帯しにくかったのではないかと想像されます。

 リコイルスプリングが異常に強く、ボルトと言うのかスライドと言うのか、要するに閉鎖機構が引きにくかったというのは何故なのか疑問です。普通のオートのデザインに比べれば重量が小さいかも知れませんが、最近流行のベストポケットより一回り大きい程度の.32オートに比べれば重いはずですし。コッキングインジケータが後方に飛び出しすぎという指摘はもっともですが、これは単にこの部分を短くして1mm弱くらいしか突き出ないようにすれば済むはずの問題です。どうしてこんなに過度に突き出すデザインになったんでしょうか。メリットを強調したいあまりでしょうか。


 この銃に関してはこんなページがありました。

http://www.littlegun.be/arme%20allemande/a%20dreyse%20gb.htm

http://site.voila.fr/collectionarme/dreyse.htm

http://www.deactivated-guns.co.uk/detail/Dreyse_1907.htm







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