2.8.2 短距離後退するバレルを伴うロックされた閉鎖機構

 これは大差を持って最も頻繁に使われている閉鎖システムである。図2.8.2は連発時におけるバレル(R)と閉鎖機構(V)のフレームに対しての運動の経過を明らかにしている。弾薬が点火されると、RとVはリコイルショックの中でまず最初に約5〜10mm一緒に後方に走る(2)。その際ロックが解除され、バレルはストッパー位置に達する。この結果閉鎖機構は単独で後退を終える(3)。閉鎖スプリングによって結果として引き起こされるその前進の際、閉鎖機構はマガジンから弾薬を抜き取り、この弾薬はチャンバーに導き入れられる(4)。閉鎖機構がバレルに達するとすぐ、ロックが開始される。ロックはバレルと閉鎖機構が復帰を終えてしまうより前に完了する。バレル(もしくはバレルエクステンション)と閉鎖機構の短いロッキング道程ゆえに、我々はこの閉鎖機構タイプを短距離後退するバレルを伴うロックされた閉鎖機構と呼ぶ。



図2.8.2 短距離後退するバレルを伴うロックされた閉鎖機構の運動の図式

2.8.2.1 膝関節閉鎖機構

 膝関節閉鎖機構の原理はサー ハイラム マキシムによって発明され、ボーチャードとルガーによってセルフローディングピストルの閉鎖機構の設計に使われた。膝関節閉鎖機構におけるロックの機能は、ルガーによって開発されたパラベラムピストルの例で解説したい。図2.8.3は閉鎖された(a)、そして開放された閉鎖機構(b)を示している。(1)は銃のグリップフレーム、(2)はフレーム内で移動可能な、いわゆるフォークケース(頑住吉注:2又になったバレルエクステンションのことです)であり、この中にバレルがねじ込まれている。(3)はボルトヘッド、(4)は前の、そして(5)は後ろの関節レバーである(より古い参考文献内ではこの部品は前関節、および後関節と呼ばれている)。(6)は前の関節レバーの左右に位置するグリップノブ、(7)は「乗り上げルート」(矢印)を表している。ボルトヘッドと関節レバーは回転軸によって結合され、合わせて閉鎖機構を形成している。後ろの関節レバー(5)は右に位置する回転軸によってフォークケースと結合され、フォークケース内にはボルトヘッドがノッチ誘導内でバレル方向に移動可能な形で収納されている。発射時、後退圧力はボルトヘッド、関節レバー、後ろの関節レバーをフォークケースと結合しているフォークケース上の回転軸、そしてバレルに伝達される。この結果これら全体グループはグリップフレーム上で閉じた状態で後方に滑る。関節レバー同士を結合している回転軸は、他2つの軸よりわずかに下に位置している。この配置により、前後の関節レバーの間にある膝関節は後退圧力によって下へと圧され、閉鎖機構は開くことが出来ない。短距離の一緒の後退の後、グリップノブの下側はグリップフレーム左右上に位置する「乗り上げルート」にぶつかり、膝関節は持ち上げられる。これにより閉鎖機構はロック解除され、この結果フレーム内トリガー上に位置するストッパー位置への到達後、フォークケースはバレルごと停止させられ、ボルトヘッドはフォークケース内でその後部の最終位置まで走ることができる。ここで閉鎖機構運動は逆戻りする。弾薬はマガジンからチャンバー内に運ばれ、改めてのロック後、銃は再び発射準備状態である。





図2.8.3 パラベラムピストルの膝関節閉鎖機構の運動の図式


 ショートリコイルについても、ドイツ語を直訳すると「膝関節閉鎖機構」となるトグルジョイントシステムについても従来何度も触れていますし、補足説明は不要でしょう。そこで、タイムリーでもありますし(時間が経ったら何のことか分からなくなってしまいますが、これを書いているのは十四年式拳銃で新ギミックを製品化した直後のことです)トグルジョイントシステムを新ギミックつきのガレージキットで再現する場合のことを考えてみましょう。

 バレル内に強いスプリングを収納し、カートをチャンバーに入れて図a)のような状態に閉鎖すると、バレルは前に、ボルトヘッドは後方に強く押されます。ボルトヘッドが後方に強く押されても、中央の関節の位置が左右の軸より少し下にあるので関節は下方向に曲がろうとし、このままでは閉鎖機構が解放することはありません。ちなみにブローバックモデルガンをこのようなリアルな配置で作ってもボルトヘッドが後方、バレルが前方に押され、ロックが解除されないので作動しません。ですから例えばMGC製モデルガンではショートリコイルが省略されるとともに中央の軸の位置が上にずらされて後退圧力だけで解放されるようにアレンジされています。新ギミックにおける閉鎖状態の持続は「ロックドショートリコイルにするとブローバックモデルガンは作動しない」という昔からの悩みの逆利用みたいなもんです。さて、トリガーを引いてバレルエクステンションごと閉鎖機構を後退させてやると、トグルが「乗り上げルート」に乗り上げることで少し持ち上げられ、左右の軸より高くなったところで一気に中央の関節が上に曲がって排莢します。これと同時にトリガーとバレルエクステンションの関係が断たれ、関節が上に折れ曲がった状態のまま先にバレルエクステンションが前進してしまっても、関節が復帰する障害にはならないはずです。

 ただ、問題もあります。a)の状態で理屈上は閉鎖機構は開かないはずですが、精度や剛性の低いガレージキットで確実にこうなるかどうか、やってみないとちょっと不安です。あるいはモデルガンとは逆に「中央の関節が左右の軸より下にある」性質を誇張しないと上手くいかないかもしれません。ただこの場合もやりようによっては外観はほとんど崩さずにできるのではないかと思います。また、きわめて小さいスペース内にうまくトリガーとバレルエクステンションの引ききりによるディスコネクトメカを内蔵できるか、この場合かなり重くならざるを得ないと思われるトリガープルに耐えられるか、これもやってみないとなんとも言えません。再現を考えているのはボーチャードであってやや形状等が異なりますが、難点はほぼ同様でしょう。

 ただ、手動でロックドショートリコイルを再現した機種はあっても、バレルエクステンションの後退によって関節が持ち上げられることによってロックが解除されて自動的に排莢するというトグルジョイントを再現した製品は過去にないはずで、ぜひ実現してみたいところです。





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