ナチ・ドイツ軍のパンツァーファウスト

(頑住吉注:原ページにはここに、パンツァーファウスト60とファウストパトローネ30の画像があります。)

 1944年夏、ドイツ帝国の運命がすでに決定していた時、巨額なプロパガンダ出費とともにある新しい、距離をおいて使用できる対戦車防御兵器が配備された。これにより部隊の士気向上と多数の敵戦車部隊との効果的な戦闘が期待された。このパンツァーファウストの長所は簡単な操作と手ほどき、低い生産コスト、効果的な貫通力だった。しかしこれに対し短所もあった。すなわち頻繁な不発弾、短い射程、教育程度の悪い兵(国民突撃隊)による操作ミスである。

 パンツァーファウストの高い貫通力は成型炸薬に起因する(頑住吉注:以下の成型炸薬の原理に関する説明はいつもいつもほとんど同じなので省略します)。

●パンツァーファウスト30小型(ファウストパトローネ30)
 このパンツァーファウスト30小型はGretchen(頑住吉注:女性名グレートヒェン=マルガレーテの愛称)とも呼ばれ、1941および42年に研究者であるLangweiler博士によってHASAG社において開発された。当時ソ連が大規模な反攻を実施していたので、この兵器はまるで呼ばれたように対戦車戦闘用に登場した。対戦車ライフルは戦車の装甲を貫通せず、対戦車砲は泥沼地において機動性が悪すぎたので、パンツァーファウスト30小型は部隊から喜びとともに受領された。このモデルファウストパトローネ小型、30mは典型的な使い捨て兵器であり、全長985mmで3.2kgの重量を持った。黒色火薬からなる重量54gの発射薬により、全長360mm、直径100mmの弾頭(50:50ヘキソーゲン混合物0.4kgの成型炸薬を持つ)が口径33mm、長さ800mmの発射パイプから押し出された。その後弾頭にはめ込まれた木製シャフトの尾部で丸めてたたまれていた尾翼が開いた。弾頭は28m/sをもってターゲットへと飛び、30mにおいて140mm厚の装甲を貫通した。 

●パンツァーファウスト30
 このパンツァーファウスト30、30mはファウストパトローネ30の発展開発品だった。この成型炸薬が特にT-34の場合その傾斜した装甲によって滑って去り、そしてこれによりもはや非常に効果的ではないことが確認されていた。このため直径が140mmに、そして作薬量が0.8kgに変更された。この結果より大きい命中面が達成された。貫通力は200mmであり、発射パイプの長さは等しいままだった。口径だけが44mmに拡大され、発射薬も95gに増量された。弾頭は重さ2.9kgで、30m/sの速度に達した。この使い捨て兵器の全体重量は5.1kgで、全長は1045mmだった。

●パンツァーファウスト60
 パンツァーファウスト30の場合対戦車戦闘のための効果的射程がたった30mであり、そしてこの距離は射手にとって非常に危険だったため、パンツァーファウスト30はパンツァーファウスト60、60mへと発展開発された。今や発射薬は重量134gであり、これにより速度は45m/sに、効果的射程は60mに高められた。テクニカルデータは上に挙げた変更という例外はあるがパンツァーファウスト30と同じだった。

●パンツァーファウスト100
 遠い戦闘距離をもってすればずっとより効果的に敵戦車を排除できることに気づいたため、パンツァーファウスト100、100mが開発された。この100mという効果的射程は重量190gのツーピースの発射薬によって達成された。そしてこれにより60m/sという速度が達成された。これも単なる発展開発品だったので、テクニカルデータはパンツァーファウスト30の場合と同じである。

●パンツァーファウスト150
 パンツァーファウスト150、150mもそれまでに開発されたパンツァーファウスト30小型、30、60、100の発展開発品だった。これは1945年1月に、やはりHASAG社において開発された。この兵器の特殊性はより安定した弾道を達成するためいくつかの安定翼を持つことだった。これにより150mというより長い射程とより良い貫通力が達成された。より多量の発射薬により、発射体の速度は85m/sに上昇した。発射パイプも同様に強化され、そしてこのためこれを使って10回まで発射できた。しかしこれは上に挙げたパンツァーファウスト群と同じ寸法を持っていた。製造コストを節約することが望まれたからである。新しい点火メカニズムの使用により、炸薬の重量と爆発力は炸裂弾頭が小型化されたにもかかわらずパンツァーファウスト100と同等に保たれていた。弾頭の長さは560mmで、直径は106mm、安定翼の直径は140mmだった。

●パンツァーファウスト250
 このパンツァーファウスト250、250mはパンツァーファウスト150の発展開発品だった。。発射パイプはこれも再使用可能で、ピストルグリップを持ち、発射体は150m/sの速度を持つはずだった。戦争がその前に終わったため、この兵器は決して生産に入ることはなかった。

●その他のパンツァーファウスト
 さらに次のようなモデルがあったが、この一部は開発中、あるいは陸軍によってテストされていた。Brand(頑住吉注:放火、燃焼、眩惑など)ファウスト、Flammen(頑住吉注:火炎)ファウスト、ガスファウスト、Flieger(頑住吉注:航空機)ファウスト、Luft(頑住吉注:対空)ファウスト、Schrappnell(頑住吉注:榴散弾)ファウスト。これは重量8kgで2〜3mの高さで爆発し、400mの射程を持った。

(頑住吉注:原ページにはここにパンツァーファウスト150の画像があります)

兵器の名称 パンツァーファウスト30小型 パンツァーファウスト60 パンツァーファウスト150
メーカー HASAG Hugo Schneider株式会社
Schlieben工場
HASAG Hugo Schneider株式会社
ライプチヒ所在のランプ工場
HASAG Hugo Schneider株式会社
全長 985mm 1,045mm 1,045mm
重量 3.2kg 6.10kg 6.80kg
砲身長 800mm
口径 33mm 44mm 44mm
発射薬(黒色火薬) 54g 134g
成型炸薬円錐の直径 100mm 140mm 106mm
炸薬(TNTと3ヘキソーゲンの1:1混合物) 400g 800g 800g
発射体の速度 28m/s 45m/s 85m/s
効果的射程 30m 60m 150m
貫通成績 140mm 200mm 200mm
寿命 1発 1発 10発

(頑住吉注:原ページにはここに、兵士が担いだ状態のパンツァーファウスト60、Sinsheim技術博物館に展示されている国民突撃隊の兵士のマネキンと自転車に2発装着されたパンツァーファウストの画像があります。その下の「Download - Film」をクリックするとさまざまな動画を集めたページが表示され、上から23番目がパンツァーファウストの動画へのリンクになっています)


 戦後の兵器に大きな影響を与えたナチ・ドイツの兵器は数多いですが、パンツァーファウストもその1つです。現在でも米軍に脅威を与え続けているRPGも、自衛隊などが装備しているパンツァーファウスト3もこの延長上にある兵器です。

 パンツァーファウスト150の外観は本当にRPGにそっくりです。開いた尾翼を見ると安定のためにひねりが入れられているようですね。

 リンクされているパンツァーファウストの動画は非常に興味深いものでした。冒頭では先端が細いファウストパトローネ30とその後の型が現場において混在しているのが分かりますし、発射薬に黒色火薬を使っているせいか発射時の白煙が物凄いこと、目で追えるくらいの速度ではあるものの弾道は比較的フラットであることも確認できます。

 動画において2番目に登場している、林のようなところで構えている兵士はどう見ても子供です。一方博物館に展示されている国民突撃隊兵士のマネキンは初老男性に見えます。爆雷を背負って戦車の下に飛び込むよりずっとましではありますが、パンツァーファウストを2発積んだ自転車で連合軍戦車に立ち向かうというのはやはり自殺行為だったはずです。

 パンツァーファウストに関してはこんなページもありました。

http://www.geocities.com/Augusta/8172/panzerfaust2.htm






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