Rerofmピストーレ その1

 「Waffen Revue」101号に、非常に変わった特徴を持つ「Rerofmピストーレ」を中心とした記事が掲載されていました。非常に長いので3回に分けてお伝えする予定です。まず今回はこの銃よりずっと前に作られたごく初期のオートピストルのパテントに関する内容です。


SuhlのAugst Schulter社(頑住吉注:「u」はウムラウト)

Rerofmピストーレ(頑住吉注:「Rerofm」には「改良」などの意味があります)

 火器の多装填設備に向けた希望は銃自体と同じくらい極めて古いものである。複数の世紀が過ぎる過程で、一部では最も奇抜な構造が提案され、導入された。これは1挺の銃を素早く多数回相前後して発射できることを意図しており、例えばいろいろな数のバレルを上下に、左右に、束状に配置し、あるいは弾薬マガジン、ストリップクリップ、ドラム、弾薬ベルトなどを使用していた。

 ここで紹介するケースにおいて、SuhlのAugst Schuler社のOscar Schulerは「シリンダー閉鎖機構とマガジンケースを持つ自動火器」を1890年1月3日にパテント請求し、これは1891年6月23日にナンバー57117の下に与えられもした。

 このパテント書類には次のような文面があった。

提出された発明は、従来射手によって受け止められていた発射後の火薬ガスの後方への押しによって、いろいろな仕事(同時に薬莢を引き抜き、排出しながらの閉鎖機構の開放、ハンマーのコック、同時にマガジンからの弾薬のバレル内への導入を行いながらの閉鎖のような)を今や自動的に行い、この結果射手は弾薬がマガジンにある限り、発射をトリガーによってのみ行える、というものである。

 こうしなければ無駄で不快に感じられる火薬の力(射手にリコイルショックとして負担に感じさせる)の表出が、この場合は有利に使われ、なくなり、マガジン装填後は軽いトリガーを引けばいいだけなので、射手は筋肉の骨折りがないことによってより緊張したり疲労することがなく、より慎重で正確な狙いと銃の静かな保持を許される。


 図では次のことが表現されている。
 
図1はリコイルショックによって自動的に装填されるリピーターピストルの外形、右サイドを表現している。

図2は同じ銃の左サイドから見た断面図である。システムは閉鎖され、ハンマーは倒れる途中である。

図3は閉鎖機構単体の配置を表現している。

図4
はこのピストルの発射後の作動の瞬間を示している。閉鎖機構が作動し、ハンマーとコックレバーはすでにコックされている。発射済み薬莢は投げ出され、新しい弾薬がマガジンから上がってくる途中である。閉鎖機構シリンダーはまさに前進しようとしている。

図5は軍用ライフルとしてのこの発明を閉鎖機構が閉鎖された状態で示している。

図6は結合部品が付属した外装ハンマーを、その打撃部品あるいはハンマー込みで
示している。

図7
はコックレバーを示している。

図8は閉鎖機構をロックする部品を示している。

図9はセーフティローラーの付属したバーである。

 発火機構の構造は次のようである。

 弾薬装填口の下に位置するマガジンケースaaは、その前のヘッド部にねじ込まれているバレルと一体になっている。閉鎖機構シリンダーb(ファイアリングピンc、エキストラクターd、弱いコイルスプリングを含む)は、後退途中にも動きを妨げる閉鎖機構トラップkによって固定されている。閉鎖機構トラップkの回転は閉鎖機構支えsが妨げている。閉鎖機構トラップと閉鎖機構支えという2部品は、マガジンケースaaの側壁の延長部内にあるそれぞれの回転軸にセットされている。閉鎖機構シリンダー、閉鎖機構トラップ、閉鎖機構支えというこれら3部品は完成された閉鎖機構を形作り、つまり発射の際も固定して結合された全体を形作っている。この固定した全体(図3)は、一部は円筒形の外部分d1内で、そして一部は発火機構ケースddの壁の間でスライド可能に収納されている。この結果これは短距離後方に動くことができる。バレル下に配置されたリコイルショックコイルスプリングeはこの固定された全体をバレルごと常に前方に引いている。

 発火機構ケース(図2)の後部には、同じ軸上に閉鎖機構コックレバーf(図7)、ハンマーの打撃部品h(図6)があり、後者はその外部グリップ部分h1と固定して結合されている。閉鎖機構コックレバーfおよびハンマーhは、縦切り取りによって分けられている打撃スプリングiiによって前方に急速に動かされる
(頑住吉注:直訳すると分かりにくいですが、要するに1本の板バネが二又になっていて、fとhにそれぞれ作用しているということです)

 内部ハンマー部品hの下にはバーl(図9)が配置されている
(頑住吉注:シアです)。これはハンマーをコック状態に保つ。上向きのノーズl1は、閉鎖機構がきちんと完全に引かれた時のみすぐに外すことができるという目的を持っている。

 さらにバーの下の発火機構ケース内にはトリガーmがある。トリガーにはさらにスプリングピンm1が固定されている。

 共通のスプリングoはバー、トリガー、スプリングピンの動きを規制する。

 発射時のメカニズムの経過は次のようである。

 弾丸がバレルから出た瞬間、閉鎖された固定した全体(図3)はリコイルショックの全効果を受け止める。これはまだロックされた状態で後方に動く(図4)。この際コックレバーfおよびハンマーhは駆動バーgによってその軸をめぐって回転させられる。打撃スプリングiiはこの際曲げられる。バーlはハンマーレスト内に入り、これをコックされた状態で保持する。コックレバーfはファイアリングピンcをすでに引っ込めた状態にしており、閉鎖機構シリンダーb内に存在する弱いコイルスプリングを圧縮している。ファイアリングピンヘッドのノーズc1はその後コックレバーをコックされた状態に保持する。

 閉鎖機構トラップkの切り欠きk1内にはピンpが入る。このピンは閉鎖機構の万一の意図しない早すぎるオープンを妨げる。同時に閉鎖機構支えsの突出部は固定してねじ込まれているピンs3に当たり、これにより閉鎖機構支えは次のように回転させられる。すなわち、閉鎖機構トラップk、そしてそれにより閉鎖機構シリンダーcがその保持を失い、そして閉鎖機構シリンダー内に収納されている、後方に引かれたファイアリングピンcによって強く圧縮されたコイルスプリングにより後退させられるようにである。これにより閉鎖機構シリンダーbは力強く後方に開けられ、同時にエキストラクターによって保持されている発射済み薬莢がバレル外に取り出される。上向きに突き出ているエジェクターへの突然の衝突により、薬莢はその後投げ出される。

 閉鎖機構支えsの解除により、つまり閉鎖機構のオープンにより、固定したシステム(図3)も圧縮されたコイルスプリングeによってその以前の位置へと前方に復帰する。ただしシステムの他の部分から解除された閉鎖機構シリンダーは別である。

 後方に急速に動く閉鎖機構シリンダーbは、そのファイアリングピンヘッドc1への衝突により、そこに固定されている閉鎖機構レバーfを解除する。閉鎖機構レバーはその後ずっと強い付属のスプリングiによって駆動され、急速に前方に導かれ、閉鎖機構シリンダーは前方に駆動され、一方閉鎖機構シリンダーはマガジン最も上の弾薬をつかみ、これをバレル内に押し込み、その前進運動の最後の瞬間に閉鎖機構トラップの歯k2を使って閉鎖機構トラップを前方に回転させ、後方にかみ合う。付属のスプリングで駆動される閉鎖機構支えsはパチンとはまり、そして閉鎖が完成される。すなわち固定した全体(バレル内の火薬ガスの張力に抵抗する 図3)が再び完成される

 この時トリガーを引くと、トリガーmのスプリングピンm1はバーl(この上ではスプリングピンの丸められたヘッドが滑る)を外し、ハンマーは急速に前方に進み、ピストルは発射される。前述のメカニズムの作動が改めて始まる。即座に行われるハンマーの新たなコックは急速に進行するので、射手の指はトリガーをまだ放すことができない。そういうわけで
(頑住吉注:普通ならば)バーはまだ入らず、ハンマーはコックされた状態に留まらない。(頑住吉注:しかしこの場合)スプリングピンm1(トリガーを引いた後バーlのえぐり部内に飛び込む)の配置は、バーlのハンマーレストへの即座の再進入を許す。トリガーを放した際、非常に弱いスプリングによって動くスプリングピンは再びバーのヘッドの下に滑り込み(これをレストから外す可能性なしで)、そしてピストルは新たに発射され得る。

 射手の必要な安全性を確保する(急速に働くメカニズムにその機能を規則通り遂行させる)ためには、前述のセーフティピンp(閉鎖機構トラップの早すぎるオープンを不可能にする)の他に、バーl上の突起部l1が役立つ(図2、4、9)。この突起部が、完全に前進したコックレバーおよび閉鎖機構レバーfが、閉鎖がきちんと実行されていることを示さない限りバーの外れ、つまり発射を防ぐ。その後突起部l1は、今や向かい合って位置するコックレバーfの切り欠き内に入り、バーの外れを許す。その後ハンマーが前進する。

 マガジンをロードすることを可能にするためには閉鎖機構シリンダーを後方に引かねばならない(ロードは5発の弾薬を持つパケットを弾薬収納場所に入れ、急速に押して包みを空にすることによって行われる 
頑住吉注:要するに普通のストリップクリップでしょう)。このためには弾薬収納場所は開放されなければならない。これはピストルの右外側にあるハンマーh1(図1)をコックし、同時に連結部品qのグリップをつかむことによって行われる。連結部品q(直ちにハンマーグリップに乗り上げる)は同時にコックレバーfの貫通した軸内にかみ合い、コックレバーをハンマーと連結する。これがコックレバーと発火機構ケース内のハンマー打撃部品という両者の同時の後退運動を引き起こす。そしてこれが駆動バーgの半分の等しい運動を引き起こす(駆動バーのノーズg1は支えを解除する)。閉鎖機構シリンダーの後退はその後すぐ行われる。

 閉鎖機構ケース内上部には、切り欠き部v1を持つ固定レバーvが回転可能に取り付けられ、これが閉鎖機構シリンダー上に存在する突起b1(図4)と同調するよう配置されている。この突起はそれが入ることによって閉鎖機構シリンダーを引き止め、弾薬収納部をオープンする。軸の前のスプリングのテンションがかけられたレバー部分vに閉鎖機構シリンダーを解放するために圧力を加えると、閉鎖機構シリンダーは閉鎖機構の自動的閉鎖を追い、ハンマーはコックされた状態に留まる。ピストルは発射準備状態である。単一のロードのためには上記と同じ経過が行われる。

 固定レバーの後ろにはさらに小さなグリップレバーが取り付けられている。これは固定レバーvをマガジンに固定、解除する目的をもっている。その後銃をシングルローダーとして使う際、あるいはマガジン充填の際、このグリップレバーは固定レバーvの自動的進入を許す。

 これまで記述してきたセルフローディング発火メカニズムをライフル(図5)に使用する場合は、ハンディな小さい形状を獲得するため、閉鎖機構レバーfを自動的に縮むように作ることも可能である。外装ケース壁のスリット内の上部に取り付けられた丸い突起f3がこの運動を規制し、コックレバーfのいろいろな機能の完全な実行を許す。

 メカニズムの残りの部品は、すでにピストルの際に記述したものと全て等しいままである。

パテント請求

1.自動火器であり、この場合バレル、マガジンケース、閉鎖機構シリンダー(b)が突起円盤(k)およびこれを固定するレバー(s)によって固定された全体として結合され、これが発火機構ケース(d)のサイド金属板の間でスプリング(i)の圧力に逆らって発射のリコイルによって後退し、そしてこの際ハンマー(h)をコックし、閉鎖機構をオープンし、薬莢を投げ出し、マガジンから最上部弾薬を同時にバレル内に導入しながら閉鎖機構を閉鎖する。

2.1.で特徴付けられる火器であり、以下のような特別な設備を持つ。

a)後退する固定した全体が押し棒(g)を用いて打撃スプリング(b2)を圧縮する閉鎖機構レバー(f)およびハンマー(h)を後退回転させ、そして閉鎖機構支え(s)を解除し、この結果閉鎖機構シリンダー(b)がコイルスプリング(b2)によってオープンされ、ファイアリングピンヘッド上のレスト(c1)内にグリップされている閉鎖機構レバー(f)を解放し、スプリング(i)によって再び前方に押し動かされる配置。

b)閉鎖機構シリンダーの閉鎖運動の際、突起円盤(k)が歯(k2)を用いて回され、この結果閉鎖機構支え(s)が円盤(k)を再びロックできる配置。

c)固定した全体の後退運動の終わり頃、セーフティピン(p)が突起円盤(k)の切り欠き部(k1)内に入り、そしてこれにより閉鎖機構の早すぎるオープンが妨げられる配置。

d)トリガーをまだ放す前、トリガーのスプリングピン(m1)が、コックされたハンマーのレスト内へのバーの再度のスプリングのテンションによる即時のはまりこみを許す配置。

e)バー(l)上の突起(l1)およびこれに対応する閉鎖機構レバーの切り欠き部によって、本当に閉鎖機構が閉鎖されている際のみ銃のトリガーを引くことが可能となる配置。

f)外装ハンマー(図1)に取り付けられた連結レバー(q)が、外装ハンマーのコックの際、閉鎖機構レバー軸(f)内へのかみ合いによって閉鎖機構のオープンももたらし、マガジンのロードを可能にする配置。

g)発火機構ケースをカバーしている固定レバー(v)がシングルロードに調節されている際、後退した閉鎖機構シリンダー(b)をその終わりの位置に固定し、この結果弾薬パケットをマガジン内に、または1発の弾薬をチャンバーに入れることができ、この後閉鎖機構シリンダーは手動によるレバー(v)の解除によって自動的に再び閉鎖する配置。

h)ライフルの場合大きな発火機構ケースを避けるため、閉鎖機構レバー(f)が後退、および再度の前進の際突起ピン(f3)(発火機構ケース内に切られたスリット(w)内で誘導される)によって短縮される配置(図5)。




図1



図2



図3



図4



図5


 Schulerが彼の発明の権利を念のためピストルおよびライフル用に保護させたにもかかわらず、この構造の利用は少なくともピストルに関しては知られていない。

 事実この発明はさほど革命的なものでもなかったし、すでに特許局の担当者たちによって、これがパテントによって保護されねばならない発明であるかどうか、厳しく熟考され、またテストされていた。


 マガジンが一緒にショートリコイルするなんていうのはメカの本質的に関わる問題ではなく、閉鎖時にはボルトが完全にロックされており、発射のリコイルでバレルを含む部品が短距離後退してロックが解除されるわけですから分類上はショートリコイルなんでしょうが、いくつか変わった特徴を持っています。

 この銃ではボルト後退のタイミングが通常より遅いと考えられます。ボルトをロックする部品kには後方に切り欠きがあり、ショートリコイルするとここにピンpがはまることによってロック解除を不可能にします。ロック解除が可能になるのはバレル〜ボルトがロックされたまま一定距離前進してからになります。

 つまり、通常のショートリコイルでは、

1.バレル〜ボルトがロックされたまま後退。
2.後退によりロック解除される。
3.この時にはバレル内の圧力は安全域まで下がっているのでガス圧でボルトが後退することはないが慣性でボルトがさらに後退する(バレルは後退したまま停止)。
4.リコイルスプリングによってボルトが前進、最終段階でボルトがバレルを押して前進させ、再び両者はロックされる。

 という経過になります。しかしこのシステムでは、

1.バレル〜ボルトがロックされたまま後退。
2.バレル〜ボルトがロックされたまま前進を開始する。
3.何mmか前進するとロックが解除されてボルトの後退が可能になるが、すでに前進を開始している以上当然後退の慣性はすでにない。そこで別の力でボルトが後退する。一方バレルは付属のスプリングによって勝手に前進を終了させてしまう。
4.ボルトが前進し、前進が完了するとロックが再び行われる。

 ということになります。この銃では板バネのリコイルスプリングがレバーを介してボルトを前方に押していますが、このレバーはショートリコイルによっていっぱいに後方に回転することを強制されます。レバーがいっぱいに後退すると、ボルトを前に押すのを止めるだけではなくファイアリングピンをもいっぱいに後退させ、ファイアリングピンスプリングを圧縮します。このテンションが別の力となってボルトを後退させるわけです。実に奇妙なシステムで、開発者がこういうシステムに何らかのメリットがあると考えたのか、それともロック解除さえしてやればボルトは慣性で後退するのだということに気付かなかっただけなのか、よく分かりません。開発者はリコイルショック軽減を売りにしていますが、「Faustfeuerwaffen」著者の理屈からすれば通常のショートリコイルではバレルが後方に衝突した際とボルトが後方に衝突した際の2段階に分割して後退の運動量が伝達されるからこそリコイルショックの体感が大きく軽減されるわけですが、このシステムではバレル等が短距離後退した際に全ての運動量が伝達されるので通常のショートリコイルよりリコイルショックがきつく感じられるのはもちろん、あるいは長いボルトのストロークを通じリコイルスプリングを介して運動量伝達が徐々に行われるストレートブローバックよりきつく感じられるかもしれません。この銃の場合ボルトが後退しきったときのショックは頑住吉製の擬似ブローバック製品のそれと同じ、弾丸発射とは無関係なショックにすぎないと思われます。

 トリガーのディスコネクトは基本的には引ききり式で、これだけなら不完全閉鎖でも発火してしまいますが、レバーが完全に前進していないとシアの突起がレバーの切り欠きに入り込めず、トリガーが引けないようになっているので一応安全性が確保されているはずです。

 ストロークの長いライフルではレバーが中央に来た時大きく上に張り出し、そのまま設計すると機関部の上下が大きくなりすぎるのでレバーを伸縮式にしてあるわけです。

 細部に不明な点はありますが、大筋は理解できたと思います。この筆者は「この発明はさほど革命的なものでもなかった」としていますが、私は本格的に量産、販売された初のオートピストルであるボーチャード登場(1893年)の3年以上前にパテント申請されたものであることを考えれば立派なものだと思います。3年近くも後になって申請されたシュワルツローゼの初のパテントと比べても明らかに有望そうですし。しかしこのアイデアに基づいた製品が販売されたことはなかったようです。仮にライフルに応用されても、マガジンごとショートリコイルするこの銃はたぶんタフネスに劣り、汚れに弱いなどの欠点を抱え、少なくとも軍用として成功することはなかったでしょう。











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