Rerofmピストーレ その2


 15年後、Suhl所在の同じAugst Schuler社は「多バレルリピーターピストル」を1905年10月1日にパテント申請し、これは1906年11月8日にナンバー177023の下に与えられもした。そしてこれは「リフォームピストル」の生産にもつながったし、これは大量生産でもあった。

 パテント書類は次のような文面を持っていた。

提出された発明は快適に携帯できるディフェンスガンを作ることを目的としており、その銃は完全にフラットな構造で、ピストルのメリットをリボルバーのメリットと結びつけたものである。例えばリボルバーのシリンダーのような中間節が存在するのではなく、各バレルのチャンバー内に入れられた弾薬がダイレクトにファイアリングピンの打撃によって発射され、このため弾薬の完全に均等なガス圧が利用され、そしてこれにより高められた貫通力、および大きな射撃精度が達成される(頑住吉注:シリンダーギャップがないというメリットを強調しているわけです)。バレルの穴ぐりは簡単に取り出せる小さなケース内に含まれる。

図ではそのようなピストルが表現されている。より詳しくは次のようなことを示している。

図1
 発射準備状態のピストルの側面からの外観。

図2 同じく上から見た外観。

図3 3発目発射後のピストルの縦断面。

図4および5は前および後方から見たバレルケースを示している。

図6はサイドから見たバレルケースの末尾部への「トランスポーター」
(頑住吉注:リボルバーではシリンダーハンドに当たるパーツです)のかみ合いを図解している。

 バレルの穴ぐりは等距離で上下に並んでフラットな、頑丈なケースa内に配置されている。このケースは後端部サイドに突き出した垂直な誘導レールによって、閉鎖機構ケースcのヘッド部内にフライス加工された対応する垂直のノッチ内に押し込まれており、この結果このバレルケースaは垂直に上に、あるいは下にはうまくスライドできるが、前進はできない。閉鎖機構ケースcの後部にはリボルバーの場合のようにトリガーdの引きによって作動する発火機構がある。

 この発火機構はトリガーd、そしてこれに関節結合された、プッシュアームfおよびその短い方の脚g1でプッシュアームにあてがわれた打撃スプリングgによって常に前方に押されている「トランスポーター」eからなっている。「トランスポーター」は、バレルケース側壁に歯状に上下に配置されたフライス加工部a2からa5内にかみ合っている。毎回のトリガーdの引きの際、この結果としてバレルは順次、次のバレルの弾薬がファイアリングピンiの前に位置するまで持ち上げられ、前方に急速に進んだハンマーhによって発射される。

 放した際すぐ自動的に再び前進したトリガーdは「トランスポーター」eを下方に連れて行き、「トランスポーター」はその後バレルケース側壁の次の歯状切り込み内に入る(図5および6)。トリガーの引きを繰り返した際、次のバレルの弾薬はファイアリングピンiの前に位置し(図3)、そして発射済み薬莢は次の射撃のガス圧によって投げ出される。

 閉鎖機構ケース側壁左側にはスライダーsが取り付けられている。これはバレルを入れたい時すぐ「トランスポーター」が後方に引かれるという目的を持っている。

パテント請求

 上下に配置されたバレルを持つ多バレルリピーターピストルであり、バレルを含むケース(a)が垂直方向にスライド可能で、この結果毎回のトリガーの引きの際、リボルバー発火機構の形式の阻止設備によってあるバレルから次へとファイアリングピン前に動かされることによって特徴付けられる。




図1



図2〜6

 本来真に「リフォームピストル」において興味深いのは、そもそもパテントでは言及されていない設備である。

 Schulerは、空薬莢を再装填の前になって初めて引き抜かねばならない、ということを避けたいと願った。つまり彼はマズル少し手前のバレルに穴を開け、これにより発射時ガスの一部がその上に位置するバレルに侵入し、そして空薬莢を後方に投げ出すことを可能にした。この空薬莢は射手を傷つけないため高く立ったハンマーに向けて投げられ、そしてこれにより偏向される。つまり弾丸の底部がマズル手前の穴を通過した時、瞬間的に弾丸を前方に駆動しているガスの一部がこの穴を通って漏れ出ることができるのである。

 この場合、次のことをよく考える必要がある。圧は確実にかなりのものであるに違いない。ガスはその上に位置するバレル内の後方のみでなく前方にも広がることができるからである(頑住吉注:たいしたことのない圧ならフリーな前方のみに逃げて薬莢を後方に押し出したりはしないはずだ、ということです)。その上ガスは穴を通ってその下に位置するバレル内にも漏れ出ることができ、これは弾丸のための押す力に間違いなく不利に作用したに違いない。

 4本のバレルの、その下に位置するバレルのガスによって投げ出され得なかった空薬莢は、「バレルケース」取り去り後に手で取り除かなければならなかった。

 まだ1つの重要な点に言及する必要があると思われる。

 「バレルケース」は各発射後、その下に位置するバレルをハンマー前にもたらすために上に動く。これは、すでに最初の発射の後射手の視界が上昇した「バレルケース」によって妨げられたことを意味する。これは第2そして第3の発射後さらに悪化し、第4の発射のためにはすでにほとんどとんでもない状態になった。第4の発射前、つまり3本のバレルがピストルの上に突き出ている際の「バレルケース」の安定性に関しては、我々はここでさらにくだくだと述べたくない。しかしそもそも第1のバレルのマズルの上に取り付けられたフロントサイトは何に役立ったのだろうか? それは第1の発射のためには確かに充分だった。しかしその後は完全に無意味だった。パテント図面の図3に見られるように、「バレルケース」の上昇によりサイトラインは完全に変わったからである。

 これに対し、長所としてこのピストルがシングルおよびダブルアクショントリガーを装備していたことに気付くことができる。つまり使用者は発射前ハンマーをコックし、そしてこの後「弱く」トリガーを引くか、あるいはダブルアクショントリガーを引くことができた。

注釈:最終的なバレルの設計およびピストルの生産は1906年より後になって初めて(1910年頃らしい)行われた。このピストルがそれ用に作られた6.35mmブローニング弾薬は1906年になって初めてベルギーの会社「FN」によって(ポケットピストルM1906と共に)マーケットに持ち込まれたからである。ただしこの弾薬は最初から等しく好まれたので、すぐ次の時代には全世界の何百というピストルモデルがこの弾薬用に作られた。

 アメリカにおいてさえこの弾薬は「口径.25ACP」として生産され、例えば世界的に有名なコルト社は1908年に導入された「コルト.25オートマチックピストル」用にも使用した。

テクニカルデータ

名称 多バレルリピーターピストル「Reform」
メーカー SuhlのAugust Schuler
設計年 1905年10月1日のパテント
パテント申請者 SuhlのAugust Schuler社
口径 6.35mm
空虚重量 317g
フル装填マガジン込み重量 337g
全長 136mm
全高 105mm
全幅 19mm
銃身長 4本のバレル各75mm
ライフリングの数 4条
ライフリングの深さ 0.15mm
ライフリング谷部幅 2mm
ライフリングのピッチ 約205mmで1回転
サイト 固定
セーフティ 左サイドのレバー
マガジン 4本バレルのブロック
弾薬の数 4発
ロック 固定
発火機構 ダブルアクション、ファイアリングピン
仕上げ ブルーイング
グリップパネル ハードラバー
識標 右のグリップパネルに「Reform-Pistole DRP 177 023」
左のグリップパネルに「Reform-Pistole Brevete」

(頑住吉注:「DRP」はドイツ帝国パテントの略ですが、「Brevete」は不明です)


 この銃に関してはこんなページがありました。

http://www.littlegun.be/arme%20allemande/artisan%20s%20t/a%20schuller%20gb.htm

http://waffenamt.it/wa/shop?lb=Item%5B26071%5D&lc=de&

http://www.genitron.com/unique17.html

 この筆者は実は文献資料を見ているだけで現物は手にしていないのではないかという疑いがあります。バレルが上昇するとサイトラインが変わると書かれていますがこれは誤解で、パテント資料でも現物でもリアサイトはバレルブロック上にあり、一応問題はないはずです。現物を手にしていればこういう誤解は起き得ないでしょう。

 前回のごく初期のものに属するオートピストル(ライフル)パテントから15年経って、かえって技術的に退歩したようにも思えますが、この銃は一応大量生産され、上に示した一番下のページの銃はベルギー製のコピー品だというんですからある程度以上人気もあったんでしょう。この銃は以前紹介した「バー」ピストルと似た性格を持っています。どちらも本格的オートピストルの普及前に、リボルバーより薄くて携帯しやすく、ダブルバレルデリンジャーより多弾数の発射ができるピストルの需要に応えて構想され、どちらも4連発、実際に販売された時にはすでにブローニングポケットピストルが普及し始め、人気が一時的なものに終わった点も似ています。一応両者のデータを比べてみましょう。

Reformピストル バーピストル
設計年 1905年 1897年
口径 .25ACP .25ACP
空虚重量 317g 345g
全長 136mm 155mm
全高 105mm 110mm
銃身長 75mm 62mm
最大幅 19mm 11mm
発火機構 DA/SA DA
装弾数 4 4

 薄さを除き、意外にも大きな感じがするReformピストルの方がコンパクトであることが分かります。設計時期が遅いこともあり、恐らく設計者はバーピストルを意識し、それに勝るものを作ろうとしたんでしょう。実際コンパクトさだけでなくSAが可能である点、シリンダーギャップがない点、一気に4連射可能である点(バーの場合2連射した後チャンバーブロックを180度回転させる操作が必要)、マニュアルセーフティがある点など、表面上はReformピストルの方が優れているように思えます。しかしこの銃の発射するたびにバレルブロックが上にせりあがっていくシステムはまあ面白いですけど実用品としてはあまりに気持ち悪く、実用目的にどちらかを選べと言われたら私はバーを取ると思います。

 ちなみにこの記事ではシリンダーストップにあたるバレルを上にせり上げていく部品の説明はあるもののシリンダーストップにあたる部品の説明が全くなく、パテント図面にも見られません。上に挙げた最後のページの解説では単にクリックストップするだけだったように読めますが、詳細は不明です。また、「閉鎖機構ケース側壁左側にはスライダーsが取り付けられている。これはバレルを入れたい時すぐ「トランスポーター」が後方に引かれるという目的を持っている。」という説明は分かりにくいですが、たぶんバレルブロックを入れる際、スプリングで常に前に押されたトランスポーターがひっかかるのでこれを手動で後退させる部品ではないかと思います。ただしこの部品は量産品には見られません。セーフティが兼用していたのではないか、あるいはそもそも量産品の側面のレバーはこのスライダーの変化したものでセーフティであるというのは誤りではないか、とも思えますが、これも詳細は不明です。こうした操作が必要なのはやや面倒ですがどっちみち緊急時にこの銃をリロードして撃ち続けるといったことは考えにくく、実際上は問題なかったでしょう。

 この銃も非常に面白い構造、アクションなのでモデルアップしてみたいんですが、絶対売れないでしょうね。








戻るボタン