Rerofmピストーレ その3


 多バレルの使用は当時全く新しいものではなかった。

 すでに中世から、いわゆる「オルガン火砲」において多数のバレルが横に並べて配置され、相前後して、あるいは同時に発射できたことが知られている。

 この関連では、いわゆる「ハモニカピストル」を忘れるべきではない。これはパリ出身のAlphonse EtienneとPierre Jarreがパテント申請したもので、彼らには例えば1873年、ナンバー137927の下にUSパテントも与えられた。「リフォームピストル」との差異は、この場合バレル(数10本まで)が縦にではなく横に並んで配置されていたことにある。Jarreの場合バレル列は発射後、次のバレルがハンマーの前に来るまで水平に動かされた。我々は図5に、口径7mmのピンファイア弾薬用6本バレルを持つそのような「ハモニカピストル」を見る。弾薬保持部は全てのバレルにおいて切り欠きを備え、ハンマーに叩かれ得るようにここを通って弾薬のピンが突き出る。



図5

 しかしもちろんJarreの原理も新しいものではなかった。すでにずっと前にいわゆる「ペッパーボックス」が存在し、この場合バレルは水平ではなくサークル状にドラムの形状で束としてまとめられていた。このバレルドラムはスムーズボアでもライフリング付きでも見つかる(頑住吉注:圧倒的多数はスムーズボアのはずです)。今日なお人は、何故この扱いにくく、重いペッパーボックスがそもそも設計されたのかを自問する。こうした怪物の登場時点において、1本のバレルとセパレートな弾薬ドラムを持つリボルバーが存在していたにもかかわらずである(これに関しては「Waffen Revue」10号の記事、「ベルギー製ブンデルリボルベルとペッパーボックス」を見よ。 頑住吉注:この内容もそのうちお伝えしたいと思います)。

 間違いなく開発者はチャンバーとバレルの継ぎ目のない一体物を作ることによって(こうした銃はピストル、そしてもちろん他の銃においても今日なおポピュラーである)、弾薬ドラムが例えば技術的欠陥によってダイレクトにバレル後方に位置せず、発射時恐ろしい事故をもたらす可能性を避けることを望んだのである。

 我々は図6に6本バレルの束を持つ「ピンファイアペッパーボックス」を見る(頑住吉注:こんな銃です http://www.littlegun.be/ma_collection/a%20be%20poiviere%20type%20deprez%20fr.htm  http://www.genitron.com/unique6.html)。

無名の4本バレルピストル

 だが、パテントというものはこういうものである。開発者は構造と部品をいくらか変える必要があるだけ。そしてそれだけですでに保護された権利を避けることができるのである。

 ある会社(残念ながらその名は知られていない)は「Scheintotリピーターピストル」(頑住吉注:「Scheintot」とは「外見上の死」、つまり仮死状態のことです)をマーケットに持ち込んだ。これは「リフォームピストル」と似た構造である。図7は1911年のカタログから取ったこの銃を示している。この銃は口径12mmのいわゆる「仮死状態弾薬」を発射したが、4本ではなく3本のバレルを持っていた。この銃は外装ハンマーを持たず、フレーム内に移された発火メカニズムを持っていた。



図7

 「仮死状態」という概念はそのようなピストルを販売するための売り文句としか評価できない。実際にはそれは刺激物質(頑住吉注:催涙ガス)であり、近距離において顔の真ん中に命中した時は非常に厄介な作用をする可能性がある。

 しかし同じ社は前述の銃と全く同じ構造の4本バレルのピストルも登場させた。ただこの銃の場合は「シャープな」弾薬である6.35mmブローニング用に作られていた(頑住吉注:この英語の「シャープ」にあたる語は、弾薬の「実弾」、ハンドグレネードの演習用ではない爆発可能な「実物」の他、砲弾等の安全装置が解除された状態なども指します)。

 グリップパネル上には「A.M.」の文字が見える。これは多数のピストルモデルをマーケットに持ち込んでいた「August Menz」社を示している可能性がある(頑住吉注:この会社は4.25mm口径の超小型ピストル「リリパット」などを販売した会社です http://www.littlegun.be/arme%20allemande/a%20menz%20gb.htm )。しかし精密に比較してみると、文字の配置がまったく違うことが確認され、このためこのピストルが本当にMenz社製なのか疑わねばならない。
 
 このピストルの図8から15を前述の銃の図7と比較すると、両ピストルが1つの、同じ会社製であるに違いないことが確認できる。バレルの数を除き、外形は完全に同一であり、セーフティレバーは等しく、左サイドにあるバレルブロックを前傾させるためのロックレバーも等しく、発火機構構造も同様である。

 「リフォームピストル」の場合、外装ハンマーによって打撃される1本のみのファイアリングピンが存在した、つまりバレルが各発射後順次上へと動かされた。一方、このピストルの場合は4本のファイアリングピンが存在する。バレルが固定されているからである。図12から15で部分的に見える発火機構は次のように作られている。トリガーを引いた際まずバーが打撃スプリングを後方へ押す(図13)。さらにトリガーを引くと打撃スプリングはさらに圧縮される(図14)。トリガーを最後まで引くとバーは打撃スプリングのレストから滑って逸れ、打撃スプリングは解放され、打撃部品に作用し、これがファイアリングピンを打撃して発射が起こる(図15)。トリガーを放すと打撃部品は次のファイアリングピンの高さまで動き、このファイアリングピンは次のバレルを発射させることができる。

 しかしこのかなりよく工夫を凝らした発火機構・トリガーメカニズムは1つの大きな欠点を持っている。発射後にトリガーを放した後、打撃部品は自動的にその下に位置するファイアリングピンの高さに動く。つまり、例えば上2本のバレルのみ発射し、使用者がピストルをオープンし、空薬莢を新しい弾薬と交換し、銃を再び閉じ、その後次にトリガーを引いた際、次の、つまり上から3番目のバレルに点火される。上から4番目のバレルが発射されて初めて、最も上のバレルに再び次の順番が来る。

 つまり、このピストルを完全にロードするためには上2本のバレルを再装填し、将来の時点における次の使用の際、まず上から第3のバレルが点火されることに注意しなくてはならないはずである。

 これでももしサイトがなかったら、どのバレルから発射されようと同じことだと言えるだろう! つまりサイトは1つのフロントサイトと1本のリアサイトミゾからなり、調節可能性はない。しかしバレルは異なる高さに配置されているので弾道も異なる。つまり使用者はこのピストルの命中確実性はどうなのかと本当にあれこれ考えあぐねるだろう。前述の「Scheintotピストル」の場合はこれはそう重要ではない。ただ方向がおおよそ正しければいいのである。しかしこの場合は「シャープな」弾薬が使われており、N試射マークもフレーム前部最も下のバレルの高さ、そしてバレルブロックのバレルナンバー1と2の間に見られるのである。

 装填のためには左サイド、セーフティの前にあるロックボタンを軽く下に動かす。この結果バレルブロックを下に押し下げることができる(図10)。その後弾薬をリムが突き出ているエキストラクターにあてがわれるまでバレル内に入れる。このエキストラクターはバレルを戻した際バレル内に引っ込む(図11)。

 クリーニングのためのこのピストルの分解は不必要である。バレルはバレルブロックを折ればクリーニングできる。

 このピストルは全長115mm、銃身長66mm、全高104mm、全幅21mmである。撮影された銃には銃器ナンバー579が刻印されている。

 この関係ではさらに

4本バレルの信号拳銃

 を指摘したい。これはすでに「Waffen Revue」12号で詳細に記述した。このピストルは同様に4本バレルを装備し、相前後して発射できた。しかしこのためトリガーと発火機構メカニズムは決定的に複雑で、知恵を絞って精密に考えぬかれたものだった。


 念のため確認しておきますが、今回登場した銃はテーマであるReformピストルとは直接関係なく、それと共通する「多バレルのピストル」を列挙したものです。

 「無名の4本バレルピストル」に関する図8〜15は省略します。メカが分かるように書かれていますが、グリップパネルを外した穴からごく一部が見えるだけで正直よく分かりません。

 この筆者はこの4本バレルの銃のサイトラインとそれぞれのバレルの弾道が異なることを妙に重大視していますが、率直に言ってこの種のディフェンスガンにとってどうでもいい程度の差ではないでしょうか。一番上のバレルと一番下のバレルの軸線間の距離はたぶん例えばダブルバレルショットガンのそれと大差ない程度でしょうし。

 検索していてこんな銃を見つけました。「トンマ」なピストルです。

http://www.gunsworld.com/world/tomma_us.html

 説明によればReformピストルとほぼ同時期のもので、「無名の4本バレルピストル」に非常によく似ています。



 これはとあるオークションのページにあった画像です。こうしたページは時期が過ぎると消えてしまうので失礼して借用しました。この銃もたぶん後方のレバーがセーフティで、前のボタンがテイクダウン用でしょう。

 こうしたピストルの多くは.25ACPを使用するもので、つまりブローニングベストポケット登場以後に作られたものです。総合的にベストポケットに劣るのは明らかであるようにも思われますが、それらより薄く設計でき、また何より登場当初は馴染みのないオートピストルの信頼性に対する不安もあったと考えられ、こうした銃にも一定の需要があったんでしょう。しかし現代にはこれに近い形式の銃はほとんど見られません。






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