中国駆逐艦の限界とは

 これまで中国が最新鋭戦闘機、攻撃ヘリ、戦車の動力系統に問題を抱えているという話に何度も触れましたが、「ロシア、中国が近代的エンジンの生産を掌握するにはまだ2〜3年が必要、とする」には駆逐艦などの動力にも問題があるという内容があり、どういう問題なのかなと思っていたら、それについて触れたページがありました。もちろんこれは今後中国の空母の動力系統にも関係してくる問題だと考えられます。

http://military.china.com/top01/11053250/20120807/17359302.html


韓国メディア:動力系統が中国の052C戦闘艦と空母艦隊を制約することになる (頑住吉注:ああ、例によって「韓国が言ってる」というのはたぶん嘘なんでこの筆者の意見として読んでください)

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ネット仲間が撮影した第2ロットの052C駆逐艦の試験航海の画像」)

韓国の軍事ウェブサイト、「高麗海軍フォーラム」に2012年8月2日に発表された文章は、中国が量産を開始した052C型駆逐艦の性能に存在する問題と、後の使用の中で遭遇する可能性のある限界に対し分析を行っている。文章は、まさに航海試験中の最新型052C型駆逐艦と、すでに就役している同型戦闘艦を比較することによって、戦闘艦の体積にはっきりした変化がないことに気付くのは難しくなく、これは中国の大型水上艦艇の動力装置の限界が依然完全に解決されないままだということを事前に示している、と考える。同時に、新たに就役する052C型駆逐艦に装備される「長剣」-10型巡航ミサイルに関するこの前の噂も中国に、具体的にどのように052型駆逐艦をを使用するかという方面にあるいは悪習が存在するかもしれないことを事前に示している。一方最新ロットの052C型駆逐艦に054A型護衛艦ではすでに採用されている新技術がまだ装備できていないことは、中国が海軍新技術のハイエンド戦闘艦への広範な応用がまだ実現できていないことを事前に示している。

まず、排水量が変わっていないことは、あるいは052C型駆逐艦が依然動力装置の限界に直面していることを事前に示しているのかもしれない。(頑住吉注:ごめんなさい、この筆者が非常に多用する「預示」という語のぴったりした訳が思いつかず、「事前に示す」という何ともぎこちない語を使っていますが、「予言」の事象版と考えてください。つまり排水量が変わっていないという事象が、まだ顕在化していない動力装置の問題の存在を予言しているのだ、といったような意味です)

現在、中国の軍事ウェブサイト上に発表されている航行中に撮影された画像は、中国海軍某造船工場の中で、少なくとも3隻の052C型駆逐艦が同時に艤装中であり、いずれも工程がすでに50%超終わっていることをはっきり示している。一方この前に、すでに少なくとも1隻の完成した052C型駆逐艦が試験航海を開始している。これにかんがみれば、052C型駆逐艦は、あるいは「旅大」級駆逐艦の後を継いで、中国のさらなる量産型駆逐艦となるかもしれない。

また試験航海中の、まだナンバーが塗装されていない052C型駆逐艦と、すでに就役している同型戦闘艦の比較を行うことによって、新たに建造された052C型駆逐艦がより古い同型艦に比べ体積上変化していないことに気付くのは難しくない。これは長期にわたり中国海軍大型水上艦艇の発達を困難にしている動力に関するボトルネックがあるいは依然未解決であることを事前に示している。そしてこのため引き起こされる052C型駆逐艦の戦力の限界は、あるいは後日の作戦中、この中国海軍主力艦の使用を大きく制限させるかもしれない(頑住吉注:同型艦なんだから目立って大きくなっていないのは当たり前だろうとも思いますが、既存の艦に限界があるのが分かっていながら同型艦がさらに作られたのは、限界をもたらした問題が解決されていないからだろう、ということですね)。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは、「052C型駆逐艦の各部分を図示する」です。画像をクリックすると拡大しますが、画像自体には「中国海軍新型ミサイル駆逐艦の分解解剖想像図」とあります。なお部分名称は上段左が「国産ガスタービン」、右が「100mm主砲」、中段左が「730近接防御火砲」、右が「3連装魚雷発射装置」、下段左が「遠距離対空ミサイル垂直発射システム」、中央が「対艦ミサイル発射架」、右が「妨害ロケット発射装置」です。最後のは何を妨害するのか分かりません。高速ミサイル艇とかでしょうか。)

052C型駆逐艦の第1号艦「蘭州」号(ナンバー170)が2003年4月29日に進水したことは、中国海軍が初めて中、遠距離の区域防空能力を具備したことを示した。だが周辺諸国が同時代に、あるいはより早く装備した同類の戦闘艦(例えば日本の海上自衛隊が装備する「こんごう」級駆逐艦)と比べると、052C型駆逐艦には防空性能上依然一定の隔たりが存在する。そして隔たりを作り出している主要な原因は、052C型駆逐艦が装備するミサイルに一定の性能上の限界が存在することの他に、この型の駆逐艦が動力装置の制限を受け、比較的小さな艦体を採用している(052C型駆逐艦の排水量は世界の同類戦闘艦の中で最小レベルに位置する)ことも性能の隔たりを作り出している重要な原因である。また逆から言って、比較的小さい艦体がもたらすグレードアップの余地の限界は、戦闘艦が後日各種の技術的グレードアップを行うことを制限している。したがって052C型駆逐艦を、元々の性能とグレードアップ性能という2つの方面で深刻な限界に直面させている。

現在の052C型駆逐艦の煙突のレイアウトから見て、この艦はガスタービンを主動力にしている。具体的なエンジンの機種はウクライナのDN-80あるいは中国のコピー生産版しかありえない。このガスタービンの技術性能は世界トップレベルだが、ウクライナと中国の何度もの技術グレードアップを経てはいるが、依然ロシア製艦用ガスタービンエンジンの体積が比較的大きい、信頼性が比較的劣る、使用寿命が比較的低いという固有の欠点を残している。

DN-80型ガスタービンエンジンの出力は世界的に有名なアメリカ製LM-2500型ガスタービンエンジンより大きいが、中国は052C型駆逐艦開発過程でDN-80型ガスタービンエンジンを2台装備すると出力不足、DN-80を4台装備すると出力過剰という問題に直面した(頑住吉注:3台にすりゃいいんじゃないの? と思いましたがたぶん2つのスクリューを別系統で動かしているため偶数じゃないとだめなんでしょう)。最終的に052C型駆逐艦をDN-80型ガスタービンエンジン2台装備に適した6,000トン級の艦として設計するしかなかった。新たなロットの052C型駆逐艦の艦体が依然元々の規模を保持していることは、あるいは中国がまだ駆逐艦の動力装置方面で難関の突破に成功していないことを事前に示しているのかもしれない。またこれはまさに空母艦隊建設に代表される海軍大発展時期にある中国に関して言えば、疑いなく相当に不利なことである。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは、「052C駆逐艦上の垂直発射装置」です。)

次に、巡航ミサイルの噂はあるいは中国に052C型駆逐艦に関する使用上の悪習があることを事前に示しているのかもしれない

少し前、ロシアの軍事メディアは、中国が891号実験艦上で「長剣」-10型遠距離巡航ミサイルの艦載実験を行っている最中であることを暴露した。このことから、中国が新たなロットの052C型駆逐艦に「長剣」-10型遠距離巡航ミサイルを装備することが推測される、という。ロシアの軍事メディアのこの推測は理論的根拠に欠けているように見えるが、すでに就役している第1ロット2隻の052C型駆逐艦の性能の分析により、この推測は火のないところに立った煙ではないとすぐ気付くことができる。

052C型駆逐艦以前、中国の技術であらゆる大型水上艦艇に装備したのはいずれも射程120km前後のC-802系列対艦ミサイルだった。一方052C型駆逐艦に装備されるのは射程が280kmを超える(推測)C-803系列対艦ミサイルである。このことから、052C型駆逐艦の元々の位置付けは区域防空型駆逐艦であるが、中国はこれに全軍屈指の対艦打撃能力を具備させようと企図していることが見て取れる。

このため、もし中国が本当に「長剣」-10型遠距離巡航ミサイルの艦載化を計画しているなら、052C型駆逐艦を初搭載の目標としていることも理の当然である。だがこの普通に見える措置は、あるいは中国の052C型駆逐艦使用上の悪習をまさに事前に示しているのかもしれない。

周知のように、中国はソ連の最初の水上艦艇建造経験を獲得し吸収した後、中国の特色を持つ大型水上艦艇の技術的風格を形成するようずっと努力してきた。何故なら中国は初期においてロシア式水上艦艇使用、建造過程で、ロシア式艦艇には比較的小さい艦体に多すぎる電子、武器設備が満載され、「友鶴事件」に似た深刻な事故を引き起こす可能性が高いことに気付いたからである(頑住吉注:「友鶴事件」は1934年に日本の水雷艇「友鶴」が本来なら大丈夫なはずの悪天候で転覆したもので、原因の1つは武器を満載したことにより重心が上がり過ぎたことだとされています)。

(頑住吉注:これより4ページ目。画像のキャプションは、「052C駆逐艦、対空ミサイルを発射」です。)

早い時期の中国海軍とロシア海軍は同様に、長期にわたって大型水上艦艇が欠乏していた。このため、中国もまた止むを得ず比較的小さい艦体で、技術の大きな発展と簡略化によって総合型戦闘艦を建造している。052C型駆逐艦は現在中国が建造する最大型の駆逐艦であり、これに総合作戦能力を具備させている。特に中国海軍は一貫して対艦能力を重視しており、疑いなくこれは中国海軍が相当に関心を注ぐ内容である。だが前述のように、052C型駆逐艦はエンジンの制限を受け、艦体のグレードアップポテンシャルが相対的に限られており、専用の防空駆逐艦としては、これに比較的大きなスペースを占める「長剣」-10型遠距離巡航ミサイルを装備することは、疑いなくメリットよりデメリットの方が大きい行いである。

だがある視点は、アメリカも同様に052C型駆逐艦に類似した「アーレイ・バーク」級駆逐艦に、「長剣」-10に類似した「トマホーク」式遠距離巡航ミサイルを装備しているるではないか、と考えるだろう。このため中国が052C型駆逐艦に「長剣」-10遠距離巡航ミサイルを装備するのは不当なことではない、と。だが問題のカギは、「アーレイ・バーク」級駆逐艦は「トマホーク」巡航ミサイルを汎用のMK-41型垂直ミサイル発射システムに装備し、甲板の面積は占めないというところにある。

これと同時に、アメリカは「トマホーク」式巡航ミサイルとナビゲーションを、「アーレイ・バーク」級駆逐艦の「イージス」システムの中に有効にマッチングさせている。これに比べると、052C型駆逐艦は明らかに「長剣」-10遠距離巡航ミサイルを戦闘艦の軍備および火力コントロールシステムの中に有効にマッチングさせることはできない。もし強行してマッチングを行えば、技術的な多くの限界に直面するだけでなく、さらに重要なのは元々性能が限られている052C型の火力コントロールレーダーの火力チャンネルに無理に割り込み、したがって火力コントロールシステムのレベルでさらに一歩052C型駆逐艦の専門分野としての区域防空作戦能力を制約することになることだ。

(頑住吉注:これより5ページ目。画像のキャプションは、「052駆逐艦、冷発射技術を採用」です。ちなみに知らなかったので検索したところ「熱発射」というのは通常のロケットエンジンによる発射で、「冷発射」というのは圧縮空気などによって発射した後一定距離飛んでからロケットエンジンに点火するもので、アメリカは「熱発射」、ロシアは「冷発射」の技術がそれぞれ発達している傾向にあり一長一短だという説明が見つかりました)

第3に、052C型駆逐艦の足りないところは、あるいは中国新技術の拡散に限界が存在することを事前に示しているのかもしれない。

052B型駆逐艦をその合図として中国は新たな造艦ブームに入った。そしてこれと同時に世界の戦闘艦の先進レベルを追いかけ始めた。052B型駆逐艦に示されるように、中国は第2世代大型準ステルス戦闘艦を設計する能力を具備した。052C型駆逐艦に示されるように、中国はステルス性と区域防空能力を兼ね備えた大型駆逐艦を建造する能力を具備した。また054A型護衛艦に示されるように、中国は初めてアメリカ製MK-41に類似した熱発射垂直ミサイル発射システムを装備した。また054A型護衛艦は中国の新世代戦闘艦の中で建造数が最大の艦艇ともなった。

このことから、054A型護衛艦が装備する、国産熱発射垂直ミサイル発射システムを含むほとんど全ての技術はすでに完全に成熟していることが見て取れる。だがちょうど試験航海中の052C型駆逐艦だけから見ると、それが採用するのは依然ロシア製のターンテーブル式垂直発射システムに似た固定式冷発射垂直ミサイル発射システムである。この技術的限界は、中国があるいは新技術の有効な拡散をまだ実現していないことをはっきり示しているのかもしれない。そしてこの限界はあるいは長期的に中国海軍の大型水上艦艇の戦力発揮に深刻に影響するかもしれない。

アメリカの「アーレイ・バーク」級駆逐艦の発展模式を参照すれば、艦載フェイズドアレイレーダーを核心とする火力コントロールシステムと、冷発射垂直ミサイル発射システムは不可分な両部分である。その原因は簡単で、新型の火力コントロールシステムは戦闘艦に想像を超える数の火力チャンネルを付与し、一方冷発射垂直ミサイル発射システムは前例のないマッチングと汎用性によって充分なミサイル搭載および発射能力を具備し、したがって火力コントロールシステムの性能向上が戦力増加に変わるからである。だが中国はこの2つの部分が分離してしまっており、2種類の戦闘艦にそれぞれ装備されているのである。

(頑住吉注:これより6ページ目。画像のキャプションは、「近年052C駆逐艦の量産は加速し始めているが、性能の変化は大きくないかもしれない。」です。)

もし052C型駆逐艦と054A型護衛艦を後日組み合わせて使用するなら、火力コントロールと兵器の共同性能も大きな影響を受けることになる。あるいはこの限界を作り出した根本的原因の1つは、まさに中国が054A型護衛艦によって冷発射垂直ミサイル発射システムをよく飲み込んだ後、深く掘り下げての研究開発を行って、新たなミサイル発射システムに中距離および遠距離対空ミサイルを同時にマッチングさせる能力を持たせ、したがって区域防空駆逐艦を装備する能力を持つことにまだ成功できていないことかもしれない。

「ワリヤーグ」号は25日の長きに渡る試験航海を終えたばかりで、中国国産空母も現実味を増している。こうした時、より多くの注意が、中国が今後いかにアメリカ海軍に類似した大型空母特別混成艦隊を建設するかに集中している。だが周知のように、空母特別混成艦隊はアメリカ海軍の多くの組成部分の中の1つに過ぎない。アメリカ海軍が第二次大戦後ずっと世界の大洋に雄を唱えることができた最も主要な原因は、アメリカ海軍が装備する各タイプの水上艦艇が各種作戦行動を執行する能力を具備していることだ。そしてこの能力の獲得は相当程度、まさに新技術の主力戦闘艦艇への有効な拡散に頼っている。

中国に関して言えば、もしここでも艦載フェイズドアレイレーダーと垂直ミサイル発射システムを例にするならば、それらは大型化と小型化という2つの方向への同時発展に向かうべきである。前者の意義は中国海軍の052C型のような駆逐艦に、完備されたハイエンドの作戦能力を具備させ、さらには空母随伴作戦の最高強度の作戦任務を引き受ける能力を持たせることである。一方後者の意義は、054A型のような護衛艦に、甚だしきに至ってはさらに小さい、056型のような護衛艦に、アメリカの「沿岸戦闘艦」に類似した総合作戦能力を具備させ、中、低烈度の海上衝突の中で優勢を占める能力を持たせることである。この両方面の能力の具備は、中国海軍にアメリカ海軍のような各種作戦形式に適合する総合作戦能力を徐々に持たせることになる。

(頑住吉注:後のページは画像とキャプションだけです。7ページ目は「052C駆逐艦上の対艦ミサイルの特写。」、8ページ目は「トン数や動力などの制約要素ゆえに中国にはまだ、より大型の駆逐艦によって052C駆逐艦に存在する問題を解決する必要がある。」です。)


 大型艦の動力系統としてはウクライナ製ガスタービンとそのコピーしかなく、その2台装備に適する駆逐艦を作るとなると比較的小型にならざるを得ず、能力も将来的発展可能性も限られる、ということです。「4台装備すると出力過剰」の問題が生じたとも書いてあり、それなら4台装備にして艦をもっと大型にすればいいのではないかと思いますが、もちろんそんな簡単なことはすぐ思いつくはずで、それでも能力の限られた駆逐艦を作り続けているというのは何らかの問題があるんでしょう。その問題が技術面なのか供給力面なのかは分かりませんが。ともかくこの能力的に限界のある小型駆逐艦が現在中国最大の水上艦であり、同クラスの艦は日本の方が数が多く、中国が多数生産しているのはより小型の護衛艦である、といった事実から、門外漢の私にも漠然と水上艦の動力系に関する問題の根深さが見えるような気がします。「ワリヤーグ」の排水量は052Cの10倍ほどもあり、やはり建造が予想される中国国産空母の動力系には相当な困難が予想されます。








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