「未来の歩兵」

 「DWJ」2004年9月号に、ドイツ軍の歩兵に関する将来計画である「未来の歩兵」システムに関する記事が掲載されていました。


「未来の歩兵」システムは32の構成要素を含む。

よく武装された

DWJは2003年2月号において「未来の歩兵」プロジェクトを詳細に紹介した。今、第2回ヨーロッパ歩兵セミナー(2.EIS)の枠組みの中で、Hammelburgにおいて新しい歩兵装備が部隊に引き渡された。

うしたシチュエーションはインターナショナルな「自由の部隊」の兵士にとって、21世紀の始まりにはすでにほとんど典型的なものになっていた(頑住吉注:ドイツ語の文章にはよくある書き方で、これ以後「こうしたシチュエーション」とは何かの説明が始まります)。

 危険な地域内に存在するある任意の村Xは、くり返し突発事件の舞台となっている。ドイツ部隊は戦闘車両を使って道に車両検問所を設け、そこで人も含めて検査を行っている。彼らは対話を試み、その際地域住民の情勢、人々の種々の不安要因に関する情報を入手している。さらに、彼らはその場所の民間の救援組織が援助物資を分配する際に援護を行っている。市の立つ中央広場では歩兵たちが食料配布の整然とした進行に配慮している。だが、そのとき自動車爆弾が爆発する。そこには死者と負傷者が。兵士たちはまず持ち場を守り、そしてやっと救助を行うことになり、負傷者を助けだす。中央広場の隅では扇動された村民たちによる突然のデモが始まる。村民の激しい怒りと死者への悼みは、この攻撃を防げなかったという理由で部隊に向けられている。
 増強のため到着した戦力は扇動された群集を押し戻す。軍用犬を使っての逮捕が続く。ここで新たにさらなる状況のエスカレートが起こる。村内の錯綜したシチュエーションに乗じ、中央広場に隣接した3件の家が敵民兵陣地に変わっている。敵民兵はここでデモ参加者と兵士たちに自動銃による射撃を開始する。市民と兵士の間に新たな死者と負傷者が出る。その上戦闘車両が「対戦車防御兵器」によって損傷させられる。村内に投入されている部隊の司令官は今、待ち伏せ場所から出てくる敵を排除するために彼の戦力を結集させる。村を外敵から守るため、そして小規模な戦力を支援するため、その地にはレオパルド2−A4の一隊が投入されている。歩兵中隊には民兵が占拠する3つの建物を強襲して占領するという使命が与えられる。「Wiesel 1空挺兵器キャリア(頑住吉注:何のことか分からず検索したところ、戦闘重量2.75トンの空挺豆戦車みたいなものでした。ちなみに兵器キャリアという名称はブレンガンキャリアからの伝統でしょうね。http://www.waffenhq.de/panzer/wiesel1.html)」からの20mm機関砲による援護射撃と煙幕に守られて、兵士たちは建築物に侵入する。ラムと電動ノコギリによってドアが開けられ、「閃光/ ダブル音響弾」が個々の部屋への突入前に使用され、民兵たちは打ち負かされ、捕虜にされる(頑住吉注:ここまでが冒頭の「こうしたシチュエーション」の内容です)。

 25カ国からの約1200人の参加者によって「第353スナイパー教育大隊」があるHammelburgで行われた第2回ヨーロッパ歩兵セミナーに際し、現実に即して「Three Block War」という用語で表現されたものは、インターナショナルに投入される部隊にとっていつでも危険な現実となる可能性があり、またすでにそうなっている。「未来の歩兵」(IdZ)プロジェクトは、特にそのような投入兵力を何とか出来るだけ良好に武装するために生まれたのである。最初の「未来の歩兵」装備の部隊への引渡しに際して、Hammelburgの指導的な兵士はモダンな補助手段を活用し、示した。

MG4−歩兵用の軽機関銃
 「未来の歩兵」によって、重量11.7kgの7.62mm口径機関銃MG3は、より軽いH&K製の5.56mm口径機関銃MG4によって交代される。MG4の開発は、5.56mmx45(.223レミントン)仕様の軽量で高性能な機関銃の国際的な需要に関する広範囲にわたるマーケット分析を確認した後、H&Kによって約5年前に始まった。社内では、開発はMG43の名称の下で進行した。
 5年間の開発およびテスト、そして今MG4のドイツ連邦国防軍への採用によって、H&Kが良い仕事をしてきたことが示された。H&Kは、目下軽機関銃領域の中でのマーケットリーダーであるFN製の5.56mm口径モデル ミニミよりも多くの領域ですぐれた銃の開発に成功した。
 MG4は、ベルトリンクに結合された5.56mmx45NATO弾薬を発射するオープンボルトファイアのガス圧ローダーである。この銃は理論上1分間に850発の連射速度を持つ。MG4のMG3に対する根本的な長所はたった7.9kgの軽い重量である。新しい機関銃は全長1030mm、全幅90mm、全高260mmであり、ストックをたたんだ際には銃の全長は450mmに短縮される。
 射手は銃の重心に取り付けられたキャリングハンドルによってMG4を運搬できる。
 まだ手間のかかる特殊な防熱グローブで交換しなくてはならなかったMG3のバレルと違い、MG4の射撃によって加熱したバレルは言及したばかりのバレルに固定されたキャリングハンドルの助けによって簡単に交換できる。
 その上バレルには上下左右に調節可能なリアサイトが取り付けられている。調整によってリアサイトとバレルの抜き取りは互いに同調させられるので、交換後も異なるバレルによるターゲットへの同じに保たれた命中点が問題なく保証される(頑住吉注:この部分、何を言っているのかよく分かりません。まずMG4のバレルに付属しているのはリアサイト=Kimmeではなくフロントサイト=Kornです。またリアサイトはレシーバー上にあり、フロントサイトはバレル上にありますからフロントサイトを調整した場合バレルを交換しても命中点が同じということはありえません。あえて推測するならば、普通Kimmeはリアサイトですが、これは「切れ込み」といった意味であり、MG4のように左右にガイドのあるフロントサイトをこう呼ぶことがあるのかもしれません。あるいは単に誤記かもしれません。で、用意されている交換バレルは銃側のリアサイトと合わせて狙点に命中するようにあらかじめ試射によってフロントサイト側で調節されているので、交換しても命中点が維持される、ということかも知れません。フロントサイトが固定で、調整を全てリアサイトに頼っていたらバレルごとの微妙な調整をあらかじめ行うことはできないので、ここがメリットだ、ということではないでしょうか)。インジケーターは射手がいつでも彼の銃のロード状態を納得することを可能にする。
 MG4のレシーバーカバー上にはピカティニーレール(ミルスタンダード1913)がある。これによって銃には「温像器具」(頑住吉注:サーモグラフィーを応用した、温度差を映像化するスコープのことだと思います)、「像強化ターゲットスコープ」(頑住吉注:これは何のことか分かりません。スターライトスコープでしょうか)のようないろいろな「ターゲット補助手段」を装備することができる。
 ドイツ連邦国防軍はG36で採用されているようなキャリングハンドルを装備したMG4を意図している。このキャリングハンドルは同様にピカティニーレールによって銃に固定される。この内部にはG36でも使用されているのと同じ3倍のスコープがある。この中にはいろいろな距離を算出する目盛りが含まれている(頑住吉注:本当はもう少し詳しく説明されていますが、辞書にない単語が頻出して意味不明です。要するにスコープ内に見える敵兵の身長をスコープ内の目盛りと合わせることによって大体の距離が分かるようになっているということだと思います)。
 MG4のショルダーストックは側面に、射撃方向から見て左前方に折りたたむことができる。折りたたんだ状態でもなお銃は制限なしに射撃準備状態にある。多様なアダプターによってショルダーストックは位置を調節でき、射手に合わせることができる(頑住吉注:これも意味がよく分かりません。ストックにアダプターを外付けするか、バットプレートを交換するか、ストックごと交換するかのいずれかだと思います。「多様なアダプターによって」というと外付けのような気もしますが、それだとワイヤーを曲げたショルダーレストが使えなくなるのではないかという疑問があります)。

歩兵のそばにキャリバー.50
 「未来の歩兵」システムによって、ドイツ連邦国防軍の歩兵は分隊レベルにおいて口径12.7mmx99(.50BMG)の大射程ライフルG82を獲得する。これは本質的にはアメリカの会社バレットが開発、製造しているM82A1のことである。
 バレット社は1980年にRonnie Barettによって、.50BMG弾薬用のセミオートライフルを開発、製造するという目標を持って設立された。今日、バレットのライフルはとりわけアメリカの陸軍および海兵隊に、そして30を越える国々の軍および治安組織によって使用されている。
 ドイツ連邦国防軍におけるG82の採用の枠組みには、ドイツ連邦国防軍に対する契約の受け手としてH&Kが登場する(頑住吉注:要するにドイツ軍がバレット社から直接購入すれば安いはずなのにそうではなく、どういう理由か本来無関係なはずのH&Kを介して購入する、ということのようです。H&Kに本来不要な利益を与えるわけで、他人事ながら税金の無駄遣いちゃうかという気もします。考えてみればいつの間にやら軽機関銃、ライフル、カービン、サブマシンガン、PDW、ピストル、グレネードランチャーと、ドイツ軍の歩兵用火器はほとんどH&K製になっており、ちょっと立場が強くなりすぎているんじゃないでしょうか)。だが、G82はアメリカで製造され、ドイツではただドイツの基準に適合させるだけである。
 目下G82の分隊レベルへの導入が予定されている。しかしG82を中隊のスナイパー分隊の枠組みの中で用いるというプランの余地もある。このケースでは、現在のプランに比べて部隊向けに明らかに少数のG82しか調達されていない(頑住吉注:要するに歩兵分隊レベルのみで使うという現在のプランならG82の数が足りるが、中隊のスナイパー分隊でも使うとすれば足りない、ということのようです)。
 G82はショートリコイル機能原理によるセミオートのリコイルローダーである。G82のマズルブレーキは、2つの「衝突面」によって.50BMG弾薬のリコイルを約70%削減する(頑住吉注:「衝突面」というのはマズルブレーキ内の、発射ガスをぶつけるプレート状の部分のことです)。
 G82にはZeissが新開発したばかりである6〜25倍の倍率可変スコープが装備される。G82には銃の重心にスイング式のキャリングハンドルがあり、これによって比較的重い銃の運搬が簡単になっている。G82のフォアグリップの下には高さ調節が可能なバイポッドがあり、この調節は1本ずつ可能である(頑住吉注:岩場など下が平坦でない場所でも銃を水平にできる、ということでしょうが、まあたいてい高さ調節できるものはそうですよね)。

「温像器具」がさらに改良される
 「未来の歩兵」プログラムにより、分隊レベルにTWSAN/TAS13A(V)という形で温像テクノロジーが登場した。Raytheon Systems Company(アメリカ)が製造し、Zeiss Optronik GmbHが販売する「温像器具」TWSAN/TAS13A(V)は、目下すでにボスニア、コソボ、アフガニスタンにおけるドイツの分担兵力によって実戦使用されている。
 だが、TWSAN/TAS13A(V)の、より成績優秀な器具による交代がすでに決定している。将来は「未来の歩兵」システムによって、AEG Infrarot-Module GmbH(AIM)製の小火器用の「Hunt-IRターゲット器具」が部隊に導入される(頑住吉注:「IR」は赤外線のことです)。
 HuntIRは2.7kgの軽量な「温像器具」であり、これによって1500mまでの距離のターゲットを識別し、戦闘することができる(STANAG4347による 頑住吉注:STANAGとはNATO標準規格のことです)。この器具は劣悪な天候時でも高い偵察成績を可能にし、その上この器具の「像表現」は銃が射撃で過熱してもかげろうによって妨げられない。
 その前任者(頑住吉注:TWSAN/TAS13A(V))と比較して、HuntIRはよりコンパクトな構造方式で、全長33.8cm、全高11.5cm、全幅14.6cmしかない。例えばこの器具を軽量なマシンガンであるMG4に乗せて使う場合、ベルトやバレルの交換時に取り外す必要がない。
 HuntIRの外装ケースはABS類似の耐衝撃性プラスチックでできている。この器具は波長領域3〜5μm(頑住吉注:mmの1/1000、マイクロメートル)内で機能する。固定された検波器AIM 384x288HgCdTe(24-μmRaster 頑住吉注:「網目スクリーン」?)の使用により、HuntIRの構造にはこれがない場合「温像器具」に輪郭がシャープな像を保証するために普通あるスキャナーがない(頑住吉注:この分野の知識が全然ないんでこの部分チンプンカンプンです)。
 HuntIRの外装ケース上には軸線上にピカティニーレールがあり、例えばレーザー・ライトモジュールなど追加器具のマウントを可能にしている。ディスプレイのポジションは非常に低いので射手にとって人間工学的に使いやすい(頑住吉注:写真で見るとこれでも結構高いように見えるんですが、通常はもっと高いことが多いということなんでしょう。「温像」が表示されるディスプレイがあまり高いと使いにくいだけでなく頭を上げて狙わなくてはならず被弾率も上がるはずです)。
 HuntIRは器具の使用者サイドにある4つのテスト画面によって操作される。このテスト画面を使うと、器具内の記録装置に蓄えられたいくつかの銃のための「ターゲットマーク」が「オンスクリーンメニュー」上で同様に選択できる。また弾道学的修正データもインプットできる。記憶装置への記録と、同じタイプの多数の銃のための調整データの呼び出しが同様に可能である(頑住吉注:これもよく分かりませんが、弾道特性の異なる複数の銃ごとにあらかじめ調整を行い、その後それぞれの銃につけ換えるたびにメニュー画面で「銃1」、「銃2」などのうちから選択できるということではないかと思います。「弾道学的修正データ」のインプットというのは気温や風速などのデータをインプットすることで器具側が自動的に狙点の修正を行うということではあるまいかと思います)。
 スイッチを入れ、銃器タイプを選択した後のHuntIRの「運転」は、それ以上の操作なしに可能である。画像コントラストやシャープさの調整はフルオートマチックが優先して行われる。外部からのHuntIRへの「ターゲットマーク」やいろいろな銃の弾道学的データのプログラミングは問題なく可能である(頑住吉注:「ターゲットマーク」=「Zielmark」は文脈上その銃に合わせた狙点の設定のことかと思われますが正確には不明です)。HuntIRの場合、この器具を使って記録された画像をWLAN-ビデオ中継によって外部の器具に送ることができる。これにより、「未来の歩兵」プログラムの枠組み内のHuntIRは、ネットワークで支援された戦闘指揮内に組み込まれることが可能である。例えばHuntIRを装備した偵察隊はその持ち場にいながら、無線設備(「未来の歩兵」システムのナビゲーション装備および指揮装備)を使って上位コマンドレベルの赤外線画像を入手できる。これはTWSAN/TAS13A(V)ではありえないことである。

未来の展望
 Hammelburgにおけるビデオプレゼンテーションは、その種の実戦投入が未来に予想されるということを示した(頑住吉注:またこの書き方で、以下「その種の実戦投入」とはどういうものなのかが語られます)。

 適切にモダンな武装を施された歩兵が自動車検問所で市民の車を検査している。ある不審者が特に詳細に調べられる。この人物の姿はデジタルカメラで記録され、デジタル無線を使って数秒の速さで「上位戦闘場所」へと送られる。そこで使用できるデータバンクとの照合は、その人物が手配中の戦争犯罪者であることを明らかにする。

 「未来の歩兵」システムにおける完全に本質的な進歩は、情報の獲得と情報のマネージメントをも意味するということはくり返し明らかになっている。全てのレベルにおける指揮能力は改善され、それにより有効性と戦力は著しく向上する。
 システムのさらなる改良における新しい重点は、例えば内部に情報が投影できるバイザーの付属した戦闘ヘルメット、およびABC(頑住吉注:核、生物、化学兵器)防御を組み込んだ新しい衣服の開発である。

G82のテクニカルデータ

口径 12.7mmx99(.50BMG)
重量 13.9kg
全長 1450mm
銃身長 740mm
マガジンキャパシティ 10発
最大有効射程 1830m
初速 835m/s(42.8g弾使用時)


コンプリートパケット
「未来の歩兵」の各システムは10人の兵士による強力な歩兵分隊のための装備を含む。個々のシステムには次の構成要素が属する。

弾道学的防護ベスト 10
キャリングシステム 10
分隊無線器具 10
分隊無線器具用バッテリー 60
ナビパッド 10
デジタルカメラ 1
ヘッドセット※1 10
ドリンクシステム「キャメルバッグ」 10
防護メガネ 10
イヤープロテクター 10
ABC防護スーツ。グローブおよびオーバーシューズつき 10
Strahlendosimeter※2 10
レーザー距離測定器 VectorW 1
レーザーライトモジュール 10
Biv-望遠鏡 2
Biv-Brille Lucie※3 10
暗視アタッチメントNSA80※4 10
温像器具 1(新しい組織では2)
MP7A1マシンピストル 1(新しい組織では2)
発射器具40mmAG36※5 3(新しい組織では2)
MG4マシンガン 1(新しい組織では2)
G82大射程ライフル 1

表現された個数は現在の装備状況。「新しい組織では」というのは計画されているもので、歩兵分隊内に2つの同じ一団を設けるもの。大射程ライフルはさらに中隊のスナイパー部隊の枠内に組み込まれる。システム価格は現在320,000〜340,000ユーロに達する。この際価格は調達数に依存する。
頑住吉注:※1の「ヘッドセット」とはインカムのようなものかとも思いましたが、他に全員用の無線機があるので単にヘルメットと付属品のことだろうと思います。※2の「Strahlendosimeter」は辞書に載っていないので不明ですが「Strahlen」は「光」、「光線」なので防閃光グラスのようなものかもしれません。※3の「Biv-Brille Lucie」も不明ですが「Brille」は「眼鏡」です。※4は型番がちょっと違いますが「MP7A1」の項目に登場したスコープと併用するタイプの暗視アタッチメントです。※5はG36アサルトライフルにマウントするグレネードランチャーで、M16におけるM203にあたるものです。この表に載っていない理由は不明ですが当然7挺くらいのG36も装備されるはずです。またMP7A1がMG4射手の近接防御用だとすればたぶん分隊長はP8を装備していると思うんですがこれも書かれていません。今後は10人の分隊を、同じ構成の一団2つに分ける計画であり、それぞれに「温像器具」、MP7A1、グレネードランチャー、MG4が1つづつ装備されることになるわけです。


 「未来の歩兵」と言うと、宇宙戦争みたいなものを想像してしまいそうですが、全くそんなものではありません。「対テロ戦争」開始以来、戦争というものの形が大きく変わったことについてはこれまで何度か触れました。(西)ドイツ軍も冷戦時代は東ドイツから侵入してくるワルシャワパクト軍の第一線部隊との戦いが主眼だったわけですが、冷戦が終結し、ドイツが統一されたことでそういう可能性はほぼ消滅しました。一方海外での平和維持活動に軍を派遣するようになって、現在アメリカ軍がイラクで苦しんでいるような比較的装備の整わない、しかし地の利を生かすことができるゲリラ等との戦いが最重要の課題になってきました。その典型的な形が冒頭の村Xにおける「Three Block War」という用語で表現されるようなケースであるわけです。「未来の歩兵」はこうした新しい形の戦争にできる限り適応した歩兵の未来形です。
 3部に分けられたMP7A1の記事でもこの銃と弾薬がこうした戦争に適するよう配慮されたものであることが強調されていましたし、分隊を2つに分けて柔軟に対応できるようにするのも、サーモグラフィーの応用も、敵第一線部隊との正面からの総力戦ではなく神出鬼没のゲリラ等との戦いに対応する意味があるんでしょう。「構成要素」の表を見ると、防護ベストが全員に行き渡っているのは当然として、全員に無線、ナビパッド、暗視アタッチメントなどが装備され、ハイテクを利用した情報面での強化が重視されているのが分かります。
 
 記事全体としては、バレットの導入につながった戦訓や、主にどういう場合に使用が想定されるのかが書かれていないのは少し残念です。また、タイトルに「32の構成要素を含む」と書かれていますが、それが何なのかはどこにも書かれていません。表の「構成要素」は全体の一部で、全部で32ということなんでしょうが明らかに説明不足だと思われます。またこの記事では「Visier」の記事と違ってMG4が多くの面でミニミに勝るとはっきり書いていますが、具体的にどういう点で勝るのかは書かれていません。とまあ疑問点や不備と思われる点もありますが、なかなか興味深い記事でした。もちろんこうした軍の近代化は平和維持活動に従事する自衛隊にとっても学ぶべき点が多いと思われます。








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