ロシアの新世代リボルバー

 言うまでもなく中国語の資料で最も価値があるのは他国にあまり知られていない中国製銃器に関する情報です。しかし他国、特に旧東側諸国の銃に関しても結構価値のありそうな情報が見られます。そこで今回はロシア製銃器に関するページの内容を紹介します。

http://mil.fznews.com.cn/zhiliaoku/eluosi/ldbq/dbwq/2007-11-1/2007111nh+ug-nBdd211259.shtml


ロシアの新世代リボルバー

(頑住吉注:原ページ最初の画像のキャプションです。「噴射-S型1式大口径リボルバーと、それが使用する12.3mmx22R普通弾薬」)

1990年代初め、ロシア内務省(MVD)は警察官の制服と装備の更新計画を発表した。リボルバーをもって内務省の警察官の統一装備とすることが確定し、選定試験が行われた。現在まだ選定試験の結果は公表されていないが、装備統一のプロセスは延期された。ただし選定に参加したいくつかの機種のロシア式新世代リボルバーは、すでに内務省の警察の一部に装備されている。この文章ではロシアの警察用制式拳銃の変遷、および選定に参加した一部の新型リボルバーについて紹介する。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「噴射型1式大口径リボルバー用の12.3mmx40Rゴム散弾弾薬(左)とゴム製スラッグ弾薬」)

警察用制式拳銃の変遷

アメリカの警察官がリボルバーをずっと使用し、制式にしてきた事情とは異なり、ロシアの警察用制式拳銃はリボルバーと半自動拳銃の何度かの変遷を経験してきた。

帝政時代、ロシア国内には独自開発のリボルバーはなかった。ツァーの政府は1870年にアメリカのスミス&ウェッソン社に15万挺の口径11.18mm(0.44インチ)のS&W No.3シングルアクションリボルバーを発注し、軍と警察に装備した。これはM1970リボルバーと称された。1895年、7.62mmナガンリボルバーが帝政ロシアの軍用および警察用拳銃として制式採用され、ナガンM1895リボルバーと称された。生産はツーラ兵器工場で行われた。この銃の主要な特徴は気封式シリンダーを採用したことだった。発射時にシリンダーとバレル後端は閉鎖され、火薬ガスの漏れを防止した。

十月革命後、ソ連のMVDの警察官の武器は当初警棒だけだった。だが当時はまだ革命後の混乱状態にあり、多くの帝政時代の軍、警察用拳銃が民間に流入し、警棒ではどうにもならなかった。そこでMVDは過去にヨーロッパから輸入された、まだ軍用になっていない多機種の中、小型自動拳銃を警察官に使用させるために支給した。この結果警察用の拳銃は多様化し、維持補修や弾薬の供給に多くの問題をきたした。このことはMVDに警察用拳銃の制式化の必要性を痛感させた。同じ時期、ソ連軍は7.62mmトカレフ拳銃(TT-30/33)を軍用拳銃に指定し、部隊に装備した。これにより初代のソ連軍制式ナガンM1895リボルバーはしだいに軍から引きあげられた。MVDは多くのナガンM1895リボルバーを引き取り、ソ連の初代警察用制式拳銃とした。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「噴射型1式大口径リボルバー用の12.3mmx40R特殊弾の断面図。左から右に徹甲弾薬、鋼芯弾頭弾薬、染色弾薬、ゴム製スラッグ弾薬」)

第二次大戦終結後、ソ連軍は9mmマカロフ拳銃(PM)をもってTT拳銃を更新した。MVDはすぐに警察官に支給していた初代警察制式ナガンM1895リボルバーを回収し、TT拳銃に換えた。

PM拳銃は軍用としては威力が低いがサイズが小さくて警察用には非常に適していたので、ソ連軍がほとんど全てPM拳銃に換装した時、PM拳銃はMVDによって警察用の制式にも選定された。そこでMVDの警官と軍人は同様にくPM拳銃を使用し、かつ制服も酷似していたので両者を外観で区別することが難しくなった。

ロシア独立(頑住吉注:日本ではあまりこういう見方しないですよね。他が出て行った結果そうなっただけというか)後の1991年、MVDは警察官の外観を変えるため、警察官の制服と装備の更新計画を発表した。リボルバーをPM自動拳銃の代わりに採用することが決まり、MVDリボルバー選定委員会を設置して選定試験を行った。選定に参加したのはロシアで設計された数機種の大口径および9mm口径の新型リボルバーであり、さらに外国製品もあった可能性がある。選定試験の結果はまだ未公表だが、ロシア全国の警察官の武器を全てリボルバーに換えるというプロセスは延期された。ただしこれらロシア式新型リボルバーはすでに警察官の一部に装備され始めている。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「夜間作戦用レーザーモジュールを装着した噴射-S型1式大口径リボルバーの左面」)

噴射型12.3mmリボルバー

ロシアMVDの秘密保持要求に基づき、12.3mmリボルバー開発計画進行時、この計画は「噴射(頑住吉注:キリル文字、中国語での表記は原ページで確認してください)英語表記“UDAR”」と呼ばれた。このため、この銃の開発に参加した研究機構は、同じ「噴射型」の名で異なる12.3mm口径リボルバーを試作した。

目下噴射型12.3mmリボルバーには2種の形式があり、噴射型1式および噴射型2式と区別して呼ばれる。だが輸出製品公告では「噴射型」という同じ名称が用いられ、混乱を生じさせている。アメリカ市場では区別のため、噴射型2式を「廉価版」噴射型12.3mmリボルバーと称している。

(頑住吉注:原ページにはここに、上と同じ銃の右面の画像があります)

噴射型1式12.3mmリボルバーはツーラ器械設計局(KBP)が開発した(頑住吉注: http://www.kbptula.ru/rus/str/strelk/udar.htm )。全体の外観からすると、この銃はアメリカのS&Wのボディーガードリボルバーと似ているが、その設計には少しユニークな点がある。使われているのは通常のダブルアクション発射機構である。フレーム上面に露出したハンマーは手で後方にコックすることができ、シングルアクションで発射することもできるし、トリガーを使ったダブルアクションでの発射もできる。弾薬の装填および発射後の空薬莢排除の際は、シリンダーをフレームの左側に振り出す。シリンダーを固定しているシリンダーラッチは、アメリカのコルトリボルバーと似ていて、シリンダー後方のフレーム左面に設けられ、後方に引くとシリンダーのロックを解除して振り出すことができる。噴射型1式と2式はいずれも12.3mm口径の特殊弾薬を使用する。だが両銃の弾薬に互換性があるのか否かはまだはっきりしない。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「複数種のリボルバー弾薬の比較。12.3mmx40R普通弾薬(中央)、0.45ロングコルト弾薬(左)、英国制式0.455ウェブリー&スコットリボルバー弾薬」)

1式が使用する典型的な弾薬には、12.3mmx22R普通弾薬、12.3mmx40R特殊弾薬と12.3mmx46R特殊弾薬の3種がある。普通弾薬には威力大、停止作用大という特徴がある。特殊弾薬には特殊な効果がある。目下主に4つの弾頭形式がある。徹甲弾(射程25mで5mm厚の鋼板が貫通できる)、鋼質弾頭(射程25mでの運動エネルギーは480Jで停止作用が比較的強い)、比致命ゴム弾(暴徒鎮圧に用いる)、染色弾(暴徒の体にマーキングして追跡を容易にする)である。この他、さらに普通散弾とゴム散弾等がある。これら12.3mm弾薬は5発ずつフルムーンクリップに装着してシリンダーに装填することもできるし、個別に装填することもできる。

噴射型1式には2種のバリエーションがある。噴射-S(勤務)型1式と、噴射-T(訓練)型1式である。前者は私人の探偵、ボディーガード等の保安人員および一般人の護身用に供給し得るもので、後者は重量を軽減するために軽金属で製造されたシリンダーとフレームが採用されている。

噴射型2式12.3mmリボルバーはモスクワ近郊のTsNIITochMash社(対外的には中央精密機械技術科学研究所と称する)によって開発された(頑住吉注: http://www.tsniitochmash.ru/archive/indexen.htm 公式サイトですが、この銃については触れられておらず、ボツになったようです)。この会社は特殊兵器専門の研究所で、かつてソ連軍特殊部隊のために水中アサルトライフル、水中ピストル、各種消音器を開発した。

この銃は最近になってやっと公開された。ハンマーが露出し、ダブルアクション発射機構が採用され、外観上伝統的リボルバーと似ている。使用弾薬には12.3mmx22R普通弾薬、12.3mmx40R特殊弾薬、12.3mmx46R特殊弾薬、新開発の12.3mmx50R特殊弾薬の4種がある。普通弾薬を除く3種の弾薬の弾頭には、鋼芯普通弾頭の他に徹甲弾、催涙ガス弾、染色弾がある。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「噴射型2式大口径リボルバーとその弾薬。この銃はハンマー露出式のダブルアクションである」」

全体的に見るとこの銃はアメリカのS&Wリボルバーと多くの類似点がある。特にシリンダーラッチの設置形式が非常に似ている。このボタンを前に押すとシリンダーが振り出せる。オーバーサイズのグリップは黒色のプラスチック製で、表面には艶消し処理がなされ、滑り止め作用もある。

MOLOT DOG-1式12.5mmリボルバー

MOLOT DOG-1式12.5mmリボルバーはMOLOTの東700kmにあるVyatskie Polyany市のVyatskie Polyany機械工場(MOLOT)によって開発された。この工場はVyatskie Polyany 兵器工場とも呼ばれ、かつてのソ連時代はカラシニコフ軽機関銃(RPK)、スチェッキン自動拳銃(APS)の生産に責任を負っていた。この工場は中央精密機械技術研究所(KBP)と共にMVDの要求を受け、大口径特殊弾薬を使用するリボルバーを開発した。それでこの工場もMOLOT DOG-1式の試製に成功した。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「MOLOT DOG-1式大口径リボルバーの右面。装弾、排莢にはシリンダー軸を抜き、シリンダーを取り外す必要がある」)

この銃は上述の拳銃が現代のスイングアウト式リボルバーの設計方式を採用したのとは異なり、過去のソリッドフレーム式で設計されている。この種の構造はノースアメリカンアームズ社の小型リボルバーと同じで、フレームには切り取り部がなく、装弾、排莢にはシリンダー軸を抜き取り(シリンダー軸の前端に突出しているピンを後方に押すとロックが解除され、フレーム前方に抜き出せる)、シリンダーを取り外すことが必須である。シリンダーのチャンバー内の発射済み薬莢は、シリンダー軸を使って1つずつ押し出し、その後改めて1発ずつ装填する。この種のきわめて原始的な操作方式は面倒なだけでなく、シリンダー軸を容易に紛失し、シリンダーが容易に脱落する。

この銃は12.5mm口径の特殊散弾を使用し、これには鋼球弾、プラスチック弾、ゴム弾、催涙ガス弾、染色弾等がある。この種の12.5mm弾が噴射型12.3mmリボルバーの弾薬と互換性があるか否かはまだ不明確である。

この銃の発射方式は通常のダブルアクションで、ダブルアクション、シングルアクションが可能である。

この銃は上述の2種の大口径リボルバーと比べ、操作性が明らかに悪く、現在に至るもなお改良されたとの情報はない。現在試作品があるだけで大量生産はされていない。

(頑住吉注:原ページの最後の画像のキャプションです。「MOLOT DOG-1式大口径リボルバーの左面。この銃は露出ハンマーのダブルアクションである」)


 非常に長文なので少しずつ読んでいるんですが、中国の警察拳銃がリボルバーに代わったことに関する記事もあります。中国の新リボルバーもゴム弾が発射できるようになっており、中国の警察用拳銃の切り替えはロシアのそれを真似たものであることが分かります。そちらの記事では中国で拳銃の更新が求められた理由、またそれに際し時代に逆抗するものだとの強い批判もあったことなどが詳しく書かれていますが、今回の記事では何故更新が求められたのかは不明確です。軍人と外観で区別するためなどというのは言うまでもなく理由になりません。そのためには制服を変えればいいだけのことです。ゴム弾、催涙弾などが使用できることから見て、おそらく主な理由は容疑者をなるべく殺さずに逮捕したいということでしょう。不十分とはいえ民主化の流れの中で、簡単に人を撃ち殺すことへの批判が高まった、ということでしょうか。この記事は2007年11月のものでちょっと古いですが、その後ロシアの警察官の装備がどうなっているのかはよく分かりません。ただ、おそらくこうしたリボルバーは少なくとも一般の警察官に装備されるだけで、警察の対テロ特殊部隊には強力で装弾数の多い軍用ピストルが装備され続けるでしょう。
 













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