4.6mmx30弾薬ファミリー

 「DWJ」2004年9月号に、MP7A1用弾薬である4.6mmx30の弾薬バリエーションに関する記事が掲載されていました。


4.6mmx30弾薬は長期的に9mmパラベラムと交代し得る

「家族の肖像」の中に

我々はDWJ2004年8月号でH&KによるMP7A1銃器システムおよび4.6mmx30DM11ハードコア弾薬を紹介した。それに続くこの記事では、H&Kが決定的な役割を演じてきた口径領域4.6/4.7mm弾薬の歴史を取り上げる。

&KとイギリスのRoyal Ordnance-Radway Greenが新開発した4.6mmx30は1990年代の早い時期に端を発している。
 振り返ればH&Kは口径領域4.6/4.7mmに関して35年を越える経験を持っている。その中で傷弾道学的研究によりこの口径が近距離用として良好に適することが証明されてきた。
 1960年代の終わりに、H&KとスペインのCETMEがHK36(G36と混同しないように)用にコンセプトした4.6mmx30の祖先に当たる4.6mmx36が作られた。この4.6mmx36のためには、いわゆるスプーンノーズ弾が想定されていた。これはその非対称の先端と高い速度を結びつけることによって、5.56mmx45と比較して改良された傷弾道学的効果をもたらすものだった。アメリカ人は当時すでにベトナム戦争において5.56mm弾薬のM193弾丸タイプにかなりの問題を抱えていた。だが4.6mmx36の開発は、当時前途有望だったG11用ケースレス弾薬開発プロジェクト着手に有利になるように中止された。
 G11の4.73mmx33ケースレス弾薬(頑住吉注:どうでもいいですけどインチ換算ならともかくメートル法の国で開発された口径がなんでこんなに半端な数値なんでしょうね)もMP7A1用弾薬のさきがけと見られる。何故ならG11プロジェクトの枠組みの中で獲得されたこの口径領域の(傷)弾道学的知識が、同様に4.6mmx30の開発に注入されているからである。その上、当時の4.73mmx25「NBW」(頑住吉注:「近距離領域兵器」。「MP7A1」の項目参照)ケースレス弾薬のコンセプトに伴う本質的データによって後のPDW弾薬が規定されたのである。
 その弾薬重量4gは今日の4.6mmx30(ケースなし)とほぼ同じである(頑住吉注:つまり4.6mmx30がもしケースレス弾薬だったら当時の「NBW」弾薬とほぼ同じ重量だというわけです)。当時決定された弾丸重量2.75gおよび初速585m/sにも同様のことが言える。今日の4.6mmx30フルメタルジャケットソフトコアバージョン用にはこれとほぼ同じ数値が予定されている。
 4.6mmx30弾薬の成績スペックはコンベンショナルなサブマシンガン弾薬と典型的なアサルトライフル弾薬の間に位置している。この弾薬は防護されたマンターゲットと戦闘距離300mまでの戦闘を可能にする。防護されていないターゲットに対する致命的な制圧射撃なら450mである。フルメタルジャケットソフトコア弾薬種類により、この弾薬は450mにおいてなお、致命的な傷を生じさせるためのNATOの要求である80ジュールを満たす(頑住吉注:逆に言えばドイツ軍が採用したより軽量なDM11ハードコアでは満たせないということでしょうね)。
 しかし、この新しい弾薬は5.56mmx45弾薬の代わりではないし、決してそのように想定されてもいないということは明らかである。反対にむしろNATOレベルではこのPDW弾薬を長期的に9mmパラベラムの後任とすることが決定されている。だが、NATOが数億発もの9mmパラベラムを貯蔵しているという背景事情から、実際上完全な解決がなされるにはなお数年、あるいは数十年さえ要するかもしれない。ドイツ連邦国防軍はこの意味で完璧に「先頭を行く人の位置」を占めている(頑住吉注:ドイツ軍ではPDW弾薬の9mmパラベラムから4.6mmx30への更新が他のNATO諸国より断然早く進んでいるというわけで、この文脈からすると少なくとも現時点ではハンドガン用も4.6mmx30に変わることが決定しているわけではなさそうです)。

全ての事柄の基準 NATOの要求
 PDW弾薬はNATOの指定に基いたものでなければならなかった。すなわち、防御されたターゲットを150mの距離で戦闘不能にし、そして200mまでの制圧射撃を行うということである。
 ターゲットの防御に関して参照される媒体はロシア構造様式の防護ベストであり、その形式はいわゆる「CRISAT1構造」としてNATOによって標準化された。これは1.6mm厚のチタンプレートと20層のケブラーからなる。弾道学的に、この構造は弾丸にとって侵入が困難な障壁である。何故なら高度に強靭なチタンを貫通した後にさらにエネルギーに壊滅的な影響を与えるケブラーを貫通しなくてはならないからである。この構造は各部分に弾力を持つ組織構成に基き、卓越した阻止キャラクターを示す。
 このような構造をコンベンショナルなフルメタルジャケット弾装備のPDW弾薬で撃つと、スタンダードなミリタリー弾薬が普通そうであるように、その弾丸は比較的短い戦闘距離の場合、すでにチタンプレート上でジャケットがぱっくり口を開いて「虚脱状態」になる。たいていの場合、限度距離(約120m以遠)においてはもはやエネルギー量の小さな弾片が防護ベストを貫通するのみである。短い戦闘距離では、その弾丸は全構造を貫通するが、貫通の際に非常に多くのエネルギーを失い(約200ジュール)、この結果防御されていないソフトターゲットを試射した場合と異なり、戦闘不能状態にすることも、あるいは致命的な効果すらも確実に保証できないのである(頑住吉注:敵兵をその場で戦闘不能にする方が、やがて死に至る傷を負わせるより困難であるわけですね)。
 5.56mmx45とは対照的に、スチールコアの内蔵、あるいはいわゆるダブルコア弾でも救済策にはならない(頑住吉注:説明がありませんが、ダブルコア弾というのは貫通力を高めるスチールコアと重量を増加する鉛コアを同時に内蔵している弾丸のことでしょう。こういう構造の5.56mmx45現NATO弾なら現に救済策になっている、ということのようです)。何故なら弾薬直径の関係でPDW弾薬の火薬スペースが小さいため、推進力が小さすぎるからである。そういうわけで、弾薬種類4.6mmx30「ウルティメイトコンバット」、および「コンバットスチール」には硬化処理された銅皮膜つきのオールスチール弾が装備された。この弾丸はほぼ完全に弾丸重量を維持しながら最小のエネルギー損失でハードターゲットを貫通することを保証する。この両ファンクションは防護ベスト貫通後の最大のエネルギー伝達のための最適な要因を提供する。このことは8月号で紹介したDM11/AA80にも同様にあてはまる(頑住吉注:「AA80」なんて出てきたか? と思って見返しましたが文中には出てきていません。しかしタイトル写真に「AA80 40PATRONE 4.6MMx30,DM11 HARTKERN」とラベルの貼ってある弾薬の紙箱が写っており、詳しい意味は不明ですがDM11=AA80と思っていいようです)。
 弾薬タイプ「ウルティメイトコンバット」はNATO−CRISAT構造を300mまでの距離で貫通し、MP7A1から発射した場合その距離でマンターゲットに命中するための充分な精度を供給する。
 PFA防護クラスUなら25mの距離まで貫通する。
 近距離兵器にとっては絶対的に例外的ケースだが、こうしたデータは大きな戦闘距離におけるこの弾薬の成績ポテンシャルをも明確に示している。

システムの弾薬ファミリー
 弾薬のコンセプトも明確な体系的要求に基いている。
 H&KはRadway Greenとともに4.6mmx30の完全な弾薬ファミリーを開発した。すなわち軍および警察の最も多様なユーザーグループのための実戦使用、実戦使用訓練、銃器訓練といった各領域をカバーする弾薬群である。

ウルティメイトコンバット 2g
 鉛フリーの、銅をコーティングしたオールスチール弾を装備した戦闘用弾薬。NATO−CRISAT構造を300mまで貫通。PFA-SK(頑住吉注:防護クラス)Uなら25m。弾道学的成績データはRUAG AmmotechのDM11/AA80と同じ。「コンバットスチール」の後継。

コンバットスチール 1.7g
 鉛フリーの、銅をコーティングしたオールスチール弾を装備した戦闘用弾薬。NATO−CRISAT構造を200mまで貫通。このバリエーションは「ウルティメイトコンバット」によって交代される。

フルメタルジャケット 2.6/2.7g
 戦闘および訓練用フルメタルジャケットソフトコア弾。USマーケット用スペシャル。

ポリス 2g
 国内使用向けの鉛フリーの変形しやすい弾丸。急速なエネルギー伝達をもたらし、周囲への危険が最小。防護クラスTを貫通(頑住吉注:使用前、使用後の写真がありますが、たぶん全真鍮製のホローポイント弾であり、ホロー内面には切れ目があってソフトターゲットに突入することによって先端が見事に4つに裂けています。ちなみに「効力とはエネルギー伝達のことである」と信じるドイツ人はこれを使い、「やっぱり弾丸には重量が必要だ」と考えるアメリカ人のために内心「分かってないな」と思いつつ上の重いフルメタルジャケット弾を特別に供給している、ということかも知れません)。

スプーンノーズ 2g
 非対称の先端を持つ全銅弾。急速なエネルギー伝達を望むが、変形弾の使用が許されていないユーザー(頑住吉注:軍や、しばらく前のドイツのように法的にフルメタルジャケット弾しか使えない警察のことでしょう)向け。

サブソニック 5g
 サイレンサー使用時のための音速以下の弾薬。セミ、フルオートでの銃の完全なファンクションが保証される。50mまで防護クラスTを貫通。

トレーサー 2g
 光跡弾。赤色の光で、0〜300mで視認できる(頑住吉注:この種の超小口径弾はトレーサーを作るのが難しいとも言われますが問題は指摘されていません。ただ、トレーサーは光の発するポイントを狙い撃ちされないため少し飛んでから発光し始めるのがよいとされますが、この弾は距離ゼロから視認できることになっています)。

カッパー-トレーニング 2g
 全銅弾を装備した安価なトレーニングおよび戦闘用弾薬。50mまでNATO−CRISAT構造および防護クラスTを貫通。

ソフトフランギブル(壊れやすい) 2g
 ハードな表面への命中によって砕ける鉛フリー弾を装備したトレーニング、戦闘用弾薬。この弾は完全防護してのリアルなトレーニングと周囲への安全を可能にする。またこの弾薬は例えば航空機、油田、原発といったセンシティブな領域における使用が想定されている。

ハードフランギブル 2g
 ハードな表面への命中によって砕ける鉛フリー弾を装備したトレーニング、戦闘用弾薬。この弾は完全防護してのリアルなトレーニングと周囲への安全を可能にする。万一のトレーニング事故を想定してコンセプトされた。すなわちこの弾丸は近距離からのソフトターゲットへの射撃によって粉々にならず、小数の部分に割れる。きれいな銃創になり、弾片は外科手術によって取り除きやすい(頑住吉注:…兵隊さんも大変ですねー)。
 この他演習(頑住吉注:Manover 「o」はウムラウト)および軍事教練(頑住吉注:Exerzier)弾薬がファミリーに含まれる(頑住吉注:この2つがどう違うのか分かりませんがたぶん少なくとも前者は空砲のたぐいではないかと思います)。

DWJの結論
 4.6mmx30弾薬の存在はH&KおよびRoyal Ordnance両企業のおかげである。H&KのMP7A1という形のモダンな「パーソナルディフェンスウェポンシステム」の中で、この弾薬はその栄達のキャリアをドイツ連邦国防軍内ですでに始めた。この成功はもしかするとなお長く続くかもしれない軍事紛争における変化した前提条件ゆえである。というのは、この弾薬はこの前提条件に正確に合わせて作られたものだからである(頑住吉注:対テロ戦争開始以後の戦争の様変わりにうまく適応した弾薬だから成功間違いなしだ、というわけでしょう)。


弾薬の重量比較

弾薬 7.62mmx51NATO 5.56mmx45NATO 9mmx19NATO .40S&W .45Auto(M1911A1) 4.6mmx30 7.62mmx39(M43) 5.45mmx39(AK74) 7.62mmx25(トカレフ)
弾薬重量 24.2g 12.3g 12.4g 14.8g 21.4g 6.5g 18.1g 10.5g 11.0g
同じ全体重量での携行弾数 120発 240発 235発 200発 135発 450発 160発 280発 265発



 私は「4.6mmx30,DM11ハードコア弾薬」の項目で、転倒によってソフトターゲット内部にエネルギーを伝達する弾丸としてはP90用の5.7mmx28が初めてであるようなことをうっかり書きましたが、そう言えばベトナム戦争時代からいわゆるスプーンノーズ弾というのが試作されていたことを忘れていました。スプーンノーズというのは尖った弾丸の先を斜めにそぎ取ったような弾丸で、ソフトターゲット突入後アンバランスを起こして転倒しやすくなるわけです。しかしそれならばもっと疑問になるのは、そういうアイデアが何十年も前からあるのに何故大規模に採用されてこなかったのか、という点です。考えられそうな理由としては、

●コストが高くなる
●送弾不良の可能性が高まる
●遠距離での命中精度に悪影響がある
●薄い金属板、木の板、ガラスなどを貫通後の弾道が屈折しすぎる

といったことが考えられそうですが真相は不明です。しかし近距離専用の特殊弾薬としてすら本格的に実用されてこなかったというのは事実のはずで、何かしら問題点があるんでしょう。

 今回の記事も非常に興味深いんですが、肝心な部分に説明が欠けている気がします。それは、今回紹介されたバリエーション群とドイツ軍が採用した4.6mmx30,DM11ハードコア弾薬の関係です。おそらく「コンバットスチール」というのは4.6mmx30,DM11ハードコア弾薬によってとってかわれれた旧弾薬と同じかそれに近いものでしょう(重量1.7gでオールスチールに銅メッキ)。しかし前回の記事では4.6mmx30,DM11ハードコア弾薬は「(CRISATターゲットを)150mの射撃距離で確実に貫通する」とされており、「NATO−CRISAT構造を200mまで貫通」すると今回説明された「コンバットスチール」より劣っているように解釈できます。少なくとも「ウルティメイトコンバット」の300mよりは確実に劣るはずです。「ウルティメイトコンバット」というのは4.6mmx30,DM11ハードコア弾薬より新しいものでより強力なものなんでしょうか。それとも銃身の命数やソフトターゲットへのエネルギー伝達の観点からあえてCRISATターゲットへの貫通能力が低い4.6mmx30,DM11ハードコア弾薬を採用したということなんでしょうか。記事を読んでもよく分かりません。
 それとこんなとこで私が言ってもしょうがないですけど、「MP7A1」「4.6mmx30,DM11ハードコア弾薬」「4.6mmx30弾薬ファミリー」と3部に分けた記事でこのウェポンシステムを説明するなら、重複がないようにきちんとライターに役割分担をして、それぞれの説明に必要な内容のみを、かつ充分に記述してもらいたいもんです。

















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