中国のミサイル防衛は

 ロシアの雑誌がこう言っている、という体裁の記事です。なお優先順位の関係でちょっと古く、1月10日付の記事です。

http://military.china.com/important/11132797/20140110/18277205.html


ロシアメディア、中国のミサイル防衛システムを暴露 多種の対衛星武器を総ざらい

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「中国はミサイル防衛システムの条件と基礎を建立している」)

【グローバルネット総合報道】 ロシアの「国防」誌2013年第11期は、ロシア社会政治研究センター主任ウラジミール ワリリェヴィッチ イェフシェイェフの文章を発表した。文章は主に中国の対ミサイル防御武器と末端段階および中段ミサイル迎撃能力の発展の現状を分析し、ミサイル攻撃早期警戒システムが建設されていないため、中国の対ミサイル防御システムは初級の発展段階にあるに過ぎない、と特別に指摘している。文章を以下のように編集翻訳する。

2013年2月12日、北朝鮮は第3回核実験を行った。疑いなくこの時の核実験がもたらす結果は長期的なものになる。アメリカはアジア太平洋地域における対ミサイル防御陣地建設の歩みを大幅に加速する可能性が高い。これはまず以下の弧状の地帯に関わる。オーストラリア、フィリピン、韓国、日本、アラスカ、およびアメリカのカリフォルニアとハワイ群島における施設。このことは北京に、大陸間弾道ミサイルの数を顕著に増加させ、そのために分離誘導式多弾頭と防御突破システムを装備するよう要求する。

アメリカの日本および韓国との軍事、政治的関係は強固になりつつあり、韓国は同時に「羅老-1」運搬ロケットの第2段を基礎に、射程が8,000km以上、弾頭重量が1トンの機動型単段弾道ミサイルを研究開発している。このことはモスクワとソウルが航空宇宙領域で締結した協定に違反することはない。何故なら「羅老-1」号運搬ロケットの第2段は完全に韓国の専門家によって研究開発されるからである。中国の北朝鮮に隣接するいくつかの省はこのミサイルの射程内にある。これに対する回答として、中国は相応の対ミサイル防御陣地を建立する可能性がある。

もし日本と韓国が相次いで核兵器およびその運搬ツールである弾道ミサイルを研究開発する決定をなしたら、形勢は深刻に悪化するかもしれない。加えてインドは射程が8,000〜12,000kmの「シュリヤ」大陸間弾道ミサイルを研究開発中で、これは中国が自らの国家ミサイル防御システムを建設することを促すことになるかもしれない。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「遠距離早期警戒システムは国家のミサイル防衛システムの重要な一部分である」です。)

末端段階ミサイル防御

2012年11月に行われた第9回珠海国際航空宇宙展で、中国は自国が研究開発した「紅旗-9A」(輸出コードナンバーFD-2000)遠距離対空ミサイルシステムを展示した。このシステムは全昼夜、全天候であらゆる高度(3万m以下)の飛行機、ヘリ、巡航ミサイルを迎撃するのに用いられる。また、「紅旗-9」対空ミサイルシステムは高度2万m以下の近距離弾道ミサイルを迎撃することができる。このシステムのミサイルは重量180sの殺傷・爆破弾頭を装備し、目標からの距離35mの時無線信管に爆破指令が下される。

「紅旗-9」は中国航空宇宙科学工業集団社に所属する国防技術研究院によって研究開発されたものだ。この方向の研究開発作業は1980年代から開始されたが、1993年にロシアからS-300PMU-1対空ミサイルシステムを購入した後、顕著に加速した。明らかに、中国の専門家は後に「紅旗-9」研究開発過程で非常に大きな程度上ロシア製対空ミサイルシステムの技術方案と設計の特徴を参考にした。

1990年代末、「紅旗-9」対空ミサイルシステムは中国人民解放軍に装備された。だがアメリカの「パトリオット」とロシアのS-300PMU-2対空ミサイルシステムの情報を利用し、中国の専門家は継続して積極的にこのシステムを完備したものにする作業を行った。2003年、中国がロシアから16個大隊分のS-300PMU-2対空ミサイルシステムを購入したこともこの作業を加速した。これと同時に2項目の任務が完成された。すなわち、最も重要な目標に対空防御を提供するため、ロシア製新型対空ミサイルシステムの関連部分がコピー生産された。結果的に「紅旗-9」の改良型「紅旗-9A」が研究開発された。電子設備とソフトウェアの完備のおかげで、このシステムはより高い作戦機能を持ち、防空任務を完成させることができるだけでなく、さらに対ミサイル防御任務にも堪える。

「紅旗-9A」ミサイルのアクティブレーダー自動誘導弾頭の研究開発はすでに完成している可能性が高い。複合材料の広範な使用と新型薬柱の採用によって、対ミサイルに関しさらに一歩完備されたものになりつつある。制式対空ミサイルとは異なり、FT-2000対空ミサイルシステムのミサイルの寸法はより小さく、パッシブレーダー自動誘導弾頭を採用している。

この対空ミサイルシステムの組成にはHT-233多機能機動照射・誘導レーダーが含まれる。そのアンテナ装置は射束状態デジタルコントロールの定相アンテナアレイである。X周波数帯レーダーのスキャン範囲は方位角360度、高低角65度である。空中の目標に対する最大探知計測距離は120kmで、追跡距離は90kmである。100を超える目標の同時探知計測が確保でき、50を超える目標をキャッチおよび追跡できる。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「ミサイル防衛の国家の技術レベルに対する要求は比較的高い」です。)

また、低空飛行目標探知計測レーダーがあり、複雑な妨害条件の下での探知計測と低空目標の座標の測量に用いられ、これには反射面の小さい巡航ミサイルが含まれる。この機動レーダーはL周波数帯で機能する。

指摘すべきなのは、「紅旗-9(A)」対空ミサイルシステムのコントロールシステムとS-300P対空ミサイルシステムのコントロールシステムに互換性があることだ。したがって任意に組み合わせて展開できる。中国人民解放軍指導者は、このシステムを用いて北京、上海、天津、河北省と珠江三角州、長江デルタの最重要目標の防衛が確保できる、と指摘する。部分的な弾道目標迎撃能力を持つ地域性防空システムが建設されているところである。

「紅旗-9」対空ミサイルシステムを原型として、中国の専門家はその海上基地型である「海紅旗-9」を研究開発した。これは052C型ミサイル駆逐艦に装備される。第1隻目のこの艦は2003年に中国海軍に装備された。さらに4隻が異なる建造段階にある(頑住吉注:第1号艦の進水が2003年、就役は2005年、他に3隻がすでに就役しさらに2隻が就役間近と見られています)。この戦闘艦はそれぞれ8つの、6発の「海紅旗-9」対空ミサイルを発射できる垂直発射装置モジュールを配備している。

「海紅旗-9」対空ミサイルシステムは中国がロシア製のS-300「礁石」(「堡塁」とも呼ばれる)に対し、S-300PMU-1を原型に研究開発した。ロシアと中国のシステムは非常に似ているが、両者にはまだ差異があり、これには中国の発射装置が非活動容器を用い、それぞれの容器全てに自分の蓋があることが含まれる。

このため中国は、戦術性能がロシア製のS-300-PMU-1に似た陸上基地および海上基地防空システムを独立して生産し、したがって規模が比較的小さい最重要目標が弾道ミサイルの打撃を免れるよう防衛することができる(末端段階迎撃)。同時に中段の弾道目標を迎撃できるその他の対ミサイル防御システムも研究開発済みである。このことは中国に未来において、段階的に配置された対ミサイル防御陣地を建立させ、その時の防衛は単独の目標ではなくなり、国土の最重要地域となる。

(頑住吉注:これより4ページ目。画像のキャプションは「遠距離対空ミサイルは限られた末端段階ミサイル防衛能力しか持たない」です。)

中段ミサイル防衛

2013年1月、中国人民解放軍はKT-2(西側はSC-19と呼ぶ)陸上基地ミサイル迎撃ミサイルを用いて成功裏に中段で1発の中距離ミサイルの弾頭を迎撃した。アメリカは、このミサイルは高度20,000〜22,000kmの衛星を迎撃できると考えている。中国が研究開発した「動能-2」(頑住吉注:運動エネルギー)システムは高度数百kmの緻密な大気圏の外で迎撃を行う。この時の試験は、中国が実戦対衛星・対ミサイルシステムを研究開発中であることを証明し、2010年1月にも試験が行われたことがある。

より早いミサイル迎撃ミサイルの機種KT-1は、「東風-21」中距離弾道ミサイル改良型である。KT-1は運動エネルギー迎撃器を装備する。

2007年にKT-1の第1回試験が行われ、当時高度864kmのところで重量954kgの廃棄された気象衛星を破壊した。

現有の情報の分析を通じ、中国の「動能-2」システムはミサイル防御領域において、S-3ミサイル迎撃ミサイルを使用する「陸上基地イージス」(2014年にルーマニアに配備される計画)に似ている、との結論が得られる。

疑いなく、アメリカと中国は同じような道に沿って前進している。この2ヶ国はいずれも衛星破壊と弾道ミサイルの弾頭の迎撃に用いることができるシステムを研究開発中である。2008年2月、アメリカもSM-3ミサイルを用いて347km高空の廃棄された偵察衛星を破壊するという方式によって、研究中のシステムの機能を演習した。ミサイル迎撃ミサイルは太平洋に位置する「レイクエリー」号ミサイル巡洋艦から発射された。この時の行動には3〜4千万アメリカドルの資金が費やされた。

ペンタゴンは中国の最近におけるKT-2ミサイル迎撃ミサイル試験に対し強い懸念を表明している。ペンタゴンは中国が「自らの能力と意図という方面でより多くの透明性を示す」ようアピールしている。アメリカの専門家は、中国はさらにその他の対衛星武器技術を研究開発中であり、これには衛星に影響を及ぼすのに用いる電子、電磁妨害、および対衛星レーザー武器が含まれる、と考える。アメリカが相当に厳しい立場を取っているのは、その非常に多くの軍事的優勢が、極めて大きな容量を持つ衛星通信チャンネル、およびGPS誘導を使用した正確制御誘導武器とそのために提供される目標指示によって決まるからである。また、アメリカ人の対衛星武器研究開発作業方面における努力は低調を保持している。

(頑住吉注:これより5ページ目。画像のキャプションは4ページ目と同じです。)

ミサイル攻撃早期警戒システム

再度ミサイル防衛問題に戻る。指摘が必要なのは、国家のミサイル防衛システムはミサイル攻撃早期警戒システムがない状況下では建設不可能だ、ということである。

中国が区域ミサイル防御陣地を建設することを妨げる1つの弱点は、中国に実際上ミサイル攻撃早期警戒システムがないことである。ロシアのミサイル攻撃早期警戒システムは、陸上基地早期警戒レーダー(「ダリヤー川」、「フージャ」、「ドン川-2N」、「ボロネジ」)および高楕円軌道衛星、静止衛星を包括する。

現有の情報によれば、現在中国人民解放軍には弾道ミサイルの発射およびその飛行方向を偵察できる衛星はない。早期警戒レーダー方面の状況は全くはっきりしていない。明らかに中国にはいくつかの、距離3千km以内を飛行する弾道目標を探知計測できる超地平線レーダーがある。だが必ずしもすでに連続したレーダー場を建設してはいない。

このため、中国のミサイル防衛システムは発展の初級段階にいるに過ぎない。

中国はすでに末端段階の中距離ミサイルの弾頭を迎撃できる陸上基地作戦システムを完成させている。最も近い将来、海軍型の類似のシステムが完成することになる。中段運動エネルギー迎撃システムは研究開発中である。だがその主要な任務は対ミサイル防御ではなく敵の宇宙機材の破壊である。

陸上基地ミサイル攻撃早期警戒システムの完成前に、中国が国家ミサイル防衛システムを建設する可能性を論じるのは軽率である。(編集翻訳:知遠/藍山)

(頑住吉注:6ページ目)アメリカは海上基地ミサイル防衛システムの発展に重点を置いている

(頑住吉注:7、8ページ目は3ページ目と同じです)


 これを読む限りでは弾道ミサイル防衛に関してはさほど進んでいない印象を受けますね。しかし国土の広大さ、重要施設の数の多さ、分散の程度が攻撃を難しくしている面はあるでしょう。




















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