SuhlのFranz Burkardtによるワンハンドピストル

 「Waffen Revue」45号に特殊なアイデアに基づくポケットピストルのパテントに関する記事が掲載されていました。


SuhlのFranz Burkardtによるワンハンドピストル

前文
 メタリックカートリッジが発明されて以後、銃器の分野における活発な活動が始まった。ハンドガンの製造に従事する会社はキノコのように大地から湧き出した(頑住吉注:これは直訳ですが、ドイツ語版「雨後の筍」のような慣用句なんでしょう)。セルフローディングピストルおよびリボルバーにおける異なるシステムの数がものすごく多かったわけではないにせよ、モデル数は何千にもなった。

 小型ピストルおよびリボルバーは特別な分野を形成した。これは男たち、そして夫人界にも自衛のため提供され、快適にハンドバッグの中で携帯できるものだった。そしてこの分野において他方ではまたいわゆるワンハンドピストル(頑住吉注:「Einhandpistolen」。そのまんまです)が前世紀の終わり頃にモードとなった(頑住吉注:この号が発行されたのは1982年であり、言うまでもなく19世紀末のことです)。

 正確に考察するならば、この概念は本来的には誤っている。何故なら全てのセルフローディングピストルおよび全てのリボルバーはあらかじめ弾薬を装填していた時には片手のみによって使用できるからである。そして銃は(頑住吉注:マガジンに弾薬を入れ、マガジンを銃に挿入することまで含めた)装填のためにはワンハンドピストルの場合でも両手を必要とする。こうした銃を、装填はされているがコックされていない状態で携帯でき、発射準備および発射のために片手のみ必要とする、ということを表現したいにしても、このクラス分けはやはり以下のように間違っている。

 実際にそうであるように、誰か賢い頭脳がこの一定の時間保ちうる概念を作っても、このグループに数え上げられるシステムは全くいろいろなものになってしまった。

 それは本来1882年、我々がWaffen Revueの17号で正確に記述した「Turbiaux‘Le Protector’」(頑住吉注:「ザ・プロテクター」)の発明によって始まった。1883年、我々が同じ号で記述したピストル「Gaulois」がこれに続いた。その後になってLignose等のワンハンドピストルが登場した。

 ある視点から見れば「ザウエル&ゾーンP38」もこのグループに数え上げられねばならない。何故ならこの銃も装填されてコックされずにバッグの中で携帯でき、射撃はコッキングレバーの操作後に片手で行えるからである。そして人が完全に正確にこのシステムを数え上げることを望むならば、本来ダブルアクショントリガーを持つ全てのピストルをこれに含めねばならない。

Franz Burkardtのワンハンドピストル

 チューリンゲン州SuhlのFranz Burkardtはこれまで言及されたシステムからかなり逸脱した、全く特別なワンハンドピストルを思いつくことができた。この銃は1922年6月25日からナンバー383655の下にパテントとして認められた。この銃は興味深いので、我々はこのパテント書類のテキストを以下のように全文引用したい。

このセルフローディングピストルはいわゆるワンハンドピストルのクラスに属する。これは銃の閉鎖機構の後方への引きとコックが行われねばならないままであるものの、これが第2の手の助けを借りることなく行われ得るものである。

 これまでこのためには発火機構用のトリガーの前に位置する補助トリガーが使われている(
頑住吉注:リグノーゼ等)。この補助トリガーは閉鎖スライドの縦方向内でこれと平行にスライド可能であり、銃をオープンし、発火機構をコックするために閉鎖スライドが必要とされるのと正確に同じルートを進む必要があるものである。

 こうした従来知られている銃に対し、提出された銃ではグリップフレーム背部に位置するコッキングレバーが使われている。グリップフレームにはワンアームのレバー(
頑住吉注:途中に軸があってシーソー運動し、軸の両側に機能があるレバーをダブルアームのレバーと言いますが、これは軸が端部にあって片側にしか機能のないレバーのことです)が関節結合されている。そしてこれが不均一のレバー長の圧レバーに作用しているので、この圧レバーはその長いアームでスライドに触れ、そしてこれを後退させる。それはどんな時かと言うとコッキングレバーがグリップフレームから解除された後でグリップフレームの背部に再び近づけられた時である。つまりこのコッキングレバーはスライドの後方への引きおよび発火機構のコッキングを行うためにはまずグリップフレームから解除され、その後部位置にもたらされねばならない。この解除を簡単にし、ただしそれだけでなくコッキングレバーをグリップフレームに保持するため、一方ではスプリング(コッキングレバーを後方に押そうと試みる)が、他方では解除可能なロック設備(コッキングレバーをグリップフレームの背部に保持するが、ボタンの操作によってコッキングレバーを解除する)が役立つ。

 しかしこのような配置ではさらに、閉鎖スライドがいっぱいに後方に引かれたときに圧レバーも解除されねばならない。これで最初の弾薬をチャンバーに導入することができ、そして発火機構またはファイアリングピンがコックされる。それはその後閉鎖スライドが復帰スプリングの作用によって再び自動的に前進することができ、そしてできなければならないからである。この目的でコッキングレバーはダイレクトに2アームの圧レバーに作用するのではなく、反対圧力レバー(その先端で圧レバーの下端に作用する)を用いて作用する。これはコッキングレバーがその後部位置からグリップへと動かされているときだけであって、その後自動的にグリップフレームの受け部によって再び解除される。そしてこれによりスライドがその後方に引かれた位置にもたらされ、そして発火機構がコックされた時、圧レバーは解放される。

 このセルフローディング銃器の方式は、コッキングレバーをグリップフレーム背部に押し込む際に比較的小さい動きが実行されるだけであり、この結果グリップフレームはコッキングレバーが機能位置にもたらさられる際にわずかしか拡張せず、そして銃が良好に、そして確実に手の中で保持できるという長所を持つ。コッキングレバーを機能位置にもたらすスプリングは、最初の弾薬の導入と発火機構のコックの目的で閉鎖スライドを後方に引くことを可能にする状態にする目的での銃の操作を簡単にする。トリガーはスライドの後方への引きの際、いかなる方法でも影響を受けない。コッキングレバーの運動は親指の付け根のみによって、より詳しく言えばグリップフレームを保持する手の親指の付け根の圧力によってなされるからである。

 つまり発火機構用トリガーの(閉鎖スライドの操作のための)補助トリガーとの取り違えは起こり得ない。

 このセルフローディングピストルはある形式で図に表現されている。

 図1はコッキングレバーがその機能位置にもたらされたときの銃の状態を示している。

 図2は閉鎖スライドが完全に後方に引かれ、発火機構がコックされたときの部品の状態を示している。

 aはトリガーガードa1およびトリガーa2を伴うグリップフレーム、bはバレル、cは閉鎖スライドを意味する。

 圧レバーeは不均等なレバー長のダブルアームレバーである。このレバーは回転ポイントをe2に持っているので、その上のアームは下のアームe1よりも著しく長い。つまり下のアーム長e1の小さな運動が上のアーム、そしてこれによりスライドの何倍もの運動長をもたらす。グリップフレーム背部にはコッキングレバーdが、上の回転ピンd1をめぐって回転可能に収納されている。

 コッキングレバーは押しバネd2の圧力下に置かれ、このスプリングはコッキングレバーをその最も外側の位置(図1)にもたらそうと努めている。コッキングレバーdは何らかの方法でこのスプリングに逆らってグリップフレーム背部に保持されるが、押しボタンiによって解除され得る。

 ここで表現されている型の場合コッキングレバーはダイレクトに圧レバーe上あるいはこの下端に作用するのではなく、反対圧力レバーf(f1をめぐって回転可能で、反対圧力スプリングgの影響下にあり、調整ネジg1によって適応される)の仲介によって操作され得る。この反対圧力レバーfはコッキングレバーdのグリップフレーム背部に向かっての運動の際、その先端が圧レバーeの下のアームにあてがわれ、この結果上のアームは閉鎖スライドにあてがわれ、これを後退させる。

 しかし閉鎖スライドcが完全に後方に引かれ、発火機構またはファイアリングピンもコックされると、反対圧力レバーfにグリップフレームにある何らかの方法のストッパーが作用し、このストッパーは反対圧力レバーの先端を反対圧力レバーeの下端e1から取り除き(例えばサイドから)、これによりこれを解放する。

 そのようなストッパーは例えばマガジン上に、またはグリップフレーム上に設置できる。

 この結果最初の弾薬をチャンバーに導入し、発火機構をコックする目的で閉鎖スライドcを後方に引くための銃の操作が次のような簡単なものになる。

 使用者はボタンiを押す。これによりロックが解けてコッキングレバーdはその押しバネd2の力で後方に動く。この押しボタンiの操作は、使用者が銃のグリップフレームを保持している際、親指で簡単に到達し得る押しボタンiの押しによってなされ得る。このとき使用者はグリップフレームを握り、この結果コッキングレバーdは親指の付け根にあてがわれ、そしてコッキングレバーを内側に圧するので、手の圧力はコッキングレバーのグリップフレーム背面に向けた内側への動きを結果としてもたらす。反対圧力レバーfはその先端が圧レバーeの下のアームにあてがわれ、圧レバーの上のアームを後方にスイングさせ、そしてこれにより閉鎖スライドcを復帰スプリングを圧縮しながら、最初の弾薬がチャンバーに導入され、発火機構がコッキングされるまでいっぱいに後退させる。その後反対圧力レバーfはグリップフレームまたはマガジンのストッパーにある受け部に遭遇する。圧レバーeは解放される。閉鎖スライドは銃の復帰スプリングを一部弛緩させながら閉鎖し、そしてコックされたまま留まる。最初の発射のためにはその後トリガーa2を引くだけでよい。

 最初に発射された弾薬のリコイルショックによってスライドは後方に駆動される。圧レバーe、反対圧力レバーf、コッキングレバーdは機能しないままである。コッキングレバーは背部への一押しによって押しボタンiのロック設備によりキャッチされる。

パテント請求

 次のように特徴付けられるワンハンドピストルである。グリップフレーム(a)の背部にコッキングレバー(d)が形成され、このコッキングレバーは反対圧力レバー(f)の助けを借りて、不均等なアーム長の圧レバー(e)の短いアーム(e1)に次のように作用する。反対圧力レバー(f)はコッキングレバーのグリップフレームへの押し込みの際、まず閉鎖機構部品の後方への引きのために圧レバーを回転させる。しかし閉鎖スライドは発火機構がコックされた後、グリップフレーム上のストッパーによって圧レバー(e)の下のアーム(e1)から解除され、この結果圧レバー(e)は自由に動けるようになり、銃の閉鎖スライドは閉鎖できる。




 しかしこの時この構造は共感を得られなかったと見え、この結果Burkardtはこのシステムを再設計する必要に気付いた。

 彼はこの変更に関し、1923年2月14日にナンバー389737の下にパテント383655の追加パテントを得た。

 我々はこの書類も以下のように全文引用したい。

パテント383655によるワンハンドピストルは次のような設備を持っている。グリップフレーム背部にコッキングレバーが形成され、これが反対圧力レバーの助けを借りて不均等なアーム長の圧レバーの短い方のアームに次のように作用する。すなわち反対圧力レバーはコッキングレバーのグリップフレームへの押し込みに際してまず圧レバーを閉鎖機構部品の後方への引きのために回転させ、しかし閉鎖スライドが発火機構をコックした後でグリップフレーム上のストッパーによって圧レバーの下のアームから解除され、この結果圧レバーは自由に動けるようになり、そしてスライドは再び前進できる。

 今や提出された変更は次のように想定している。回転可能なコッキングレバーの代わりにスライド可能なコッキングレバーを使う。より詳しく言えば閉鎖機構部品のオープンを行いたいときにグリップフレームの背部に押し込まれるコッキングレバーである。さらに、提出された変更では反対圧力レバーが圧レバーの上端にある適合するスプリングレバーと交換されている。このレバーはコッキングレバーがフリーにされている際、閉鎖スライドのストッパー部に触れている。

 使用者がスライド可能なコッキングレバーをグリップフレームの背部に押し込むと、圧レバー上端のスプリングレバーがスライドのストッパー部にあてがわれ、スライドをメインのパテント同様発火機構がコックされるまでいっぱいに後退させる。この後コッキングレバーのスプリングレバーはストッパー部から滑って逸れ、この結果閉鎖スライドは復帰スプリングの力で再び前進することができる。スライドのストッパー部に作用するためにコッキングレバーのスプリングレバーがこの位置を出て行けるように、スライドのストッパー部は後方に上昇するルートを備えている。スプリングレバーは閉鎖スライドが後方に引かれた際、コッキングレバーの上端に居場所と誘導を見出し、閉鎖スライドが後方に押されている際は後者の適合するスリットに入ることができる。

 このワンハンドピストルの型は図に表現されている。

 図1はコッキングレバーが解放され、その結果作動を始めた状態の銃を示している。

 図2はコッキングレバーが押し込まれ、スプリングレバーがすでに解放された状態を表現している。

 図3はコッキングレバー後退時の中間位置を示している。

 図4は図1における切断ラインA−Bでの横断面を示している。 

 コッキングレバーdはグリップフレームの背部で直線的にスライド可能であり、ピンe1をめぐって回転可能な圧レバーeはコッキングレバーdのアームd3によって直接スイングさせられる。圧レバーeの下端e3がアームd3の切り取り部d4とかみ合っていることによってである。圧レバーeの上のレバーアームe4はピンf1をめぐって回転可能なスプリングレバーfを搭載し、このスプリングレバーはスプリングf2にテンションを掛けられ、圧レバーeのストッパー部e5に居場所を見出している(
頑住吉注:反時計方向への回転が制限されている、ということのようです)。スライドcはスプリングレバーfに当る部分に丸められたエッジを持つ受けの面c3、および上り坂になった後部のルートc4を持つ。その上このスライドはスプリングレバーfの受け入れのため切り取り部c5を持ち、この中にスライドが後方に押された際スプリングレバーの上端が入ることができる。動きを軽くするため、スプリングレバーfはその上端にローラーf3を搭載することもあり得る。

 コッキングレバーdは普通の方法でスプリングd2が圧縮された状態でフックi1によって拘束でき、そして押しボタンiによって解除できる。

 作動方式は次のようである。

 この銃の閉鎖スライドはグリップフレームa上でノーマルな位置にあり、最初の弾薬の導入目的で閉鎖スライドcを後方に引きたい時はコッキングレバーdを押しボタンiを押すことによって解除する。するとコッキングレバーはスプリングd2の力でその後部位置に着く(図1)。

 これにより同時に圧レバーeの上のアームe4とスプリングレバーfはバレル方向に方向転換する。この際スプリングレバーfのローラーf3は受けの面c3の後部が上り坂になった面c4に沿って滑り、その後受けの面c3に到着する。

 この時使用者はコッキングレバーdをグリップフレームa内に押し込む。するとスライドの受けの面c3にあてがわれたスプリングレバーfはスライドを連れて行く。この際スプリングレバーは圧レバーeのストッパーe5にその受けを見出す(
頑住吉注:これも反時計方向への回転が制限されている、ということのようです)。圧レバーeによる閉鎖スライドcの後方への駆動は、発火機構あるいはファイアリングピンがコックもされる位置までなされる。その後スプリングレバーfのローラーf3は受けの面c3から滑って逸れ、閉鎖スライドは復帰スプリングによって再び最初の位置に戻される。この際発火機構またはファイアリングピンはトリガーa1の引きによって解放されるまでコックされたまま留まる。

 このワンハンドピストルの型は、圧レバーeを連れて行くことなく閉鎖スライドが自動的にフリーな後退をすることができるというメリットを持っている。コッキングレバーdが押しボタンiの押しによって解除され、スプリングd2の力でその後部位置に着いた後になって初めて圧レバーがその機能位置に移されるからである(
頑住吉注:コッキングレバーを使わずに普通にスライドを引くこともでき、その際余計な摩擦やテンションが増えないということのようですが、それはリグノーゼ等でも同じだと思われます)。

 このワンハンドピストルはセルフローディング銃として作られているため、最初の弾薬をバレル内に導入する際を例外として閉鎖スライドはコッキングレバーによってそのオープン位置にもたらされるのではない。






 この新しい構造も「実りのない大地に落ちた」ように見える。少なくともこういうワンハンドピストルがかつて作られたことを我々は知らない。


 ユニークなアイデアではありますが、全く奇想天外なことを思いついたわけではなく、スクイーズコッキングとワンハンドピストルのアイデアを組み合わせたものとも考えられます。携帯時には通常の銃に近い形状をしており、使用時にコッキングレバーの解除ボタンを押すとパチンとコッキングレバーが後退し、これを強く押し込むとスライドが後退した後にガシャンと前進し、発射準備が整うわけです。

 ただ、前のパテントでは「押しボタンiの操作は、使用者が銃のグリップフレームを保持している際、親指で簡単に到達し得る〜」とされているもののかなりやりにくそうですし、下手をすればコッキングレバー後端を基準に銃全体がスプリングの力で前進する際に銃を取り落としてしまうかも知れません。また後のパテントのデザインではどう見ても銃を保持した手では操作できないでしょう。「下のアーム長e1の小さな運動が上のアーム、そしてこれによりスライドの何倍もの運動長をもたらす」とされていますがこれは要するに梃子の逆なわけで、その分より強い力を入れなければ動かすことが出来ません。またコッキングレバーを後退させるスプリングも余計なテンションを増加させます。

 親指を射撃状態の位置から大きく離してコッキングレバーのロックボタンを押して解除する(または左手で押す)→親指を射撃状態の位置に戻した後に後退したコッキングレバーを強く押し込む→発射というプロセスをたどるよりも普通に左手でスライドを引いて発射したほうが早いでしょう。左手が使えない特殊なケースなどを除いてあまり有利にはなりそうにありません。ただ、リグノーゼのような構造の場合、スライド後退用と発射用のトリガーを混同するおそれがあるという指摘はなるほどと思いました。通常はまあありえないことですが、突発的に生命の危険にさらされた高度のストレス下ではないとは言えません。

 このパテントやシュワルツローゼのパテント群を見て感じるのは、パテント取得が即商業的成功につながるわけではない、ということです。新規性があればパテントは認められ、「こんな商品を欲しがる人は多くなさそうだ」などという理由で却下されることはないわけですからまあ当たり前のことなんですけどね。実は私も新規性から言えば特許や実用新案がひょっとしたら認められるかもしれないというアイデアをいくつか持っていますが、商業的成功につながるかと言えばどれもダメそうです。でもここでは発表しません。ギャンブルもしない、宝くじも買わない私としてはそれらのアイデアがいつか発展して大儲けにつながるかもしれないくらいの夢は持っていたいと思います(笑)。












戻るボタン