フロンマー・ストップピストル

 「Waffen Revue」6号に、非常に珍しいロングリコイルシステムのピストルであるフロンマー・ストップに関する記事が掲載されていました。


フロンマー・ストップピストル

口径7.65mmおよび9mmブローニング

 1911年から1913年の間、あるセルフローディングピストルがマーケットに登場した。この銃は「フロンマー・ストップ」の名の下に今日もなお知られている。この銃はRudolf Frommerによって設計されたもので、ハンガリーのブダペスト(Fegyvergyar)所在の「兵器および機械工場株式会社」によって主に7.65mmブローニング(.32)弾薬仕様で、そして第一次大戦後には少数が9mmクルツ(.380)仕様でも生産された。この銃は本来いくらか違う形状で口径7.65mmスペシャル弾薬用に開発されたが、このバージョンは普及しなかった。

 フロンマー・ストップはハンガリーの設計者による最も有名なピストルであり、第一次大戦中オーストリア・ハンガリー帝国によって、また1920年代の終わり頃まで(一部はそのずっと後でも)、オーストリア・ハンガリー帝国の解体後もなお、多くの将校たち、主にハンガリーの軍および警察部隊によって運用された。

 このピストルは同じ構造で、ただしより小さい寸法、同じ弾薬仕様で、モデル「ベビー」としても作られた。この銃は、長距離後退するバレルを伴う固定してロック(頑住吉注:フルロック)された閉鎖機構を持つ、7.65mmブローニング弾薬仕様で大量生産された唯一のピストルであるという理由で非常に興味深い。

 比較的弱い弾薬である7.65mmおよび9mmブローニング用のセルフローディングピストルの場合、固定してロックされた閉鎖機構は決して必要不可欠ではなかったはずであり(このことは確実に作動している他の多数のモデル群が証明している)、技術的コストは大きすぎた。しかしまさにこれがフロンマー・ストップあるいはフロンマー・ベビーをコレクターにとって興味深いものにするかもしれない。

 Rudolf Frommerは1868年8月4日にブダペストで生まれ、機械工学を学び、1896年にブダペストの兵器および機械工場株式会社に入った。彼はそこで10年後にはすでに工場長に昇進し、このポストを1935年まで占めていた。彼は主にバレルの長距離後退運動を伴うセルフローディングピストル、およびセルフローディングハンティングおよびアーミーライフルを設計した。彼はロックされた閉鎖機構を持つピストルに関する初のパテントを1900年に手にした。多数のさらなるパテントが1902、1908、1909、1910、1913年に続いて取得された。彼は合わせて100を越えるパテントを取得していたとされる。フロンマーは1936年9月1日にブダペストにおいて68歳で死んだ。前述のように彼の最も成功したピストルは「フロンマー・ストップ」、および「フロンマー・ベビー」だった。

 フロンマーピストルは回転突起ロッキングシステムを伴うシリンダー閉鎖機構を持つ。バレルは閉鎖機構の全後退ストロークに同行し、閉鎖機構とは無関係に再び前方、その出発ポジションに復帰する。この構造原理は例えば1911年9月5日におけるドイツパテントナンバー252983によって保護され、そのバレルおよび閉鎖機構のための復帰スプリングの配置図はフロンマー・ベビーの場合を示している。


帝国特許局

パテント書類

1912年10月31日発行

No.252983

クラス72h. グループ5.

ブダペスト在住のルドルフ フロンマー

長距離後退するバレルとロックされた閉鎖機構を持つセルフローディングピストル

ドイツ帝国において1911年9月5日にパテント出願


 この発明の対象は長距離後退するバレルおよびロックされた閉鎖機構を持つセルフローディングピストルであり、バレルも閉鎖機構もそれぞれバレル軸線に平行に配置された特別なスプリングによって再び発射位置に戻され、そしてその短い構造上の長さによって際立っている。

 この目的はバレル復帰スプリングをバレル上側で閉鎖機構復帰スプリングと同軸に位置させることによって達成される。この配置によって両スプリングのためにはそれぞれ、いわば銃全体の長さが使え、この結果銃はスプリングの長さが充分ありながら比較的短く作ることができる。

 図ではピストルの1つの型が表現されている。図1、2はそれぞれ閉鎖機構が閉鎖された場合、オープンされた場合(バレルはその最前部位置の直前)の断面図を示している。図3は銃を前から、そして図4は後方から見た状態を示している。

 図では例として、リコイルショック下でバレル1と閉鎖機構2が固定してロックされた状態で後退する銃が表現されている。後退の終わりに閉鎖機構はレバー3によって固定され、一方バレルはそのスプリング4によって前方に押される。その際バレルと閉鎖機構のロッキングはオープンされる。バレルはその前進の終わりにレバー3を解除し、その後閉鎖機構はそのスプリング5によって前方に押され、バレルと閉鎖機構の間のロッキングが再び行われる。

 この発明により今や両復帰スプリング4、5はバレルと平行な、互いに同心の穴6、7の中に配置されている。復帰スプリング4は本体ケース9のショルダー部8にあてがわれ、アーム10によってバレルに作用している。このアームはナット11のねじ込みによってバレルに固定されている。バレル1はアーム10の適合する切り欠き内でグリップされているノーズ12によって回転が防がれている。ナット11の固定にはこのナットの突起部14の切り欠き内にかみ合っているボルト13が役立つ。このボルト13は同時にスプリング4の保持にも役立ち、一方アーム10は同時に本体ケース9内でのバレルの確実な誘導を保証する。後退時アーム10は本体ケースのリング状隆起部21に当たり、これによりバレルの後退は制限される。

 復帰スプリング5は穴ぐり7の底部にあてがわれ、引き棒15を使って閉鎖機構に作用する。引き棒は閉鎖機構の突起部16と解除可能に結合されている。スプリング5は引き棒の太くなった部分17に作用し、また引き棒はさらに太くなった部分18を備えている。18は後退時にショルダー部8に当たり、そしてこれにより閉鎖機構の後退を制限する(図2を見よ。ここでは閉鎖機構が最後部位置ではなくいくらか前進した状態で表現されている)。引き棒15は閉鎖機構2の確実な誘導にも役立つ。ドライバー用ノッチ20を持つ突起部19は閉鎖機構の突起部16への引き棒の導入および取り出しに役立つ。

パテント請求

 長距離後退するバレルとロックされた閉鎖機構を持つセルフローディングピストルであり、バレル復帰スプリングがバレルの上側で閉鎖機構復帰スプリングと同心に位置することによって特徴付けられる。


 ここでフロンマー・ストップピストルに関して記述される全ての技術的細目は一貫してフロンマー・ベビーにも該当する。

 バレルと閉鎖機構は、グリップフレームと一体で作られて本体ケースを形成する誘導パイプ内に位置する。バレルの上にはバレルおよび閉鎖機構を動かすためのセパレートな両押しバネを搭載した引き棒が位置する。ここには「ストップ」と「ベビー」両型の唯一の構造上の差異が存在する。これら両スプリングは「ストップ」では相前後して誘導パイプ内に位置しているが、一方「ベビー」では特別に短い構造上の長さを達成するため一方の中に他が通されている(自明のことだが互いに接触することなく)。フロンマー・ストップの場合閉鎖機構スプリングの後部は本体ケースに、そして前部は引き棒に接するスプリング支えにあてがわれている。

 発火機構は本質的には外装ハンマー、ファイアリングピン、ハンマー用のシアからなっている。

 このピストルはレスト位置においてトリガーバーをブロックするグリップセーフティを持っている。

 金属薄板を曲げたマガジン内には普通の形式で単純なフォーロワと角型の押しバネが組み込まれている。

 閉鎖機構部品は後部にコッキングノブとして滑り止めミゾが彫られた張り出し部を、またその上部にスプリング引き棒の固定部を備えている。

 使用者はこのピストルを弾薬がバレルに入り、ハンマーを倒した状態で、携帯または保管することができる。ファイアリングピンが閉鎖機構よりいくらか短く、ゆっくり(!)ハンマーを倒した際はプライマーに達することができないからである(頑住吉注:ガバ等と同じいわゆる慣性打撃式だということです)。

 外装ハンマーはいくらか不都合な形状を持ち、非常に短いので、親指でのコックはかなり快適さを欠く。このため装填し、ハンマーを落としている際の手によるコックは、ハンマーがコックレストにかかる前に滑らないよう非常に注意を払う必要がある。ここにこの銃のある種の危険性が存在する。



フロンマーピストルのハンマーは目立って短く、そしていくらか個性的な形状を持つ。Aはファイアリングピン、Bはスプリング引き棒、Cはコッキングノブ。

 射撃時の経過はロック機構の独自性のため、知られている他のロック機構(と単距離のバレル移動)を持つシステムとは本質的に異なる。この銃の場合の経過は次のようになる。

 トリガーへの圧力がトリガーバーを介してハンマーレストからシアを外し、解放されたハンマーはファイアリングピンを前方に急速に動かす。ファイアリングピンは弾薬に点火する(ここまでは全て普通である)。火薬ガスの後方への圧力により、この時バレルと閉鎖機構は空薬きょうをチャンバーに入れロックされた状態で一緒に後方に駆動される。

 バレルが後ろのポジションで止められて初めてロックは解除され(どのようにかは後述)、バレルはその復帰スプリングの圧力下ですぐに再び前方にスライドする。

 これに対し閉鎖機構はその後退経過の最後にトラップレバーによって短時間つかまえられる。バレルの前進運動の間、空薬莢はエキストラクター(閉鎖機構ヘッドに内蔵)によって保持され、バレルの運動終了直前にエジェクター(バレルの後方への延長部の中、エジェクションポートの反対側に可動式に設置されている)が弾薬底部に当たり、薬莢をサイド方向に投げ出す。バレル前進運動終了直前、閉鎖機構トラップレバーがチャンバー後下端にある2つのカムによって下に押され、閉鎖機構は解放され、次の弾薬を連れて行きながら前方に急速に動く。閉鎖機構の前の最終位置において、閉鎖機構のバレルとのロッキングは再び完成する。



閉鎖機構部品Dは段EにおいてトラップレバーFによって短時間保持される。隆起部Gはエキストラクターのガードらしい。エキストラクターは薬莢の投げ出し時、この部分がないと場合によっては損傷の可能性がある。



バレルは前進中。バレル運動の最後に閉鎖機構を前進させるため閉鎖機構トラップレバーを下に押し込むカムNが明瞭に分かる。Lはバレル(チャンバー)、Nはカム、Dは閉鎖機構部品。

 つまり閉鎖機構はバレル前進運動の時間の間のみ後方でつかまえられている。しかしこの時間のスパンは短いので発射時に目はこの閉鎖機構の停止を知覚できない。

 シアと閉鎖機構トラップレバーはその間にある押しバネによって互いに遠ざかるようテンションがかけられている。

 閉鎖機構は2つの部分からなっており、それは閉鎖機構部品と閉鎖機構ヘッドである。閉鎖機構ヘッドは本来の包底面を形成し、ファイアリングピンとエキストラクターを受け入れる。バレルと閉鎖機構の間のロッキングは閉鎖機構ヘッド上にフライス加工され、チャンバー(頑住吉注:直後)のリング状ノッチ内に位置する1つの突起によってなされる。閉鎖機構ヘッドは閉鎖機構部品内でらせん状ノッチによって強制的に誘導される。

 ロッキングはバレルと閉鎖機構の全後退運動の間保ち続けられる。固定された閉鎖機構上の閉鎖機構ヘッドはバレルの前進によって初めて前方に引かれ、これにより閉鎖機構ヘッドはそのらせん誘導によって約60度回転し、突起はチャンバー内のロッキングノッチから滑り出し、今度は続くストレートのノッチ内に位置する。このノッチはチャンバー左サイドに加工されている。

 閉鎖機構ヘッドの回転により、閉鎖用突起は閉鎖機構部品と同一線上に並び、ロッキングは解除され、バレルは単独で前方にスライドできる。

 閉鎖機構の前進運動の間、閉鎖機構ヘッドは約4.5mmの距離閉鎖機構部品より先に立って進む。閉鎖機構ヘッドがその運動の終わりにバレル後部にぶつかって止まった時、閉鎖機構ヘッドは前進する閉鎖機構部品によって右にひねられ、その際突起はチャンバー内のリングノッチ内に入り、ロッキングが再び完成する。



ロックポジションの閉鎖機構。Dは閉鎖機構部品、Kは閉鎖機構ヘッド、Mは閉鎖用突起、Oは誘導レール。



ロック解除ポジションの閉鎖機構。閉鎖用突起Mと誘導レールOは互いに距離を置いて一直線上に並んでいる。



バレルと閉鎖機構はロックされている。閉鎖用突起(ここでは見えない)はバレルのチャンバー内のリング状ノッチ内に入っている。段Jはロックは行わず、供給される弾薬を連れて行くためにだけ役立つ。Eは閉鎖機構トラップレバーが当たる段。



バレルと閉鎖機構はロック解除されている。この状態で閉鎖機構部品とヘッドはバレル内において再び前方にスライドする。

 手による装填の際バレルはその前部位置に留まる。コッキングノブを持って閉鎖機構を引くことによって、チャンバー内に固定されている閉鎖機構ヘッドがまず最初に閉鎖機構部品によってひねられ、そしてそれによりロッキングがすぐに解かれるからである。もしこうでなかった場合、最も上の弾薬は決して供給されないはずである。

 全てがいくらか複雑に読めるが、現実にはこの事柄は全く単純、確実に機能する。恐らくこれによりフロンマーピストルのロッキング原理は充分論じられたであろう。

 かなり短いハンマー駆動スプリングは本体ケース内ハンマー下の縦方向の穴ぐり内に位置し、小さなピストンを介してハンマー基部のカムに作用する。

 ダブル発射回避のため、トリガーバーのシアへの干渉はハンマーが倒れた後、本体ケース内に横方向に位置するボルトによって断ち切られる。このボルトはトリガーバー(この位置でリンクとして形成されている)をそのさらなる運動の間下に押し、そしてこのためシアの範囲外に置き、トリガーバーはトリガーを放した後になって初めて再びシアの範囲に入ることができる。その上このトリガーバーのリンクは、シアがハンマーレストとかみ合った時になって初めてトリガーバーがシアに干渉するように形成されており、シアがハンマーレストの上に当たっている間は滑って通り過ぎるようになっている。

 サイトは固定で、フロントサイトはスプリングケース上にフライス加工され、リアサイトブレードはアリミゾ内に押しこまれている。

 グリップパネルは浅い縦ミゾを持つ木製で、1920年以後多くはチェッカリングがプレスされたプラスチック製になった。グリップパネルは貫通する横方向のネジで固定されている。

 このグリップ固定ネジは例外として、フロンマー・ストップピストルにはネジは存在しない。

このピストルの分解

 素早い分解はいくらかの練習を必要とし、それがどのように進行するかを知った後で初めてうまくいく! マガジンを除去し、銃が本当に装填されていないかどうかを確認した後、まずピンまたはそのようなもので銃の前部マズル上にあるスプリング支えの丸い頭部を押し、同時にバレルナットを慎重に(これによりバレルナットが飛び出さないように)バレルから抜く。これはマガジン底板のノーズの助けを借りても行える。



分解のためにはスプリング支えRを後方に押し込み、バレルナットSをねじって外す。Vは誘導アーム(制限部品)。

 バレルナットの後方に位置する誘導アーム(8の字のように形成されている)はこの結果復帰スプリングによって押し出される。バレル復帰スプリングはこれで前方に引き抜ける。

 次に閉鎖機構をしっかり押さえた状態で例えば小さなピンセットでスプリング引き棒をいくらか後方に押し、90度ひねる。このためには誘導アームを使うこともできる。誘導アームはその上サイドにこの使用のためにわざわざスリットが切られている。この中にスプリング引き棒前部の平らにされた端がはまる。しかし引き棒がぴっちりはまっている時は状態のいい銃のエッジが簡単に傷ついてしまう。引き棒はこの状態ではまだその両方の突起によって保持されている。閉鎖機構はハンマーがコックされた状態で単独またはバレルと共に後方に引き抜ける。引き棒はその後になって初めて、再び90度(本来に状態に)ひねった後で前方に引き抜ける。ひねることによってそのロッキング突起が適合する本体ケースの削り加工部を通って出られるのである。



閉鎖機構は取り去られ、バレルはいくらか後方に引かれている。Bは保持突起Tを持つスプリング引き棒。Uは閉鎖機構ヘッドの閉鎖用突起のための誘導ノッチ。


 閉鎖機構ヘッドはファイアリングピン(貫通して差し込まれたエキストラクターの保持ピンによって脱落が防がれている)と共に非常に簡単に前方に取り出せる。これによりピストルはその主要部分に分解されたはずである。



その主要部分に分解されたピストル。Bはスプリング引き棒、Dは閉鎖機構部品、Kは閉鎖機構ヘッド、Rはスプリング支え、Sはバレルナット、Vは誘導アーム(制限部品)



分解された閉鎖機構および閉鎖機構ヘッド。Aはスプリングが付属したファイアリングピン。Dは閉鎖機構部品、Kは閉鎖機構ヘッド、Pはエキストラクター、Wはエジェクター。

 他の部品は圧入された円筒形のピンによって保持されており、一部は非常にタイトに打ち込まれている。だからこれらはやむを得ない場合のみ叩き出すべきである。もちろんコレクターの知識欲はそれだけですでにやむを得ない場合で有り得る!

 閉鎖機構のトラップレバーおよびシアを取り出したい時は、その間に位置する押しバネ(両端が両部品のそれぞれの浅い穴にはまっているだけ)を紛失しないよう絶対に注意すべきである。

 トリガーを取り出せるようにするには、まずトリガー保持ピン、その次にトリガーとトリガーバーの短い結合ピンを押し出す。その後両部品を個々に本体ケースから取り出すことができる。



トリガー設備の部品。Fはトラップレバー、Hはハンマー、Qはトリガーバー、Xはトリガーバーを逸らすピン、Yはシア、Zは押しピストン。

 その他には分解の問題点は存在しない。

組み立て:組み立ての際は普通のように分解時の逆の順序を守る。ピストルを完全に分解した時は、トリガーバーを誘導するためのボルトを入れる際、平らになったサイドが上に来るよう注意する。

 特別注意するのは、グリップセーフティ、トリガーバー、トラップレバー、シア用の小さな押しバネを取り違えないことである。これらは非常に似た外観だが異なる力になっているからである。

 閉鎖機構組み込みの前、バレルを完全に押しこむ。これによりバレルは閉鎖機構が妨げられず入れるように閉鎖機構トラップレバーをその2つのカムで下に押し込む。閉鎖機構部品に閉鎖機構ヘッドが押し込まれている時は、両者の距離を約4.5mmに調節する。これにより両部品は誘導ノッチ内に入ることができる。

 スプリング引き棒を入れる際は、これを正しく元通りにすることに絶対に注意する。その完ぺきなフィットは、閉鎖機構部品の後ろから引き棒の丸い頭部がちょうど突き出し、この位置でもはや回転できなくなることによって分かる。他の場合、最初の発射時に結合が解け、閉鎖機構が後方に飛び出す可能性がある。閉鎖機構はまさに目に飛び込む可能性がある! ちなみに同じことは引き棒の破損時にも起こる可能性がある。

 最後に次のことにも注意しなければならない。誘導アーム(制限部品とも言う)のスプリング支えのための穴のいくらか面取りされたサイドが後ろに位置した状態ではまるようにする。これによりスプリング支えは穴の角ではなく平面に接する(頑住吉注:スプリング支えの丸い前面の突起がはまりやすいように誘導アームの穴が面取りされているから裏表を間違えるな、ということのようです)。

 残る全てに困難はなく、たやすく再び組み立てることができる。

 フロンマーピストルは全てきれいな作りで、個々の部品は次のような表面処理がなされている。

ブルーイングされているもの:本体ケース、誘導アーム(制限部品)、バレルナット、スプリング支え、トリガー、グリップセーフティ、マガジンキャッチ、マガジン(フォーロワとスプリング除く)

ブルーに焼き戻されているもの:スプリングの付属したエジェクター、エキストラクター、円筒形のピン、グリップパネル固定ネジ(他全ての部品はシルバーの磨き処理である。)

フロンマー・ストップピストルの刻印は次のようである。

本体ケース左、バレルジャケット上に

FEGYFERGYAR-BUDAPEST. FROMMER-PAT.STOP CAL.9mm(.380)」もしくはCAL.7.65mm(.32)

 マガジン底板下部に「9.FROMMER」もしくは「7.65FROMMER

 試射マークはトリガーガード左前部に、そして製造ナンバーはグリップフレーム左後方、グリップパネルの後方に刻印されている。

 さらにストップのグリップパネルは「FS」、ベビーのそれは「FR」のイニシャルを持っている。

ピストルの主要な寸法

フロンマー・ストップ フロンマー・ベビー *1
口径 7.65および9mm 7.65および9mm
銃身長 96mm 56mm
全長 165mm 122mm
全高 114mm 93mm
全幅(グリップパネル部分) 24mm 24mm
ライフリングの数と方向 4条右回り 4条右回り
空マガジンの重量 600g 約400g
マガジンキャパシティ 7発 5発
7.65mmの初速 約320m/s *1 約270m/s
9mmの初速 約300m/s *1 約250m/s
7.65mmの50mにおけるモミ材に対する貫通力 150mm *1 120mm
9mmの50mにおけるモミ材に対する貫通力 140mm *1 100mm

*1:パンフレットまたは他の公表値による。


 この銃に関しては「Faustfeuerwaffen」でも比較的詳しく触れられていましたが、構造や分解法だけでなくフロンマー自身に関しても簡単にではありますが触れられた興味深い記事でした。

 「Faustfeuerwaffen」の当該部分を読んだとき、すでによりシンプルなブローニング系ピストルが普及している時期に何故フロンマーがこんな複雑なシステムの銃を登場させたのか不思議に思いました。しかし今回の記事ではフロンマーがこの銃の原型となったと思われるロック機構を持つピストルに関する初のパテントを取得したのは1900年のことであるとされており、少なくとも構想、設計、出願時にはブローニングピストルはまだ広く知られていなかったことになります。サミュエル・コルトがダブルアクションを取り入れることをかたくなに拒んだ例のように、客観的にそれより優れたシステムが出現してもそれを取り入れるのを嫌い、長年取り組んできたシステムに固執する開発者というのはありがちなもので、フロンマーも単にそういう人だっただけかも知れません。ちなみにパテント文書ではスプリングの長さを充分取りながら銃の全長が短くできるといったメリットが主張されていますが、これはロングリコイルとは直接関係ありません。例えばそのままのデザインでコルトポケットの前部を2cm切り詰めることはバレル下に配置されたリコイルスプリングの長さ、縮みしろが充分確保できずまず不可能なはずです。一方大きくデザインを変更してリコイルスプリングを銃の上面ほぼ全長にわたって配置すればこれが可能になります(ほとんど実質バレル長がなくなってしまいますけど)。切り詰めないにしてもスプリングの長さはなるべく長く取った方がシステムにゆとりが生じ、スライドが引きやすくなったり弾薬の強さへの適応性が高まったりするようです。フロンマーのデザインにはこういうメリットが確実にあるわけですが、パテントが失効した後もほとんど誰も真似しないのは構造が複雑化する、銃の全高が大きくなるなどのデメリットの方が大きいと判断されているからでしょう。

 私はこれまでこの銃のチャンバーに1発目の弾薬を送り込む時、コッキングノブを手で引くとバレルと閉鎖機構がロックされたままフルストローク後退する→後退しきったところでバレルが前進する→ボルトを放すとボルトが弾薬をチャンバーに送り込む、という経過をたどるのかと思っていましたが、お読みのように実際にはこのときバレルは後退しないんですね。システムを良く考えれば当然のことでした。

 トリガーシステムは大昔のMGCモデルガンによく使われ、私も最近多用している引ききりによるディスコネクトでした。トリガーバー後端上部に段差がありますが、トリガーを引いてトリガーバーがシアを動かし、レットオフした後にここにピンが当ってトリガーバーが押し下げられ、シアとの関係が断たれるようです。不完全閉鎖でもハンマーが落ちるはずなのでちょっと不安ですが、比較的低威力の弾薬なので実際上は問題なかったんでしょう。

 分解、組み立ては非常に面倒ですが、それだけでなく間違った組み込みが可能で、しかも外観上大きな異常がないため気付きにくく、発射時になって初めて致命的な故障が起きる、というのは現在ではちょっと考えられない欠点です。

 シュワルツローゼのブローフォワードピストル同様絶滅したシステムなわけですから改めて言うまでもありませんが全体的にブローニングシステムに遠く及ばない銃です。ハンガリーの軍や警察が使用したのは国産の銃を使いたいという希望や必要があったからだと思われ、それを除いては商業的にもさほど成功しなかったのではないでしょうか。

 この銃に関してはこんなページがありました。

http://www.geocities.com/Yosemite/Gorge/4653/frommer.htm

http://www.geocities.com/CapeCanaveral/Lab/2538/froba1p.jpg

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Frommer_Stop.gif

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/frommer_stop_2.gif







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