G33/40

 今回もいったん後回しにした内容になりますが、「Visier」2004年10月号に掲載されていたKar98kのショートバージョンのような銃、G33/40の記事です。


山頂の前衛

山岳猟兵騎銃G33/40は全てのモーゼルコレクションに属している。しかしスポーツシューターの手にはない。テストはその判断が正しいのかどうかを示した。

二次大戦開始から短い時間のうちにすでに、武装においてはマテリアルの損失と新規生産との競争に至ったということが示された。このことは、アメリカのあるスペシャリストがかつて「ナチ・ドイツ軍の背骨」と呼んだものには特別に強く当てはまった。すなわちK98kである。ドイツはこの銃を1942年、すでに毎月約3,800挺失い、1944年8月にはすでに128,708挺失っていた。最高司令部はこれに反応した。すなわち、1941年12月7日、歩兵10個師団が公式に鹵獲銃に切り替えなければならないとしたのである。これには同様に在庫の中の穴埋め役、例えば占領地域で作らせた銃が加えられた。

 これにはチェコスロバキア製のライフルが特に該当した。すなわちこれは98系システムで装備されたKarabiner−Modell16/33であり、ナチ・ドイツ軍はすでに1940年11月に公式に引き継ぎ、軽く手を加えていた。この銃は外寸からすれば騎銃に属したにもかかわらず、「ゲベール33/40」の名を得ていた。この銃はまず第一に山岳猟兵、その上Waffen-SSの部隊にも与えられた。

山岳用短小銃
 このモデルは最も珍しい98系バージョンに属する。各部のシリアルナンバーが一致していない、強く使い古された銃は約300ユーロである。非のうちどころのない状態に維持され、全てのオリジナルパーツを装備した「山岳猟兵騎銃」として知られる銃は1000ユーロを越えがちなブランドでもある。コレクターはG33/40に、おそらく第二次大戦において最も珍しい98系バリエーションであるというイメージを抱いている。全長は99cmしかなく、重量は3422gで98kよりたっぷり700g軽い。この軽量化のため2つの部品に配慮が行われている。ボルトヘッドの直径が33mmと、ゲベール98およびK98kより3mm下回っている。アメリカのコレクターは、カラビニエル98aに現われた場合と同じ方法でこのディテールを「Small Ring」と特徴を言い表している。そしてボルトハンドルの取っ手部が重量削減の目的でくりぬかれ空洞にされている。

 バレルは492mmで、スタンダードなK98kのそれより11cm短い。このバレルは240mmで1回転、4条、山部の幅は約2mm、谷部の幅は約4mmというスタンダードなライフリングを持つ。これはチェコ製銃器にしばしばあるバレル内プロフィールであり、同様に多くのペルシャンモーゼルにもこれがある。G33/40は100〜1000mの範囲で充分なタンジェントサイトを持ち、ハンドガード部に埋め込まれている。ハンドガードはレシーバーの付け根部から前部リングまで達しており、このハンドガードにはK98kで馴染みのグリップ溝が欠けている。特徴的なことに、バレルリングの保持スプリングは右でなく左にある。

 だが、おそらく最も目立つディテールは、ストック下部にある。通常端部にある鉄板の代わりに、ここにたっぷり15mmの高さのある鉄製カップがはめてある。これでは不充分であり、ストック左サイドには4つのネジで固定された金属薄板部品が出現している。これは継ぎ目なくカップと隣接している。この設備は任務領域に合わせるためである。すなわち、G33/40は山岳猟兵騎銃としての役割を大きく越えて、雪、氷、岩の中においてしばしばアルペンストック代わりとして役立たねばならなかったのである。この場合カップの損傷が妨げられることが望まれた。そしてこのストック左面にある金属薄板部品は、ブーツの底に堅く付着した氷をはがす機能も果たした。

 これはコレクターが喜ぶことだが、この銃は必ずしもスポーツシューターを熱狂させないはずである。402mmと非常に短いサイトラインにより(K98kは505mm)、突出した射撃成績には障害があるとされる。低い重量ゆえに射撃成績が犠牲になるのは山岳猟兵騎銃も同じである。問題は、実際のところどのくらいリコイルショックがハードになるのか、そしてこのときどのくらい命中精度が確保できるのかだけである。

33/40用弾薬
 K98kが機能するものならば全て使用してよい。しかし、それぞれの弾薬がこのモデルにおいてノーマルバージョンと同様に良好に働くことを望んではいけない。等しく忘れていいのは鉛弾である。テストの中で試された鉛弾バリエーションは(表にはない)、さほどでない成績しか示さなかった。これは幅広い谷部と低い山部を持つ軍用バレルの場合典型的な現象である。意外なことに、G33/40は通常このクラスのライフルで良好に誘導される150グレイン系より170グレイン弾の方がいくらか成績がよかった。だがテスト者は195グレインフルメタルジャケット尖頭弾を装填したときは顔をしかめた。同様に非常に高価なSierra Match King.323-200も選択肢から消えた。

 この放棄には説得力ある理由が存在する。すなわちファーストクラスのサープラス弾薬である。特に薬莢底部に「ππy」の刻印がある1977〜1979および1981年製セルビア製弾薬はエクセレントであることを証明した。重要なのは次のことである。すなわち、テスト弾薬2の「ππy」弾薬は、底部のプライマーの回りに淡い紅色のラッカーによるパッキングがあるものが望ましい。1940〜50年代より前に作られたロットは茶色がかった縁取りを持ち、より射撃成績が悪い。

リコイルショックとマズルジャンプ
 リコイルショックに関しては山岳猟兵騎銃はK98kよりほとんど強くない。だがその代わり別の問題がある。テスト者のMrosekいわく、「短いバレルのせいで発射音がスタンダード銃器の場合より11cm近い場所で聞こえることになる。この結果発射音が明らかにより強く感じられる。前部重量が欠けているため、小さな33/40系はK98kまたはゲベール98より感じられる程度強く上へジャンプもする。だが射手が興奮していたり、あるいは恐怖にかられている時でさえこれは感じられない!」 さらにこれに加え、トリガーもK98kと同じトリガーキャラクターを持つので、K98kの射手は慣れる必要がない。そもそもG33/40は非常に携帯しやすいライフルであり、K98kより前部がずっと軽い。Mrosekいわく、「このため立射姿勢では安定性が足りない。」 だが、伏射撃姿勢ではK98kとの差はほとんど感じられない。

射撃成績
 山岳猟兵騎銃は適する弾薬を射撃した場合はK98kとほとんど同様に良好な結果を出す(表を見よ)。しかし当然、短いバレルは初速に影響する(この場合銃口前0ではなく4mで計測)。490mmバレルから射撃して、この銃は初速が600mmバレルの場合より約35m/s低くなっている。燃焼速度の遅い火薬と軽い弾丸を組み合わせると差はむしろ大きくなる。これに対し燃焼速度の早い火薬と重い弾丸を組み合わせると差は小さくなる。テストは、ノーマルな長さのバレルの場合よりずっと初速の安定性が低いということも示した。

 その上、この銃はK98kよりずっと強く温度の変動に反応した。これに似て敏感さを示す銃としてはすでにカイザーの時代のカラビナー98aがあった。この銃は同様に薄手のレシーバーを持っていた。ここから次のような大まかな原則が導かれる。良好なグルーピングのためには、バレルの温度が20〜35度の間にあることが絶対的に望ましい。
 それに加え、弾薬を変更した際の命中点の移動もK98kよりいくらか大きいという結果になった。光の状態の変化が射撃成績に影響する可能性があるということも重要である。これは明らかに1/5短いサイトラインによる結果である。平均的にG33/40はよりパーフェクトな存在であるK98kよりリングおよそ2つ分成績が悪くなる。しかし、正しい調整をした銃と良い弾薬を使った場合は9点リングを良好に確保することができる。

価値
 これもまたしばしば不当にも無視される軍用モデルである。というのは、この山岳猟兵カラビナーにはあらゆる方面から知られているK98kのメリットの全てがあるからである。この銃はより大きな弾薬への敏感さを、より短い長さと500g少ない重量によって埋め合わせている。つまり、この銃がスポーツ目的に役立たないというのは理由がない。…このレアな銃を見かけたときのために。

2つのバリエーション(囲み記事)
 ブルーノ銃器工場製のG33/40にはコード記号に2つのバリエーションがある。初期の銃は数字の「945」が刻印され、たいていのものはクルミ材製ストックを持つ。これに対し1941年以後の銃は「dot」の刻印がありストックは合板である。しばしば資料で読む内容とは異なり、たいていのG33/40は肉抜きされたボルトハンドルの取っ手部と薄手のレシーバーを持つ。このディテールはすでに先行モデル、チェコスロバキアの警察用カラビナー16/33に見られる。生産数も不明である。John Walterは「Rifles of the World」の中でその数を約50,000と言っている。だが彼は16/33系も含めるか否かについて明らかにしていない。

弾薬 グルーピング(mm)/初速(m/s) グルーピング(mm)/初速(m/s)
G33/40 K98k
1)ππy工場製弾薬
200grs VMS-BT
Los0301
93/- 95/-
2)ππy-198grs
VMS-BT、刻印1979
92/716 88/752
3)JS198grs VMS-BT
ハンドロード弾薬
.323-150TMSK
158/- 134/-
4)26.5grsN110 118/655 87/683
5)27grsN110 102/- -/-
6)28grsN110
弾丸:PMC
.323-170TMSK
102/- -/-
7)26grsN110 108/649 70/676
8)26.5grsN110 88/- -/-

※射撃距離100m。シッティング、依託射撃10発のグルーピング。計測は弾痕の中心から中心で計測。注釈:VMS-BTはフルメタルジャケット尖頭弾-ボートテイル。TMSKはセミジャケット尖頭弾。


 この銃はCMCがモデルアップしていた頃から「マウンテントルーパー」と呼ばれていましたが、その言葉も、それをドイツ語に訳したような言葉も出てきません。「G33/40 Mountaintrooper」で検索してもヒットしないので英語圏でもそういう言い方はされてないんじゃないでしょうか。ヤクトパンサーを「ロンメル戦車」と呼んだみたいな日本の模型界だけの通称なのかもしれません。ちなみにドイツ語では「Gebirgsjagerkarabiner G33/40」と呼びます(前の「a」はウムラウト)。「Gebirg」は山岳、「jager」は猟師、歩兵、狙撃兵など、「karabiner」はもちろんカービンです。
 こうしたショートライフルは反動が大きすぎて撃ちにくいというのが通説ですが、この記事によればマズルジャンプが大きいもののリコイルショックは大差ないということで、ちょっと意外です。また射撃成績もK98kとさしたる差はないようです。というか、そもそもK98kの成績が思ったより悪いのに驚きました。現代のM16系マッチガンは100mで20mm以下の結果を普通に出すようですが、最も良い弾薬でも70mmですから。やはり戦時に粗製濫造され、長時間の使用でガタも来ているということなんでしょうか。

http://www.angelfire.com/wa2/FJ6/G3340.html

 実銃に関してはこんなページがありました。




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