航空エンジン用ベアリング
中国の航空エンジンの問題というとタービンブレードが挙げられることが多いですが、それ以外にも問題を抱えているものがあるというお話です。なお日本のメーカーも登場します。
http://military.china.com/news/568/20140103/18262376.html
中国航空エンジン用ハイエンドベアリング、米日独スウェーデンなどの国によって独占される
ベアリングには非常に高い技術含有量があり、ある国の科学技術、工業的実力を推し量る重要な基準になり得る。現在世界の科学技術、工業強国は1つの例外もなくベアリングの研究開発、製造強国である。我が国が工業大国であって工業強国ではない、1つの重要な表れはベアリング産業が大きいが強くはないことに他ならない。2012年、我が国のベアリング産業の販売額は1,420億人民元に達したが、生産される主なものはミドル、ローエンドのベアリングであり、一方ハイエンドのベアリングは主に輸入に頼っている。
ハイエンドベアリング、Cannikin Lawの中の「短い板」となる (頑住吉注:「Cannikin Law」とは、細長い多数の板を筒状に並べてたがで絞めて作った桶は、その板のうち1枚でも短かったら水が漏れていっぱいに満たすことができない、つまり1か所欠点があるとすべてがダメになってしまう、という法則のことです。)
航空エンジンにセットされる高い信頼性を持ち高い精密度のトップクラスのベアリングはすでに中国の航空エンジン研究開発の中の困難にして越え難い「チョモランマ」となっている。航空エンジンのメインベアリングを例にすると、メインベアリングは航空エンジンのカギとなる重要部品の1つである。高速、高温、受ける力が複雑な条件下で運転されるメインベアリングの品質と性能はエンジンの性能、寿命、信頼性に直接影響する。航空エンジンのカギとなる重要な指標の1つは高い信頼性である。信頼性が保証したければ、その前提の1つとしてエンジン内のベアリングが長い寿命を持つことを保証することが必要になる。メインベアリングの寿命に関し、軍用機の航空エンジンは3,000時間以上を要求する。民間機の航空エンジンの要求はさらに高く、数万時間に達する必要がある。だが航空エンジンの中の軸受の作動環境は完全に「地獄」との表現を用いて形容することができ、それらは毎分1万回転以上の速度で長時間高速運転する必要があるだけでなく、さらに各種形式の応力がかかること、摩擦、超高温を受け入れる必要がある。また、一般の構造部品に関して言えば、もし軽度のクラックが生じても安全な使用が保証でき、これは専門的には損傷許容限度と言う。だが航空エンジンのメインベアリングというこのようなカギとなる重要な伝動部品には損傷許容限度という言い方は存在しない。その使用過程の中ではクラックなどの形式の損傷が出現することは絶対に許されない。中国の現在の航空エンジンのメインベアリングの寿命は限られ、ベアリングはすでにCannikin
Lawの中の「短い板」となっているのである。
現在、我が国は全力で航空エンジンに必要とされる重要部品の1つであるベアリングを研究開発中であり、これはその他の選択のない道である。民間機に用いる航空エンジンは西側から導入できるが、西側は航空エンジンの中に配置されるハイエンドのベアリングを中国にばら売りすることはなく、もって中国が研究開発中の航空エンジンが輸入されたベアリングを装備し、その競争相手になることを防止している。軍用航空エンジンに関しては、西側は完成品すらも中国に対しては禁輸しており、増してやその中に配置するハイエンドのベアリングを中国にばら売りすることはあり得ない。
この弱点がもし解決され得ないと、中国の航空エンジンの発展は必ずや深刻な制約と影響を受けることになる。ベアリングは小さな部品であるが、その精度、性能、寿命、信頼性はメインたる機械(例えば航空エンジン)の精度、性能、信頼性に対し決定的作用を引き起こす。ベアリング技術の立ち後れは我が国の工業の各業界に深刻な影響をもたらしているのである。
ベアリング業界の巨頭による寡占は既成事実
新中国成立当初、「156項目」工業化基礎確立プロジェクトの中にわざわざ2つのベアリングに関するプロジェクトが設けられた。すなわち現在の洛軸集団と哈軸集団である。2010年7月13日、胡錦濤総書記は洛軸を考察する時、「世界一流のベアリング研究開発生産基地」を提起した。しかし何年か前、この企業には国外の同業者から買収される危険すらあった。現在、ハイエンドベアリングの研究開発、製造、販売は基本的に世界の4大ベアリング業界の巨頭、すなわちアメリカのティムケン、日本のNSK、スウェーデンのSKF、ドイツのFAGによって寡占されている。2006年、ドイツのFAGはずっと洛軸集団の買収を企図していた。洛軸集団は当時深刻な赤字の困った状況に身を置いていたが、FAGからは未来の潜在的ライバルと見られ、「併呑」を欲したのである。
一方もう1つのより小さい軸受企業である甘粛海林中科科学技術株式会社は、中国の円錐ローラーベアリング領域におけるリーダーたる企業であるが、ティムケンとの比較で言えば典型的な「軽量級」選手であり、両企業は10年余り裁判を戦った。10年余り前、甘粛海林はティムケンによっていわゆる低価格ダンピングをもってアメリカの裁判所に告発され、2002年に海林はアメリカ商務省の「永久的反ダンピング税率」の裁定を受けた。だが中国市場では、海林社副社長何克鴻の説明によれば、アメリカのティムケン社が毎年中国に輸出するベアリング製品の数は少しずつ増加中で、平均価格は逆に少しずつ低下している。現在同社の製品の中国における販売価格はそのアメリカにおける販売価格より低く、その他の地域における販売価格よりも低く、ダンピング行為に属する。アメリカのティムケン社中国工場の製品にもダンピングの現象が存在し、同業者に対し不当競争を形成している。「中国工業報」の2013年11月18日における「ティムケン、不公平な競争に関与 中国ベアリング協会、同社に共同の発展を呼びかける」との報道の中には次のように書かれていた。中国ベアリング工業協会副秘書長牛輝は、海林社の一切の合法、正当な権利維持行為を支持し、協会には海林社のために一切の可能な援助を提供する責任と義務がある。これは中国ベアリング協会初の、中国海林社によるアメリカのティムケン社が中国においてダンピングに関わった疑いに関する調査申請の件についての正式な発言である。いかにして中国ベアリング産業がハイエンドベアリング領域に向け邁進する形勢を抑止するかは、すでに世界ベアリング業界の巨頭の、中国ベアリング産業に対する抑止戦略の重大中の重大事になっているのかもしれない。
(頑住吉注:これより2ページ目)
ベアリング技術人材は何故欠乏しているのか
工業・情報化部は2011年、「機械基礎部品、基礎製造技術、基礎材料産業『第12次5カ年計画』発展計画」(略称「三基計画」)を発表したが、「三基」と関連のある技術人材の養成を軽視した。こうした方面ではベアリング産業が典型である。
我が国のベアリング産業の技術的立ち後れは、技術人材の深刻な不足と密接な関係がある。全国のベアリング企業の技術人材には年齢構造上普遍的に断層現象が存在する。多くの企業の軸受専業技術人材の断層現象の主要な原因は高校人材の養成の上で断層が出現していることであり、何故ならこの時期に元々ある7〜8校の工科院校の軸受学科は、いわゆる「幅広い専業」の名目で総合的機械工程学科の中に縮小合併され、機械学科に付属する1つの課目になり、ベアリング専攻の卒業生の数が急激に減少しているのである。
現在河南科学技術大学ベアリング学科が全国唯一の存在となり、今までにこの学校はすでに全国のベアリング業界のために2,000名近い4年生課程卒業生と修士課程卒業生を養成している。これらの学生の絶対多数はすでに軸受業界の技術的中核となっており、河南科学技術大学は業界内の人によって「中国軸受業界の陸軍士官学校」と讃えられている。だがこの学校のベアリング学科は毎年60名余りの卒業生しか提供しておらず、全国の1,000社を超えるベアリングメーカーの需要を満足させ得るには程遠い。
ベアリング研究、教育の強化が焦眉の急
日本のベアリング業界の巨頭NSKの本部には何と1,800人の研究開発人員がおり、これは中国のベアリングの同業者のあえて想像もしないところである。多くの外部の人から見て、ベアリングは構造が簡単な小さな部品であり、こんなにも多くの研究開発人員を配置する必要があるのだろうか? 実は皆が日常生活の中で見るベアリングは全て技術含有量が比較的低いローエンドのベアリングであって、一方ハイエンドベアリングの技術の複雑さの程度はローエンドのベアリングとは比較できないものなのである。
中国工程院院士盧秉恒は、ハイエンドベアリングの研究開発は材料、油脂、潤滑、製造、設計、ベアリングの製造、装備、検査、試験など一連の技術的難題に関わり、さらに接触力学、潤滑理論、摩擦学、疲労と破壊、熱処理と材料組織などの基礎研究に関わり、また学科をまたぐものである、と考える。
盧秉恒院士のこの話は先端的軸受技術の極端な複雑性を表しており、その難度は非常に高いのである。このことは同時に、ベアリング専門に工科の学科を設置することが大いに必要だということをも説明している。総合的で間口の広い機械工程学科の本科生も数十時間ベアリングに関する学習を経るが、このような短い学習時間ではベアリングというこの高度で深い学問の皮相を学ぶだけで、このような本科生が軸受業界に身を投じても、ほとんど最初から学び始めるのに等しく、これでは時間がかかりすぎ、任に堪えるまでの仕事時間が長すぎ、この人を使う部署はさらに時間と労力を費やしてその人に対しベアリング専業の知識の大量の養成訓練を行わねばならない。
まさに前述のように、先端的軸受の弱点は決して単に航空エンジン領域にのみ存在するのではなく、高度精密工作機械設備、高速鉄道、機器メータ領域においても、この種の弱点は依然存在している。我々がハイエンドベアリング研究開発の上にマンパワー、ファイナンシャルパワー、マテリアルパワー方面に投資してこそ、中国はやっとベアリング大国からベアリング強国への根本的な発展変化が実現できるということでもある。
日本にこんな世界的メーカーがあるって知りませんでした。中国も力を入れているようですが、これは構造的な問題であって、数年単位で抜本的に改善されることはなさそうです。