中国、ロシア製旅客機を早期警戒機に?

 6月5日のコラムで、「給油機、早期警戒機などのベースには輸送機より旅客機が適しており、中国もこれをベースにしたいところですが西側のエンジンは軍用目的なら売ってもらえないわけです。しかし多少性能が劣ってもロシア製エンジンを使うという選択肢もあるのでは」と書きましたが、それに関連する内容です。

http://military.china.com/important/11132797/20160608/22833186.html


中国、全世界で最も強大な早期警戒機を作り出すことが有望 あるいはイリューシン-96を用いるか

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ロシアのイリューシン-96旅客機。この機はロシアのPS-90Aエンジンを適用し、燃料の経済性などの方面で西側のエンジンと比べ一定の隔たりがある」)

ボーイング747、777、787、エアバスA330、A350、A380、こういった巨大なワイドボディ旅客機は軽々と大洋を飛び越え、中国が研究開発中のC919に比べよりデラックスな存在である。

中国はいつ自らのワイドボディ旅客機を持てるのか? 多くの人はC929に期待しているが、それはまた非常に長い過程を経ることになる。だが現在、より手軽で素早い選択肢が出現した。

東方ネットの報道によれば、ロシア生活ニュースネットはロシア内閣の情報を引用し、ロシアと中国は6月末にワイドボディ旅客機共同研究開発協定を締結し、これは2014年のプーチン訪中時に契約締結した協力プロジェクトの一部分である、とした。ロシア貿易工業省の情報によれば、このプロジェクトはロシア連合飛行機社と中国商業飛行機が組成する合資会社によって担われ、ロシアのイリューシン-96をベースとし、2025年運営に引き渡される見込みである。

このワイドボディ旅客機の民間航空市場における前途の見通しに対し、軍事科学普及作家の張明は決して好意的に見ていない。だがもし軍用を優先するならば、この大型機はあるいは広い生存空間を切り開き、甚だしきに至ってはその民間航空市場参入を促進できるかもしれず、成功の重要なカギは「快」(頑住吉注:速い)の一字にある。

国際民間航空市場の競争は惨烈すぎ、直接ボーイングやエアバスに挑戦するのは時期尚早

2014年にプーチンが訪中し中ロが協力してワイドボディ旅客機を研究開発しようとしていると伝えられた後、ロシア方面はずっと非常に熱心にこの方面の情報を騒ぎ立てるが、中国サイドは非常に低調で、当局はなおこれに対し確認あるいは態度表明していない。

最近のロシアメディアの言い方は中国のネット仲間をいささか不快にさせる。すなわち、ロシアは工程センターを建て、技術研究開発および電子システムの生産を行い、飛行機のエンジンはイギリスのロールスロイスあるいはアメリカのゼネラルエレクトリックによって提供され、機体の生産および飛行機の総組み立ては中国で行われる、という。見たところ、中国はまるで何ら技術含有量のない「OEM」をするかのようである。

(頑住吉注:これより ページ目。画像のキャプションは「最近、ネット仲間が一組の早期警戒機版C919飛行機の画像を作成し、その中からはこの機が中国が現在研究開発中のC919旅客機を基礎としていることが見て取れ、このためあるネット仲間はそれを中国の未来の『空警900』と称している。」です。)

張明は非常に率直に、中ロ両国の現在の技術的実力をもって、ボーイング787やA350に対抗できる旅客機を研究開発するのは非常に難しい、とする。

「旧ソ連の旅客機は技術的実力や工業的基礎の制限を受けて、主要な性能上西側の旅客機に比べ比較的大きな隔たりが存在していた。主要な欠点は信頼性、快適性、経済性が比較的劣ることだった。」 張明は、改革開放後、我が国の民間航空は大量に西側の旅客機を導入し、21世紀になる前にソ連の旅客機は全部我が国の航空ラインから退出した、と明らかにした。

張明の説明によれば、イリューシン-96はソ連が1988年に初飛行させた4発ワイドボディ旅客機で、最大離陸重量250トン、搭載客数262人の時の航続距離11,500km、その貨物機型は搭載貨物70トンの時9,000km飛行できる。「イリューシン-98に最も近い西側の旅客機はA340で、同じく4発ワイドボディ旅客機で、寸法、重量が非常に近いが、A340は搭載客261人の時に航続距離が13,000kmに達し、イリューシン-96より優れている。」

イリューシン-96はやっと30機というささやかな数を売り、「プーチンの大統領専用機」だけが存在感をちょっと残すことができる。

張明は分析し、我が国には遠距離ワイドボディ旅客機を研究開発する市場、経済的実力があるが、技術的実力はまだ欠けており、ロシアには一定の技術的実力があるが、市場規模と財力が不足している、と考える。両国が手を携えて優勢の相互補完を行えば、成功の確率はずっと高くできる。

イリューシン-96の率先しての参戦は長所を伸ばし短所を避けることができ、迅速に着手しなければ必ずや「遅延症」に死すことになる

だが軍事専門家の眼中では、イリューシン-96は国際民間市場での競争力は非常に限られているが、空軍に加入して就役すればそれにもかかわらず長所を伸ばし短所を避けることができる。

張明の説明によれば、イリューシン-96に大きな安全性の問題はなく、主要な欠点は小さな問題が多いことで、プーチンの大統領専用機にもかつてフィンランドで離陸できない状況が出現したことがある。イリューシン-96は西側を除く世界で唯一のワイドボディ旅客機で、ロシアは完全国産化を実現しており、その生産は西側に首絞めされず、中国は随意それを改造して国防用途とすることができる。一方自主知的財産権のC919は、エンジン、航空電子などカギとなる重要設備が西側の供給商由来であり、軍用にしたければ、こうした設備を国産に換えることが必須で、これでやっとできるのであって、これはイリューシン-96の導入、生産に比べずっと面倒だろう。

(頑住吉注:これより3ページ目)

西側の軍用大型機に比べても、イリューシン-96は「巨漢」と評価され、アメリカのKC-10やエアバスA330MRTT給油機のみが同様のサイズである。少なからぬ軍事視察家は、イリューシン-96の図体は大きすぎ、軍への参加に不都合だと考えている。だが大きいことには大きいことのメリットがあり、ロシア軍はすでにイリューシン-96を受け入れている。

ロシアメディアが明らかにするところによれば、去年イリューシン-96には給油機バージョンができた。イリューシン-96-400TZである。これは基地から3,500km離れた飛行機に65トンの燃料を運んでいくことができる。一方ロシア軍で現役であり、中国でも導入したばかりのイリューシン-78は、同様の多さの燃料を1,000km離れたところまで送ることしかできず、「攻防兼備」を強調し、戦略空軍に向けてモデルチェンジする中国空軍は、この種の能力に対し非常に渇望しており、特に中国に海外基地の支持が非常に欠乏しているという条件下ではそうである。

また現在ステルス戦闘機が早期警戒機に対し非常に大きな脅威を構成しており、早期警戒機がレーダーの口径と出力を拡大し、ステルス目標に対する発見距離を強化することを必須として迫り、このようにすれば火線から距離がよりはるかに遠い、より安全な後方で一切を掌握でき、このことは早期警戒機プラットフォームがより大きくより重く、エンジンがより強力で、航続距離がより長いことを要求する。

全体重量150〜200トンのアメリカ製E-3、国産の空警ー2000に比べ、260トン以上のイリューシン-96戦略早期警戒機が、もし中国の世界に先んじた水準を持つデジタルアレイレーダーを搭載したら、全世界で最も強大な早期警戒機となる希望がきわめて大きい。

現在、中国海空軍の大型機は欠乏し、外国メディアの統計によれば、空軍には1機のイリューシン-78給油機、5機の空警ー2000しかなく、これは中国の世界で2番目に大きな規模の近代化された戦闘機群と全く不釣り合いで、すでに深刻に空軍の戦闘力の足を引っ張る致命的弱点となっている。

張明は、イリューシン-96の価格はエアバス、ボーイングの同類の飛行機に比べ約1/3安く、空中早期警戒機、大型早期警戒機、軍用貨物機、対ミサイル機ないし空中戦略指揮所の理想のプラットフォームである、と考える。C919の現実の状況から見て、中国商業飛行機のワイドボディ旅客機であるC929が作り出されても非常に長い過程を経る必要があるかもしれず、既成のイリューシン-96にやや改造を加えて量産に投入すれば、迅速に中ロ両大国の軍用機市場を占領することができる。機種がより成熟した、新たなエンジンや複合材料で突破を獲得するのを待って、さらに国際民間航空市場を考慮しても遅くはない。

イリューシン-96の新生に対してであるが、これはおそらく最も確実性の高いチャンスである。だが、その前提はイリューシン-96の生産復活が「短平快」(頑住吉注:投資が少なく、期間が短く、效果と利益が高い)だということで、もしロシアサイドが継続して遅延させたら、C929プロジェクトの進展と共に、中国はこの古い飛行機に対しおそらくどんどん興味がさめていくだろう。


 立場上組まなければならないけれど内心不満を持っている中国のロシアに対する微妙な心情がそこかしこに表れているような気がしますがそれはまあ本題ではありません。たしかにこの案は近い将来に実現する可能性が高そうですが、もしそうなったら中国のエンジンはまだまだだということになるでしょう。以前の記事で軍用機のエンジンは旅客機のそれより信頼性が低くても許されるなんてことを言ってましたしね。



















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