ライフルグレネード器具(頑住吉注:「Gewehrgranatgerat」、最後の「a」はウムラウト。 http://www.lexikon-der-wehrmacht.de/Waffen/gewehrgranatgerat.htm )

 ハンドグレネードの到達距離の外に存在するターゲットと戦うため、歩兵は迫撃砲の使用を不必要とする兵器を必要とする。迫撃砲は必ずしも手元にない可能性があるからである。そういうわけで、カラビナー98および突撃銃用にGewehrgranatgeratが開発された。この兵器はいろいろな弾薬を使って、戦車、陣地、歩兵のいずれにも使用できた。しかし戦車に対する貫通成績は不満足であり、戦争の終わり頃には対戦車弾薬は完全に無駄であった。終戦までに38,750,000発の弾薬が製造された。

 「Schiessbecher」(頑住吉注:「射撃カップ」)としても知られるこの器具は、口径30mmの施条されたバレルからなっている。この全長250mm、重量0.75kgの器具はライフルのマズルにはさんで固定された。グレネードはその後木製の発射用弾薬によって発射され(頑住吉注:直訳しようとするとこうなりますが、木製なのは弾頭だけです)、約300mの射程に達した。照準はいくらか複雑化した照準設備によって行われた。照準器の目盛りは250mに達していた。

 このライフルグレネード器具用にはいろいろなグレネード種類が提供されていた。

炸裂弾薬

 頭部信管AZ 5071(頑住吉注:「AZ」はたぶん着発信管の略です)、燃焼信管および遅延信管付きライフルグレネードは、遮蔽物の背後、射撃壕(頑住吉注:いわゆるタコツボ)、家屋、トーチカの銃眼の中のターゲットと戦うために役立った。最大射程は280mであり、つまりこれは照準設備が可能にするよりも30m多かった。このグレネードは重量288gで、そのうち31gを炸薬が占めていた。グレネードは衝突時、あるいは6と1/2秒の遅延を持って爆発した(頑住吉注:要するに着発信管と遅延信管を両方持ち、硬いものに衝突すればその瞬間に爆発し、しなくとも一定時間経つと爆発した、ということのようです)。

 頭部信管AZ 5071および燃焼信管付きライフルグレネード「Weitschuss」(頑住吉注:「遠距離射撃」)は500mまでの遠距離用に使われた。そのため発射薬は50%増えて1.5gにされ、一方炸裂力は等しいままだった。このグレネードを照準器なしで射撃するためにはいくらかの訓練が要求された。改良品として頭部信管AZ 5097付きグレネードが存在した。これはより少ない不発を引き起こし、全ての命中角度で爆発するものだった。

 ライフル炸裂グレネード UB(頑住吉注:「U」はウムラウト。「練習」の略)は練習射撃に役立った。炸薬の代わりにこの弾丸は発煙剤を持ち、これによって弾道とターゲットへの命中が正確に観測できた。

対戦車弾薬

 ライフル対戦車グレネード 30は装甲されたターゲットとの戦いに役立った。この弾丸は重量245g、発射薬は1.1gだった。このグレネードは命中効果が小さすぎたため真価を示さなかった。これはより大きい型によって交換された。

 大型ライフル対戦車グレネード(GGP)40は前方に向かう爆発効果を持ち(頑住吉注:要するに成型炸薬)、命中角度60度で80mmの装甲を貫通した。しかし遠距離での命中チャンスは減少したので、最適な戦闘距離は静止ターゲットの場合約100m、移動ターゲットの場合75mだった。これは射手にとって神経をすり減らすような事柄だった! 弾丸は射撃カップから去る際のライフリング回転によって安定された。発射弾薬は極度に多い発射薬1.9gを持っていた。

 SSの開発品であるSS-ライフル対戦車グレネード 46は成型炸薬弾で、90mmまでの装甲を貫通できた。このグレネードの全長は195mm、直径は46mm、重量440gだった。

 SS-ライフル対戦車グレネード 61は同じく成型炸薬弾で、120mmまでの装甲を貫通できた。このグレネードは全長238mm、直径61mmで重量530gだった。

 大型ライフル対戦車グレネード UBは練習射撃に役立った。炸薬の代わりにこの弾丸は発煙剤を持ち、これによって弾道とターゲットへの命中が正確に観測できた。このグレネードはその赤い弾頭によって区別された。

 ライフル対戦車グレネードは戦車制圧のための成型炸薬弾で、HASAG社で製造された。重量520gの弾丸は全長234mm、幅60mmだった。成型炸薬は重量175gで、厚さ40mmの装甲板を貫通できた。6枚の尾翼安定装置によって飛行時の弾道は非常に改善された。後にはこの成型炸薬は強化され、このグレネードはさらにKampfstoff(頑住吉注:辞書には「兵器に使われる化学物質」、「大量殺戮兵器」などと出ており、化学兵器のことらしいです)で満たすことができた。

特殊弾薬
 ライフル焼夷グレネード 42は金属薄板製本体内部に液状焼夷剤を持っていた。この焼夷剤は着発信管の作動によって化学反応を起こした。このグレネードは敵車両の視界を奪い、これにより戦術的優位を獲得するのに役立った。発射用弾薬は1.7gまたは1.5gの発射薬を持っていた。

 ライフル発煙グレネード 42は自軍の陣地に煙幕を張り、あるいは攻撃してくる敵に自軍陣地の視界を失わせるのに役立った。このグレネードは構造上ライフル焼夷グレネードと似ていた。

 ライフル落下傘照明グレネードは距離650mまでのターゲットの照明に役立った。落下傘上で地面に対し浮遊する照明剤は28秒の燃焼継続時間を持っていた。弾丸は重量280gで、発射薬1.5gを持っていた。

 ライフルプロパガンダグレネードはプロパガンダ紙片で満たされた弾丸ケースからなっていた。発射後、グレネードは噴出用装薬が40枚のプロパガンダ紙片をターゲット上に投下する前に約9秒間飛行した。

 いろいろなライフルグレネードの1945年3月までの製造は次の通りだった(単位は1,000発)。

1941 1942 1943 1944 1945
ライフル炸裂グレネード - 5,477.4 11,545.6 18,828.1 2,905.0
ライフル対戦車グレネード - 2,828.6 8,301.7 10,994.6 1,684.0
ライフル焼夷グレネード - 603.7 966.3 -
実験型 - 1,800.0 1,100.0 -

 「射撃カップ」自体の引渡し数は次のようだった。

1942 1943 1944 1945
401,860 760,655 287,599 -

 第二次大戦で使用されたドイツ軍のライフルグレネードに関してはこんなページがありました。

http://www.battledress.nl/Karabiner%2098k.htm

 下の方にはライフル対戦車グレネード30、40、46、61、GG/P40の画像があります。このうち40と46は性能上大差なく、陸軍とSSで競争して似たようなものを開発、装備する不合理が生じたのではという気がします。装甲貫通力80〜90mmといえばある程度戦車に対抗できたのではないかとも思えますが、ここの記述では戦争末期には全く無力であったとされています。弾薬は供給されているものの1945年にはライフルグレネード器具の引渡しは記録されておらず、この種の兵器自体が限界に来たという判断があったか、少なくとも他より優先順位が低いと判断されていたようです。

 焼夷グレネード、煙幕グレネードの戦術的用途、照明グレネードの具体的性能、存在も全く知らなかった「プロパガンダグレネード」なども興味深かったです。

 なお、このライフルグレネード器具は日本でもコピー品が生産され、対戦車用の「タ弾」も作られましたが、さほどの戦果は上げられなかったようです。

http://www.japaneseweapons.com/gunyojyu/keitai/index.htm














戻るボタン