何をもって中国の工業はドイツに100年遅れているというのか?

 コラムで紹介した時、私もおかしいのではと感じましたが。

http://military.china.com/important/11132797/20150608/19809646.html


「中国の工業はドイツに100年立ち後れている」が疑義に遭う 作者が回答

(頑住吉注:この記事の画像のキャプションは本文の一部を切り取ったものなので省略します。)

人民ネット北京6月8日電(趙竹青) 6月6日午前、中国科学院中国近代化研究センターは「中国近代化報告2015」を発表した。この報告が言うところによれば、2010年に中国工業経済のレベルはドイツ、イギリスに比べおよそ100年余り立ち後れ、日本に比べ60年余り立ち後れている。この情報が出るや、ネット上の激烈な討論を引き起こした。ある人はこの結果はどのようにして出されたのかと疑問を呈した。このため記者はさらに一歩この報告の主要な完成者である中科院中国近代化研究センター主任で、中国近代化戦略研究課題グループのリーダーである何伝啓にインタビューした。以下はインタビューの実録である。

人民ネット科技:あなたが率いて編集された「中国近代化報告2015」はメディアの報道を経て比較的大きな論争を引き起こしています。あなたはどのようにネット仲間の論争を見ていますか?

何伝啓:「中国近代化報告2015」は我々が完成させた第14の報告です。テーマは工業近代化の研究で、全文は80万字余りです。中国の工業近代化発展レベルと国際的隔たりを討論する時、我々は4つの作業を行いました。

(1)中国工業近代化の全体的レベル。2010年に中国は工業の初等発展国家に属し、発展途上国の中間位置にいました。その中で、中国は第一次工業近代化指数が世界第57位にランクされ、第二次工業近代化指数は世界第52位で、総合工業近代化指数は世界第59位にいます。

(2)中国工業指標の発展レベル。2010年の中国工業生産、工業経済、工業環境、工業要素という4つの方面の88の指標のうち、3.4%の指標は工業発達水準に達し、19.3%の指標は中等発達水準に達し、67.0%の指標は初等発展水準で、10.2%の指標は発達水準を欠いていました。

(3)中国の工業指標の国際的隔たり。2010年の中国工業の4方面における55の指標の国際的隔たりを分析すると、その中で7つの指標は相対的隔たりが5倍を超え、10の指標の相対的な隔たりは2倍を超え、その他の指標の隔たりはやや小さかったです。

(4)中国工業の典型的な国との比較。2010年の中国の工業生産および工業経済の10の指標の、14カ国との年代差を分析すると、異なる指標の年代差は異なっています。もし工業労働生産率、工業増加値比率、工業労働力比率という3つの工業指標の年代差の平均値を計算するならば、2010年の中国の「工業経済レベル」はドイツ、イギリスに比べおよそ100年立ち後れています。

(頑住吉注:これより2ページ目)

メディアが報道した「中国工業はドイツに100年立ち後れている」というのは完備され正確な表現方式ではありません。

完備され正確な表現方式は次の通りです。2010年の中国工業近代化レベルは世界の初等発達段階にあり、発展途上国の中間位置にいる。中国工業の発展は不均衡で、異なる工業指標の発展レベルと国際的隔たりには比較的大きな差異がある。もし工業労働生産率、工業増加値比率、工業労働力比率という3つの工業指標の年代差の算術的平均値を計算するならば、2010年の中国の工業経済レベルはドイツ、イギリスなどに比べおよそ100年立ち後れている。

人民ネット科技:この「100年」はいかにして計算されたのですか?

何伝啓:具体的計算方法は次の通りです。まず2010年の我が国の工業指標と先進国のどの年のレベルが近いかを見て、この指標のおよその国際的年代差を計算します。さらに3つの指標の年代差に対し簡単な算術的平均を行い、3つの指標の平均年代差を計算したのです。

注意に値するのは、異なる指標のレベルと隔たりは異なるということです。もし中国のレベルが高い指標を採用すれば、計算される年代差は小さめになります。もし中国のレベルが低い指標を採用すれば、計算される年代差は大きめになるでしょう。

このため、中国の工業経済の国際的隔たりを語るには、必ずどういった指標の隔たりかを明確にする必要があり、さもなければ容易に誤解されます。

人民ネット科技:この計算の結果に含まれた意味を解読していただけますか? この結果と、人々が直感的に感受する工業レベルとではどんな差があるのですか? 例えばドイツの鉄道会社は将来中国から列車と部品を購入することを考慮中です。「100年立ち後れている」が人に与える直感的感受とではあまり一致しません。

何伝啓:全体と部分の感知に関しては、ある時々には一致しません。直感的感受は往々にして部分的です。全体的認知は統計的分析と比較を行う必要があります。我が国には高い技術もあれば、低い技術もあります。世界先進レベルの技術もあれば、後追い、模倣の技術もあります。高速鉄道技術はまさに我が国が導入、吸収し、またさらに創新した成功例です。この成功例は多ければ多いほど良いです。現在中国の工業発展は不均衡で、地域の不均衡もあれば、産業と指標の不均衡もあります。中国工業経済宏観指標の国際的な隔たりは顕著です。例えば、2010年に我が国の工業労働生産率は約アメリカの1/9で、製造業労働生産率はアメリカの1/8で、1人あたり製造業輸出値はドイツの1/11です。

人民ネット科技:この「年代差」の計算結果は、我が国の工業発展に対しどのような意義があるのですか?

何伝啓:国際的隔たりの分析は国際比較研究で常用される方法です。その分析結果は、政策分析のために国際的参照を提供することができます。あなたが政策分析をする時、起点と目標をはっきりさせ、しかる後に合理的なルートと対策を探求する必要があります。国際的な隔たりの分析は関連の「起点」の情報を提供することができます。

人民ネット科技:「中国近代化報告2015」というこの研究全体はどういった内容を含み、それが誕生した背景や意義は何なのですか? (頑住吉注:まずそこから話をするべきなのでは。)

何伝啓:「中国近代化報告2015」は主に3つの部分を含んでいます。まず1700〜2100年の期間の世界工業近代化の事実と前途の見通しを定量分析し、1970〜2010年の世界の131カ国の工業近代化の定量評価を完成させています。用いられるデータは主に世界銀行の世界発展指標データバンクなどから来ています。次に、工業近代化研究の主要な観点を簡単に要領よく討論し、工業近代化軒本原理を詳述しています。三番目に中国工業近代化の事実と前途の見通しを理性的に分析し、今後30年の中国工業近代化の路線と三大議程(頑住吉注:適訳がないようですが「議事の過程」といった意味です)を提出し、それは報告の重点です。

我々は、中国工業近代化は後発追跡型の近代化であり、先行する国が経た多くの挑戦に直面する必要もあれば、また新たな経済形態や国際競争に直面する必要もあるのだ、ということを知っています。2013年にドイツ政府は「工業4.0」戦略計画を提出し、製造業のスマート化モデルチェンジを推進しています。2015年5月、我が国の国務院は「中国製造2025」を印刷して発行し、「製造強国戦略」の行動綱領を提出しました。

国際的に標準的に行われている業界の分類によれば、工業は第二次産業で、これには鉱物採掘業、製造業、建築業、公共事業が含まれます。製造業は工業の組成部分です。ならば中国工業の全体的発展はどうしましょうか? 我々は近代化の角度から、「中国工業近代化路線図」を提出し、提案としています。

その基本的考え方の筋道は次の通りです。総合工業近代化の原理に照らし、2回の工業近代化の精華を取り入れ、2回の工業近代化の誤った部分を避け、「質優先、創新を駆動、環境との友好」という3つの原則を堅持し、「中国の質の10年議程、工業創新議程、グリーン工業議程」という3つの議程を実施し、重点的に工業の質、工業の構造、工業の環境の近代化を推進します。伝統工業から近代工業およびスマート工業に向けてのモデルチェンジを加速し、工業近代化の未来の先進レベルを一段と力を入れて追い、「工業の質強国、工業創新強国、グリーン製造強国、世界に先んじる工業強国」を建設します。

(頑住吉注:これより4ページ目)

人民ネット科技:我々にこの3つの議程を詳細に説明していただけますか?

何伝啓:いいでしょう。まず「中国の質10年議程」です。

現在中国工業および製造業の増加値の総量はいずれもすでに世界第1位にいます。ですが中国工業の質に関する指標は非常に多くが世界の中で下におり、例えば中国工業製品輸出の多くはローエンド製品で、一部の工程とサービスの質は高くなく、中国工業および製造業の労働生産率はそれぞれ世界の第50位前後にランクされます。今後10年、工業の質を高めることは中国工業近代化の第1の優先事項となり、経済業務の主要な位置に置かれるべきです。

工業強国は基礎なしに建立することはできず、より高い水準の品質保証があることが必須です。国務院の「質の発展綱要」を全面的に実行し、「中国の質10年議程」の制定と実施を提案します。10年の時間(2015〜2025)を用いて、中国工業の微視的な質を2010年の世界先進水準に到達させ、中国工業の宏観的質を2010年の先進国のレベルに近づけ、基本的に工業の質強国を完成させることを極力勝ち取ります。

「中国の質10年議程」始動式を行い、中国工業の「質に向けての進軍」を宣言し、「中国の質管理センター」を建立し、企業職業技能体系を再建し、「国家質巡回裁判所」を建立し、「質の検察官」等を設立することを提案します。

第2の議程は「工業創新議程」です。

工業の創新は工業近代化の原動力です。工業の創新は新たな産業と新たな経済を生み出すことができ、新たな制度や新たな観念をもたらすことができ、工業構造のグレードアップ、工業の質の向上、工業環境の改善と工業経済の成長を駆動することができます。創新政策と創新資源の共同作用は、ミドルクラスおよびハイエンドの市場の占有率を高め、核心的パテントの保有率を向上させます。

汽車が全力で走るには全てを火頭帯(頑住吉注:意味不明)に頼ります。創新の駆動にはエンジンなしではいけません。「創新駆動発展戦略」を全面的に実行し、「工業創新議程」を研究開発および実施し、工業創新強国およびスマート製造強国を建設するのです。30年の時間(2015〜2045)を用いて、中国の工業構造を2010年の世界先進水準に到達させ、中国工業の質を2010年の先進国の平均レベルに近づけ、基本的に工業の質強国を完成させることを極力勝ち取ります。

工業創新を駆動するエンジンを作り出し、「国家先進技術研究院」を建設し、「工業創新パートナー計画」を組織および実施し、「スマートロボット工程」を組織および実施し、工業創新能力を世界先進レベルに到達させ、工業創新強国、スマート工業強国、グリーン製造強国を完成させるのです。

工業創新を駆動するエンジンを作り出し、「国家先進技術研究院」を建設し、「工業創新パートナー計画」を組織的に実施し、「スマートロボット工程」を組織的に実施し、国家中小企業サービス局を成立させることなどを提案します。

最後は「グリーン工業議程」です。

人類の発展は自然環境と切り離せません。工業は自然資源を採掘し、加工および再加工する産業で、必然的に資源と環境は緊密に関連します。1960年代以来、環境問題は全世界の関心を受けるに至っています。我が国の政府は環境問題に高度に関心を注ぎ、エコロジー文明建設目標を提出しました。

1980年代以来、欧米諸国は普遍的に工業エコロジー学とエコロジー近代化原理を採用し、予防と創新の原則を採用し、グリーン技術創新、グリーン制度創新、経済構造の調整(構造のエコロジー化)によって経済成長と環境の退化の関係断絶を推進し、経済と環境のウィンウィンを実現しています。現在OECD諸国の環境指標と経済の関係断絶率は50%を超えています。

我々は、工業発展は「一筋縄」ではダメで、成長のみを語って環境を語らないのではダメだと考えます。「グリーン工業議程」を実施し、グリーン工業強国を建設し、工業と環境のウィンウィンを実現することを提案します。30年の時間(2015〜2045)を用いて、工業環境に影響する主要な指標を先進国の平均値に近づけ、工業環境管理の主要な指標を先進国の平均値に到達させ、工業環境の質を先進国の水準に到達させ、自然生態システムの良性の循環を回復させ、工業エコロジー文明を世界先進レベルに近づけることを極力勝ち取るのです。

環境の質の責任制と環境損失の20年期間内の追究制度を建立し、汚染総量コントロール計画を制定および実施し、クリーン生産の模範を示すプロジェクトとグリーン工業団地を建設し、環境情報と汚染企業の定期的発表制度を建立し、国家資源安全とエネルギー源安全戦略などを研究開発することを提案します。

中国工業近代化の路線図と3つの議程の実施により、中国工業の世界的名声は3回の躍進を実現する必要があります。中国製造から中国の質へ、中国の質から中国のスタンダードへ、中国のスタンダードから中国の設計へ、です。


 よく分からない部分もありますが中国は中国で欠点を認めて改善のための長期的戦略を立てようとしているわけで、「100年遅れている」はある意味では発奮材料にするためでもあるんでしょう。




















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