SIG-Arms GSR

 「Visier」2004年5月号に、「SIGのガバメント」GSRのレポートが掲載されていました。


Hard Rock(頑住吉注:この通りの英語のタイトルになっています)

アメリカにおいて、現在すでに新製品GSRはヒット商品に成長しつつあるように見える。この銃はSIG-Arms社の最初のM1911系であるという点でライバルたちの中でも目立つ存在である。この銃のテストレポートをお伝えする。


 SIG-ArmsのM1911系ピストル領域へのデビューは、2つのマーケットを厳しく監視した結果行われた。1つは成長しつつあるアメリカの公用マーケットである。そこではコルトガバメントスタイルのシングルアクション公用ピストルが望まれている。そしてもう1つは「Concealed Carry Permit」(銃器許可証)所持者たちの需要である。彼らにはスリムな.45口径ピストルが好まれる。キンバー、パラ オーディナンス、スミス&ウェッソン、スプリングフィールドアーモリーといった各メーカーの販売数の多さをまのあたりにして、今J.P.ザウエル&ゾーンのアメリカ代理店であるSIG-Armsも1911系にとびついた。

外観
 この古典を作った達人ジョン・モーゼス・ブローニングの故郷アメリカには、いろいろな装備、いろいろなグレードのガバメントピストルが、まさに「Sand am Meer」(頑住吉注:海の砂。ドイツ語版「浜の真砂」ですね)ほど存在する。M1911A1自体は新発明ではでもなんでもなく、SIG-Armsのような新規参入者はそこにライバルたちから差別化する何らかのアイデアを加えなくてはならない。それゆえGSR(Granite Series Rail)は、単にレーザーまたはホワイトライトを装着するピカティニーマウントレールを含む良好な完全装備を持つというだけではなく、スライドの外観に「顔のしわ伸ばしの美容整形」(頑住吉注:「Facelifting」という英語が使われています)を加えている。この結果スライド側面に段差ができ、古典的なM1911A1に比べてマズルまわりが角張り、その見た目はP220シリーズのSIGザウエルピストルを思い出させる。

 「GSR」という名前はアメリカの企業であるSIG-Armsの所在地に由来している。そこはニューハンプシャー州のExeterにある。ニューハンプシャー州はそこのナンバープレートに見られるように「Granite State」とも呼ばれる。この銃には最新の立場からのM1911系技術も盛り込まれている。これはSIG-ArmsがかつてのIPSCワールドチャンピオンおよびトップのピストルスミスであるMatt McLearnを相談役に迎えて得たものである。

ベストの付属物
 SWAT(Special Weapons&Tactics)チームなどアメリカの軍および警察特殊部隊は、今やますます.45ACPのM1911系を多数装備しつつある。7もしくは8発という低いマガジンキャパシティにもかかわらず。その理由は速射により最高の阻止力が得られるからというだけではなく、頑丈な基本構造にもある。.45ACPは、9mm、.40S&W、IPSCマッチ用特別弾薬よりオートピストルに強い負担をかけることが分かっている。それでも高品質な1911系ピストルは、最初にパーツ交換が必要になる前にしばしば数千発撃て、時には2、3万発の発射にすら耐えるのである。

 購入者がGSRをできるだけ長く100%機能するピストルとして快適に使用できるようにするため、メーカーは例えば小パーツに鋳造やMIM(Metal Injection Moulding)製法で作ったものを組み入れるなどのすでに知られているコスト削減のための措置をとることをあえて断念した。ほとんど全ての小パーツは総削りだし、もしくは「funkenerodiert」(頑住吉注:「削りだし」同様加工法のはずですが、辞書に載っていません。文脈から鋳造より強度の出る加工法であるのは確かなはずです。検索してみましたが、歯科技工や指輪などアクセサリー類にも使われる技法らしいということしか分かりません。)されている。SIG-ArmsはGSRのパーツをほとんど自身で作っていない。ほとんど全ての構成要素は多数の下請け業者から来る。下請け業者はSIG-Armsが定めたスペックに厳密にのっとって個々のパーツを製造している。最終組み立てと調整は完全にSIG-Armsの手で行われている。フレーム、スライド、バレル、バレルブッシングのはめあいの公差を見ると、メーカーは個々のGSRからこれを完全に無くすための手作業に力を注いでいるように見える。
 
 というのは、スライドにはギリギリ感じ取ることができる程度の左右方向の遊びしかなく、バレルブッシングも非常にタイトにセットされているのでブッシングレンチなしに分解するのは苦労する(頑住吉注:やりにくいものの不可能ではないようです)。工具なしに簡単に分解する目的で、メーカーはロングのリコイルスプリングガイドの使用も断念した。5インチのステンレスバレルは閉鎖位置からチャンバー部分を押すと、最小の動きしかせず、左右方向には感知できる遊びは全くない。微細なガラス球を吹き付けて行ったマット仕上げはむらがなく、ここにもとがめどころはない。テストした銃の加工は、総合的に見て非常に高いレベルを示した。GSRの加工技術にはマイナスポイントはわずかである。しかし1741ユーロという高い価格に直面すると、もはやなおざりにはできない細かい問題点がある。例えばフレームとメインスプリングハウジングの下などのエッジが100%合っていないので、わずかの、しかしシャープなエッジが邪魔になる。作動上問題があるわけではないが、ピストルをつかむ多くのテスト者の手に不快だった。グリップフレーム前部には多くの長い滑り止めミゾがあるが、何らかのプラスの影響を与えるには浅すぎる。その上その削り加工は完全に均一ではなかった。

ハードなツアーにて
 1911系が工場から渡されてすぐ、あるいは長期間の実用の後、機能しなくなったときは、障害はたいてい3つの部分から来ていると疑われる。すなわち、トリガーメカニズム、マガジン、エキストラクターである。SIG-Armsはトリガープルを約5イギリスポンド(1イギリスポンドは454g)、2300g弱と規定している。テストした銃は何回かの計測の平均値で約2150gの領域の後で作動した。これは公用ピストルとして実用上正しい数値である。残念ながら軽い抵抗がはじめ邪魔になるが、それを除けばトリガープルはまっとうなキャラクターである。

 最初に抵抗があるのは、コルトシリーズ80のスタイルのオートマチックファイアリングピンブロックセーフティのせいだと思われる。これはトリガープルになるべく悪影響を与えないよう、かみ合いはむしろ特に深くし、そのかわりスプリングの力をできるだけ弱めたものであるにもかかわらずである。ありそうもないケースとして、トリガーレストとトリガーに連動するオートマチックファイアリングピンブロックセーフティが共に機能しなかった場合に備えて、GSRのトリガーにはさらにもうひとつ追加の安全レストが設けられている(頑住吉注:この「レスト」が何を意味するのか分かりません。セーフティコックのようなものでしょうか。ちなみに公式サイトで「Hammer intercept notch」と表現しているもののことらしいです)。

 GSRのトリガーメカニズムは、単に多くのアメリカの銃器携帯者の不安に対応しているというだけではない。銃撃戦(または意図しない発射)のケースにおいて、軽すぎるトリガープルによって告訴される可能性があるからである。エネルギーが600〜750ジュールに達する.45ACPの+P弾薬と、強力な18ポンドリコイルスプリングを使ったハードなテストでも、トリガーメカニズムには全く問題なかった。極度に軽くセットされたトリガーは、発射による強烈な衝撃で早く破損する可能性があり、最悪の場合銃はマシンピストルになってしまう。

 幅が広く、スプリングが付属してスライド側面に組み込まれたエキストラクターは、オートマチックファイアリングピンブロックセーフティとならんで、古典的なブローニング方式との本質的な差を形作っている。これは進歩である。なぜなら、構造上絶え間無い緊張状態に置かれるM1911系のオリジナルなエキストラクターは、製造および素材技術上比較的コストが高い。そして残念なことにこれをスライド後方から差しこんでみると、あまりにも頻繁にテンションが強すぎたり弱過ぎたりする(頑住吉注:そしてそれ自体の弾性で動くので、独立したコイルスプリングが付属しているGSRと違ってテンション調節が困難だということですね)。

 SIG-Armsはマガジンに、分解可能で8発装填できるノバック製を選んだ。ノバックは左右調節できるローマウントサイトも供給している。このサイトには薄暗がりでも狙える3つのホワイトドットが入っている。嬉しいことに、テストした銃は25mからのグルーピングが、大部分のテスト弾薬においてまるで1つの「ブチ」のように集まった。GSRの命中精度技術は、MFRおよびFederal製のフルメタルジャケットラウンドノーズ弾薬とベストのハーモニーを見せた。両弾薬において、ランサムレストからのグルーピングはそのつど41mm程度に留まった。公用ピストルとして設計されたM1911A1を基本にしていることを考えれば、これはエクセレントな価値である。

 テストした銃は、全てのフルメタルおよびホローポイント弾薬で100%障害なしで作動した。しかし、セミワッドカッターの射撃では1マガジンに少なくとも1回の送弾不良があった。各セミワッドカッター弾薬では、そのつどの最終弾がチャンバーに送られることはまれだった。短い185グレインのFederal Gold Medalでも、IMIでも、比較的大きな先端部を持ち、230グレインと重いMagtech製フルメタルジャケットセミワッドカッターでも事情は同じだった。

 SIG-Armsは自衛火器目的の使用のみに完全に集中したように見える。そして、ホローポイント弾で完璧に作動するようにし、スポーツ射撃に典型的なセミワッドカッターで機能障害が起こることは分かった上で受容したのだろうと思われる。

結論
 GSRのアメリカにおけるカタログ掲載価格は、約10%S&WのM1911系(ピカティニーレールなし)を上回っている。キンバーのModel Custom TLE RLU(マウントレールあり)は、価格上SIG-Armsと同等である。SIG-Armsは価格と成績の比に関する宿題を抱えた。だが、アメリカにおいてGSRはそのいくらか高い価格という欠点とのみ戦えばよい。目下、Safariland、Galco、Gould&Goodrichといったメーカーの、この銃にジャストフィットする、今年供給が始められた品質保障つきのホルスターは極度に品薄状態である。

 一方ドイツでは、SIG-Armsが初めてM1911系を発売するという意味がむしろ重要である。ただ、ドイツでは.45口径シングルアクションピストルの公用としての注文を期待しても無駄である。この銃が非常に安定性の高い、良好な加工をされたものであっても同じことだ。そして、スポーツピストルとしての使用を考えた場合、GSRの(高価な)特別装備は方向性が間違っている。ドイツではピカティニーレールはせいぜい飾りになるだけだ。ナンセンスな銃立法によってここにまともなものは取り付けられないからである。ハイクオリティ−なノバックサイトによって本当に利益を得るのは、ハンターと非常に少数のコレクターだけである(頑住吉注:何度か触れたように、ドイツではハンターが実用ピストルを携帯して「とどめの1発」に使用します。そのためにはベルト等からひっかからずに抜けるものが好まれるようです)。.45ACPピストル使用者全体のうち残りの大多数はおそらくBoMarスタイルのアジャスタブルリアサイトと、もっと軽く調整されたトリガーを好むはずだ。
 
 例えば、スプリングフィールドアーモリーのステンレス製M1911A1トロフィーマッチロングスライド(頑住吉注:純粋なマッチガンであり、マッチに使用するにはGSRより明らかに適している機種、というこでしょう)は価格がGSRとほぼ同等である。そして、もう400ユーロ出せば6インチのLesBaer PremierUを買うことができる。単にモダンなステンレスガバメントが欲しくて、ピカティニーレールはなくてよいというのなら、ドイツではSW1911が1150〜1300ユーロで買えるし、スプリングフィールドアーモリー「Loaded」なら1000ドル弱で買える。

Born in the USA(別扱いの囲み記事)
 GSRによって、SIG-Armsは初めてP220シリーズのスイス-ドイツ系デザインから転じたというだけでなく、個々のパーツをほとんど完全にアメリカ国内製とした。しかしSIG-Armsの所在地Exeterで作られているわけではない。SIG-Armsも含め、大部分の1911系メーカーは生産を多数の下請け企業に任せている。この方法ならば、ピストルメーカーが全ての部品を独力で生産する場合より、多数のトップクオリティな製品をより安価で提供できるからだ。バレルはStorm Lake(406mmで一回転のライフリング)、フレームはCaspian、サイトとマガジンはNovak(マガジンはイタリアのAct-Magが生産)、バレルブッシングと「トリガーStollen」(頑住吉注:スパイク、滑り止め突起。たぶんシアだと思うんですが、トリガーバーかも知れません。)はEvolution Gun Works、メインスプリングガイド、プラグ、ピン類、ハンマーはPerformance Engineering、トリガー、スライドストップ、マガジンキャッチはGrieder Precision、木製グリップはHerret(ブラックフィニッシュのバージョンに付属するプラスチック製グリップはFalcon)、スプリング類はWolf、セーフティとメインスプリングハウジングはWilson Combatでそれぞれ作られている。

弾薬 弾薬の全長(mm) 集弾(mm) 初速(m/s) 初活力(ジュール)
MFS 180grsFMJ-RN 32.0 41 308 553
IMI1 85grs FMJ SWC 29.4 48 295 521
Remington 185grs JHP 30.6 55 350 734
Fiocchi 230grs FMJ-RN 31.9 48 248 458
Magtech 230grs FMJ-RN 32.1 68 212 334
UMC 230grs FMJ-RN 32.2 56 237 418
Federal 230grs FMJ-RN 32.0 41 251 469
S&B 230grs FMJ-RN 32.0 55 238 422
Speer 230grs JHP 31.2 55 258 469

※FMJ-RN=フルメタルジャケットラウンドノーズ。SWC=セミワッドカッター。JHP=ジャケッテドホローポイント。全ての集弾はランサムレストから25mの距離で計測した。結果は6発を2回行ったもので、最初の1発以後マニュアルでスライドを前進させたり、マガジン交換はしていない。初速計はMehl BMC17。

モデル:SIG−Arms GSR
価格:1741ユーロ
口径:.45ACP
装弾数:8+1発
寸法:221(全長)x35(全幅)x148(全高)mm
銃身長:127mm
重量:1180g(エンプティ)
型:ステンレススチール。SAトリガー(トリガーストップつき)。ロングのサムセーフティ(左のみ)。長いミゾつきのメインスプリングハウジング。マグウェルは広げられている。


続いて「DWJ」公式サイトにあったGSR紹介の内容です。残念ながらすでに削除されてしまっています。


Sigarms製の新しい1911系ピストル
射撃テストは非常に良好な命中精度を証明
 まだドイツでは入手できないが、アメリカで行った射撃テストですでにこの銃は期待に応え、高性能を実証した。Sigarmsの新製品GSRは2種のバリエーションで、(頑住吉注:ドイツの)エッケルンフォルデではなくアメリカで製造されている。
 コルトガバメントを原型とするオートピストルはすでに充分以上に存在している。だから、どこかのあるメーカーがその何十、何百番目かのバージョンとしてマーケットにそうした銃を持ち込んでも、ニュースとは見なされない。だが、SHOT SHOW2004で初めて一般にプレゼンテーションされたGSRの場合はその新しさにおいていくらか事情が異なる。Sigarmsにとって自社の1911系は新製品である。アメリカにおけるSauerの姉妹会社Sigarmsはクラシックなブローニングシステムをベースとするピストルを初めてシリーズに組み入れた。これは去年自社の1911系を供給し始めたライバルのS&Wに負けまいとするSigarmsの努力の現れである。
 ピストルメーカーSauerとアメリカのSigarmsは、特にその公用およびスポーツピストル、とりわけP220、P226で有名であり、評価も高い。これはその非常に高い加工精度、確実な作動と、装填状態で安全に携帯できるダブルアクションピストルであるという点が認められているのであり、この銃に関してはDWJは何回も非常に詳しくレポートを行っている。
 SigarmsとSauerは今、膨大な1911系クローンが現存する1911の起源の国に、さらに自社の1911系を加えた。これは恐らくマーケティングの結果勝算ありと踏んだからだろう。というのは、大西洋の向こう側ではSauerとSigarmsの名前は非常に良いブランドイメージを伴っている。これは1911系システムが定評を得ているのと同じである。SauerとSigarmsが持つ高いブランドイメージと定評ある1911系システムが結びついたらどうなるだろうか?この銃の開発にあたり、Sigarmsは有名なIPSCシューターのアドバイスを得た。確かにSigarmsはこの銃の組み立てだけを行っており、パーツは細分化された下請け会社によって作られているのではあるが、それらは銃器工作において高い評判を得ている社である。
 「GSR」という名前は「Granite Series Rail」の略だ。「granite」(頑住吉注:みかげ石、花崗岩)は、Sigarmsの所在地であるニューハンプシャー州の別名「Granite State」を思い出させる。「Rail」は有用なタクティカルアクセサリーを取りつけられる削りだしの「Schiene」(頑住吉注:ドイツ語のレール)を示している。ステンレス製のこの銃は2つのフィニッシュバリエーションで提供される。「魚の皮」状表面の木製グリップが付属したマットステンレスバージョンと、特殊な滑りにくいプラスチック製グリップが付属したいわゆる「Nitron-Finish」特殊表面加工のブラックバージョンだ。
 外観上GSRは有名なベースモデルとよく似ているが、いくつかの点で区別される。スライド上部には追加のフライス加工が行われてベースモデルよりスリムになり、この銃のスライドにはある種の段差が生じて独自の外観をもたらしている。そしてこれによってマズル部分はより丸みを帯びた印象になっている。
 GSRのメインスプリングガイドはある種のカムで短縮されている。分解方法はガバメントと同じだ。
 外装ハンマーはコルトコマンダーに似たラウンド型で、後部には滑り止めミゾが彫ってあり、中央は穴になっている。この銃には5inのマッチバレルと外装の長いエキストラクターが装備されている。
 金属パーツは手作業で研磨され、正確でタイトなフィットと、それでいて確実な作動を保証している。この銃はスライドの動きが実になめらかである。
 この銃は長いセーフティレバーと、ビーバーテイル下部にグリップセーフティを備えている。トリガーはスケルトンだ。サンプルは一致して1850gのトリガープルを示し、動きもスムーズだ。
 シューティングレンジにおいて、DWJ通信員の手元のGSRはいろいろな弾薬において卓越した命中精度を示した。スタンディングで25mから依託射撃を行ったが、ベストの結果が得られたのはSpeerのGold Dot(230グレインJHP)だった。そのグルーピングは4cm弱だった。Black Hillsの200グレインセミワッドカッターは約5cmだった。他の弾薬では5発のグルーピングが6〜8cmとなった。興味ある事実だが、狙点と着弾点のずれは全ての弾薬において小さかった。
 オープンサイトつきのオートピストルとしては通常の射撃距離ではないが、先に挙げた200グレインセミワッドカッターを使ってGSRを45mから射撃した。厳しい遠距離だが、3回において5発のグルーピングが約5.5cm以内に収まった。ベストの結果では4.5cmになった。当然だが、全体に着弾点は狙点より下になった。
 銃の操作性と射撃時の作動は申し分ない。
 この銃は作動不良を起こさなかったが、ただし鉛弾は使っていない。ヨーロッパとは違い、アメリカのシューターは鉛弾をほとんど使わないからである。そしてこの銃がドイツに入ってくるまでにはまだ何週間かかかるからだ。鉛弾はしばしば送弾不良を起こすものであり、これが起きたらSigarmsは対策をとらなくてはならない。Sauerがドイツでの販売を開始したらすぐ鉛弾によるテストを行う予定である。

システム:SAメカニズム
口径:.45ACP
マガジンキャパシティ:8発
銃身長:5インチ
全長:8.65インチ
重量:1105g(マガジン含まず)
サイト:ノバック3点式
グリップパネル:バリエーションにより木、またはプラスチック
フィニッシュ:ステンレス仕上げ、またはステンレスにブラックの表面加工


 メーカーのSIG-Armsは名前からするとスイスのSIG(スイス インダストリー ゲゼルシャフト)の子会社のようですが、すでにスイスのSIGはいわゆるSIGザウエルブランドの銃とは無関係になっています。SIG-ArmsはドイツのJ.P.ザウエル&ゾーンの子会社であり、実態としては「ザウエルUSA」みたいな存在なわけですね。「DWJ」は「SauerとSigarmsの名前は非常に良いブランドイメージを伴っている」と言っていますが、あえてSIGの名前を名乗り続けているところを見れば、良いブランドイメージを伴っているのはザウエルより主にSIGの方なんでしょう。SIG-Armsの公式サイトにおけるGSRの紹介ページはここです。
http://www.sigarms.com/products/gsr.asp
ホームに戻れば、SIGプロやP220シリーズ、P210などの紹介ページも見られます。

 P220シリーズでアメリカでも公用として大成功しているSIG-Armsでも無視できなくなるほど、アメリカではガバメント系が新たなブームになっているようです。、その前にはコルトの長年のライバルであるS&Wもガバメント系に参入しており、特にS&Wの場合はガバメント系に非常に強い影響を受けた945シリーズがあるのにあえてガバメントそのものに近い銃を新たに作っている点が注目されます。ガバメントの長所を大幅に取り入れたオリジナルではダメで、ガバメントそのものが欲しいという要求が強いわけでしょう。個人的にはガバメントの基本設計から約100年、その間にさまざまな技術の進歩があったはずなのにこれを越えるものができない(同じブローニングによるM2重機もそうですけど)というのはなんとなく解せない気がするんですが。ただ、海兵隊やアメリカの法執行機関など、実戦経験豊富な組織が体験から.45ACPを使用するガバメントを望んでいる(特に高性能ホローポイントが使える後者すらそうである)以上、そこには不合理な「.45口径神話」以上の何かが確かにあるのだろうという気はします。
 GSRも外観はややSIG風味を加えているものの、中身はほとんどガバメントそのものです。なお、「Visier」はマズルが角ばっている、「DWJ」は丸みを帯びていると逆のことを言っていますが、これはどう見ても「Visier」の方が正しいと思われます。また、「DWJ」には「メインスプリングガイドはある種のカムで短縮されている」と読める記述がありましたが、特別な構造ではありません。ドイツではあまり一般的でないリンク式のショートリコイルをこう表現しただけかもしれません。

 ジョン・ブローニングが設計したオリジナルのガバメントと異なる点として「Visier」が挙げているものにオートマチックファイアリングピンブロックセーフティがありますが、これはコルトでもシリーズ80から装備しており、訴訟対策上現在では一般市販用には事実上必ず組み込まざるを得ないようです。「Visier」の記事にはトリガープルの推移を折れ線グラフにしたものが掲載されていますが、これを見るとはじめ少し重くなり、やや軽くなってからまた重くなって落ちる、という2つの山になっています。これが熟練したシューターに嫌われるゆえんなんでしょう。SIG-Armsはなるべくトリガープルへの悪影響を避けるため、ファイアリングピンブロックを動かすスプリングを極力弱くし、それだけでは確実性が低くなってしまうので解除されるまでに必要な移動距離を増したようです。それでも明確にトリガープルに悪影響が出てしまったというわけです。
 訴訟対策といえば、最近はキーロック式セーフティを持つ銃が増えています。上に示したSIG-Arms公式ページから銃の画像を拡大表示するとかろうじて分かるように、スライド右側面後方にこんなものがあります。



黄色で表現した部分です。これはキーロック式セーフティとしか思えませんでしたが、「Visier」も「DWJ」も公式サイトも一切触れていません。それに良く考えれば「セーフ」等の表示がないのも変です。とすればキーロック式セーフティである可能性は低いでしょう。一体これは何なんでしょうか。ちなみにエキストラクターを固定するピンはもっと前方にあって垂直に貫通しています。

 今回の記事には「タンフォリオ フォース」の項目に続いて2回目になる、ドイツにおけるライト類の規制に関する記述がありました。気になるので「DWJ」2003年10月号に付属していた別冊「Das neue Waffengesetz」(新銃器法)の中を必死に探しました。「Verbotene Waffen」(禁止された銃)という項目を見つけ、さらにその中に「ライトなどでターゲットを照らすもの、レーザーなどでマーキングするものを装備した銃」という項目を発見しました。ドイツではレールつきの銃を販売することはできても、ユーザーがここにライトやレーザーサイトを取り付けることは許されないわけです。
 「Visier」のレポートはおおむね好意的ですが、ただしドイツでは.45ピストルには公用の需要はなく、レールは法律上飾りにしかならず、ノバックサイトもトリガープルもマッチ向きではなく、マッチ向きのセミワッドカッターは使えず、価格は高い、ということで、ズバリではないですが、「そんなに成功しないだろう」というニュアンスで書いています。確かに命中精度は高いですが、「ノリンコ製品のグレードは?」で登場したノリンコNZ85B(1/5近い安さ!)の方が明らかに命中精度が高く、驚異的というほどではありません。

 アメリカではどうでしょうか。GSRの命中精度は確かに魅力ですが、アメリカでもマッチ向きでないのは同じことです。「MARSOC」の項目にあったように、実戦経験豊かなアメリカ海兵隊も、実用銃の場合は25ヤード(約23m)から4インチ(約102mm)に入れば充分で、さらに高めるのは簡単だが信頼性や分解しやすさを優先したほうがいいとしています。まあ砂漠などでも使用しなくてはならず、基本的に敵を倒せばそれでよい軍隊と、そんなに苛酷な環境で使うことは少なく、場合によっては人質を避けて犯人を撃たなければならない法執行機関では事情が多少違うとは思いますが、GSRが公用として値段に見合う価値があると認められるかどうかは微妙だろうと思います。

 ちなみに「Visier」のレポートでGSRと比較されている銃ですが、まずSW1911の公式紹介ページはここです。
http://www.swfirearms.vista.com/store/index.php3?cat=293581&item=865408&sw_activeTab=1
ちなみにホームに戻るとファイアリングピンブロックに問題が見つかって無償で修理するなんていうリコールのお知らせがあったりします。
キンバーのModel Custom TLE RLUの公式紹介ページはここです。
http://www.kimberamerica.com/special.php
LesBaerのPremierU6インチはここです
http://www.lesbaer.com/duty.html
スプリングフィールドアーモリーの「Loaded」はここです
http://www.springfield-armory.com/prod-pstl-1911-fs.shtml








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