中華「コーナーショット」

 中国は、イスラエル製の特殊兵器「コーナーショット」のコンセプトを真似た製品も作っています。高速鉄道車両が独自技術であるかないかが議論になっていますが、今回は同様に他国の技術を導入し、これにアレンジを加えたこの兵器に、どれだけのオリジナリティがあるのかにも注目していただきたいと思います。

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中国警察用コーナー射撃システム第一号、CS/LW9コーナー武器システム

イスラエルの「Corner Shot」コーナー射撃武器の出現後、我が国の対テロ部門はすぐさまこれを重視することとなり、しばらくすると国内の多くの会社も続々と自分たちのコーナー射撃武器システムを登場させた。中国兵器工業第208研究所が研究開発したCS/LW9コーナー武器システムは、公安部が初めて定型を認め、装備したこの種の武器であり、したがってこれは中国初の警察用コーナー射撃システムともなった‥‥。

高額な製造コストが独自研究開発を促した

2003年、イスラエルの対テロ作戦部隊中佐Amos Golanは退役後、都市における対テロ作戦の中で積み重ねてきた自分の経験をもとに、現代のコーナー銃武器システムを設計した。‥‥すなわち「Corner Shot」である。「Corner Shot」は先進的技術性能および全く新しい対テロ理念のおかげで急速に世界中の注目を集めた。我が国の関係部門は「Corner Shot」の戦術価値を理解した後、ただちにイスラエルの会社に委託し、我が国の92式9mm拳銃を挟んで保持できるコーナー銃武器システムを設計し、もって国内の対テロ作戦の要求を満足させた。この武器システムの研究開発成功後、我が国の法執行部門は試用を経て、これは実際の対テロ作戦の中で大いに有用であると考えたが、製造コストが高いため、多くの下部法律執行部門は受け入れ不能だった。このため、コーナー射撃装置の自主研究開発を求める声が日増しに高まって行った。

中国兵器工業第208研究所(頑住吉注:64式拳銃、79式サブマシンガン、警察用新型リボルバー、新型ナイフ等を開発したメーカー。ここ参照)は市場の要求に狙いをつけ、2005年に「Corner Shot」を基礎としてCS/LW9型コーナー銃武器システムの研究開発作業を展開した。目下、このコーナー銃武器システムは国内における多くの同類製品中突出しており、正式に公安部により定型が認められ、関係部門の使用のため支給されている。したがって我が国の警察用コーナー武器射撃システム第一号となったのである。

原理:視察、照準と射撃が一体

CS/LW9型コーナー銃武器システムは視察、照準、指示、情報収集伝送、火力打撃機能が集められて一体になった総合武器システムであり、広い視野での偵察と打撃が実施できる。使用者は後部フレームユニットの湾曲機構のコントロールによって、前部フレームを左あるいは右に60度旋回させることができ、CCDカメラヘッドを搭載した前部フレームを、壁の隅の片側へと伸ばして到達させることができる。CCDカメラヘッドは前方の画像を撮影し、データケーブルを通じてビデオ信号を伝達し、後部フレームユニットにあるモニターに表示する。使用者はモニターの視察を通じて目標区域の情況を見、照準、射撃が必要か否かを確定する。射撃が必要な時は、後部フレームにある発射機構のトリガーを引く。するとスチール製ケーブルを通じて補助撃発装置を連動させ、92式拳銃をコントロールし、射撃が実現する(頑住吉注:このスチール製ケーブルは、恥ずかしながら日本語で何と言うのか知らないんですが、単なるスチール線ではなく細いケーブルを編んだ縄状のものです)。

(頑住吉注:原ページのここにある画像の部分名称は、前が「マガジンキャッチ」、後ろが「湾曲機構」です。キャプションは、「前部フレームユニットの特写。拳銃を挟んで固定する部品の左側のカバーには、92式拳銃のマガジンキャッチに対応する位置に丸い穴が開いており、マガジンキャッチを外部に露出させていてマガジン交換に便利である。前部フレーム、後部フレーム間は湾曲機構で連結されている」となっています)

構造:各ユニットが巧妙に連動

CS/LW9型コーナー銃武器システムはプラスチック製の前部フレーム、後部フレームという2大部分からなり、両者は湾曲機構で連結されている。

(頑住吉注:原ページのここにある画像の部分名称は、銃口の下、向かって右が「激光指示器」、すなわちレーザー照準器、左が「強光戦術灯」、すなわちフラッシュライトです。その下はCCDカメラヘッドです。キャプションは、「前部フレームユニットの、拳銃を挟んで固定する部品の前端にはCCDカメラヘッド、レーザー照準器、フラッシュライトが設けられている」となっています。)

発射機構:発射機構は後部フレームユニットの中のトリガー、前部フレーム内の補助撃発装置およびこの二者の間を連結するスチールワイヤーからなる。剛性のある連結バーと異なるのは、スチールワイヤーは前部フレームの動きに追随して湾曲でき、かつ良好な伝動作用を持ち、撃発動作の信頼性を保証し得ることである。後部フレームユニットの中にあるトリガーを引くと、連結スチールワイヤーを介して補助撃発装置が連動し、92式拳銃のトリガーをコントロールし、射撃が実現される。

セーフティ機構:トリガー上方にクロスボルト式のトリガーセーフティが設けられ、左側に押されているとセーフティ解除状態、その逆がセーフティ状態である。

電力供給系統:電力供給系統は互いに独立した2つの部分に分かれている。すなわち後部フレームユニット上部の電池ボックス内に8本のCR123A型リチウム電池が置かれ、これはモニター、CCDカメラヘッド、レーザー照準器に電力を供給する(頑住吉注:4ページ目、2枚目の画像が分かりやすいです)。一方グリップの電池ボックス内には2本のCR123A型リチウム電池が置かれ、フラッシュライトに電力を供給する(頑住吉注:昔ファルコントーイのMP5Kがレシーバー上部とフォアグリップの2か所にバッテリーを収納していたのを思い出しました。緊急時には別の系統にも短時間電力供給できるというのなら別ですが、あまりスマートなデザインではない気がします)。

ストック:折りたたみ式ストックはプラスチックで作られ、重量は軽く、強度は高い。ストックと本体がヒンジ結合されている所のロックボタンを押せばただちにストックが折りたため、あるいは伸ばせる。



超越・核心技術における飛躍を実現

技術的リードを確保するため、CS/LW9型コーナー銃武器システムの設計過程で、設計人員はイスラエルの「Corner Shot」システムを参考となるサンプルとするだけでなく、さらに超越すべき目標とした。CS/LW9型コーナー銃武器システムの設計上のハイライトは主に次の3方面に表れている。

(頑住吉注:原ページにはここにストックのロック解除、折りたたみを説明した画像が2枚、前部フレームユニットの旋回方法を説明した画像が3枚あります。前者については補足説明は不要でしょう。後者のキャプションは、「湾曲機構の操作方法。転向駆動グリップをいっぱいに下に引き、さらに転向駆動グリップを横にスイングすると前部フレームユニットが左または右にスイングする。前部フレームユニットが適切な位置までスイングした時、転向駆動グリップを元の位置に戻せばOK」となっています。要するに転向駆動グリップの後部を下げるとロック解除され、後部を左右にスイングすると前部フレームユニットが連動してスイング、転向駆動グリップの後部を元通り上げるとロックされる、ということですね。1ページ目の最初の画像のように、転向駆動グリップはフォアグリップとして利用されるので、射撃姿勢を変える際などに意図せずロック解除してしまわないかちょっと心配です)

ハイライトその1:緩衝装置を精緻に設計

人間の手で持って銃を射撃する時、後座力は柔軟にコントロールされ得るが、拳銃を挟んで保持し、コーナー系統の中で発射すると、後座力は剛性のコントロール下にあることになる。したがって拳銃の動力特性が変わって撃発故障(頑住吉注:作動不良)を引き起こしやすくなる。この他、拳銃の種類ごとの動力特性にも大きな差異がある。このためコーナー銃武器システムの設計時、湾曲射撃支持架に細心の注意を払って設計しなければならず、しかも人の手で射撃する際の特性を模して初めて射撃時の安定性が保証できる。ここにもまさにコーナー銃武器システム設計の核心が所在する。

イスラエルが設計した我が国の92式拳銃を挟んで保持する「Corner Shot」コーナー銃武器システムは試射時に給弾不良を起こした。原因はイスラエルの「Corner Shot」研究開発研究開発チームが、そのコーナー装置に元々使われていたグロック拳銃と我が国の92式拳銃との間に存在する構造や動力特性方面の差異をないがしろにし、かつ充分な試験を経なかったことで、給弾不良率が高すぎるという結果を招いたのである(頑住吉注:うーん、92式がデリケートすぎるという可能性も考えられるのでは)。

CS/LW9型コーナー銃武器システムの設計人員は研究開発中、高速度撮影、動力学的シミュレーション分析を採用し、またテスト、論証等多種の手段を使って92式拳銃の動態過程に分析を加え、最終的にトラブルの原因を確定した。その後、設計人員はこれに対応して湾曲機構後方に巧妙に緩衝装置を増設した。採用されたのは前部フレームユニット全体が後座して緩衝する方式で、人の手で構えて銃を射撃する状態を模擬的に再現する効果があった。こうして「Corner Shot」の、拳銃を純粋に剛性をもって挟んで保持する状態は改変された。2年にわたるくり返しの模索、試験を経、全部で2万余発の弾薬を消費し、最終的に緩衝装置の最も良い性能上のパラメータが確定した。92式拳銃を剛性をもって挟んで保持する不適切性は一挙に解決されたのである。今回の技術的重要問題への取り組みは、科研人員にコーナー武器システム設計方面における貴重な経験を積ませ、コーナー武器システムに作動信頼性が高い、射撃精度が高いという長所を持たせることになった。そして製品鑑定会において専門家に、「総合性能が国内外の同類製品の先進レベルに達している」との高い評価を出させたのである。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションは、「転向駆動グリップは射撃時の保持部分でもある」となっています)

ハイライトその2:前部フレームユニットのスイング角度の選択が適切

最大のスイング角度を獲得するため、コーナー銃システムの設計時、通常は左右のスイング角度は90度とされる。しかし90度の角度で射撃すると後座力が過大な回転モメントをもたらし、したがって射撃精度に影響する。一方CS/LW9型コーナー銃武器システムは前部フレームユニットの左右のスイング角度が60度とされ、表面上射撃角度の範囲が有限であるように見えるが、このような角度は射手自身の射撃姿勢で調整を加えれば戦術上の必要が満たせ、システムを90度の角度で射撃する時にもたらされる問題が避けられる(頑住吉注:90度の射撃で問題が起こるならなるべく60度程度までで射撃するよう心掛ければいいだけで、場合によっては60度の角度では射手の危険が高くなりすぎるということもあり得るでしょう)

ハイライトその3:システムの重量が合理的に調整されている

「Corner Shot」システムの中では、挟んで装備された拳銃と前部フレームとの重量が全システム中に占める割合が比較的高く、システム全体の重心が前寄りになるという結果をもたらしており、保持しての射撃に不便である。一方CS/LW9型コーナー銃武器システムは各種の戦術上の指標を保証すると同時に、精緻な設計を経てシステムの総重量(特に前部フレームユニットの重量)を最低限の範囲内に制御し、射手が長時間安定して保持しての照準に便利で、射手の疲労を軽減する。

さらに:コーナー銃はシリーズ化を実現

CS/LW9型コーナー銃武器システムが定型に至り、公安部門にも採用された後も、設計グループは決して研究開発の歩みを止めず、国際的対テロ市場に対応して時宜にかなった形でNP22、NP34 9mm拳銃(頑住吉注:SIG P226、P228のコピー)を搭載できるコーナー銃システムを登場させた。これらのシステムはそれぞれNP22、NP34拳銃の外形と動力特性に合わせて細心の注意を払って緩衝装置を設置し、CS/LW9の挟んで保持する機構を合理的に調整したもので、その他の機構はCS/LW9システムを流用している。したがって大いに生産コストは下がっている。コーナー銃システムはシリーズ化を実現し、国際市場のコーナー武器システムに対する要求をさらに良好に満足させるさせることになろう。

CS/LW9型コーナー銃武器システムとイスラエルの「Corner Shot」システムの性能比較

性能諸元 CS/LW9システム 「Corner Shot」システム
システム全重量(kg) 3.9 4.64
射撃精度(25m) 半数が半径5.5cm以内、全弾が半径12.9cm以内に着弾 半数が半径7.3cm以内、全弾が半径14.1cm以内に着弾
武器システム全長(mm)
(ストック伸ばし/たたみ)
830/650 820/640

前部フレームユニット

前部フレームユニットの主要部分は、92式9mm拳銃を挟んで保持する挟具であり、この挟具は拳銃のグリップと形状が緊密にフィットし、拳銃を何度も着脱する場合の一致性を確保し、着脱を反復するために改めて拳銃の照準点を調整する必要が生じることを回避している。挟具の左側のカバー上には92式拳銃のマガジンキャッチに対応する位置に丸い穴が開いており、マガジンキャッチを露出させ、マガジン交換を便利にしている。挟具の前端にはCCDカメラヘッド、レーザー照準器、フラッシュライトが装備されている。CCDカメラヘッドはビデオデータケーブルを通じてモニターとつながっており、その採集したターゲットの画像をモニター上に表示することができる。射手が隠蔽された位置からターゲットの状況を視察するのに便利である。CCDカメラヘッドおよびレーザー照準器には左右高低の方向調節機構も設けられている。前部フレームユニットの後部には補助撃発装置が設けられ、後部フレームの発射機構とワイヤーでつながっている。

(頑住吉注:原ページのこの部分にある画像のキャプションは、「CS/LW9コーナー銃の射撃状態。モニターにプラスチック製の折りたたみ式遮光カバーが装備されているのに注意。このため強すぎる日光あるいは照明の下での使用時に、モニターの画面が見にくくなることが避けられる。」となっています。)

後部フレームユニット

後部フレームユニットはモニター、コントロールスイッチ、湾曲機構、発射機構、セーフティ機構、電力供給系統、折りたたみストック等の部分からなっている。モニターは後部フレームユニットの左側に設置されており、CCDカメラヘッドが採集した画像を表示し、照準を行うのに用いられる。武器の体積を減らして携行に便利とするため、モニターには折りたたみ式の設計が採用されている。不要時は折りたたみ、使用時は展開してすぐさま視察と照準が行える。このモニターにはプラスチック製の折りたたみ式遮光カバーも装備され、強い日差しあるいは照明の下で使用する時、モニターの画面が見にくくなることが避けられている。

(頑住吉注:原ページのここにある、電池ボックスを開いた画像のキャプションは、「後部フレームユニット上方の電池ボックス内には8本のCR123A型リチウム電池があり、モニター、CCDカメラヘッドとレーザーサイトに電力を供給している。」となっています)

コントロールスイッチ

コントロールスイッチはモニターの前方に設けられ、三角形に配列された3つのボタンを含む。このうち最も上のボタンは照準系統(CCDカメラヘッドとモニター)の電源をオンオフし、押すと照準系統がオンに、またはオフになる(頑住吉注:1回押すとオン、もう一度押すとオフということでしょう)。左下のボタンはフラッシュライトをオンオフし、右下のボタンはレーザー照準器をオンオフする。

湾曲機構

湾曲機構はコーナー銃武器システムの重要な組成部分であり、実際のところコーナー射撃の核心をなす部分である。湾曲機構にはちょうつがい式の構造が採用され、その両端にそれぞれ前部フレーム、後部フレームユニットが連結されている。ちょうつがいの回転軸の下端は湾曲機構の操作部品である転向駆動グリップとつながっている。転向駆動グリップは通常後部フレームユニットの下方に折りたたまれており、射撃時のグリップを兼ねている。前部フレームユニットを旋回させる必要がある時は転向駆動グリップをいっぱいに引き下げ、この後転向駆動グリップを握って左右にスイングさせれば、連動して前部フレームユニットを左右にスイングさせることができる。前部フレームユニットが定位置に来た時に駆動グリップを再び上げ、改めて後部フレームユニットの前方に折りたためば、前部フレームユニットは固定される。


 「高額な製造コストが独自研究開発を促した」という小見出しを見た時、当局から「コストがかかり過ぎて装備できそうもないから開発費は出せない」と言われてメーカーが発奮し、「それなら自力で開発してみせる!」と言って頑張った‥‥というような内容を想像したんですが、「イスラエル製は高いから自分で作ることにしたんだよ」という内容で、ちょっと拍子抜けです。それって堂々と小見出しにするようなことじゃないだろう、と思いますが、それはまあ感性の違いでしょうな。

 中国が高速鉄道を世界に売り込むのを見て日本人がモヤモヤした気持ちになるのと同じで、中国がCS/LW9を世界に売り込むのを見たイスラエル人は愉快には感じないでしょう。しかしこのCS/LW9に関してはコンセプトはそのまんま頂いているものの、確かに独自色も盛り込んでいるわけで、亜流品とは言えてもコピーとは言えません。

 余計なことかもしれませんし怒る人もいるでしょうが、私が個人的に中国高速鉄道車両の問題に関して感じていることを書きます。今回、文中にNP22、NP34というピストルが出てきました。注釈に書いたようにこれはほぼ完全なSIGザウエル製品のコピーです。一方まぎらわしい銃にNP2000というのがあります。

http://www.qbq.com.cn/a/bencandy.php?fid=31&id=1065

 一番上の画像を見れば、ほぼ全員がやはりSIGザウエル製品のパクリだと思うでしょう。しかし後のページを見ていくと分かりますが、この銃はロータリーバレル、ダブルカアラムダブルフィードマガジン、独自のトリガー、セーフティ機構を採用するなど、中身は完全に別物になっています。ピストルが形に大差がない人間の手で操作する必要から大体似た形のものになるのと同様に、空気抵抗を減らす必要から高速鉄道車両も形は大体似たものになるでしょう。中国を揶揄する言論ばかりが目につきますが、私は日本人はその中に今後脅威となるような独自技術が本当に含まれていないのか、真剣に警戒する必要があると思っています。

 話がそれましたが、この兵器の話に戻ります。全体のデザインがちょっとおもちゃっぽい印象なのが気になりますし、注釈で示したようにいくつか疑問点もありますが、たぶんイスラエル製よりずっと安いでしょうから、国際市場でのアピール力はかなりあるのではないでしょうか。

 さて、これに関しては「コーナーショット」に多少のアレンジを加えたもの、という程度の評価しかできませんが、次回はまさに本家「コーナーショット」の脅威となるかもしれないちょっと驚くような独自技術を盛り込んだ新製品を紹介する予定です。







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