独自の進化を遂げた中華「コーナーショット」

 前回は中国版「コーナーショット」とも言うべき製品を紹介しましたが、あれは多少のオリジナリティーはあるものの、想像の範囲内のものでした。今回はちょっとびっくりするような独自のアイデアを盛り込んだ製品を紹介します。元の記事は「兵工科技」誌2010年第10期号に掲載されたものです。これまで紹介してきた中国の雑誌は大部分「兵器知識」と「軽兵器」誌で、この雑誌の名は初めて目にしました。

http://bbs.tiexue.net/post_4376701_1.html

http://ido.thethirdmedia.com/article/frame.aspx?turl=http%3a//ido.3mt.com.cn/article/201007/picview1946828c30p4.ibod&rurl=&title=


コーナー銃の新たなる傑作 自由変線照準射撃システム

広州盛麒光電科技有限会社、遊若岩副社長インタビュー

かつてある時の北京警察用装備展において、「コーナー銃」がこの種の最も早い、イスラエルとアメリカが研究開発し、新たに作り出した新概念の個人武器装備としてデビューし、国内の各科学研究所や民間企業も多くのシステムと機種の「コーナー銃」製品を研究開発してきた。こうした警察展の常連客に関し、本誌は毎回特別号あるいは特集でも何度となく報道してきた。皆さんはとっくにこれについて聞き慣れ、詳しくなっているはずだ。だが今回の警察用装備展では、広州盛麒光電科技有限会社が驚くべき機種のコーナー銃の新製品を持ってきた。‥‥すなわち自由変線照準射撃システムである。これは従来固定した角度での射撃しかできなかったコーナー銃とは異なる自由変線照準射撃システムであって、角度固定式コーナー銃の制約を完全に突破し、射手が銃口を自由に動かしながら射撃が行える。コーナー銃技術における1つの新しい飛躍と言うことができる。この新製品の性能と原理をさらに一歩理解するため、我々は盛麒光電科技の遊若岩副社長に特別にインタビューを行った。

(頑住吉注:1ページ目、下の写真のキャプションです。「イスラエルの『コーナー銃』。これは初めての、角度を変えた後に目標に対する射撃が行える武器システムである。ただし角度が固定式なので射撃、使用の融通性に大きな制限を受ける」)

自由変線照準射撃システムとは何か

本刊記者(以下「記」と略称):まず自由変線照準射撃システムとは何かを簡単に説明していただけますか? この名称は大衆にとってちょっと専門的すぎるようですので。

遊若岩副社長(以下「遊」と略称):いわゆる自由変線照準射撃システムは、照準射撃プラットフォームとも言い、実際のところ一種の、拳銃を用いて変線照準射撃を実現するタクティカルプラットフォームに他なりません。これは拳銃をこのシステムのプラットフォーム上に装着した後、システムに装備されている回転ユニットなどプラットフォームのコントロールシステムの作用を通じて、自由な回転運動を行って拳銃の射撃照準線を改変し、角度の変更後、直接目視できない敵ターゲットに対する照準と射撃が行えます。我々のこのシステムを使えば、射手は自己を完全に隠匿した状況下で武器を自由に回転運動させて照準射撃が行えるのです。

記:この「自由変線照準射撃システム」の研究開発過程について説明していただけますか? 現在国内においてこのようなコーナー銃製品が多数登場しているようですが、これとその他のコーナー銃を比較すると、どんな違いがありますか?

遊:我々のこの自由変線照準射撃システムは、わが社が4年をかけて研究開発したものです。協力組織である湖北孝感238工場によって加工、組み立てが行われ、2009年に世に出ました。我々が研究開発したこの製品の最初の意図は簡単なもので、自由変線射撃という1つの新しい構想を利用し得ることを希望したのです。軍隊、武装警察、公安等のために提供する一種の新型進攻および防衛手段です。我々のこのシステムは、やはり一種のコーナー銃でもありますが、イスラエルの「コーナー銃」およびこれ類似の製品と、1つ最大の違いがあります。これまでの「コーナー銃」はいずれも湾曲角度が固定式でした。例えばイスラエルのコーナー銃は湾曲角度が63度で固定され、一方国内の208所が研究開発したコーナー銃は固定角度が60度です。しかし我々のこのプラットフォームの角度は調節可能で、180度内、プラスマイナス90度の範囲内で自由に回転運動させることができます。これこそが最大の違いです。

(頑住吉注:2ページ目の画像のキャプションです。上から「208所が研究開発した国産の『コーナー銃』が使用しているのも固定角度」 「広州盛麒光電科技会社の自由変線照準射撃システム」)

自由変線システムの技術原理と使用

記:それではつまり、これまで我々が見てきた、例えばイスラエルの「コーナー銃」は、実は角度が任意に調節できないのですか?  

遊:そうです。イスラエルのコーナー銃はヒンジによって前部の射撃機構と後部の撃発機構が連結されており、その中間にあるヒンジの屈曲角度は固定で変えられません。もし湾曲後にターゲットが理想的な照準範囲内に存在しなかったら、射手はただちに立ち位置あるいは銃を構える姿勢の調整を行わねばならなくなり、そうしてやっとターゲットに有効な照準が行えるのです。これは湾曲後に敵ターゲットに打撃を加えることの難易度を非常に大きく高めます。

記:それでは自由な変線によってコーナー銃の移動照準を実現した原理はどういうものですか?

遊:自由変線射撃は我々独自のプラットフォーム構造設計によって実現されたものです。システムの組成から見ると自由変線設計システムは技術的プラットフォームコントロールシステムとパノラミックサイト光学システムという2つの部分からなっています。その中の射撃角度の自由変化は技術的プラットフォームコントロールシステムによって行われます。プラットフォームコントロールシステムの中で、前部の射撃プラットフォーム上には一般的に拳銃が装備できます。例えばわが最新の92式拳銃等です。拳銃を射撃プラットフォーム上に装着した後、これを器具で挟んで固定し、トリガー連動撃発機構の中の撃発レバーを拳銃のトリガー位置に置きます。この時我々は気付きました。射撃プラットフォーム全体を、上端と下端の回転ユニットを通じて後ろの銃と連結するようにすれば、移動射撃が必要な時、射手は銃本体上の回転グリップユニット等角度の変更を行う機構の操作を通じて、前部の射撃プラットフォームの回転角度を調整できるのです。すなわち自由改変照準線の射撃が実現されます。このようにすれば、角度変更後に敵ターゲットのいる場所が理想的でない場合だけでなく、ターゲットがまさに移動を始めたという場合も、自由変線射撃システムなら自由な変線を通じてターゲットの追跡、照準、打撃が実現できるのです。



(頑住吉注:「後ろの銃」というのは銃の形をした本システムの操作部分を指しています)

記:射撃の際、具体的にどのようにして前部の射撃プラットフォームにある拳銃を撃発するのですか?

遊:さっき私が言ったように、トリガー連動撃発機構の中の撃発レバーが拳銃のトリガー位置に置かれており、この撃発レバーこの撃発レバーはさらに連動ベルトによって回転グリップユニットおよび後ろの銃のトリガーユニットと直接関連し、1つの全体的トリガー連動撃発機構を構成しています。射撃時、トリガーを引くだけでただちに牽引スチールワイヤー(頑住吉注:1本のワイヤーではなく編んだもの)を介して前の撃発レバーが作動し、これにより拳銃のトリガーが引かれて弾薬が撃発されるのです。トリガープルも重くなく、3.8kg未満です。一方イスラエルの「コーナー銃」は3.8kgよりさらに大きな力を必要としてやっと引けます。

記:それでは角度変更実行機構の回転能力は照準の要求を満足させられますか?  

遊:自由変線射撃システムの銃器角度変更範囲は180度でプラスマイナス90度です。すなわち視察できない区域全ての角度を含みます。カバーされる面積は大きく、同時に角度変更実行機構の回転速度も速くて毎秒90度に達します。瞬間のうちに素早く角度が変えられ、一般的な移動ターゲットに対する打撃を完全に満足させることができます。

照準システムは射手の習慣をさらに考慮

記:我々はイスラエルのコーナー銃や208所のものなどの類似製品とは異なり、サイトの面で貴社の自由変線射撃システムがビデオカメラ、液晶モニターを採用しておらず、伝統的な銃器のものと類似の照準具を使用していることに注意を向けました。これは何故ですか?

遊:我々はビデオカメラ、液晶モニターを採用せず、伝統的タクティカルレールと照準具を採用しています。これは主に2つの考えから出たことです。第1に、ビデオカメラと液晶モニターは実際の使用および実戦中にいくつかの問題を露呈しています。例えば液晶モニターは電子製品として使用環境に対する要求が比較的高く、比較的デリケートです。こうしたビデオ機器は特に氷点下の低温となる劣悪な作業環境に適していません。故障率も比較的高く、勤務保証技術に対する要求もより高くなり、修理維持の難度が高く、部品の使用、交換のコストが高いのです。第2にビデオカメラと液晶モニター等ビデオ機器による照準方式は射手の通常の射撃習慣との差が比較的大きく、これに関連する特殊な訓練を行って初めて適応できます。このため我々は自由変線射撃システムの研究開発時、特別に検討を進め、照準の精度を変えないという大きな前提となる要求のもとで射手の伝統的射撃照準習慣とさらにマッチした伝統的照準具を選択しました。すなわちパノラミックサイトです。

記:パノラミックサイトは具体的にどのように照準を行うのですか?

遊:パノラミックサイトシステムはパノラミック光学システム、修正機構、光学成像システム、照準レティクル、光学倍率調整機構、鏡筒、支持架等の部分から構成されています。この中でパノラミックサイトがその核心となるシステムです。これは我々が自ら研究開発した科学技術を含む独自技術です。この構造は一組のプリズムによる連続反射屈折構造なのです。潜水艦や戦車が使用している潜望鏡と原理は同じで、射撃プラットフォームがどのように動こうとも、パノラミックサイトの中のプリズムの組み合わせ、回転運動等の設計によって照準具の中に周囲の一定の視察範囲内のターゲットを常に正確に画像化することができます。パノラミックサイトの視野は4〜16度で、射手の射撃、視察に関する必要を満足させるに足ります。この他、我々の照準具の光学倍率は可変式で、具体的に言えば1〜4倍です。伝統的な軽火器のスコープと精度は同等で、視察距離も射撃に関する使用要求を満足させます。照準具全体はピカティニーレール等のタクティカルレールによって銃本体上に装着できます。着脱はいずれも非常に便利です。

この他、この照準具は電源に頼らないので24時間連続作業できます。イスラエルのコーナー銃のように電池による制限を受けず、使用コストがより低く、持続作戦能力もより強いのです。

記:この照準具は実際の射撃においてどのような評判ですか?

遊:射撃場での試射中、射手は皆、自由変線射撃システムの照準具が彼らの射撃習慣に比較的符合していると表明しています。特別な訓練を行う必要なく、素早く湾曲変線射撃の要領をつかみます。また射撃精度の面から言うと、パノラミックサイトシステムの見え方は非常に理想的であり、広州白雲空港特別警察が射撃場で実弾射撃を行った中で、25mにおいて初弾が即9点ゾーンに命中、続けて全弾射撃し、最低でも7点を下回りませんでした。射撃精度はすでに警察用の射撃要求を完全に満足させています。

(頑住吉注:4ページ目の画像のキャプションです。上から、「伝統的『コーナー銃』は主にビデオカメラと液晶モニターを使って照準を行う」 「自由変線照準システムは射手の射撃習慣にさらに配慮し、液晶モニターではなくスコープを使って照準を行う」)

自由変線射撃システムの特徴

記:貴社のこの製品はその他のコーナー銃と比較して、どのような突出した特徴を備えているのか、簡単に説明していただけますか?

遊:第1に、プラットフォームの配置範囲が広く、現在我々が展示しているのは主に92式拳銃ですが、実は簡単な調整を経て、さらにQSW06式5.8mm消音拳銃、国外のCZ75系列、グロック、ベレッタ等の拳銃が使用できます。

第2に、湾曲安定コントロール能力を備え、180度の範囲内で任意の角度の自由変線射撃ができ、プラットフォームの安定性は不変に保持され、したがって射撃精度が有効に保証されます。

第3に、光学可変倍率サイトの他に、タクティカルライト、赤外線レーザー照準器、夜視スコープ、撮影/画像表示伝送一体化機構等の照準および情報伝送設備が装着でき、夜間作戦が実現できるだけでなく、多角度の水平、垂直といったターゲット視察とビデオ画像無線伝送も実現できます。つまり作戦進行と同時に射撃プラットフォームから視察された情報を直接後方の指揮所に伝送できるということでもあり、指揮員が前線の真実の情況を理解して戦術指揮を行うのに便利です。この他、我々はイスラエルのコーナー銃のようにビデオカメラと液晶モニターを選択して装備することもでき、一部の特殊作戦状況下での照準に関する必要を満足させることができます。

第4に、システムは安全で信頼性が高く、環境適応性が高く、氷点下40〜50度の低温下でも正常に機能できます。スコープを除き、他の構造部品はメンテナンスフリーを実現でき、ユーザーは自分で修理を行え、小部品の交換コストも低いです。

(頑住吉注:5ページ目の画像のキャプションです。 「自由変線照準射撃システムは非常に便利に分解して各ユニットの状態にでき、小型トランクの中に入れられる」 「対テロ演習中に自由変線照準射撃システムを使用する特別警察。窓の中の障害のある空間に照準射撃を行っている」)

将来はロングアームの自由変線システムに発展

記:現在自由変線射撃システムはやはり主に拳銃を使用しています。将来はこの技術をさらに一歩ロングアームに応用することは考えられるでしょうか?

遊:目下自由変線射撃システムに使用しているのは拳銃を射撃プラットフォームとするものですが、我々は当然将来アサルトライフルのようなロングアームに応用させていくことも考えています。これには我々の現在のシステムにいくつかの調整と改変を加える必要があります。例えば回転運動する射撃プラットフォームに、ふさわしい改変設計を進め、もってロングアームのさらに長いバレルに適応させること、その他に回転角度コントロール機構、トリガー連動コントロール機構等にもふさわしい改造を行うことです。技術面から言ってこれは全く可能なことです。これも我々の次なる段階における技術発展の1つの目標です。

記:あなたが我々のインタビューを受けてくださったことに大いに感謝します。

システムの指標

銃器回転角度の範囲:180度。プラスマイナス90度

銃器回転速度:毎秒90度

連動撃発トリガープル:3.8kg以下

スコープ回転角度之範囲:180度。プラスマイナス90度

システム重量:3.85kg

パノラミックサイト

倍率:1〜4倍

視野:4〜16度

出瞳直径:5〜9mm

出瞳距離:70〜76mm


(頑住吉注:「出瞳直径」「出瞳距離」の意味について中国朋友が説明してくれました。

「出瞳直径」とは、映像が望遠鏡を通ってその後方に形成される光斑の直径のことで、望遠鏡の重要な指標の1つであり、望遠鏡が達成できる像の光度を示します。一般的に言うと出瞳直径が大きいほど人の目に見える像の光度は高くなります。ただし、もし出瞳直径が人の目の瞳孔の実際の直径を超えると、実際には意味がなくなります。「出瞳距離」は望遠鏡のもう1つの重要なパラメーターで、視野全体がはっきり見える状況下で目がレンズから離れる最も遠い距離です。もし出瞳距離が短すぎると、目をレンズにごく近付けなければならず、それでやっと視野全体を見ることができることになり、これでは目は非常に疲れます。一方もし出瞳距離が長すぎてレンズのカバーが短すぎると、見るときに黒い影が出やすくなります。)


 円筒形のバーチカルフォアグリップのような「回転グリップ」を回すとそれに連動してピストルの向きが自由に変化し、プリズムで光を屈折させてスコープで狙い続けられるというわけです。

 これまで多くの中国製銃器の説明を読んできましたが、今回はその中で一番感心しました。コンセプトは「コーナーショット」からいただいているものの、明確にそれを上回る独自のアイデアが盛り込まれた驚くべき新兵器です。この自由にピストルの射線が変えられるシステムに、実際上どれだけの実用価値があるのかは分かりません。現実的には固定角度で充分、あるいは人間の能力が追い付かず、ほとんど有利にならないという可能性もあるでしょうが、それでもこのアイデアはたいしたものだと思います。

 スコープで用が足りるなら何もわざわざ液晶モニターを使うことはないでしょうし、文中には出てきませんが、バレル軸線とストックがほぼ完全に一直線上になっているのも優れたデザインであると思われ、「コーナーショット」もCS/LW9もこうはなっていません。コーナー銃の場合、こうしたデザインでももちろん真後ろに反動が来るわけではなく横に押されるような形になりますが、真横に押されるのと、さらにそれにマズルがひねり上げられるような力が加わるのとではコントロールしやすさが異なると思われます。

 前回の記事で、リコイルショックを柔らかに吸収してやらないと作動不良が起きるという記述にやや疑問を感じましたが、この製品ではそうした機構なしで問題なしとされており、やはりそんな必要は必ずしもなかったのではないかと思われます。

 この製品は左右方向に自由にピストルの向きが変えられるもので、上下に変化させたいときは保持の仕方で調整するしかないわけですが、コストがうんと高くなってもいいなら胃カメラの先端のように自由に動かすことも可能でしょう。そうなると照準はやはりモニターによるしかなくなるでしょうが。それ以上の進化があるとしたら自走式のロボットと組み合わせる方向になっていくんでしょうか。

















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