JS 7.62mmスナイパーライフル

 しばらく前に中国の軍事雑誌に掲載されたJS 12.7mmスナイパーライフルの主任設計者インタビュー記事の内容を紹介しましたが、今回は同時期に開発されたJS 7.62mmスナイパーライフルの主任設計者インタビュー記事の内容を紹介します。

http://military.china.com/zh_cn/critical/25/20051015/12749686.html

 なお、このページには画像が少ないので、例によってD-Boy氏のページも参照してください。

http://www.gun-world.net/china/sr/js762/js762.htm


国産新型JS 7.62mmスナイパーライフルを特別取材

国産新型JS 7.62mmスナイパーライフルの主任設計士である鄒義洪に特別取材

近年国際的にテロリズムの活動が日増しに猛威をふるい、世界中で対テロリズム闘争がひっきりなしに起こっている。各国の対テロ戦例の中で、スナイパーライフルの打撃能力と抑止能力は誰の目にも明らかである。このため各国は積極的に各種形式のスナイパーライフルを開発している。

2003年初め、我が国の建設集団軍品研究所は軍隊、武装警察および公安部門の要求に基づき、スナイパーライフルの開発作業を開始した。当時2つのスナイパーライフルプロジェクトが同時に研究されていた。1つは大口径のJS 12.7mmスナイパーライフルであり、この主要な戦術任務は対スナイパー攻撃および敵の重要な装備や物資器材の破壊である。もう1つが中口径のJS 7.62mmスナイパーライフルであり、この主要な戦術任務は800m以内の生体目標の排除である。鄒義洪工程師はJS 7.62mmスナイパーライフルの主任設計士を務めた。この銃は正式プロジェクトとしての立ち上げから試作銃の開発成功まで、たった8ヶ月の時間しか要しなかった。以下このスナイパーライフルに迫ってみよう。

記者:まずJS 7.62mmスナイパーライフルの全体構造について説明してください。

鄒義洪:JS 7.62mmスナイパーライフルの全体構造は隙なく整っています。バイポッドはアルミ合金製フォアストックのアーム状の前端にネジを使って固定されており、後方に折りたたむことができます。レシーバー左側上方には可動式のエジェクターがあり、グリップ上方にあるのはセーフティです。ストック、グリップ、機関部の台座部分は一体のアルミ合金製で、ロアレシーバーの役割も果たします。ストック上にはボルトの後退を制限する突起が設けられており、この突起を押し倒せばすぐにレシーバーからボルトが取り出せます。JS 7.62mmスナイパーライフルには3〜9倍の可変倍率スコープが装備され、機械式サイトは設置されていません。

記者:JS 7.62mmスナイパーライフルは53式7.62mm普通弾薬(頑住吉注:7.62mmx54R)を採用しています。ここから思い至るのは、我が国の部隊が現在装備している56式サブマシンガン(頑住吉注:AK47のコピー)や分隊用軽機関銃、および81式自動小銃や軽機関銃等が全て採用しているのは56式小銃弾薬(頑住吉注:7.62mmx39)だということです。弾薬の選択上主に考慮されたのはどんな要素であるのかを教えてください。53式普通弾薬は56式小銃弾薬と比べてどんなメリットがあるのですか?

鄒義洪:まず、53式7.62mm普通弾薬は56式小銃弾薬と比べて射程が長く、威力が大です。53式7.62mm普通弾薬は53式歩騎銃(頑住吉注:モシン・ナガンのコピー)の他に、53式軽機関銃(頑住吉注:デクチャレフのコピー)、重機関銃(頑住吉注:ゴリューノフのコピー)、58式車載機関銃、67式重機関銃等にも使用されています。このため53式機関銃弾薬とも呼ばれます。この弾薬の弾頭重量は9.35〜9.75g、装薬量は3.0g、初速は820〜835m/sに達し、生体目標の殺傷および軽装甲目標の貫徹に使用されます。56式小銃弾薬の弾頭重量は7.75〜8.05g、装薬量は1.6g、初速は710〜726m/sで、56式および81式小銃系列に使用され、生体目標の殺傷に使用されます。この他、この2種の弾薬の射撃精度は近距離においてはほぼ同じですが、遠距離においては53式7.62mm普通弾薬の射撃精度の方が56式小銃弾薬より良好です。このため我々はJS 7.62mmスナイパーライフルに53式7.62mm普通弾薬を使用したのです。

記者:JS 7.62mmスナイパーライフルの射撃精度を保証するため、銃全体の構造設計上どのような作業をしましたか?

鄒義洪:良好な射撃精度はまさにスナイパーライフルの「生命」であり、その存在価値でもあります。射撃精度を高めるというこの問題をめぐって、我々は多くの作業を行いました。

この銃は非自動方式、フルロッキングを採用しています。これらは作動する部品の数を減らし、また作動する部品の動きの射撃精度に対する影響を減らします。

バレルには弾道銃(頑住吉注:部品数を最小にした弾薬の命中精度測定用の銃)のバレルの製造技術を採用し、精度が高く、公差は小さくなっています。バレルの剛性は射撃精度に対して直接影響します。設計時、バレルの最小肉厚を6mmより上とし、使用中にバレルが変形しにくくしました。当然バレルの肉厚を増やすことは銃全体の重量増加をもたらしますが、これは精度を向上させるためであり、重量増加も引き合います。

JS 7.62mmスナイパーライフルのアルミ合金製フォアストックにはアーム形式を採用し、バイポッドはフォアストックの前端に固定されています。バレル上にアクセサリーが増加されることが避けられ、命中精度が高められています。これは88式スナイパーライフルの設計を見てのことです。88式スナイパーライフルのフォアストック前端はバレル上の付属品に固定され、バイポッドも直接バレルにかぶせられています。射撃時、バレルは火薬ガスの圧力下で膨張しますが、このような付加物はバレルの正常な変形を阻害し、射撃精度に影響するのです。

この他、88式スナイパーライフルのスコープマウントベースの下方にあるレシーバーはアーム形式で、ぶつけると容易に変形し、またスコープマウントベースが比較的短く、改めての装着後の定位置が不正確になりやすいのです。実際使用中、スコープを装着し直した後には、しょっちゅう1発目がグループから離れて着弾する現象が起こります。85式スナイパーライフルのスコープマウントベースは側面から持ちあがる形式で、距離が比較的長く、装着時の非常に小さい誤差がスコープの比較的大きな偏差をもたらします。JS 7.62mmスナイパーライフルでは新しい設計を行いました。そのコッキングハンドルは機関部の後方位置に設置し、スコープマウントベース下方のレシーバーを一体としました。レシーバーはコッキングハンドルの誘導用切り抜きによってアーム形式に分割されず、レシーバーの剛性が保証され、レシーバーが容易に変形しないようになっています。スコープには燕尾槽鎖緊方式を採用し、スコープマウントベースの前方定位に依拠し、装着操作が便利です。このスコープの鎖緊方式は国際的に通用しているピカティニーレール装着方式と比較して同様のメリットを備えています。ピカティニーレールが採用しているのは後端定位であり、射撃時にガタが出にくく、リコイルショックの大きい銃に特に適していますが、装着操作は不便だからです。

(頑住吉注:内容の不明確な部分もありますが補足説明します。まず、



88式のマウントベースが乗っているレシーバーの部分はこのように後方に伸びたアーム状で後端が固定されていないので上下にガタが出やすい、一方、



JS 7.62mmスナイパーライフルのスコープマウントベースが乗っているレシーバーの部分は後方も下部と一体になっておりガタが出にくい、ということでしょう。

「燕尾槽」を検索するとこんな図が出てきました。



この銃のスコープマウントベースはこんなレールにスライドさせて装着し、固定できるので、ネジで締めるピカティニーレール方式よりも着脱しやすい、ということのようです。ただ、この銃が「前方定位」でピカティニーレールが「後方定位」であるという意味はちょっと分かりません)

試験を経て、JS 7.62mmスナイパーライフルの射撃精度は88式5.8mmスナイパーライフルより優れており、国際的な専用スナイパーライフルのレベルに達しています。

記者:現代の小火器にはより多くの人間工学的設計理念の注入、射手の射撃時の快適度の向上が求められています。読者にJS 7.62mmスナイパーライフルには人間工学的方面にどんな特色があるのか紹介してください。


鄒義洪:ストック部分は競技銃の設計に基づいています。バットプレートとチークピースの調節座はそれぞれ2本の固定ネジでストック上に固定されます。バットプレートは前後、上下に調節できます。チークピースは左右、上下だけでなく、さらにチークピースの軸をめぐって回転し、またチークピースの支持ネジに沿っても回転し、チークピースを右側に回すことすらでき、左利き射手にとって大いに便利になっています。

マズルには円筒形の高性能銃口制退器を採用し、後座エネルギーの大部分を打ち消すことができます。バットプレートには非常に厚いゴム材料が採用され、比較的良好な緩衝効果があります。この銃の口径は7.62mmなので、それ自身の後座エネルギーは大きくなく、加えて銃口制退器とゴム製バットプレートの作用があるので、射手に感じられるリコイルショックは非常に小さいものになります。

フォアストックの形状は三角形で、保持は堅固で力が入ります。射手は自身の射撃習慣に基づいてトリガープルの大小を調節できます。コッキングハンドルは比較的長く、閉鎖動作には比較的省力化されています。欠点は引っかかりやすいことで、我々はその短縮化を考慮しているところです。

記者:JS 7.62mmスナイパーライフルのマガジン容量は5発ですが、設計時にどんな考慮をされたのですか?

鄒義洪:この銃の使用に関して我々が強調するのは目標への初弾命中であり、5発ですでに十分です。国外の高精度スナイパーライフルのマガジン容量は基本的にすべて5発であり、単発手動装填を採用しているものすらあります。もしマガジン容量を増大すればマガジンの寸法が大きくなり、携行時に容易に引っかかることになります。

記者:JS 7.62mmスナイパーライフルのフォアストックとレシーバー、およびストックとレシーバーの連結方式には全て中空のピンが採用されています。何故ソリッドのピンを採用しなかったのでしょうか。この種の構造にはどんな長所短所があるのでしょうか。

鄒義洪:中空のピンによる連結はinterference fit に属します(頑住吉注:正確な意味は分かりませんが、本来少々小さい穴に弾性を持った太いピンを押し込むようなフィットのことらしいです)。弾性があるだけでなく堅固にもなります。こうしたピンは抜いた後に繰り返し使うことができ、連結面が比較的大きな部品に適します。ソリッドのピンは抜きやすいですが、改めて使用することはできません。これは連結面が比較的小さな部品に適します。

JS 7.62mmスナイパーライフルのスペック

口径:7.62mm

全体重量:5.5kg

全長:1030mm

銃身長:600mm

初速:790m/s
マガジン容量:5発

有効射程:800m

使用弾薬:53式7.62mm普通弾薬


 JS 12.7mmスナイパーライフルや88式スナイパーライフルと比べ、オーソドックスであまり面白みはないですが、それらにあった突っ込みどころがない、隙のない設計と言えそうです。

 この銃を設計した鄒義洪という人は高級工程師という称号を持つエンジニアで、一方JS 12.7mmスナイパーライフルの設計者は「王太平同志」と表現されていました。私は王太平氏の設計にちょっと疑問を呈しましたが、一方その謙虚さのあらわれた説明に好感も持ちました。鄒義洪氏は肩書がある分、隙のない設計をしますが、この銃の欠点をほとんど認めていません。王太平氏はJS 12.7mmスナイパーライフルの命中精度が国際水準よりやや劣ることを率直に認め、原因としてバレルの製造技術の未熟さ、マッチ弾薬の不存在などを挙げています。鄒義洪氏はこの銃の命中精度に関し、「国際的な専用スナイパーライフルのレベルに達しています」と言いきっています(ただし具体的な数値等は示していません)。7.62mmのバレルより12.7mmのバレルを高精度に製造することが特別に難しいとは思えませんし、JS 7.62mmスナイパーライフルに使用されているのも機関銃用の「普通弾薬」ですから、これが事実ならば王太平氏の言い訳は根拠を失い、設計のまずさからくる命中精度の低さを他に転嫁したことになってしまいますが、本当にそうなんでしょうか。私はこの銃の命中精度が本当に国際水準に達しているのかに、やや疑念を抱いています。

 なお、「円筒形の高性能銃口制退器」とインタビュー記事にはありますが、画像は全て台形のような形状で、D-Boy氏のページでは「初期型の銃口制退器」と説明されています。その後JS 12.7mmスナイパーライフルに似た円筒形のものに変更されたのではないでしょうか。










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