ヨーロッパバイソンに対する批判

 非常に脅威であるとの見方も多い巨大ホバークラフトですが、中国国内から懐疑的な意見が出ています。

http://military.china.com/important/11132797/20130621/17903253.html


国防大学の専門家「野牛」を見る 単に自らの強大さに頼るのは無意味

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「『HHL New York』号貨物船が中国の導入した初の『ヨーロッパバイソン』を搭載し珠江川を航行している。中国国防省はすでにこの野牛がすでに引き渡されていることを事実確認しているが、実際に見るのには具体的に配備されることが必要である。」)

最近中国はウクライナによって建造された第1隻目の958型ホバークラフト上陸艇を受領した。この「ヨーロッパバイソン」級と呼ばれる上陸艇は世界最大のホバークラフト上陸艇であり、現在歩兵を岸に運んで上陸させ、また掃海作戦を行う比較的理想的なツールでもある。何故なら速度が速いからで、この上陸艇は海岸線を素早くかすめて過ぎる「旋風」に例えられる。

1隻の「ヨーロッパバイソン」強化された1個大隊を搭載可能

「ヨーロッパバイソン」級ホバークラフト上陸艇の主要なメリットは速度が速いことである。ホバークラフト上陸艇の作動原理は船上の大出力ファンを利用して空気を船底に圧入し、船底と水面(あるいは地面)との間に空気のクッションを形成し、船体の全部あるいは大部分を水面(あるいは地面)から離して航行する、というものである。

「ヨーロッパバイソン」級ホバークラフト上陸艇は5台の総出力6万馬力のガスタービンエンジンを使用し、最大航行速度は63ノットに達し得、巡航速度も55ノットに達する。もし戦闘搭載の状況下でも、依然30〜40ノット、甚だしきに至ってはより高い航行速度も可能である。

このように速い速度はこの上陸艇に上陸作戦の中で艦から岸までの輸送時間を大幅に短縮させることができ、上陸部隊が敵岸の防衛火力に暴露する危険を減少させ、輸送効率も向上させ、後続の第2の部隊の支援までの時間を大いに短縮する。

「ヨーロッパバイソン」級ホバークラフト上陸艇は強大な輸送力を持つ。実際の搭載重量は150トンに達し得、1回の搭載で3両のメインバトルタンク、あるいは10両の装甲兵員輸送車、あるいは8両の歩兵戦闘車を搭載できる。

また、艇上には4つの上陸船室が設けられ、同時に140名の海兵隊員を搭載して任務が執行できる。もし上陸作戦人員だけを搭載するなら、上陸作戦装備輸送船室に取り外し可能な座席を装備し、360名の完全武装の海兵隊員を輸送できる。こうなれば、1隻の「ヨーロッパバイソン」級ホバークラフト上陸艇は強化された1個大隊の兵力を搭載できることになり、総人数は500人近くなる。

普通のホバークラフト上陸艇に比べ、「ヨーロッパバイソン」にはさらに比較的完備された武器装備システムが装備されている。2セットの22本バレルMS-227「ファイアー」型140mm非制御誘導ロケット弾発射装置が搭載され、標準の制式ロケット弾が発射でき、かつ3回の再装填を実施して持続的火力が保持できる。艇上には2基のAKー630型6本バレル自動火砲が装備され、発射速度は毎分5,000発に達し得、超低空対艦ミサイルの迎撃、軽装甲の沿海目標や浮遊する機雷などへの対応に用いられる。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「画像はロシア海軍の『ニーウェイースクイ海軍上将』号大型上陸艦。この種の伝統的排水型上陸戦闘艦艇は全世界の17%の海岸に上陸できるだけだが、『ヨーロッパバイソン』やLCACなどのホバークラフト上陸艇は78%以上の海岸において上陸作戦が実施できる。」です。)

「ヨーロッパバイソン」はさらに4セットの「ニードル-1M」あるいは「アロー-3M」近距離対空ミサイルシステムを搭載し、比較的遠距離で空中の目標に対し攻撃が行える。また、この艇は完備された通信ナビゲーション、電子対抗設備を持ち、独立した作戦能力を持つ。

提示しておくに値するのは、「ヨーロッパバイソン」は全天候作戦能力と良好な戦場適応性を持ち、水上を航行できるだけでなく水深の浅い区域、暗礁が密に分布する海域、雪、砂漠、池沼、湿地上を航行でき、排水型艦船のように座礁あるいは暗礁への接触を心配する必要がない、ということだ。またその他の上陸車両のように池沼や泥沼が戦術機動を妨げることを心配する必要もなく、その戦術機動性はその他の水陸両用上陸プラットフォームにはるかに勝る。

統計によれば、「ヨーロッパバイソン」級ホバークラフト上陸艇は全世界の78%の海岸で上陸作戦が実施できるが、排水型上陸艦艇は全世界の17%の海岸に上陸できるに過ぎない。

搭載能力が強く、火力が猛烈で、島嶼の攻撃に適する他、「ヨーロッパバイソン」級ホバークラフト上陸艇はさらに掃海にも用いることができる。ホバークラフトは大部分水面から離れて運行できるため、水中の障害物は一般にこれに対し作用を持たない、あるいは作用が比較的小さく、水中の爆発物も容易にこれによって起爆することはなく、このためこの艇は掃海プラットフォームとして掃海具を搭載して掃海が行える。

また、航行速度が速いため、「ヨーロッパバイソン」ホバークラフト上陸艇はさらにその障害乗り越え能力が強いという優勢を利用し、障害物破壊分隊を障害物のある区域で自由に輸送でき、非常に大きく障害物破壊の効率を高めた。

米軍のLCACホバークラフト艇に比べ、一長一短がある

「ヨーロッパバイソン」級ホバークラフト上陸艇の性能は非常に優越したものだが、作戦応用という角度から世界のその他の同類ホバークラフト上陸艇と比較すると、それらにはそれぞれの長所がある。

アメリカは世界でホバークラフト製造数が最も多い国であり、現在全世界に配備されるホバークラフト上陸艇は100隻近い。例えば著名なLCACホバークラフト上陸艇の製造のレベルは世界の各種ホバークラフト上陸艇の中で先んじた地位にある。

LCACホバークラフト上陸艇は1980年代に研究開発が開始され、「ヨーロッパバイソン」に比べLCACはすっと洗練され、LCACは全長20m余り、幅10m余り、排水量は100トン未満だが、「バイソン」の排水量は550トンである。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「中国が導入した第1隻目の『ヨーロッパバイソン』の試験時の画像。画像からは『ヨーロッパバイソン』が直接上陸を行う作戦能力をも持つことがはっきり感じられる。」です。)

LCACは搭載量もより小さく、1両のメインバトルタンクと24名の兵士、あるいは150名の兵士しか搭載できない。LCACの最高速度は40ノットで、航続力は「ヨーロッパバイソン」と同等である。作戦能力上、LCACは2挺の機関銃しか装備しておらず、装甲防護もより弱く、これらは全て「ヨーロッパバイソン」とは比べられない。

LCACの各項目のパラメータはいずれも「ヨーロッパバイソン」に及ばないが、未来の作戦という角度から見ると、LCACの使用にはより柔軟性があり、かつ用途が広い。

LCACは中型ホバークラフト上陸艇であり、上陸作戦を必要とする時、米軍はドック上陸艦を使ってこれを搭載し、海、空軍の援護の下で、一路作戦海域まで航行し、敵の岸上の火砲の射程外(一般に20海里〜30海里)で停止する。その後、ドックを大きく開き、LCACがさらに戦車と兵士を搭載して艦から岸までの距離を突進し、上陸作戦を実施する。

この過程で、敵軍の火力の制圧には艦隊と空軍があたり、LCAC自身の機関銃は単に近距離防御のみに用いられる。LCACは実際には米軍の海空の多兵種連合上陸戦の1ピースであり、専門に近海から砂浜への輸送任務を担当する。その他のピースの任務はその他の部隊と兵器によって完成される。これに比べ「ヨーロッパバイソン」はむしろ「孤軍奮闘」の猛将のようであり、独自に敵の火砲を冒して部隊を砂浜に送り届ける必要がある。

もしLCACと「ヨーロッパバイソン」が一騎打ちしたら、当然「ヨーロッパバイソン」が勝利を獲得する。だが未来の作戦は多軍種の一体化作戦であり、それぞれの種類のプラットフォームは全て連合作戦の1ピースなのである。単に自身の性能の強大さだけに頼ることにはあまり意味はなく、重要なのは体系に融合される作戦能力なのである。

「ヨーロッパバイソン」はサイズが大きすぎるため上陸艦内に収まらず、自らの燃料備蓄に頼るしかない。このため活動範囲が近海に制限される。一方アメリカのLCACに代表される中型ホバークラフト上陸艇は体積がより小さく、大型上陸艦艇に搭載してグローバルな配備ができる。現在LCACホバークラフト上陸艇はすでに数十隻就役し、米軍のLCACを搭載できる上陸艦には「ワスプ」級および「タラワ」級強襲揚陸艦、「アンカレッジ」級および「Whidbey Island」級ドック上陸艦、そして「オースティン」級ドック輸送艦などがある。

また、「ヨーロッパバイソン」ホバークラフト上陸艇のエンジン出力は非常に大きいため、燃料消費量は相当に驚異的で、このため航続距離は限られ、その深い海、遠洋の中での風や波に抵抗する能力も比較的弱い。また、この種の上陸艇の生存能力は限られる。この艇には軽装甲があり、搭載人員が弾丸や砲弾の破片で傷害を受けないよう保護できるが、大、中口径砲弾の直接の命中は依然致命的である。特に3つの直径5.5mの4枚羽推進プロペラと、エアークッション状態下での長さ57.3m、幅25.6mのゴム製スカートがひとたび破壊されれば、機動能力は深刻に低下し、甚だしきに至っては麻痺する。

(頑住吉注:これより4ページ目。画像のキャプションは「単純に各項目のパラメータを比較すれば、LCACは『ヨーロッパバイソン』に全て及ばないし、増してや『ヨーロッパバイソン』の強大な突撃火力はない。だが『ヨーロッパバイソン』のサイズは大きすぎ、上陸艦に搭載できず、自らの動力システムと燃料備蓄に頼って航行するしかなく、活動範囲は近海に制限される。またLCACのように軽々と戦区をまたいでの戦略機動作戦を実現することはできない。」です。)

「ヨーロッパバイソン」を操縦してロシアの特殊部隊が首尾よく救出任務を完成させる

作戦用途が非常に広いため、ホバークラフト上陸艇はとっくに戦火の試練を経ている。その最初の応用はベトナム戦争だった。ベトナム戦争中、米軍は東南アジアの河川などが網の目状に密に分布するジャングル地形に非常に苦悩し、特にベトナム軍の浸透に対しては防ごうにも防ぎきれなかった。

1966年、米軍はホバークラフト上陸艇の投入を開始し、それにメコン川地域のパトロール任務を執行させた。この全長12mの「怪物」は川、池沼、ジャングルの中を「飛ぶように駆け」、搭乗する兵士は12.7mm口径機関銃を用いてレーダーに発見されたベトナム人員を掃射した。したがってベトナム軍には非常に大きな人員の死傷がもたらされ、ホバークラフト上陸艇の作用は陸上の車両や小型船をはるかに超えた。

湾岸戦争のある行動の中で、米軍は17隻のLCACを使って24時間以内に7,000名の海兵隊員と数千トンの物資を1箇所の地形の複雑な砂浜に投入し、戦場全体を有力に支援した。ソマリアでも米軍はLCACを使用し、かつ素晴らしい作戦効果を収めた。

1993年9月、グルジア政府とアブハジア地方武装勢力との間に軍事衝突が勃発し、アブハジア地方軍はグルジア政府軍を打ち負かしただけでなく、自ら前線に臨んだグルジア国家元首シュワルナゼをアブハジアの首府スフミのある孤立したビルに包囲した。

現地の情勢を緩和させるため、当時ロシア大統領の任にあったエリツィンはシュワルナゼの逃亡を助けることを決定した。ロシア黒海艦隊は1隻の「ヨーロッパバイソン」級ホバークラフト上陸艇を派遣し、海兵隊一個中隊を搭載した後、艇は猛スピードでアブハジアに向かい、強引な「平和維持」行動の執行に派遣された。

最終的にこの「ヨーロッパバイソン」は反対派の火力による攻撃を突破し、成功裏にロシア特殊部隊と協力しシュワルナゼを救出した。この時の任務はロシア特殊部隊作戦史に美しい一筆を残した。(筆者グループ:国防大学)

(頑住吉注:5ページ目)6月17日、米日「黎明閃電戦」合同演習に参加した日本のLCACホバークラフト上陸艇は「下島」号上陸輸送艦から発進し、上陸作業の演習を執行した。(頑住吉注:検索しましたが「下島」の本当の名は分かりません。知識ある人ならすぐ分かるんでしょうけど)

(頑住吉注:6ページ目)6月17日、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴ近海のサンクレメンテ島で、海上自衛隊のLCACは作戦車両を輸送して上陸させた。

(頑住吉注:7ページ目)6月17日のLCACの上陸作戦は、実際には一種の体系化された作戦思想の体現だった。

(頑住吉注:8ページ目)正面から軍用車両のLCACからの発進を見る。LCACは実際にはアメリカ軍の海空の多兵種の合同上陸戦の中の1ピースであって、専門に近海から砂浜への輸送任務を担当する。「ヨーロッパバイソン」の位置付けとは非常に大きな差異がある。


 ちょっと誤解していた点があります。「最大航行速度は63ノットに達し得、巡航速度も55ノットに達する。もし戦闘搭載の状況下でも、依然30〜40ノット、甚だしきに至ってはより高い航行速度も可能である。」という記述がありましたが、今まで前半部分しかなかったので満載状態で時速約117kmという猛スピードで航行できるのかと思っていましたが、満載状態では相当に速度が落ちるようです。沿海域戦闘艦「フリーダム」は45ノット出るそうなので、下手をするとそれ以下かもしれないということですね。また、一般に船は大きい方が航続距離が長い傾向になるので、この巨大ホバークラフトは航続距離も通常のホバークラフトより長いのかと思っていたら同等でしかないようです。

 批判の内容はよく分かりますが、尖閣や南シナ海の島嶼に対し大きな脅威であるのは間違いないはずです。上陸艦に搭載することはできなくともミサイル快速艇や航空機で「ヨーロッパバイソン」を援護することは当然可能なはずですし。

 最後に挙げられていた「ヨーロッパバイソン」の実戦のエピソードは意外でした。こんな印象的で大きな件が何故「1992年スフミの戦い」に取り上げられなかったのか不思議です。












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