2.11.8 ハンマースプリングおよびリバウンドハンマー

 いくつかの初期セルフローディングピストル、例えばブローニングによって設計されたコルト製ポケットピストル(1903 頑住吉注: http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Colt_1903_Pocket_hammer_38ACP.jpg )やワルサーモデル4(頑住吉注: http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Walther_Modell_4_ex.jpg )では板バネがハンマースプリングとして役立った。これに対し今日ではたいていコイルスプリングが使われている。S&WのKおよびNリボルバー群やロシアのマカロフピストルがハンマースプリングとして使っているように、板バネは決して旧式化したわけでも、信頼性を欠く構造要素でもない。図2.11.30は板バネのピストルへの使用の原理を示している。板バネ(3)は適した方法でフレーム(1)と結合されている。板バネはそのフリーな端部の後方がハンマー(2)のカムに接している。板バネは弛緩した状態でもハンマーを閉鎖機構端部に向け押している(a)。(b)ではコック部品がハンマーをコックされた位置に保持している。コック時、カムはスプリングをフレームに向け押している。スプリングとハンマーの間の摩擦を軽減するため、カム上には時として(例えばコルトピストルのように)小さなローラーがある。

 

図2.11.30

 図2.11.31ではハンマースプリングとしてのコイルスプリングの使用が表現されている。スプリング(2)はスプリングバー(3)によって誘導され、このスプリングバーの下部は円筒形のインサート(5)の穴ぐり内に位置している。このインサートはフレーム(1)内で回転可能である。スプリング下部はこのインサートにあてがわれている。上部ではスプリングの力は穴円盤(4)および2つのプレスされた張り出しを通じてスプリングバーに伝達される。スプリングバーの上側は両サイドがフラットにされ、半円筒形の切り欠きで終わっている。この切り欠きはハンマー(6)に挿入されたピンによって受けられている。コック時スプリングバーは下に押され、この際インサートからより大きく突き出す。コックされた状態ではハンマーは普通通りコック部品(7)によって保持される(b)。スプリングバーはスプリングの範囲では直線状であり、これによりそのフォームは構造上の必要に適合している。スプリング下部を特別なインサートにあてがう代わりに、しばしば適合して形成されたマガジンキャッチが受けとして役立っている。



図2.11.31

 ファイアリングピンはファイアリングピン収納部より長いので、ハンマーダウン時いっぱいに前に押され、この結果チャンバーに達する。そのような銃は、装填され、かつハンマーがファイアリングピンにあてがわれているときに安全でない。他方ではこのような長いファイアリングピンは非常に確実な点火を提供する。全ハンマーエネルギーが点火に使われるからである。こうしたピストルを安全なものにするためには、リバウンドハンマーと、リバウンド設備によってハンマーがその最前部位置からいくらか引っ込められた後でファイアリングピンまたはハンマーをブロックするオートマチックセーフティが装備される。

 図2.11.32はリバウンド構造の原理を示している。(a)ではハンマーはコックされ、受け(3)に支持されたスプリングはスプリングバーに、ハンマーをレットオフ後左に回転させるモーメントを生じさせている。ハンマーおよびスプリングバーはリバウンドレストeおよびfを装備している。

 回転運動の際、ハンマーのリバウンドレストはスプリングバーに当たる(b)。この位置はハンマーの本来のレスト位置である。左または右に行けばスプリングバーによってハンマーに動こうとする力が生じるからである。だがその大きな運動エネルギーによって、ハンマーはこのレスト位置を越えてさらに左へとスイングし、ファイアリングピンを打撃する。閉鎖機構が固定されている場合ハンマーはこの後再びその安定する位置(b)へと戻る。リバウンドレストの位置は、レストを通じてハンマーに作用する力Kが、ハンマー回転ポイントをはさんで、レットオフ時ハンマーを加速する力とは違う側を走るよう選択されねばならない(d)。

   


 ハンマースプリングに板バネを使用しているオートは現在ではマカロフとコピーおよび亜流製品群くらいでしょう。板バネはテンションの調節が難しく、折れてしまうと完全に機能を失うという点が欠点とされる場合がありますが、S&Wリボルバーもマカロフも実用性が高く評価されており、実際にはデザイン次第で問題ないものにできるようです。ちなみにS&WリボルバーもコルトSAAも板バネとハンマーが直接接しておらず、摩擦を軽減するための部品(前者はレバー、後者はローラー)が間に入っています。板バネとハンマーが直接接しているデザインでは摩擦によって動きが悪くなりやすいわけですが、すでに触れられたようにマカロフは非常になめらかで均一なトリガープルを持っているとされ、これもデザイン次第のようです。

 ハンマーのリバウンドについてはこの説明で充分でしょう。要するにハンマーが前進しきるためにはメインスプリングを少し圧縮しなければならないようになっているわけです。



 これはアイバージョンソン社のThomas F. Bowkerが1908年に取得したUSパテントナンバー898717の図面の一部です。ハンマーはハンマーダウン直前で安定するようになっており、倒れきるためには板バネを少し曲げる必要があるようになっています。要するに上の図と同じ原理ですが、パーツがハンマーと板バネという2点のみというところがすごいところです。資料に具体的なサイズが書かれていないんですが、.22ショートですらパワフルすぎて痛かった、たぶんかつて作られた中で最小の5連発DAリボルバーだろうとされ、極端に小さかったようです。この銃はアイバージョンソンが「IJプチソリッドフレームダブルアクション」として発売しましたが、あまり成功しなかったようで、生産数は300から600挺とされています。