ハミルトン モデル7

 以前コラムでも紹介したことがありますが、「STANDARD CATALOG OF FIREARMS」という本があります。全世界のハンドガン、ライフル、ショットガンなど、アメリカのコレクターが普通に売買できる可能性があるものならたいてい載っているカタログです。とにかく扱う範囲が広いので、ある機種に関する情報量は少ないですし、写真も比較的小さいのですが、それでも昔の電話帳くらいのボリュームがあります。この本にちょっと気になる銃が載っていました。
 私は「珍銃を作るヒト」と見られることが多いですが、本人としてはあまりそういう自覚はないです。「珍しいこと」そのものに魅力を感じることはあまりなく、たとえば試作のみに終わって実際に使用されなかった銃は原則として作らないと決めています。単に珍しいだけでなく、「銃器発達史上特筆すべき特徴を持つ銃」や、「もっと有名でもいいはずなのに何故かほとんど知られていない銃」に強い魅力を感じるわけです。前者はジャイロジェットや「ザ・プロテクター」、後者はアイバージョンソンやイーサン・アレンのペッパーボックスなどですね。ここで紹介するのも後者の一例です。ごく短いのでこの銃に関する説明を訳して示します。


ハミルトン ライフル カンパニー 
 1898年、カレンス・J・ハミルトンと息子により、ミシガン州プリマスに設立された。安価な.22口径ライフルを生産していたが、1945年に生産活動は終了した。1900年から1911年までに100万挺以上のライフルを生産した。
 膨大な量のハミルトンライフルが販売されたにもかかわらず、これらのほとんどはハードな使用によって失われた。よいコンディションで現存するハミルトンライフルはきわめて珍しい。あまりに例が少ないので実勢価格は示せない。
モデル7
 ハミルトン社初の製品。この銃のパーツは全て鋳造とプレスで作られていた。仕上げはニッケルメッキだった。使用弾薬は.22ショート、バレルは8インチで真鍮パイプ製だった。ローディングのため、バレルはピボット結合になっていた。ストックは金属製のスケルトンだった。生産は1901年に終了し、合計44,000挺が生産された。


ちなみにこんな形の銃です。

 

 なぜこのメーカー最初の製品が「モデル7」なのかは説明がありません。ストックがスケルトンもなにも、全体がスケルトンなわけです。説明が簡単すぎ、写真も不鮮明で小さいので詳細はよくわかりませんが、かなりユニークな銃だったようです。上下二連のように見えますが、たぶん上のパイプは銃の構造にすぎず、下のパイプがバレルでしょう。ピンを抜くとバレルが抜け、ここに.22ショート弾薬を差しこみ、銃に戻して発射する、という感じではないでしょうか。たぶんむちゃくちゃに安価なもので、.22ショートしか使えない、バレルが真鍮製といったことから、アメリカの感覚ではトイガンに近い感覚の製品だったんでしょう。
 この銃は「生産数10以下と推定」なんてものまで載っている「FLAYDERMAN’S GUIDE」(「ザ・プロテクター」の「実銃について」参照」)にも載っていませんし、手元にある「シングルショットライフル」のみの本にも載っていません。ネットで検索してもメーカーは出てきますがこの銃の情報は全然出てきません。まあこの銃の情報はなくてよかったかもしれません。あったらきっと作るでしょうが、絶対売れないでしょうからね。

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