中国の専門家、「ズムウォルト」を批判

 「専門家、DDG-1000神話を打破 『多くの問題』を挙げて批判」と重複部分も多いですが、より詳しい記事です。

http://military.china.com/news/568/20131115/18150556.html


中国の専門家、米軍のDDG-1000を評する:SF戦闘艦は見た目は良いが役に立たない

少し前、外形がすこぶるSF的なアメリカの「ズムウォルト」号DDG-1000駆逐艦が正式に進水した。この新型水上戦闘艦は画期的な意義を持っている。あるアメリカの将校は、その「超強力なステルス性能、巨大なソナーシステム、猛烈な打撃能力、比較的低い人員配備とその他の先進性能は未来の戦闘艦の新基準、新たな模範、発展方向である」とする。

米軍は湾岸戦争後未来の海上戦争の必要性を根拠に「21世紀駆逐艦」l計画を制定し、32隻の「ズムウォルト」級駆逐艦の建造を決定した。だがこの新たな戦闘艦には少なからぬ弱点もあり(たとえば建造価格が非常に高く、予算上のコストが50億アメリカドルに達する、波風に抗する能力が劣る)、米軍は最終的に建造数を3隻に縮減することを迫られた。

DDG-1000に対し、米軍は高い期待を寄せている。アメリカ海軍作戦部長のジョナサン ゲリナート上将は公然と、「ズムウォルト」号はアメリカの戦略の新たな重点に符合し、米軍の太平洋地域における実力を強化し、アジアの不断に増強される経済的影響力と中国の勃興に対応できる、としている。

DDG-1000の5大長所が崇敬の念を集める

DDG-1000は復古とSF性を一体に集めた多機能戦闘艦であり、「SF戦闘艦」と呼ばれる。その空前に先進的な技術はこの艦に以下の突出したメリットを持たせる。

1つ目は全艦のステルス能力が強いこと。現役の戦闘艦の多くは局部的ステルス技術を採用しているが、DDG-1000は全ステルス技術を採用している。その外観設計、塗装材料、武器設備、電磁設備、甚だしきに至っては動力設備さえステルスとつながりを持っている。

これと同時に、この艦は多項目のステルス技術を採用しており、現在全世界で最も静かな駆逐艦であり、「見えない戦闘艦」と呼ばれる。艦体には新型の舷側が内側に傾いた斜角式構造が採用され、その側壁は内側に向かって傾斜し、特に艦首はちょうど100年前の装甲戦列艦あるいは装甲巡洋艦のように内側に向かって傾斜し、レーダー波をある重要性とは無関係の方向に集中して反射することができる。

同時に、艦体は喫水面より上がどんどん狭くなり、エッジがはっきりした高さの低い外形を形成し、平滑かつ扁平で、しかもレーダー波吸収材料が塗装され、レーダー反射断面積を有効に縮小することができる。全複合炭素繊維材料の上層建築も内側に向かって同じ角度で傾斜し、斧削式平滑艦橋の外形は見たところ簡単だが、非常に「クール」で、まるで宇宙を遊弋する未来の宇宙戦闘艦のようで、下向きに反射する雑電波を避けている。

全艦の電子設備の多くは平板アンテナを採用し、上層建築の側面と一体化し、アンテナを隠蔽したことに相当する。艦上の火砲の砲塔にもステルス設計がなされ、砲身さえしまっておくことができる。全艦のレーダー断面積は数百トンの漁船サイズしかなく、現役駆逐艦の1/50である。

DDG-1000はさらにウエーブピアシング式船体構造を採用し、波浪が艦の側面に当たった時、ゴム製の受動式空気冷却器が連動して全艦の熱量を下げ、この軍艦をさらに赤外線によって偵察され難くしている。この軍艦のガスタービン、電動機などの騒音が大きな設備はゴムの減震フロート上に装備され、もって機械騒音を下げている。DDG-1000の騒音レベルはロサンゼルス級原潜の後期型に相当し、約110デシベルであるとされ、過去の水上艦艇が全て潜水艦に比べ騒がしく、潜水艦は常に遠距離からまず水上戦闘艦の音を聞き取れる、との概念をひっくり返した。

2つ目は火力打撃能力が強いこと。DDG-1000は強大な対地、対艦攻撃および防空、対ミサイル能力を持つ。艦首の2門のAGS「先進艦砲システム」は155mm火砲を採用し、射程が長い、精度が高い、火力が猛烈であるなどの突出した特徴を持つ。対地攻撃のGPS制御誘導射程延長弾薬を発射すると、射程は160kmに達し得、一方普通の艦砲の射程は40kmしかない。AGSの持続発射速度は毎分12発で、半時間で即600発の砲弾が発射できる。進水前の何度もの試験の中で、この艦砲の射撃精度は常にm級に到達し、要求された20〜30mの精度よりさらに理想的だった。

両舷側内に位置する20基の全く新しい4連装MK-57垂直発射システムは全部で80の発射ユニットを持ち、対地攻撃ミサイルおよび「シースパロー」など多種の対空、対ミサイルミサイルが発射できる。DDG-1000はより大きな直径の海上基地防空対ミサイル迎撃ミサイルを配備でき、より多くのミサイルを収容でき、その防空対ミサイル能力は疑いなく「イージス」上の現有のスタンダードミサイルより強い。

3つ目は対空探知計測能力が強いこと。DDG-1000はSPY-3アクティブフェイズドアレイレーダーを採用し、3つの固定アレイ面が設けられ、360度の探知計測が行え、単一のアレイ面の寸法は2.7mx2.3mに達し、全部で3,000余りの発射・受信ユニットが装備されている。現在最も先進的な艦載「アーレイ・バーク」のX周波数帯アクティブフェイズドアレイレーダーに比べ、SPY-3の発射・受信ユニットの数は3倍で、単一のユニットの出力はより強く、多目標能力がより強い。人々はその最大探知計測距離を300km前後と見積もっており、この距離は「アーレイ・バーク」の2倍である。

(頑住吉注:これより2ページ目)

このように、「ズムウォルト」号の敵機を発見する距離は敵機のレーダーがこの艦を発見する距離に比べさらに遠いかもしれず、敵に先んじて発見、敵に先んじて攻撃、ができ、これはまさに現有の「イージス」戦闘艦が成し得ないことである。しかも、SPY-3レーダー1基でもう探知計測、追跡、照射の全ての任務が完成でき、艦上の各型防空・対ミサイルミサイルを誘導して作戦が実施できる。

4つ目は水中作戦能力が強いこと。DDG-1000の水中探知計測システムには球状艦首内のSQS-60中周波数およびSQS-61高周波数アクティブ/パッシブソナー1基、ブロードバンドアクティブ/パッシブ〜ソナーLBVDS1基、SQR-20低周波数パッシブ曳航アレイソナーが含まれる。これは全世界で初の深、浅水対潜探知計測、掃海探知計測を併せ配慮したソナーシステムである。ある人は、その掃海能力は現有の駆逐艦に比べ10倍に向上していると見積もっている。

5つ目は電力供給能力が強いこと。DDG-1000の動力システムは完全電動設計、大規模電力供給方式を採用している。艦上には全部で2台の最大出力36兆ワットのガスタービンと2台の出力4.5兆ワットの補助ガスタービンがあり、現役の駆逐艦に比べ数倍大きい電力供給容量がある。この種の完全電気動力は艦艇の最大出力の需要を満足させることができ、駆逐艦を30ノットまでの最大航行速度に押し動かすことができ、かつ将来装備されるレールガン、レーザーなど指向性エネルギー武器のために充分な電力の提供を保証することができる。

また、この艦はさらに自動化の程度が高い、安全性が高いという突出した特徴がある。先進的なコンピュータと自動制御システムを大量に運用しているため、その艦員の数はたった140人で、現役駆逐艦の艦員の数の半分である。

DDG-1000の3大欠陥は軽視できない

DDG-1000駆逐艦は「革命的」、「エポックメイキング」のオーラをまとい、「ステルスのシルバーブレット」に似た「完璧な装備」と呼ばれるが、この艦にも自分では言いにくい隠れたリスクがあり、(頑住吉注:スラングみたいなのが使われており意味不明)。批判者はこの艦の欠点は非常に突出していると考えている。

まず価格が非常に高い。余りにも多くの先進技術を集成したため、この艦の建造コストは高騰し、その他のあらゆるアメリカ海軍の駆逐艦を「秒殺」するに足りる。

データは、この駆逐艦の単価が約38億アメリカドルであることをはっきり示している。もし研究開発費用を加えたら、3隻の艦では全部で200億アメリカドルかかることになる。全使用期間の使用費用を算入しなくても、1隻あたりの戦闘艦の建造価格は約70億アメリカドルである! 米軍の現有の同類艦の建造価格は約12億〜18億アメリカドルであり、こうした金を使えば完全に1隻の原子力空母あるいは2隻の原潜が建造できる。

このため、この艦は今までアメリカ海軍が建造した最も高価な駆逐艦である。生産規模拡大と共にコストはやや低下するが、あまり大きく低下することはない。まさにこうだから、この艦は研究開発過程であやうく議会から「カット」されるところだった。後に、多方面のゲームと妥協の下に、最終的にやっと3隻が留保されたのである。

次に波風に抗する能力が劣る。伝統的駆逐艦の舷側の外側に張り出した設計方式に比べ、この艦の舷側が内側に傾斜した設計方式の最大の欠点は一部の安定性を犠牲にしてステルス性能を代わりに手入れたことで、このため航行時容易に艦体の不安定がもたらされる。一部の技術者は、「ズムウォルト」級駆逐艦が大波の試練を受け入れるのは非常に難いかもしれないと考えている。

最後に体積が非常に大きい。DDG-1000駆逐艦は今まで全世界で最大の駆逐艦であり、全長183m、全幅24.6m、喫水8.4m、排水量14,560トン、飛行甲板の面積は1,000平方mを超える。体積が大きすぎるため、造船工場は止むを得ず4,000万アメリカドルを費やして高さ32mの建築物を建造し、もって各部分を非常に大きな艦体上に組み込むのに便とした。

DDG-1000に上ると、最も目を引くのは2基のAGS先進艦砲である。それらは艦体の前部全体を占拠している。ステルス性を過度に追求したため、この艦は艦体内部のスペースを犠牲にし、このことは人員の居住空間を圧縮しただけでなく、さらに武器をレイアウトする甲板の面積を縮小し、その垂直発射システムは80ユニットしかなく、「アーレイ・バーク」級駆逐艦の96ユニットに比べずっと少なく、増してやタイコンデロガ級巡洋艦の128ユニットより少ない。より多くのミサイルを配備するため、止むを得ずミサイルを艦の舷側に置き、このことはごく容易に対艦ミサイルによって命中され、壊滅的な誘爆をもたらす。

また、体積が空前に巨大な戦闘艦は、将来の海水による腐蝕を防ぐ問題もどんどん突出したものになっていく。

DDG-1000はアメリカの未来の水上戦闘艦の核心たる艦種ではない

現在、世界各地にホットなポイントが頻繁に出現し、アメリカ空母戦闘群は再三削減され、忙しくてどうしようもなくなる可能性が高い。このことは直ちにDDG-1000に腕の振るい場所を提供している。

「ズムウォルト」号は「まず生存、さらに打撃」の戦略意図を満足させられるだけでなく、海岸からの距離100海里にならない所で、艦砲を用いて密集した打撃が行え、このことは空母上の艦載機の爆撃に比べずっと安上がりである。しかも飛行員が捕虜になることを心配する必要がない。

このため、米軍はこの艦が全天候で対地目標に対する正確打撃と全方位発砲ができ、敵を恐れさせる戦争マシーンであると考える。独立した前線のプレゼンスと威嚇を提供できるだけでなく、さらに海上、陸上が連合、合同した部隊の重要な組成部分になる。この艦はアメリカがアジア太平洋地域を震撼させる「切り札」であるだけでなく、さらに中国の「対介入」戦略を破壊し、アメリカの太平洋地域における主導的地位を固めることができる。

現在「ズムウォルト」号の配備範囲に関しては正確な情報はないが、人々は普遍的に、「ズムウォルト」号およびその他2隻の姉妹艦は全てアメリカ西海岸のサンディエゴ基地に配備され、太平洋地域の安全の維持保護、特に中国海軍戦力の活動状況の監視を担当する可能性が高いと考えている。

否定できないのは、DDG-1000駆逐艦が中国沿海の主要都市を威嚇でき、中国が必ず経る水道をコントロールでき、さらに不意をついて中国近海に接近し、中国沿海の重要目標(飛行場、軍港、ミサイル基地などを含む)に対し電撃的攻撃を行うことができ、このことは中国に対し深刻な脅威を構成する、ということだ。

しかし、DDG-1000の性能上の特徴から見て、我々はこの艦が充分に適した作戦区域を探し出すのは非常に難しいと考える。もし空母の援護を離脱したら、DDG-1000は高い脅威の海域で事を行うのは難しい。もしこのような非常に高価で複雑な戦闘艦を低い脅威の海域に置いてちょっと補助的任務をさせるというのはそれはそれで役不足が目立つ。何故ならそのような任務は沿海域戦闘艦でもう足りるからである。

このため、DDG-1000は中等の脅威海域で多種の汎用任務を執行するのに比較的適している。だがこの種の任務は現在のアメリカ海軍にとっては決して特別に有用ではないと言える。何故ならこの種の状況下では駆逐艦は実際上空母艦隊の一部分であり、ならばDDG-1000が搭載する対地火力は明らかに余計であり、その防空対ミサイル能力も「イージス」戦闘艦に比べ重大な突破性の優勢はないからである。

また、たった3隻の建造計画はDDG-1000がアメリカの未来の水上戦闘艦の核心艦種になることが不可能なことを表明しており、DDG-1000は一種の試験艦でしかあり得ない。たった3隻の試験艦が中国海軍に対しあまり大きな脅威を構成することはあり得ない(国防大学 梁波 李偉)


 「レーダー断面積は数百トンの漁船サイズしかなく、現役駆逐艦の1/50である」、「騒音レベルはロサンゼルス級原潜の後期型に相当し、約110デシベル」といった具体的記述はこれまで出てきていませんでした。航空機と違い艦船のステルス設計はさほどの効果をもたらさないという説もありましたが、この記述が本当なら非常に高い効果があることになります。前にも書きましたが、非常に高い開発費は今後建造されると思われるこの艦の一部の技術を応用した廉価版駆逐艦にも応用でき、決して無駄にはならないと思われますし、たとえたった3隻でも切り札となる高性能艦を持つことにも意味はあるでしょう。













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