H&K USPエリート
「DWJ」2004年4月号にH&K USPの6インチターゲットモデル「エリート」のレポートが掲載されていました。
H&K USPエリート:多才な拡張性デザイン
シュヴァーベンのスポーツカノン
公用銃をベースにしたスポーツモデルは良いものになりうる。しかし必然的に良いものになるわけではない。多くの機種はコスト上の制約を受けながら、作動確実性重視で仕上げられた銃の命中精度を高めようとしている。H&Kは今、USPベースのモデル「エリート」をこのレースに投入した。
シュヴァーベンのハイテク銃器メーカーH&Kほど世界のマーケットに多彩なバリエーションのハンドガンを供給している他メーカーはほとんどない。新開発の機関銃MG4に始まり、P2000サブコンパクトまで存在することに表されるように、H&Kはハンドガンからロングアームまであらゆるジャンルで製造を行っている。G11、OICW(Objective
Individual Combat Weapon)、そしてミステリアスなP11の開発でも近年専門世界にセンセーションを巻き起こしている(頑住吉注:正直「そうか?」と首を傾げましたが、「採用」や「実戦における戦果」ではなく「開発」で、「一般世界に」ではなく「専門世界に」、ということですからまあ嘘ではないですね)。
H&Kはミリタリー領域では新開発のXM8アサルトライフルおよびコルトM4カービンの改良モデルであるH&K M4によって巨大な世界マーケットでのシェアの獲得を目指し、アメリカの銃器界が切望する最新の大胆な試みをやってのけた。ジョージア州Columbusにおける新たな生産拠点の設立は、コルト、スタームルガー、S&Wおよび他の多くの伝統的メーカーの故国におけるH&Kの大胆な企業経営を表している。その高度に近代化された生産工程、設計及び製造手法はずっと以前からライバルたちより鼻の差でリードしている。
民間向けの生産
ドイツでも2003年8月に銃器分野での競争に動きがあった。常に民間マーケットをなおざりにしていると評されてきたH&Kが、「Heckler
& Koch Jagd und Sport GmbH」(頑住吉注:「H&Kハンティング アンド スポーツ有限責任会社」。ちなみにドイツでは「有限責任会社」は小規模な会社に限られず、特殊な形態でもありません)を設立することでこの分野に特別な力を振り向けてきたのだ。Suhlの銃器メーカーMerkelの買収もこれと関連しているとみなされる。このメーカーは新製品の、短く、バレルが交換でき、2.9kgと軽量なハンティング用連発銃KR1の製造を委託されている。専門教育を受けたライフル製造工のOlaf
SauerとDirk Holzknecht法学博士は、長年の同僚であったが、H&K JS(頑住吉注:前出のハンティング、スポーツ分野の関連会社)において共にこの分野の有望な未来を見据える経験豊かな業務管理者となった。スポーツシューターもこれに興味を持ってよい。
ドイツのシューターが精密射撃に参入するならば、今H&Kの6インチバレルは最高の選択のひとつである。ただしこの銃は5インチの姉妹銃と、言うに値する命中精度上の差はほとんどない。1インチの差はサイト関連で1つの、あるいはもっと多くの点で総合結果を助ける可能性がある。最も成功したハンドガン設計を狙ってH&Kが(現在では6インチモデルと共にプルーフされている)USPシリーズを投入したのは1990年代のことである。ドイツ連邦国防軍だけでなく、国内の、そして他国の多数の警察部隊がこの「made
in Germany」ピストルを導入している。H&Kは全部で11のいろいろなバリエーションを供給している。ショートバレルのUSPコンパクトからここで紹介しているUSPエリートまでである。各バリエーションはそれぞれの投入分野に適合している。
スポーツ銃
過去を一瞥しただけで、H&Kがスポーツ銃を最高の優先順位に置いてきたわけではまったくないということにすぐに気がつく。最高の優先順位に置かれてきたのは、ファーストクラスの加工が行われた公用ピストル、例えば伝説的なP7であり、そしてP9(S)である。後者は最終的に140mmポリゴンバレル、バレルウェイト、トリガーストップ、スポーツ用グリップ、アジャスタブルサイトを装備したスポーツ型のP9(S)スポーツとなり、ライバルに対抗する製品として提供された。
P9Sの導入から約15年後、H&Kは1990年代の始めに開発されたUSPシリーズをベースにしたスポーツ型も提供することを決めた。それはすでに存在するフレームを使用し、単に6インチ用スライドをかぶせたものに近かった。
一般的にいくつかのメーカーは、必ずしも簡単ではない6インチバリエーションを、複雑な製造工程、高いコストに直面しながら提供している。それはしばしばすでに存在する5インチシステムの、技術的にコストのかかる改造モデルである。それは例えばSIG P210であり、「ターゲット チャンピオン」として知られる人気の高いS&WのM5906であり、あるいは多数のコルトのバリエーションである。これらは命中精度向上にとりつかれたドイツのスポーツシューターが6インチモデルに熱中していることに刺激されて各メーカーが作ったものである。こうした事情でそうこうするうちにこの種の銃の数は多くなっている。だが、そこに要求される機能もまた数多いのである。
H&Kは以前からこの分野に発明や技術的ノウハウで影響を与えてきた。H&K製品は世界的に高い名声を得、とりわけその卓越した命中精度と特殊な環境下でも高い信頼性を持つことが選ばれる理由になっている。
H&K USPエリート
マーケットにおけるライバルたちと同じように、エリートも高い開発コストを削減するため、プルーフされた公用ピストルの構造をベースにして作られた。すでに1997年に導入されているUSP「マッチ&カスタム」および1998年に初めて紹介されたIPSC用「エキスパート」が存在しているが、エリートは「真の」6インチ銃としてスポーツ領域におけるH&Kプログラムを拡大させた。
USPの設計はよりモダンなコンポーネントとプルーフされたコンポーネントの銃構造内における共生であり、実用銃携帯者もスポーツシューターも等しく利用でき、数え切れない日常の使用によってプルーフされている。エリートでも使用者は伝統的スポーツピストル弾薬である9mmパラベラムと高い精度で知られる.45ACPが使用できる。これは全てのスポーツシューターの要求を満足させるのに充分である。DSBであれ、BDSであれ、BDMPであれ(頑住吉注:マッチ関係の知識がなくて知らないんですが、これはドイツで行われている競技の種類または団体名だと思います)。スポーツ上での使用幅は保証されている(頑住吉注:ストレートな書き方ではありませんが、ここでは他の弾薬仕様、ことに.40S&W仕様がないことはスポーツ領域では問題ではないということが言いたいようです)。
フレーム
金属で強化され、射出成型、ハイキャパシティデザインで作られたプラスチックフレームは、グリップフィーリングがよく、丸々とした握りごこちで、そして高い火力を提供している。これらの特徴は現在STI、SVI、パラオーディナンス、S&Wおよびその他多数とならんでハンドガン構造のトレンドである。構造様式に制約された.45ACPモデルは除き、マガジン交換の助けにもなるマグウェルももちろん装備されている。他メーカーでは高価なオプションとして得られるだけだが、エリートはスタンダードな装備である。グリップの寸法の幅31mm、前後53mmはライバルのSTI、SVIとぴったり同じであり、17度のグリップ角度もほぼ一致している。S&W「ターゲット チャンピオン」もグリップ前後が50mmであり、重要な違いが生じるほど短くはない。フレームの重量はマガジンなしで約300gであり、これをもってUSPは極端な「飛ぶような重量」のカテゴリーにランクされる。これを是正する場合はBacknangのライフルメーカーRalf
Merkle製360gの追加ウェイトをさらに装着するだけでよい。これは「Inbusschlussel」(頑住吉注:この単語は辞書に載っていません。「schlussel」の「u」はウムラウトで、「キー」といった意味です。この単語は後でまた出てきます)を使って簡単にフレームのマウントレールに装着でき、これによりUSPは機能を損なう事なく1360gという堂々たる全体重量に昇級する。フルロードしたマガジン(空虚重量80g)を加えればすぐさまライバルの重量クラスになる。
トップシューターのMarc Kleserは重量の軽いエリートを愛用している。
多くのシューターは反動とマズルジャンプを抑制する目的で自分の銃にどっさり追加ウェイトを載せる。だが、このような重い銃を競技全体を通じてコントロールし続ける身体能力を持つシューターはわずかしか存在しない。こうしたシューターはしばしばわずかな射撃ののちにもう息が上がっている。そしてこれにより次の射撃に向けた「静止した」(頑住吉注:括弧つきなのは人間の手で保持する以上厳密な静止はありえないからでしょう)ホールドが困難になる。これを埋め合わせるには相応の筋力トレーニングを行うしかない。私はエリートを使っているので静的な種目においてより小さなホールド力しか必要とせず、そしてより良好にドローイングとサイティングに自己を集中することができる。いくらか強い反動は私にとって邪魔にはならず、次の発射のための充分な時間があり、そして私はこれにより私の力を整然としたターゲット把握とトリガーの引きに使うことができるのである。動的な種目では、私はMerkleのバレルウェイトを銃の下部に単にネジ止めすることで、全ての機能においてオールスチールピストルと同じ効果を狙う。加えてMerkleのバレルウェイトにより銃はスポーティな外観になる。追加のデコック機能があるアンビのセーフティは1911系シューターがこの銃にスイッチする際にも問題がない。
トリガーガード下に設置された人間工学的なアンビのマガジンキャッチは、例えば親指が短すぎるとき、射撃する手の人差し指によっても簡単に、そして確実に機能する。極度に幅広いトリガーは組み込みのトリガーストップを持ち、「Inbusschlussel」によってオーバーランがないように細かく調節できる(頑住吉注:前出およびこの記述により、「Inbusschlussel」とは六角レンチのことではないかと推測しています)。ここにもシリアスなスポーツシューターのための配慮があり、ある種の「ネジ安全装置」によって勝手な移動が妨げられている。
バレルおよびスライド
ドイツほど多くの6インチ銃が射撃されている場所は世界のどこにもない。伝説的ガンスミスのLes
Baerは、ドイツの輸入業者の希望に応じ、彼の成功した1911系シリーズに6インチ用スライドシステムを装備した。S&Wは6インチ銃が最後に入手可能だったときからすでに10年以上が経過するにまかせていた。※この部分ちょっと訂正しました。この項の末尾参照。
(ドイツでは)1インチバレルが長いことによって莫大な金が投下されることがすでに分かっている。H&Kもこのトレンドが分かっており、USPシリーズに真のロングスライドモデルを加え、これをもって従来の5インチシステムにロングバレルとバレルウェイトを装備した同社の従来のマッチガンの役割を引き継いだのである。
高品質なマッチガンにとって本質的に重要なのは、ときとしてバレルのフィットよりスライド・フレーム間のフィットであるとされる。1990年代を通じ、スライドに圧力を加えたり、フレームのスライド誘導レールにハードクロームメッキしたり、あるいはコストの高い「Accurail
Methode」(頑住吉注:詳しい説明がないのでこの具体的な内容は不明です。)を使うなど、精度を生む(あるいは強制する)最もタイトなスライドのフィッティングのための多くの試みが行われた。そうこうするうちに、人々はスライド・フレーム間のタイトなフィッティングという基準はむしろなおざりにしてもかまないものだと気づいた。その上ここをルーズにすれば信頼できる作動性という長所さえ同時に得られるのである。
H&Kの技術者はUSPシリーズの開発において、過去多くの銃でも選ばれてきたブローニング式閉鎖システムを選んだ。153mmのポリゴンバレルは32CRMOV1210スチール製で、ライフリングは250mmで一回転のピッチである。バレルは高精度な研磨加工によってスライドにフィッティングされている。このため、グリーンのゴムリングがバレルに追加されてよりタイトなフィッティングが意図されているが、これは本当は過剰な措置である。マズルまわりを観察すると、「Briley」ブッシングが使われており、ライバル製品では例えばコルトナショナルマッチのブッシング、あるいは他のコストの高い設計が見られるが、これはよりクレバーでコストの安い代替措置によって替えられている(頑住吉注:「Briley」は辞書に載っておらず、これも具体的にどういう構造を指すのか不明です。ただ、少なくとも外観上ブッシングが別パーツになっている様子はありません。)
スポーツシューターにとってさらなる重要な点は、照準長212mmでスライドに組み込まれたイタリア製LPA-SRTリアサイトである。リアサイトの切り込みは3mmで、一方ターゲットフロントサイトは幅3.5mm、高さ6.5mmとなっている。リアサイトの調節範囲は上下左右共に充分である。極端に削り出しを多用した角張ったスライドは、620gの重量をもって信頼性の高い作動を保証している。弱い弾薬も消化する。だが高い信頼性が期待できるのは、弱い弾薬用に作動が低い領域にセッティングしてあるせいではない。
実用テスト
エリートのように軽い銃はしばしば撃ちにくいものである。重量の欠けた分が当然反動、マズルジャンプにネガティブに作用するからである。だが、エリートはここでも非凡な扱いやすさを示した。これはツーピースのリコイルスプリングシステムが過剰なエネルギーを比較的温和にくいとめるからであり、速射でも確実に狙って撃つことができる。トリガープルは1720gと計測された。トリガーの作動はパーフェクトであり、改造を加える必要はない。
命中精度テストはこの場合ランサムレストによって行うのは問題外である。周知のようにプラスチックフレームははさみこむことによる固定に不向きだからである。フロント・リアサイトを使うという方法にもかかわらず、堂々たるグルーピングが得られた。全てを総合して、エリートに重い弾を使用し、技量の高い射手が使用すればベストの結果が示されると言うことができる。
この銃の唯一の欠点は評判のよいメーカーによる有用な競技用ホルスターが入手しにくいということである。これをカバーするには創造性と技術的適応能力を高めるしかない。
DWJの結論
USPシリーズの高い互換性は、実用銃からマッチ向きのスポーツバージョンへの素早い改造を可能にする。この銃は本来のスポーツ銃としての使用だけでなく、実用銃とすることも考えられる。というのは、短いバージョンのUSPユーザーは、苦労せずに6インチカテゴリーに装備強化できるのである。H&Kのエリートは、命中精度熱狂者にとって、興味深い、そしてコストの安い代替案である。そしてこの銃は高価なカスタム品との比較を恐れる必要がないのである。スポーツシューターはモダンな外観に包まれたこの銃によって高い機能レベルと命中精度を手にする。その内容と1234ユーロという比較的低い価格によって願いがかなえられないスポーツシューターはいない。
H&K USA公式サイトにおける紹介ページはここです。
http://www.hk-usa.com/pages/civilian/handguns/uspelite.html
なかなかカッコいいですね。ちなみに文中に制約上.45ACPモデルにはマグウェルは付属しないとありますが、このことから公式の画像は.45ACPであると分かります。ドイツでは9mmパラベラムによるマッチが主流で、DWJも9mmモデルを中心に紹介していますが、アメリカでは.45ACPの方がずっとポピュラーだからでしょう。
H&Kはあまり民間用の銃に力を入れてきませんでしたが、ドイツ国内でハンティング、スポーツ銃専門の関連会社を設立し、この分野にも本格的に力を入れてきた、ということです。ドイツ製品は高価というイメージがあり、また実際にP7などは非常に高価だったわけですが、このUSPエリートはプラスチックフレームなどによりコストが下がり、マッチガンとしては安い1234ユーロという価格になっています。「Visier」の「GSR」に関する記事では、GSRは1741ユーロとされ、ガバメント系のマッチガンはこれと同程度から本格的なものになればさらにずっと高いと書かれていました。ちなみに以前ここで紹介した記事の中にこのエリートが登場したことがあるのを覚えているでしょうか。「ノリンコ製品のグレードは?」の項目で登場した「Visier」による「Cz75スポーツU」関連の記事においてです。「スポーツU」と競うことになると思われる銃の一つとして「エリート」が挙げられていました。「スポーツU」は人件費の安いチェコとドイツの合作ということで1179ユーロでしたが、「エリート」はこれとさほど大差ない安さです。
「エリート」9mmモデルの命中精度等に関するデータを示します。
弾丸重量・メーカー | 初速(m/s) | 命中精度(mm) |
95gr Magtech JSP TC | 418 | 28 |
115gr Speer GDHP | 361 | 33 |
115gr WIN Clean BEB | 347 | 45 |
124gr Geco VM SX | 358 | 42 |
124gr S&B TFMJ-NT | 353 | 52 |
147gr Precision Delta JHP | 306 | 34 |
147gr WIN FMJ TC | 317 | 37 |
147gr WIN JHP | 323 | 31 |
次に「スポーツU」です。別の雑誌によるテストですから厳密に同じ条件ではないはずですが、レストではなく依託射撃による25mからの結果ですから一応比較は可能でしょう。
弾丸重量・メーカー | 初速(m/s) | 命中精度(mm) |
94gr Magtech TM-KSt | 431 | 45 |
115gr PS Grand VM | 368 | 27 |
123gr Fiocci VM | 361 | 30 |
120gr Lapua CEPP | 360 | 21 |
124gr S&B TM-RK | 339 | 38 |
124gr Geco TM-RK | 381 | 39 |
139gr S&B VM-KSt | 300 | 46 |
158gr IMI VM | 301 | 73 |
次に「Visier」2003年10月号に掲載されていたP210の6インチモデルです。
弾丸重量・メーカー | 初速(m/s) | 命中精度(mm) |
95gr Magtech TC-JHP | 417 | 40 |
115gr Magtech JHP+P | 378 | 19 |
115gr S&B FMJ | 373 | 50 |
115gr S&B JHP | 361 | 33 |
124gr SAR Match FMJ | 348 | 38 |
115gr IMI Ultra FMJ | 380 | 31 |
123gr Rapua FMJ | 334 | 33 |
147gr Magtech FMJ-TC | 318 | 37 |
極端に高価なP210も含め、実際の命中精度に大きな差はないようです。しかも「エリート」ならば競技に合わせて重量を簡単に変更できる、マガジンキャッチが完全にアンビであるなどのメリットもあります。
私は正直最近までH&Kの銃は興味深いけれども妙な部分に凝りすぎたり奇をてらった部分があったりして実用的には疑問なものが多いと思っていたんですが、本来の高い技術はそのままに、オーソドックスな技術を多用している最近の製品は文句のつけようがなく、それどころかXM8やHK M4などを見ると本当に世界最高のメーカーになりつつあるんではないかという気さえします。
今回の記事も何かドイツ人による「鼻高々」な感じが癇に障る部分もあるんでちょっとだけこの銃に関する疑問点も書いてみましょう。一般論として、トリガーからハンマーへの力の伝達が実際に直接的なほどトリガーフィーリングも直接的になる傾向があるように思われます。もっともストレートなフィーリングなのは、コルトSAAのようにトリガーとハンマーが直接コンタクトしており、またDA用の部品など他に介在するものがないパーツ構成の銃です。まあSAAの場合ハンマー自体や動きが大きく重量もあるのでこれが直接命中精度に直結してマッチ向きになるというわけではありませんが、まあそれはまた別の話です。オートで言えば、ガバメントのように「トリガーおよびそれと一体のトリガーバー→シア→ハンマー」という伝達経路の銃が最もストレートなフィーリングになるように思われます。これに対し、DAオートのSAは、「トリガー→トリガーバー→シア→ハンマー」という伝達経路になり、SAのトリガーフィーリングはどうがんばってもガバメント系と同じにはならないのではという気がしています。ちなみにブローニングハイパワーは「トリガー→トリガーレバー→シアレバー→シア→ハンマー」ともうパーツ一つ分経路が長くなり、トリガーフィーリングがさらに迂遠な感じになります。これは実用オートでは問題にならない差ですし、全体のパーツ精度が低いトイガンで比較するからよけいその感じが強くなるというのもあるとは思いますが、理屈上原則的には同じはずで、実銃の評価を読んでも大筋こうなっているように思えます。実際実用銃としては玄人好みで非常に高く評価されているハイパワーですが、マッチガンとしては全然ダメです。私は多くのDA起源のマッチガンがガバメント系に勝てない理由の一つはここにあるんではないかと思っているんですが、いかがなもんでござんしょう。「エリート」の伝達経路も他のDAオートと同じくガバメントよりパーツ1つ分多いですし、トリガーフィーリングでガバメント系と全く互角のものに果たしてできるのかという点に疑問を感じるわけです。
※訂正した部分ですが、最初「S&Wの6インチ銃が最後に入手可能だったときからは、すでに10年以上が経過している。」と訳したんですが、よく考えたらS&Wには「ターゲット チャンピオン」という6インチ銃があるんですから矛盾しています。よく読んだら訂正後のように過去形でした。
S&W公式サイトを見てもどうやらアメリカでは6インチスライドのオートは販売されていないようです。これはたぶん訂正後のように「S&Wは6インチ銃が最後に入手可能だったときからすでに10年以上が経過するにまかせていた。」にもかかわらず、ドイツで6インチスライドのオートが流行しているために特別に製造、販売しており、現在その人気が高い、ということのようです。
「DWJ」の広告にこの銃の広告がありました。
「ターゲット チャンピオン」銃は何年も前からあらゆる競技で先端位置を確保している。この銃はS&Wにより、Wischo(頑住吉注:ドイツにおける販売業者)のために独占的に製造されている。各銃には内容豊かな、高品質の付属品が標準装備される。
S&Wは何十年も前から技術革新、最も綿密な加工、最も高い命中精度で知られている(頑住吉注:直訳では「〜状態である」)
専門使用者はS&Wに相談することを好んで行い、彼らの夢の銃であるS&Wのメリットを指摘している。
「ターゲット チャンピオン」は全ての意味における完璧性を実現している。
S&W 9mmターゲット チャンピオン
口径9mmパラベラム
銃身長6インチ(151mm)
装弾数15+1
シングルアクションスポーツトリガー
調節可能なLPAスポーツサイト
ラバーグリップ
重量1320g
価格2437ユーロ
やはりこの銃はWischoという業者向け限定でS&Wが作っているものらしいです。ちなみに他に5インチバージョンもあります。歯が浮くような宣伝文句は全面的に信用するわけにいきませんが、価格が「エリート」のほぼ倍なのに人気が高いわけですから実力はあるんでしょう。
アメリカで6インチスライドのオートにあまり人気がないのは、本文にもあったように5インチを6インチにしてもさほど命中精度自体は向上しないからだと思われます。5インチの銃に1インチのコンペンセイターをつければ照準長も確保でき、リコイルも抑えやすくなるわけですし。ドイツで何故それほど6インチに人気があるのかは謎ですね。