中国、アメリカのB-2に似たステルス爆撃機の試験飛行に成功?

 最近中国の軍事サイトに、中国がアメリカのB-2に似たステルス爆撃機の試験飛行に成功したことを示す画像が見られるそうです。

http://military.china.com/critical3/27/20120816/17378229.html

 まず1、2枚目の画像を見てください。2枚目の画像には「熱烈祝賀我国『轟十』首飛成功」との表示が見られます(「首飛」は初飛行のことです)。これに関する考察です。


中国は本当にB-2版轟-10の試験飛行を行ったのか?

最近ネットに、アメリカのB-2ステルス爆撃機に似た中国最新型の轟-10(轟-8)が試験飛行に成功との情報が伝わり、画像もある。軍事マニアとして私はひとしきり大興奮したが、ちょっと詳しく考えてみると疑わしく感じた。その画像には明らかにpsの痕跡がある(頑住吉注:「ps」はフォトショップでしょう)。B-2ステルス戦略爆撃機はアメリカのノースロップ社がアメリカ空軍のために研究開発したものである。1979年、アメリカ空軍は戦略上の考慮に基づいて、高空防空突破ステルス戦略爆撃機を研究開発し、ソ連が1990年代に配備する可能性があった防空システムに対処するよう要求した。1981年に原型機の製造が開始され、1989年に原型機が試験飛行を行った。後に計画に修正が加えられ、B-2爆撃機に高、低空防空突破能力を兼ね備えさせ、核および通常爆撃というダブルの重大任務が執行できるようにした。B-2爆撃機に関する投資は巨大なので、またそれに加え作用の誇大宣伝があり、この機が未来の爆撃機の発展方向であり、大国の空軍の印だと考える人がいた。現在アメリカだけがステルス能力を持つ戦略爆撃機を持っており、その他の大国、例えばロシアは計画はあったが種々の原因ゆえに全て着手されなかった。中国は発展中の大国として、実現可能性の研究中である可能性もあるが、すでに試験飛行の段階に達していることはあり得ない。

新兵器の研究開発のためにはまず自分に科学技術的能力および経済的実力があるか否かを見る必要がある。我々の科学技術能力と経済的実力に、アメリカと比べてやはり比較的大きな隔たりがあることは否定できない。たとえ我々におごり高ぶるほどの経済的成就があっても、GDPはやっとアメリカの半分程度であり、1人平均にすればさらに低い。科学に関する投資や軍事費に関する投資はアメリカの1/3にも及ばない。電子工業、機械製造などの産業の隔たりは明らかで、アメリカが行った何らかのものを我々がすぐそれについて行おうとしても不可能である。我々の製造技術はアメリカに及ばず、航空兵器においてアメリカと張り合うのは不可能である。B-2やF-117でも同様で、アメリカは10〜20年ですぐ淘汰し、数百億アメリカドルの金を浪費するかもしれないが、我々の財力はアメリカに及ばず、取捨選択を行うのが必然である。B-2ステルス戦略爆撃機の製造コストは天文学的数字になり、研究開発費を含まない1機の製造コストでも9億アメリカドル近く、研究開発費を含めれば1機当たりのコストは24億を超える。使用、維持メンテナンス費も相当に驚くべきもので、アメリカの国力をもってしても議論が絶えない。増してや他国ならどうか。アメリカがB-2を作ったのはこの機のステルス性が気に入ったからで、この機をソ連進攻の「突破口」(頑住吉注:原文ではドアノッカーリングにあたる石塊を示す語が使われてます)として使用し、ソ連の防空網を突破してソ連の縦深目標を打撃しようとした。実戦はこの機がまだ「突破口」の作用を果たしていないことを証明している。アメリカの数回にわたる戦争の「突破口」はいつも巡航ミサイルがその役割を担当し、安全距離外において巡航ミサイルを使って敵の縦深目標を打撃している。最もよい空中射撃プラットフォームはB-52のような「老いぼれ」で、経済的でもあり実用的でもある。当然これら数回の戦争は、イラクやユーゴスラビア紛争に対応するような「中等烈度」戦争でもあった。もし制空権がなければ、亜音速のB-2は容易に巡航する戦闘機の標的機となり、肉眼で発見され、高射砲で射撃され、ステルスなど無意味に等しくなる。

現在もし中国とアメリカに本当に戦争が勃発したらきっと優勢を占めるのはアメリカであり、アメリカは世界最大の軍事システムを持っている。中国とアメリカの間に発生する戦争は「不対称」戦争で、我々がもし長所を伸ばし短所を改めても勝算はない。何故なら中国にはアメリカの領土に侵入する意図はなく、アメリカ国民には「決死」の戦闘信念がないからである。中国とアメリカの衝突はむしろ意識形態の衝突という面が大きく、意識形態の戦争はもし代償が大きすぎればすぐに終わる。例えば朝鮮戦争である。そして中国のアメリカに大きな代償を払わせる「殺しの道具」はミサイルである。何故なら中国のミサイル技術は最もアメリカに接近しているからである。アメリカがいかに彼らの対ミサイル技術についてほらを吹こうと、矛と盾の衝突のように、矛が石の上でちょっと磨きをかけさえすれば、敵の盾は数層の牛革を加えなければならなくなる。不利なのは永久に盾の側一方である。同様に末端における制御誘導をちょっと変え、軌道をちょっと変えればすぐ対ミサイルサイドに防御を失敗させることになる。ロシアがしょっちゅうアメリカに一蹴り入れることができるのは、ロシアにアメリカと「共倒れ」する核ミサイルがあるからで、「おまえは死んで俺は生きる」段階に至らなければ、「共倒れ」遊戯を遊ぶことはあり得ない。

中国にアメリカの領土を侵略する野心がない以上、当然B-2と同類のステルス爆撃機でアメリカの縦深目標を爆撃する必要はない。中国の現有の国力をもって100機のB-2を持っても、アメリカやロシアのような大国を攻撃することは不可能である。現在中国にとっての最大の圧力は、アメリカの中国に対する介入問題であり、あるいは中国と隣国の問題である。「対介入」は中国軍の現在の切迫した任務であり、もう少しはっきり言えばアメリカ空母戦闘群に打ち勝つ中烈度戦争である。優れた殺しの武器は「東風-21」弾道ミサイルと「長剣」系列の巡航ミサイルである。現在轟-6Kが「長剣」巡航ミサイルの搭載機である。結局のところ轟-6(ツポレフ-16)は60歳近い「老将」であり、空母戦闘群打撃のような重任を達成するのは気持ちはあってもいささか力不足である。最近ネットに、中国がロシアのツポレフ-22M3「バックファイア」中距離戦略爆撃機の生産ラインを導入し、中国で生産されるツポレフ-22M3「バックファイア」中距離戦略爆撃機は轟-10と命名されることになる、との情報が伝わった。ツポレフ-22M3「バックファイア」は戦略核爆撃もできるし、戦術爆撃もできる。特に大威力対艦ミサイルを搭載し、遠距離快速急襲を行い、アメリカ空母艦隊を攻撃することができる。中国は轟-10(ツポレフ-22M3)と轟-6Kをもってハイ・ローミックスを実行し、有効に空母艦隊を打撃し、「空母殺し」と呼ばれ得る。中国がロシア実戦機を導入するのにはリスクが小さい、投資が少ない、装備が早いというメリットがある。中国爆撃機の足が短い、速度が遅い、爆弾搭載量が少ないという歴史を有効に、短時間で解決し、中国海軍を徐々に遠洋海軍にさせることができる。この轟-10(ツポレフ-22M3)存在の可能性は大きいが、一方ありもしないB-2型轟-10の試験飛行の噂に信頼度は毛ほどもなく、ほとんどゼロである。


 というわけで、これも中国のネット上に無数に氾濫するでたらめ情報のようです。まあ冒険を避けてそこそこの水準に抑えた殲-20、高性能戦闘機のエンジン国産化もできない、大型機は不得意で民間用旅客機や輸送機がようやく登場するかしないか、という状況を見れば、とてもB-2に匹敵する機の登場は考えられません。







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