ロシアの護身用無銃身拳銃

 これも国内ではあまり知られていないと思われるロシア製特殊ディフェンスガンに関するページの内容の紹介です。

http://war.163.com/07/0807/15/3LA8E5IJ00011232.html


自衛武器の新鋭 ロシアの「ワスプ」系列無銃身拳銃

(頑住吉注:原ページの最初の画像のキャプションです。「上は「ディフェンダー」、下は「ワスプ」PB-4式無銃身拳銃」)

1996年12月13日、当時のロシア大統領エリツィンがロシア連邦N150-RF号「武器に関する」法令に署名し、この時からロシアの公民が使用する自衛武器はもはや胡椒瓶に限られなくなり、過去の一部において治安機構によって管理コントロールされていた、圧縮気体あるいは火薬燃焼ガスを利用して殺傷性銃弾を発射する武器も、民間で合法的に使用できる範囲内に列せられた。ロシア国内の自衛武器市場はこの時から活発化した。無銃身拳銃はまさにこの追い風に乗って増殖してきたのである‥‥。

ロシアの初期の無銃身武器である「ウダール」(あるいは「打撃者」と意訳)が最初に市場に登場した時は、直ちにユーザーの賛同を得ることはなく、業績は平凡だった。1998年になって、4発があらかじめ装填され、18mmx45弾薬を発射する「ワスプ」PB-4式無銃身拳銃が市場に登場した後で、この種の武器はやっと真に強烈な反響を引き起こした。知っておく必要があるのは、無銃身であっても「ワスプ」が発射するのが正真正銘の銃弾であるからこそ無銃身拳銃と呼ばれるのであって、催涙ガスを噴射する「ウダール」は無銃身発射機と呼べるに留まるということだ。

「ワスプ」PB-4式および後に出現した一連の「ワスプ」無銃身拳銃はいずれもロシアの著名な防御製品製造メーカー、すなわち実用化学科学応用研究所由来である。この研究所はかつてロシア軍やその他の権力機構の武装組織のために非常に多くの製品を提供した。まさに高い技術的実力と長年積み重ねた経験を持っていて初めて、世界初の成功した無銃身拳銃を作れたとも言える。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「PB-4-1ML式無銃身拳銃」)

「無銃身」の奥義は弾薬にあり

いわゆる「無銃身拳銃」はその名の通り銃身のない拳銃である。ただこの「無銃身」というのは銃本体構造に独立した銃身がないというだけのことで、実際には薬莢によって銃身の部分的機能が引き受けられている。

「ワスプ」PB-4式無銃身拳銃が発射するのは18mmx45弾薬である。弾薬の種類には殺傷弾薬、閃光爆震弾薬、信号弾薬、照明弾薬が含まれる。それらの構造は比較的特殊である。すなわちその薬莢は、普通の薬莢のように薬筒を兼ね、かつプライマーが配置されているのではなく、薬莢内に単独の薬筒が装備され、薬筒の尾部にプライマーが装備されている。弾頭の尾部は薬筒内に封入され、このような構造は弾頭の起動圧力を増大させることができ、さらには起動速度が向上する。薬莢が弾頭のために提供する加速のための長さは非常に限られており、初速向上に対しやや不利な影響があるが、起動圧力増加に助けられ、個人護身武器としての「ワスプ」の性能はそれでも必要充分である。

「ワスプ」無銃身拳銃は18mmの大口径を採用している。これは低初速という条件下で殺傷弾に必要とされる停止作用と運動量(速度x質量)を保証するためである。実際、この銃の発射する殺傷弾は名前は殺傷弾であるが、質量11.6gの弾頭の初活力は85ジュール以下で、加えて弾頭にはゴム製のジャケットが付属しているため、殺傷効果は痛みを与えるのがメインであり、安全クラスはロシア国家基準P50723-94Tの中のIIIA要求に符合し、非致命性弾薬に列せられるべきである。

大口径弾を使用するため、特殊弾の発展に適している。口径が大きく、内部空洞も大きく、充分な薬剤が収容できるからである。「ワスプ」無銃身拳銃に使用される閃光爆震弾はマズルから0.5mのところで炸裂し、激烈な音と光の効果を生み、目標に対し威嚇効果を持つ。夜間、朝夕、室内など低照度条件下で使用した時はさらに瞬間的な目くらまし効果を持つ。目くらまし作用は5〜30秒持続し得る(背景の光の強さが変わることによって変わってくる)。使用される信号弾は、救助を求める信号や位置標識を発射するのに用いられ、空に向け発射すると80〜120mの空中で赤、緑、黄色の光信号を形成し、薬剤の燃焼時間は5±1秒である。照明弾は夜間の短期間照明に用い、発射すると内部に装備された薬剤が50〜65mの高さで燃焼し、発生する強い光の照明時間は4秒以上である。

(頑住吉注:これより2ページ目)

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ロシアの「ウダール」無銃身噴射機は、外形はグリップの形状に似ており、内部に液体催涙剤を装備した5発の弾薬が収容できる。発射機の左側にはダブルアクショントリガーが装備され、トリガーを圧せば即発射でき、催涙液体が噴射される。トリガーの復帰時、発射後の空薬筒がすぐ発射機の中から放出される。これには政府型(左)と民間用型(右)の2種があり、政府型の弾薬は民間用弾薬に比べやや長く、有効射程は5mである。民間用型の射程は3mしかない。」



プラスチック製フレームに入っている傷などから見て、青丸で囲ったピンを軸にレバー状トリガーが赤矢印のように回転して発射するんではないでしょうか。だとするとあまりにも通常のハンドガンと操作感覚が違い、特別の訓練を必要とするような気がします。



18mmx45殺傷弾内部構造図)

「ワスプ」無銃身拳銃に使用される各種弾薬の特性

弾薬の種類 弾薬コード 弾薬全体重量(g) 弾薬の特性
殺傷弾 18×45T 22 薬筒には先端を封鎖するキャップはない。薬莢の加速に有効な長さは弾頭の円柱部分の長さの2倍
閃光爆震弾 18×45SZ 18 先端を封鎖するキャップは黒色、かつ十字の突起あり
信号弾 18×45S 20 先端を封鎖するキャップは赤、黄色、緑(異なる色の光信号を表す)
照明弾 18×45O 20 先端を封鎖するキャップは白で一文字の突起あり

(頑住吉注:「薬筒には先端を封鎖するキャップはない」と書かれていますが「薬筒」は「薬莢」の誤りでしょう。上の画像で殺傷弾薬の先端はふさがれていないことが分かります。十字、一文字の突起は暗い中で触って弾薬の種類を特定するためと考えられ、もし薬莢内部の薬筒の先端にあったら色も突起の形も外部から確認できませんから)

「ワスプ」系列の機種発展

「ワスプ」PB-4式無銃身拳銃の外殻には高品質高強度で軽量なアルミ合金材料での製造が採用され、構造はコンパクトである。ちょっと試しに想像してほしい。薬莢の直径18mm、弾頭の直径15.3mmの自動拳銃あるいはリボルバーがあったとして、その寸法がどんなに大きくならざるを得ないか! またどうやって便利に身につけて携帯し、護身に使用するか? だがPB-4式拳銃の外形寸法は105mmx115mmx39.6mmしかない。フル装填後の全体重量は装填していないPSM 5.45mm小型拳銃よりさらに軽い。ポケットサイズの逸品と称するに耐える。

「ワスプ」PB-4式無銃身拳銃は電気撃発を採用している。これは世界初の発電機を独自に持つ電気撃発拳銃である。トリガーを引くと、グリップ内に置かれたミニ磁気パルス発電機が発した電流が弾薬の電気撃発プライマーに作用し、これを起爆させる。ロシア実用化学科学応用研究所の独創的なこの撃発原理は、作用の信頼性が相当に高く、もし極端な環境下でも不調になることはない。メーカーはかつて普通の発射原理を採用したロシアの現代民間用拳銃と1000発の射撃対比試験を行ったが、撃発の信頼性はまったく遜色なかった(頑住吉注:「磁気パルス発電機」って無理に訳しましたがどんなのか不明です。ガスコンロの点火装置みたいのでしょうか)。

2002年、「ワスプ」ファミリーに新人が加入した。「スマート」発射機構を採用したPB-4M式無銃身拳銃である(頑住吉注:ロシア語では改良型によく「M」が追加されます)。トリガーを引くと磁気パルス発電機が発生させた微弱な電流が、空のチャンバーあるいは発射後の薬莢を識別し、かつそれを飛び越えて、直接有効な弾薬を起爆できる。PB-4M式の誕生から、あらゆる「ワスプ」発射機は「スマート」発射機構を採用した。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「PB-4-1式無銃身拳銃」)

その後、PB-4M式を基礎に研究開発されたPB-4V式無銃身拳銃がロシア軍に制式非致命武器として装備され、装備コードは6P35だった。この銃およびその使用弾薬は軍の過酷なテストをパスして正式装備となり得た。これは「ワスプ」系列無銃身拳銃の信頼性の1つの明らかな証拠でもある。

2003年、「ワスプ」はPB-4-1式変形銃を登場させた。別名「ワスプ・レーザー」無銃身拳銃である。このタイプは本来の伝統的フロント、リアサイトの機械式照準具に代わって一体式レーザー照準装置を採用している。このことは照準をさらに便利に、素早く、正確にし、特に低照度条件下では使用のメリットは突出している。CR123A電池が本来の内蔵ミニ電磁パルス発電機に取って代っており、グリップはより繊細、精巧になり、かつグリップの外観が改善され、滑りにくくなり、耐腐食性能が向上した。

(頑住吉注:これより3ページ目)

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「2発があらかじめ装填されたPB-2Z式無銃身拳銃。取り外し式装填方式が採用され、外形はスリム、コンパクトである」 「取り外し式装填方式」はたぶんあらかじめ装填されたカセットの取り換えによって再装填する方法でしょう。事前に装填されたパッケージ交換による再装填、電気発火はP11水中ピストルにもちょっと似ています)

だが、電池を用いて内蔵発電機に替える措置はユーザーの賛同を得られず、このため2年後に登場した、PB-4-1式と構造が基本的に同じPB-4-1ML式無銃身拳銃では、2種のエネルギー源が同時に採用されている。すなわちミニ電磁パルス発電機が撃発電流を提供し、CR123A電池がレーザー照準器にエネルギーを提供するのである(頑住吉注:何故電池式が不評だったのか説明がありませんが、「磁気パルス発電機」がもしガスコンロの点火装置のようなものならレーザーサイトに必要な電流を供給し続けることはできないはずです。このため電池が必要になり、それならいっそ撃発にも電池を使おうということになったが、電池切れで全く発射不能になる可能性が生じるため不評で、撃発にはやはり発電機が使われるようになったのではないでしょうか)。

2005年、ロシア連邦内務部はPB-4-1MLを基礎にさらに一歩改良してできたPB-4SP式無銃身拳銃を装備した。この銃は寸法がより大きい18.5mmx60弾薬を発射し、弾頭重量は14.2gに大きくされ、殺傷弾の有効作用距離も本来の25mから50mに向上した。この警察用型「ワスプ」無銃身拳銃は全長が134mm、空虚重量370gで、世界の同一殺傷クラスの武器の中で最も小型軽量である。

「ワスプ」系列無銃身拳銃の売れ行きの良さはイジェフスク機械工場にも無銃身拳銃研究開発を開始させた。この工場は「ワスプ」系列の弾薬を基礎に、高強度プラスチックの外殻を採用し、2発があらかじめ装填されたMP-461「ディフェンダー」拳銃を登場させた。これはより小型、精巧、軽便なため、市場ですこぶる競争力を持っている。このため、実用化学科学応用研究所も、より繊細、精巧なPB-2Z式を登場させた。あるいは「ホーネット・プロテクター」無銃身拳銃とも称される。この銃は同様に2発の事前装填を採用し、しかも「ワスプ」系列の伝統的な中折れ式装填方式を一新し、取り外し式構造を採用した。レーザー照準器が設けられ、リチウムイオン充電池と電磁パルス発電機という2種のエネルギー源を同時に採用している。

「ワスプ」系列無銃身拳銃は安全な非致命性の武器であり、もし1m以内で衣服に覆われていない裸の人体部位を照準して殺傷弾を発射しても、皮膚がひどく赤く腫れ上がるに過ぎず、人体内部組織に侵入する確率は相当に限られている。目を撃ちさえしなければ永久性の傷害がもたらされることはなく、安心して使え、過剰防衛によってもたらされる法律問題を心配する必要がない。

ソ連解体後、一度治安が混乱し、これに加えロシアではここ数年しばしばテロ襲撃が発生しており、このことは個人自衛武器の需要を不断に高めている。法律の許す範囲内で有効に自身の安全を保護するなら、「ワスプ」系列無銃身拳銃は1つの素晴らしい選択である。特に現在、軍や警察は非致命武器の作用に対しより深く認識するようになっており、「ワスプ」系列無銃身拳銃も対テロ、対暴動任務の必要性とともにロシア軍や内務部武装組織の装備体系に入ってきている。ダブルの需要という牽引がある「ワスプ」系列無銃身拳銃にはより良好な発展があると確信してよい。



PB-4M式無銃身拳銃の構造説明図

(頑住吉注:バレルはなく通常のバレル位置にあるのは「弾薬ケース」ですから「バレルラッチ」という名称はおかしいですが、無理に正確に訳そうとするとかえって分かりにくくなるので便宜的に使用しています)

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「PB-4M式を基礎に研究開発されたPB-4V式無銃身拳銃はロシア軍に制式非致命武器として装備された。写真からその照星が後ろ、照門が前という設置が通常の拳銃と異なることをクリアに見ることができる。これはバレルラッチを流用してフロントサイトとしたことに適応する調整である。」)

数種の「ワスプ」無銃身拳銃の主要緒元

機種 PB-4M PB-4-1 MP-461
弾薬規格(mm) 18mmx45 18mmx45 18mmx45
弾薬ケースの装弾数(発) 4 4 2
空虚重量(kg) 0.28 0.32 0.2
外形寸法(mm) 108×115×39.6 105×115×39.6 115×120×30

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「PB-4SP式無銃身拳銃」)


 西側とは全く違う進化を遂げた護身用ピストルであり、非常に興味深い内容でした。

 書かれていませんでしたが、これらは明らかに旧ソ連が非合法スパイ活動、暗殺などに使ったとされる、電気発火で青酸系毒物を浴びせる「トロイカ」特殊ピストルなどの流れをくむものでしょう。電池でなく発電機を使用するシステム、空のチャンバー、空薬莢を自動的に識別して避ける「スマート」システムなどは、あるいは別のジャンルの銃器にも応用可能かも知れません。

 大口径でありながら4角形に弾薬を配置したタイプは幅が大きくなりすぎて護身用にコンシールドキャリーしにくいですが、2発しか発射できないのもやや不安で、難しいところです。

 これらの銃、比較的治安のいい日本の警察向きなのではないかという気もします。










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