台湾ICS製電動MP5SD

 「Visier」2004年7月号の「スイス銃器マガジン」ページに台湾製電動ガンのレポートが掲載されていました。


ソフトエアMP5SD

バッテリーパワードエアガン

 多くのいわゆる1/1スケールの「ソフトエア銃」にはそのオリジナルへの驚くべき類似性で納得させられる。これに関する成功した一例は台湾の会社ICSによるMP5SDの模造品であり、企業グループウマレックスを通じて大量に売りさばかれている。

 「ソフトエア」の名前でよく知られているエネルギーの低い銃は、いろいろなシステム形式で提供されている。これに属するものとしてはマニュアルでコッキングする単発、連発銃、エレクトロモーターの助けを得た、あるいはフロンガス、二酸化炭素、圧縮空気を原動力とするオートローダーがある。
 使用感が快適で満足いく射撃スポーツバリエーションのある電動オートローダー/セミオート銃は人気が上昇している。だが、そもそもモーターとバッテリーの場所があるかというモデルの寸法に制限されているため、このジャンルの提供品はサブマシンガン型とアサルトライフル型が支配的だ。
 これに加え電動式にはフルオートモデルもあり、一部は発射数制約器(バーストコントロール)がある。セミおよびフルオートのソフトエア銃を購入できるかどうかは、結局のところそれぞれの国の銃器立法次第だ。
 たいていのものは共通して口径が6mmBBで、発射されるのは重量クラスが0.10〜0.49gのハードプラスチック球である。
 
ICSのMP5SD
 この銃はH&K MP5のいわゆる「ネービー型」、すなわちセミ、フルオートのアンビセレクターを持つタイプの模造品である。完全組み込み型のサイレンサーバージョンで、これ用の特徴的なハンドガードも備えられている。ちなみにH&KはMP5SDを1974年から製造している。
 たとえオリジナルを知っている人でも、ICSモデルとの差を認識するには詳細に観察しなくてはならない。普通急いでざっと見ただけでは充分ではない。
 しかもライトメタル製アッパーレシーバーとサイレンサー表面の彩色もイミテーションとしてオリジナルと一致している。さらにコッキングハンドルは実物のようにコッキングの動きをし、後方でホールドもされる。ただしいずれも銃としての機能はない。
 このモデルではモーターを動かすための9.6Vバッテリーがショルダーストック内にあり、モーターはグリップ内にある。だが、MP5SD(同様に台形のハンドガードがついたスタンダードバージョンも入手可能)には伸縮可能のショルダーストックのタイプもある。この型ではバッテリーはハンドガード内に収まる。したがってモデル型ごとに異なる長さのバッテリーが使われる。不可欠な付属品として、ウマレックスが同様に提供している充電器がある。
 さらなるMP5シリーズ用のウマレックスによる付属品として特殊な交換用ハンドガードがある。これには追加のフォアグリップ、法が許すかぎりホワイトライトやレーザーサイトといったいくつかの装備が装着できる側面のマウントレールが付属されている。そして国も実銃のMP5で使用しているような形式、型のスリングシステムもある。
 
操作と実射
 バッテリーを長持ちさせる前提条件として、提供品の中には充電、放電とも完了時に自動的にスイッチが切れる充電器がある。
 棒状マガジンには約200発のBB弾が入るスペースがある。金属製マガジンの上部にある小さなフタからBB弾を満たす。下部の小さな輪状部品の操作により、BB弾はフィーダーパイプ内に運ばれる。マガジンをかみ合わせればMP5は発射準備完了となる。ただし、ドイツではセレクターをフルオートに合わせてもセミオート機能のままである。
 あたるのか? オリジナル通りのドラム型リアサイトはいくぶんぐらついている印象だ。だが、レストで10mから10発のグルーピングは16〜20mmに収まった。これは私の個人的意見としてはまともな結果である。ただし、これは弾丸のクオリティ次第でもある。金をケチれば確実に悪い結果になる。命中精度を最適化するため、このモデルはいわゆる「ホップアップシステム」(ウマレックスは「Shoot Up」と呼んでいる)を使用している。この機能を説明する。
 BB弾は急速に前進するピストンによる空気で加速される。チャンバー直後のスムーズボアバレル内部12時方向にゴムの突起がある。これが通過するBB弾の上だけにブレーキをかける。このことで弾丸を安定させる回転運動が発生する。
 ホップアップシステムの調整は、コッキングハンドル直前のアッパーレシーバー左面にある薄いセッティングレバーで行う。ターゲットとの距離に応じ、射手はドラム型リアサイトおよびフロントサイトを繊細にターゲット中心方向に調節する前に、ベストの条件になるようにホップアップをおおざっぱに調整することができる。
 ホップアップの調整次第だが(「High」ポジションでは回転が最も強まり、速度の損失が最も大きくなる)弾丸の速度は80(High)、90(Low)の間で変化する。これに対応し、10mの距離で着弾点は垂直に約100mm移動する。0.25g弾ではマズルエネルギーは平均0.8ないし1ジュールになる。
 すぐに撃ててあたるようになるのか? 実際のところ比較的ストロークが長く、しかしスムーズなトリガーを引くだけですぐ撃てる。だが他方ではそのつどマガジン内のフィーダーを(小さな輪状部品によって)フルにしなくてはならない。この補給のための配慮を忘れた場合、そしてBB弾を入れすぎた場合、機能に問題が生じる。
 弾丸の跳ね返りに注意! 通常の空気銃用のブレットトラップケースは合わない。よりよい代替案としては発泡スチロール板があり、我々はそれに毛布をかぶせて使用している。いずれにせよシューティンググラスの必要性は自明のことに属する。

まとめ
 良好な加工、外観デザインにおける実銃キャラクターとの類似性、サイズ、重量の類似性、そして重要なのは満足いく射撃成績である。いくらか残念なのは、特にバッテリーと充電器が加わった場合の価格である。銃器法は守ること。


日本-銃のない国(Japan-Land ohne Schusswaffen)
 少なくとも私有財産に関する限り、そしてすでに第二次大戦終了以来、この国はそうである。だが、最も最近の英国における経験と似て、それが日本の銃器を使った暴力犯罪発生の防止に役立っているわけではない。そのかわり日本国は伝統的に可能な限りの「Yakuza」すなわちこの地の犯罪者グループとの和合に努力しているのである。何年か前までは公の役所が彼らとよい関係を維持することすら許されたのだ。
 銃がない国であるにもかかわらず、日本の銃器カタログ(それはやはり存在するのだが)には考え得る限り全て、ハンドガンに始まりグレネードランチャーつきアサルトライフルを経て機関銃に至るまでのモデルタイプを見つけることができる。ただしそれはソフトエア-バージョンだけである。というのは、ソフトエア銃製造の伝統はこの「日が昇る国」(Land der aufgehenden Sonne)で基礎が確立されたものなのである。いわばどんな銃も持てないことの代償として…。
 その上、専門誌には膨大な付属品(適したタクティカルベストからいくつかの弾丸マテリアルを経てオプティカルサイトやバイポッドに至るまで)が掲載されている。そして室内戦闘も含めた競技会にも参加できる。当然純スポーツ的なものである。

テクニカルデータ
モデル:ICS MP5SD
タイプ:ソフトエア
メーカー:ICS社(台湾)
口径:6mmBB
寸法:770(全長)x48(全幅)x210(全高)、マガジンなし
空虚重量:2643g
素材:ライトメタル、プラスチック、スチール
特徴:電気駆動、ホップアップシステム
価格:MP5SD固定ストック付き 369ユーロ
カスタムハンドガード、フォアグリップセット 89.90ユーロ
バッテリー8.4V-1800mAh 45ユーロ
充電器39.90 ユーロ
(スイスへの輸入価格はお問い合わせ)


 この銃はほぼ完全に東京マルイ製品のコピーです。マガジン上部のフタ、底のゼンマイを巻くラチェット、ホップアップ調節レバー、バットプレートの固定方法など実銃と異なるオリジナル部分までどう見ても全く同じで、違うところと言ったら刻印くらいです。アッパーレシーバーがアルミであること、グリップ底板が放熱板付きであることなどは東京マルイ製品とは違いますが、前者は言うまでもなくカスタム品として日本に存在しますし、後者は形状まで日本のカスタムパーツそっくりです。これでキャプションに「ICSのソフトエアMP5SDはH&Kによるオリジナルのファーストクラスの模造品である」とか書かれると「おいおい、それは日本製品を真似しただけのもんだよ」と言いたくなります。本体の価格はこれを書いている時点のレート、1ユーロ133.5円で計算したら5万円近くになりました。アッパーレシーバがアルミであることを考えてもちょっと高いですね。しかも丸パクリでまともに開発費はかけてないわけですから。ちなみにノリンコNZ85B(中国製Cz75コピー)より高いということになります。バッテリーは日本でもよくカスタム品として使われている外殻が透明な奴で、内部のセルには「SANYO」の文字がはっきり確認できます。

 検索してみましたが例えばここにはクリックすると大きく表示される画像がありました。
http://www.waffenostheimer.de/catalog/product_info.php?products_id=761

 こちらはパーツで、内部まで東京マルイの丸パクリであるのがよく分かります。
http://www.airsoftgi.com/default.php?cPath=31_66


 記事内容はまあほとんど我々からすればとっくに知っていることで、そしてこれを読む限りどうもこの筆者は10mの比較的近距離からしか撃っておらず、ホップアップの本当の意味が分かっていないようでもあります。
 日本に関する囲み記事はもうちょっとほめられているかと思ったらこんなのでした。言うまでもなく日本に私有財産としての銃がないわけではなく、筆者は分かっていて「ないに等しい」と言う意味でこう書いているつもりかもしれませんが、予備知識のないスイスやドイツの読者はまず間違いなく誤解するでしょう。また厳しい銃規制が銃器犯罪防止に役立っていないと言うのも無茶な話で、暴力団のそれも含めた日本の銃器犯罪が世界においてきわめて低い水準であるというのは間違いない事実だと思うんですが。まあ現在のスイス人の認識はこんなもんだということです。もちろん日本人もスイスについてそんなに知っちゃいないですけどね。

 








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